2022.09.26(月)その他

【陸ジョブナビVol.10】ロードレースの距離はどうやって測るの?~コース計測のお仕事紹介!~



夏が過ぎると、ロードレースのシーズンが始まってきますね。そもそもロードレースの距離は、どうやって計測しているのでしょうか? 最近ではGPS機能付きの時計も普及して、ほぼ正確な距離がわかるということで、トレーニングに活用している選手も多いようですが、レースでは「ほぼ」ではなく、「正確に」計測をする必要があります。42.195㎞のマラソンなど、ロードの距離をどのように正確に計測しているのか。国際道路コース計測員の福島信久さんに話を聞きました。


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距離計測の歴史

「計測員になってもう20年近くになります」と話すのが、国際道路コース計測員の資格を持つ福島信久さん。「体力を使うので、あと何年できるか(笑)」などと言いながら、そのお仕事についていろいろと教えてくださいました。

これまで、ロードレースのコース計測はどのように行われていたのかというと、戦前は竹を割いて、50mの竹尺を製作して距離を測っていたそうです。直線はいいとして、カーブや折り返しが多いコースは計測するのも大変ですよね。
1964年の東京五輪も竹尺で測りました。それ以降は、50mのワイヤー(50mの距離を正確にワイヤーに印をつける)による計測が行われるようになりました。50mを約844回でフルマラソン。50mダッシュとスクワットを繰り返して計測していたそうです。1986年以降は自転車によるコース計測が進み、現在の形となっていきました。

公認大会が増えましたが、もしも当時の計測の仕方だったら、時間もかかって負担も大きく、ここまで大会数も増えていなかったかもしれないですよね。
すでに公認コースであっても、日本では5年に1回再計測する必要があり、計測員の方々は日々奮闘されています。

計測員として活躍している人って?

「計測員になるには、グラウンドの検定は検定員、技術役員、その中でそういう資格を持っている人の中から各都道府県の中から自転車の計測員をピックアップして、推薦してもらいます」と福島さん。ご自身も東京陸協から推薦されて、計測員として活躍しています。
さらに、自転車計測員はA級、B級、C級に分かれていて、A級は全国で2人、B級は9人。C級は61人で都道府県に2人以内としています。

日本ではコース計測は、3人で行っています。3人の組み合わせに関しては複雑なルールがありますが、「3人」である一番の理由は「自転車はパンクすることがあるから」なのだそうです。
「以前、2人がパンクしたこともあったので、万全の備えが必要ということです」と福島さん。また、「後継者を育成するという面からも、1人はベテランが入るようになっています」。

正確に測定するための「カリブレーション」

自転車は特別なものではなく、一般的なものを使用します。「自転車の前輪を外して、前輪にカウンターをつけます。カウンターは1㎞で約1万回転。400mの直線を巻尺で測って作り、そこを最低2往復します。我々がやると、カウンターの数は平均4000回転とほぼピッタリきます。2カウントずれるとまたやり直します」。
ピッタリ合ったらそれを2.5倍して1㎞、さらには42.195kmまで計算をしていくそうです。この作業を「カリブレーション」と言います。

「計測は交通量の少ない時間帯、早朝3時〜4時に行うことが多いですね。夜中に行うこともありますし、東京マラソンのように交通量が多いなどの事情がある場合は、何回も継ぎ足して計測していくこともあります。コース取りはルールブックに記載のある通り、道路の端から30㎝を最短で計測します。最短でスレスレでいくので3車線の道路だと大変ですね」
計測直後にも400mのカリブレーションを行います。温度変化、タイヤの空気圧の変化、タイヤの径が変化している可能性を考えて再度チェックするためです。場合によっては、2ヵ月前など事前にカリブレーションの下見をすることもあるそうです。

長年の経験から、コース設定へのアドバイスをされることもあるとか。「決まってからは準備が大変です。選手が走りやすいコースにするため、もう少しこういうほうがいいのでは?と伝える時もあります。例えば、スタートしてすぐ曲がるコースなどは走りにくいですよね」と福島さん。
また、計測は天候との戦いもあり、「冬場で道路が凍っている時以外は計測を行います。雨でも計測しますよ。もし台風がきたらどうかなと思いますが、今のところ経験はないですね(笑)」。

どんな距離でも正確に計測

コース計測に関しては「事前計測」と「当日計測」の2パターンがあります。当日計測の場合は、選手に追いつかれないように距離計測を行っています。選手に合わせてコーンを並べたりコースの準備をするので、自転車が通過するときにまだ並べ終わっていないことがあるとか。後ろから迫ってくる先頭集団、コースの直前準備など、計測員のみなさんも時間と戦っています。
事前計測の場合は、信号で止まることもあって、フルマラソンで4〜5時間はかかるそうです。

さらに、ハーフマラソンや10㎞、100㎞、さらには競歩でもコース公認には計測が必要です。サロマ湖ウルトラマラソン(100㎞)の場合、50㎞ずつ2日間に分けて計測を行うそうです。今まで計測した中で記憶に残っているコースを聞いたところ、「高野山・龍神温泉ウルトラマラソン(100㎞)ですね。15%くらいの斜面をずっと上っていくんですよ。きつかったですね。コースとして良いなと思うのは、東京マラソンや北海道マラソン。地方だと景色が良いコースがいいですね」。

計測員になってもう20年近くになる福島さん。長く続けられている秘訣は「とにかく体力維持ですね」ときっぱり。
「マラソンの川内優輝選手(あいおいニッセイ同和損保)じゃないですが計測本番が練習です。多い時は年間20大会を超えますから」そして、計測で感じるやりがいについては、次のように語ってくれました。
「自分の測ったコースで記録が出た時は、やっぱりうれしいですね。鈴木健吾選手(富士通)が日本記録を更新したびわ湖毎日マラソンも計測しました」

選手が輝く舞台をキッチリ計測するために、計測員のみなさんも現状打破されているんですね!


>>インタビューVol.10(PDF版)はこちら


■福島信久さん

1962年1月22日生まれ、明星大学卒。2003年6月から日本陸連施設用器具委員会委員となり、17年6月からは同副委員長を務める。国際道路コース計測員(グレードA)として、東京2020オリンピック競技大会マラソン・競歩コース、東京マラソンコースなどの自転車計測に携わる。東京陸協理事、青梅市陸協理事長。

■M高史(えむたかし)さん
1984年生まれ。中学、高校と陸上部で長距離。駒澤大学では1年の冬にマネージャーに転向し、3、4年次は主務を務める。
大学卒業後、福祉のお仕事(知的障がい者施設の生活支援員)を経て、2011年12月より「ものまねアスリート芸人」に転身。
川内優輝選手のモノマネで話題となり、マラソン大会のゲストランナーやMC、部活訪問など全国各地で現状打破している。
海外メディア出演、メディア競技会の実況、執筆活動、ラジオ配信、講演など、活動は多岐にわたる。


~月刊陸上競技10月号(9月14日発売)掲載~

▼ジャパンマラソンチャンピオンシップシリーズ シリーズⅡ(第2期)が「北海道マラソン2022」からスタートしました!




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