2023.01.20(金)その他

【陸ジョブナビVol.14】来日した外国人選手をサポート!~通訳のお仕事を紹介~



陸上の大会はたくさんの「縁の下の力持ち」によって支えられています。今回は主にマラソン大会で来日した外国人選手の会見やインタビューで通訳をされている竹澤哲さんに話を聞きました。


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通訳の役割と大切な「選手との距離感」

陸上の大会で選手の通訳を務めて約30年になるという竹澤哲さん。ポルトガルでコーディネーターのお仕事をしていたことから、ポルトガル語やスペイン語の通訳としてキャリアをスタートしました。
現在は、マラソン大会等で集まった通訳の人たちの担当振り分け、大会事務局と各通訳の間に入って調整するまとめ役を担っています。

実際に、陸上の通訳では仕事内容はどんなものでしょうか。
例えばマラソンの場合、選手が来日するのは大会の約1週間前から。そこから仕事が始まります。
「まずは来日してからのお手伝いです。初来日の選手もいますので、練習や食事、来日中の生活で困らないように日本のインフォメーションを行います。日本の場合、助かるのはファミリーレストランでの食事です。写真付きのメニューなので、外国人選手も困りません」

また、来日してからの練習場所への案内なども通訳のお仕事。「例えば東京マラソンの場合は、練習会場に移動するためのマイクロバスが用意されるので、選手にそういった情報を伝えます」。
選手と接するにあたって気をつけているのは「距離感」だそうです。
「基本的には通訳控室にいて、『何か用事や困ったことがあったら来てね』と伝えます。心掛けているのはあまり密着し過ぎないこと。例えば、競技に必要な買い物にはついていきますが、その他のプライベートな買い物・行動に対しては案内だけ行います」

競技に必要なことか、プライベートなのかを線引きして、絶妙な距離感を保つことを竹澤さんは大事にしています。いろいろと尋ねてくる選手もいれば、全然連絡をしてこない選手もいるとか。
「選手がまったく訪ねて来ないと逆に不安になる時もあります(笑)。そういう選手もいるので、あまりにも通訳控室に来ない場合は『どうしてるの?』とたまに声をかけることもあります」


大会前日前から当日の通訳の動き

レース前日(または前々日)の記者会見では有力選手が登壇。通訳の出番です。
また、前日にナンバーカード(アスリートビブス)を選手に配るのも通訳のお仕事。さらに、スペシャルドリンクを入れるボトルの用意までしているそうです。「給水の中身は選手が準備しますが、ドリンクを持ってきてほしい当日の時刻を事前に伝えます。スペシャルドリンクの受付は外国人招待選手が泊まっているホテル内で行うので、まずは持ってくるのを待つ。それがレース当日の最初の仕事です」。東京マラソンの場合は、レースが朝9時スタートと早いので、スペシャルドリンクは6時には集めるそうです。

また、体調不良の場合やマッサージ等の対応も行います。
「体調が優れない場合は医者に診てもらいますが、ドーピング違反にならないように、薬を細かく確認する必要があります。ですから、大会事務局に確認しながら対応します。
また、マッサージが必要な選手もいます。日本のマッサージはすごく評判がいいんですよ。トレーナーさんにはボディランゲージや英語で伝わることもありますが、選手によってはあまりハードにやられてたくないなど微妙なニュアンスを伝えたい場合は、付き添うこともあります」

当日はホテルのロビーに集合し、スペシャルドリンクを受付してスタート地点に移動します。
「時間通りに来ない選手がいると心配です。まずは無事に集合し、スタートしてくれれば」と竹澤さん。スタートとフィニッシュが同じ場所の場合はそのまま待機していますが、フィニッシュ地点が異なる場合はすぐにバスで移動し、フィニッシュ地点で待ち受けます。
フィニッシュ後からは大忙し。優勝者はフラッシュインタビューがあり、その他の選手もミックスゾーンでの取材、記者会見、ドーピング検査、表彰などが続きます。選手が途中棄権した場合にも備える必要があります。

「回収車があり、出場人数も多くない場合は競技場で待っています。大会によってはどこでやめたかがわからず、フィニッシュ地点まで来ないでそのままホテルに直行することもあります。その場合、荷物はフィニッシュ地点に届いているので、コーチに持って帰ってもらうように連絡をします。コーチもホテルに戻ってしまった時には、我々が届けに行きます」

▼スペシャルドリンクとは?


通訳のやりがい

竹澤さんに、通訳のやりがいについて聞いてみたところ、「競技とプライベートの距離感は考えますが、やはり優勝インタビューを担当することになれば、それはうれしいですね」。
ただ、ハプニングもあるそうです。「緊張もしますし、外だと声が聞こえにくい時があるので大変です。あるレースの記者会見で、選手と少し離れた場所から通訳をすることがあったのですが、それからはできるだけそばで訳させてくださいと伝えています。また、陸上競技の通訳をする場合、『陸上の専門用語』が出てきますので、そういった知識を身につけました」。

マラソンだけでなく、トラック&フィールドの試合でも通訳は待機しています。
フィールド競技種目では専門的な陸連の担当者が近くにいて、その通訳として待機。
トラック&フィールドの場合は選手の人数が多いので、担当を決めていられないそうです。
ちなみに、海外の通訳事情を聞いてみると、「海外の大会に行っても通訳がそれほどいないことが多いです。日本が特殊な例になるかもしれません。例えば欧米の場合は英語が話せればどこに行っても困らないでしょうが、日本はちょっと困るのではないかということで、通例的に通訳が置かれているようです。『おもてなし』ということかもしれないですね」。なんと、陸上の大会で通訳がいるのは世界的には珍しいことなんですね!

海外から参戦したアスリートが不安なく、ストレスなく現状打破するには、通訳の人たちは言葉を伝えるだけではなく、さまざまな気遣いと心配りが大切なんですね!選手との距離感を大切に、できるだけ選手に負担をかけずにレースに集中してほしいという竹澤さんのプロ意識、選手への思いやりが伝わってきますね!


>>インタビューVol.14(PDF版)はこちら

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▼今後の大会スケジュール
https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/series2/schedule/


■竹澤 哲さん

◎たけざわ さとし/大学卒業後、ポルトガル、スペインに8年間に渡り滞在。コインブラ大学、バルセロナ大学にてポルトガル語、スペイン語を学ぶ。帰国後、1993年より日本陸連通訳として、スーパー陸上、福岡国際マラソン、東京マラソンなどを担当。WOWOWやその他スポーツイベントでの通訳や翻訳を行っている。


■M高史(えむたかし)さん
1984年生まれ。中学、高校と陸上部で長距離。駒澤大学では1年の冬にマネージャーに転向し、3、4年次は主務を務める。
大学卒業後、福祉のお仕事(知的障がい者施設の生活支援員)を経て、2011年12月より「ものまねアスリート芸人」に転身。
川内優輝選手のモノマネで話題となり、マラソン大会のゲストランナーやMC、部活訪問など全国各地で現状打破している。
海外メディア出演、メディア競技会の実況、執筆活動、ラジオ配信、講演など、活動は多岐にわたる。


~月刊陸上競技2月号(1月14日発売)掲載~

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