
自己ベスト9秒台が3名、10秒0台6名がアジア大会代表の切符を争う。ミクロの戦いを制するのは誰だ?
・予選/6月12日 15:35 7組3着+3・準決/6月12日 20:25 3組2着+2
・決勝/6月13日 18:30
世界記録と日本記録のお話
以下は、23年にも紹介した話で、今回の日本選手権からははずれるが、世界記録と日本記録のお話を少々。再掲なので、「以前に読んだ」という方は、ここから先を読むのは時間の無駄である(苦笑)。
現在の男子100mの世界記録が「9秒58」、日本記録が「9秒95」であることは陸上ファンの多くの方がご存知であろう。
では、1912年の「初代世界記録」と1911年の「初代日本記録」は??
正解は世界記録が「10秒6」で日本記録が「12秒0」である。
もちろん、現在のような100分の1秒単位の電動計時(写真判定)による計測ではなく、ストップウォッチを人間が押す手動計時で、5分の1秒単位のタイムだった。電動計時と手動計時の誤差は約0秒2。よって、手動の10秒6と12秒0は、電動計時なら10秒8台くらいと12秒2台くらいの記録になる。
10秒8台は、このところの五輪や世界選手権での女子のメダル争いくらいのレベル。12秒2台は全日本中学の女子のファイナリストくらいだ。
100年ちょっと前の初代世界記録と初代日本記録は、今ではそれくらいのレベルだったのだ。
といっても、当時のトラックは土で、スターティングブロックもなく、トラックに穴を掘っていた。
キックの力がしっかりと地面に伝えられる現在のようなオールウェザー・トラックになったのが1968年のメキシコ五輪から。100年前とは比較にならないくらいスパイクシューズも改良され、記録の短縮に大きく貢献していることは間違いない。
そんなことで、手動計時の初代世界記録10秒6と初代日本記録12秒0を、電動計時の10秒8台や12秒2台に換算して、現在の電動計時のタイムと単純に比較するのは、昔のアスリートには気の毒な話かもしれない。
とはいえ、100年間で世界記録は1秒ちょっと、日本記録は2秒ちょっとも短縮されてきたことは確かな事実である。
以下に、この100年あまりで、世界記録と日本記録がどのように進歩してきたのかを振り返ってみた。
【世界記録】
<手動計時>
| 10秒6 | 1912.07.06~1921.04.23 | =8年9カ月17日 |
|---|---|---|
| 10秒4 | 1921.04.23~1932.08.09 | =11年3カ月17日 |
| 10秒3 | 1932.08.09~1936.06.02 | =3年11カ月11日 |
| 10秒2 | 1936.06.20~1956.08.03 | =20年1カ月14日 |
| 10秒1 | 1956.08.03~1960.06.21 | =3年10カ月18日 |
| 10秒0 | 1960.06.21~1968.06.20 | =7年11カ月30日 |
| 9秒9 | 1968.06.20~ |
・1975年から電動計時のみを過去に遡及して世界記録として公認
<電動計時>
| 9秒9台 | 1968.10.14~1991.08.25 | =22年10カ月11日 |
|---|---|---|
| 9秒8台 | 1991.08.25~1999.06.16 | =7年9カ月22日 |
| 9秒7台 | 1999.06.16~2008.08.16 | =9年2カ月0日 |
| 9秒6台 | 2008.08.16~2009.08.16 | =1年0カ月0日 |
| 9秒5台 | 2009.08.16~ | =16年9カ月経過中 |
【日本記録】
<手動計時>
| 12秒0 | 1911.11.19~1915.10.21 | =4年11カ月2日 |
|---|---|---|
| 11秒5 | 1915.10.21~1918.11.03 | =3年0カ月13日 |
| 11秒4 | 1918.11.03~1921.11.13 | =3年0カ月10日 |
| 11秒2 | 1921.11.13~1922.04.23 | =5カ月10日 |
| 11秒0 | 1922.04.23~1925.11.15 | =3年6カ月22日 |
| 10秒8 | 1925.11.15~1927.10.09 | =1年10カ月24日 |
| 10秒7 | 1927.10.09~1931.04.29 | =3年6カ月20日 |
| 10秒6 | 1931.04.29~1931.05.30 | =1カ月1日 |
| 10秒5 | 1931.05.30~1933.09.23 | =2年3カ月24日 |
| 10秒4 | 1933.09.23~1935.06.09 | =1年8カ月17日 |
| 10秒3 | 1935.06.09~1964.06.14 | =29年0カ月5日 |
| 10秒1 | 1964.06.14~ |
・1975年から電動計時を公認。1984年に過去に遡及して公認。1993年から電動計時のみを日本記録として公認。
<電動計時>
| 10秒3台 | 1968.10.14~1988.09.11 | =19年10カ月28日 |
|---|---|---|
| 10秒2台 | 1988.09.11~1993.10.26 | =5年1カ月15日 |
| 10秒1台 | 1993.10.26~1997.07.02 | =3年8カ月6日 |
| 10秒0台 | 1997.07.02~2017.09.09 | =20年2カ月7日 |
| 9秒9台 | 2017.09.09~ | =8年9カ月経過中 |
同じ「0秒1」を短縮するにも僅かの期間しか要しなかったこともあれば、世界記録では、手動計時時代の10秒2や、電動計時になってからの9秒9台は20年以上も続いた。また、日本記録では、手動計時の10秒3が29年、電動計時の10秒3台も20年近くも続き、10秒0台も20年以上続いた。
手動計時の10秒3は吉岡隆徳(たかよし)さんが、1935年6月15日に明治神宮競技場(のちの国立競技場)で行われたフィリピンとの対抗戦で走ったもので、当時の世界タイ記録でもあった。男子100mの世界記録保持者となった日本人は吉岡さんしかおらず「暁の超特急」と謳われた。
吉岡さんは、1932年ロサンゼルス五輪で6位に入賞している(当時のファイナリストは6人)。
五輪のみならず、83年から行われるようになった世界選手権も含めた世界大会の100mで入賞した唯一の日本人だったが、2022年オレゴン世界選手権でサニブラウンが吉岡さん以来90年ぶりの世界のファイナリスト(7位入賞)となった。
サニブラウンは翌23年ブダペスト世界選手権でもファイナルに進み6位入賞。
世界大会の100mで複数回入賞した初の日本人となった。
このところの日本選手権は「誰が勝つか」ということとともに、その記録にも毎回、大きな注目が集まる。
日本選手権の男子100mでの「日本新記録」については、「(4)日本選手権・決勝での「着順別最高記録」(2025年まで)」の最後に記してあるので参照していただきたい。
桐生が17年9月9日に日本人初の9秒台(9秒98)をマークした時の話やデータ分析、あるいは山縣が現日本記録9秒95を21年6月6日にマークした時の話やデータ分析など、記録と数字の視点から「超マニアックな話題」を日本陸連HPに書いているので、興味のある方は、どうぞご覧くださいませ。
桐生の9秒98に関する話(8回連載)
↓ ↓ ↓
記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話”
▼第1回「世界記録と日本記録の進歩は?」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11324/
▼第2回「桐生選手のトップスピードは時速42.0㎞」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11327/
▼第3回「桐生選手のピッチ、ストライドの年別の変化/日本歴代上位選手とのピッチ・ストライドの比較」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11337/
▼第4回「「初9秒台」の以前とその後」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11338/
▼第5回「世界の9秒台選手の特徴」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11367/
▼第6回「「9秒台」の時の「風速」」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11366/
▼第7回「桐生選手に続く日本人選手の「9秒台」の可能性」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11368/
▼第8回「五輪&世界選手権の「ファイナリスト」への条件」
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11369/
山縣の9秒95に関する話(2021年日本選手権「記録と数字で……」の番外編)
↓ ↓ ↓
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15003/
【記録と数字で楽しむ第110回日本選手権】男子100m記事一覧
▼(1)自己ベスト9秒9台3名+10秒0台6名のハイレベルhttps://www.jaaf.or.jp/news/article/23468/
▼(2)2012年以降の連覇は坂井隆一郎のみ
https://www.jaaf.or.jp/news/article/23469/
▼(3)自己ベスト10秒09以内の現役11選手と22&23&24&25年ファイナリストの日本選手権での成績
https://www.jaaf.or.jp/news/article/23470/
▼(4)日本選手権・決勝での「着順別最高記録」(2025年まで)
https://www.jaaf.or.jp/news/article/23471/
▼(5)世界記録と日本記録のお話。日本選手権での日本新は過去7回
https://www.jaaf.or.jp/news/article/23472/
▼(6)番外編/9秒95の日本新をデータから分析
https://www.jaaf.or.jp/news/article/23473/
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
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https://www.jaaf.or.jp/jch/110/ticket/
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