▲写真 2022年の富士山マラソンにて
陸上の大会はたくさんの「縁の下の力持ち」によって支えられています。今回は株式会社アールビーズの小原延之さんに「タイム計測」について聞きました。ロードレースでは数百人規模の大会から、数千人、なかには1万人以上が走る大規模な大会もあります。それだけの大人数の記録や順位を正確に計測するには、大変な準備が必要。いったいどのように計測しているのでしょうか?
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まずは準備が大事!計測の舞台裏
計測のお仕事に携わる小原さんは、自身も学生時代はもちろん、実業団選手として長距離に打ち込んできました。「元々陸上をやっていたので、将来的に陸上関係の仕事につきたいと思っていました」と、やってきた競技経験が生きるお仕事に就かれました。大会の計測をするためにはまず選手のエントリーから仕事が始まります。
「まずは大会の参加者募集をし、エントリーを募ります。参加者データがかたまったら、ナンバーを割り振り、アスリートビブスなどのデータを作成していきます。データも、大会によって受付番号順なのか、記録順なのかで変わってきますから、複雑な作業になります」
次に「アスリートビブスを社内で作成し、賞状、完走証なども準備していきます」と小原さん。
そして、「大会に向けて計測システムに選手情報を取り込んでいきます」と準備の流れを説明してくれました。
記録計測に欠かせないチップの種類もさまざまです。胸に付けるタイプ、シューズに付けるタイプ、返却するものと返却しなくてもいい大会専用のオリジナルタグもあるそうです。
「計測マットを敷く場所はロケハン(下見)を行い、計測するポイントを直接確認します。マンホールが近くにあると計測マットの感度が落ちてしまうことがあるので、電波障害にならないようにマンホールが近くにないかなどを確認します。特に新しい大会やコース変更があった場合は、必ず確認をしますね」
天気予報は事前にチェックしていますが、曇り予報なのにゲリラ豪雨に見舞われることも。「機材が濡れてはいけないので養生します。計測するポイントで雨の時は機材をカバーできる大きなビニール袋、逆に暑い時は日除けを準備したりします」。
万が一、機械トラブルなどで測れない可能性も想定して、動画撮影をしてバックアップしているそうです。計測チップは100分の1秒まで計測していて、ロードの場合は繰り上げて1秒単位になるのですが、同タイムの場合もしっかり計測することができます。まれにシューズにチップを付ける場合、胸より先に足が前に出て正確な順位がわかりにくい場合(陸上のルールでは胸が前の方が先着)は、動画で判定をすることもあるそうです。
「当日の朝には現地で、必ず最終チェックも行っています。計測データを吸い上げる機材との相性、感度、チップの反応などをテストします。機械なので何があるかわからないですので」と小原さん。コースの状況、気象コンディション、不測の事態の想定など、レースが始まるまでにさまざまなことに対応できる準備。細心の注意を払い、念入りに確認したうえでランナーたちの記録を計測しているんですね!
大会が終わってからも、小原さんたちのお仕事は続きます。「現場で使用した機材のチェックをして片づけ。主催者に大会結果のデータ(リザルト)を作ってお渡しし、日本陸連公認大会の場合は陸協さんにリザルトを配布します。また、ランネットに参加者全員の結果やWEB完走証を作成して掲載アップしたり、大会によっては完走証を発送したりします」。大会終了後もやることがたくさんです!
▲大迫傑(Nike)が大会会長を務めたThe Fst in Fukuoka2022での記録室にて
夜明け前から!? 計測の1日
計測の1日は長丁場。朝も早いです。「例えば福岡マラソン(8時10分スタート)では、スタート地点で計測する係は朝4時に出発。後半地点の係でも5時前には出発します。記録全体を統括する記録室担当は5時半に出発して、6時くらいから準備に入ります。担当する計測地点によって、先頭が来る時間、機材撤収の時間などが変わってきますね。ウルトラマラソン等の距離の長いものの場合はさらに長く、例えばサロマ湖ウルトラマラソンの場合は、まだ真夜中の午前2時半に宿を出発。最後尾の選手が通過してから全地点で使った機材を回収するので、終了は20時頃でした。柴又ウルトラマラソンでは終わるのが日付が変わる深夜0時前後になります」。それだけの仕事をこなすためには、チームワークが大切です。どのように仕事の割り振りをしているのかというと「大会ごとに配置されるメイン担当が記録室に入り、そこで各地点からの機材の設置状況、先頭、最後尾の通過状況などの情報を集約します。今、何km地点で選手が何名通過したかがわかるような、クラウドでデータ管理するシステムを記録室で見ているのです」。
最後に、小原さんにとってお仕事のやりがいについて聞きました。
「1つの大会が成功すること、無事に終わった時が一番うれしいです。事前の準備は大変で、早い時には半年前から動いていますし、大会1〜2ヵ月前はより大変になってきますが、主催者とよりよいものを作っていくという過程にもやりがいを感じます!」
大会で参加者が楽しそうに走っている姿を見ると、うれしい気持ちになるそうです。
選手のみなさんの挑戦の裏側で、記録計測のみなさんも現状打破されています!
>>インタビューVol.13(PDF版)はこちら
■小原延之さん
1991年11月18日生まれ。3歳上の兄の影響で小学4年生から走り始め、中学、高校、大学で陸上部に所属。専修大学では4年時(2014年)に箱根駅伝9区に出走した。大学卒業後はJFEスチールに所属し、2017年の全日本実業団対抗駅伝では1区を務めている。2018年に株式会社アールビーズに入社し、計測業務に従事している。
■M高史(えむたかし)さん
1984年生まれ。中学、高校と陸上部で長距離。駒澤大学では1年の冬にマネージャーに転向し、3、4年次は主務を務める。
大学卒業後、福祉のお仕事(知的障がい者施設の生活支援員)を経て、2011年12月より「ものまねアスリート芸人」に転身。
川内優輝選手のモノマネで話題となり、マラソン大会のゲストランナーやMC、部活訪問など全国各地で現状打破している。
海外メディア出演、メディア競技会の実況、執筆活動、ラジオ配信、講演など、活動は多岐にわたる。
~月刊陸上競技1月号(12月14日発売)掲載~
「陸ジョブナビ」アーカイブ(2022年1月号~12月号)
Vol.1 「陸上って楽しい! おもしろい!」と思ってもらえるような競技会に!~競技場アナウンサー編~Vol.2 トラック競技の着順判定や正式タイムの計測を行う~写真判定編~
Vol.3 ランナーの一番近くで安全・安心なマラソン大会を実現!~大会運営編~
Vol.4 競歩の歩形をジャッジする!~競歩審判員(JRWJ)編~
Vol.5 カッコイイ陸上競技に!競技会を魅せる!~イベントプレゼンテーション編~
Vol.6 選手が出場して良かったと思える大会に!報道メディアの方々をサポート~報道編~
Vol.7 選手の声を商品に生かす!選手のパフォーマンスを支える制作の裏側をご紹介!~ウエア制作編~
Vol.8 選手の晴れ舞台を盛り上げる!~表彰編~
Vol.9 トレーナー~選手のパフォーマンス発揮を支える!~トレーナー編~
Vol.10 ロードレースの距離はどうやって測るの?~コース計測編~
Vol.11 オン・ユア・マークの裏側をご紹介!~スターター編~
Vol.12 試合探しから主催者との交渉まで世界に挑む選手たちをサポート!~世界陸連公認代理人(AR)編~
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