日本陸上競技連盟公式サイト

９月13日～21日に開催される世界選手権の代表選手選考会を兼ねて行われる「第109回日本選手権」。その舞台は、同じ国立競技場だ。日本選手権が国立競技場で行われるのは、2005年の第89回大会以来20年ぶり。新しい国立競技場ではもちろん初めての開催だ。

国立競技場のスタンドでの現地観戦、あるいはテレビやライブ配信での観戦のお供に、「記録と数字で楽しむ第109回日本選手権」をお届けしよう。
・記録やデータは、エントリー締め切り時の６月12日判明分
・現役選手の敬称は略

テレビの中継予定は以下のとおり（ライブ配信の予定は、後日発表）
【NHK BS・総合】
・第１日：７月４日（金）
BS　18:30～19:30／総合 19:30～20:42
・第２日：７月５日（土）
総合　16:30～18:43　※17:59～18:05はサブチャンネル
・第３日：７月６日（日）
総合　16:30～18:43　※17:59～18:05はサブチャンネル

◆「日本新記録」のアナウンスを聞けるかもしれない種目は？？

今回のエントリーメンバーのこのところの状況からして、「日本新記録」のアナウンスを聞くことができるかもしれない種目がかなりたくさんある。
男子では、100ｍ、200ｍ、400ｍ、800ｍ、1500ｍ、5000ｍ、110ｍＨ、400ｍＨ、走幅跳、砲丸投、円盤投あたり。
女子は、400ｍ、800ｍ、100ｍＨ、3000ｍＳＣ、棒高跳、三段跳、円盤投、やり投といったところ。

2025年になってから東京世界選手権で実施される種目で日本新記録がマークされているのは、男子は20km競歩と円盤投。女子は20km競歩のみで競技場内の種目は「なし」であるが、日本国籍を申請中だったフロレス・アリエ（日体大３年）が、400ｍで日本記録（51秒75）を上回る51秒71を５月３日の静岡国際でマークしている。
また、2024年に日本新がマークされたのは、男子は、800ｍ、35km競歩、砲丸投の３種目。女子は、800ｍ、マラソン、100ｍＨ、円盤投、ハンマー投の５種目。ロード以外の６種目は今回の国立競技場での「日本新」のアナウンスに期待がかかる。

「風」の関係する短距離種目は当日の国立競技場に2.0ｍに近い「絶好の追風」が吹くかどうかが「日本新誕生」のポイントになりそうだ。

水平方向の跳躍競技（走幅跳・三段跳）は、短距離種目のように「向風」の中で実施されることはほとんどないので、「風」の心配はあまりしなくてもいいだろう。短距離と同じく「2.0ｍに限りなく近い追風」が吹いてくれると新記録誕生の可能性が高まる。

400ｍ＆400ｍＨのワンラップ種目も風が味方してくれると「ものすごいタイム」が生まれる可能性がある。
国立競技場のように屋根のついた大きな観客席がトラックをグルリと取り囲んでいるような競技場では、屋根の下の観客席を風が回って「トラック１周がすべて追風」になるようなケースがある。
そういうふうになることが多い競技場は、筆者の印象ではあるが、デンカビッグスワンスタジアム（新潟市）、横浜国際総合競技場（日産スタジアム＝横浜市）、小笠山総合運動公園（エコパ＝袋井市）、ヤンマースタジアム長居（大阪市）などである。旧国立競技場は午前中はホームストレートが追風で１周すべてが追風になるケースもあったが、決勝が行われる夕方頃になると風向きが変わって１周すべてが向風ということもよくあった。
トラックを周回する中長距離種目ももちろん「１周すべて追風」になればその恩恵は非常に大きい。ただし日本選手権では、国内外でのグランプリシリーズなどのようにいいペースで引っ張ってくれる外国人のペースメーカーがいない。「勝負優先」の日本選手権で記録に挑戦するのはなかなか厳しいだろう。
しかし、男子の各種目には日本記録に挑戦できそうなレベルの実力が拮抗した選手が複数いる。それらの選手たちが「日本一」と「世界選手権出場」を目指して競り合う中でハイペースのレースを展開すれば「日本新」の可能性も大いにありそうだ。

上述の「日本新」の可能性がありそうな種目を中心にその見所や世界選手権出場に向けての可能性などを紹介する。
なお、代表選手選考の要項については、
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202412/10_171138.pdf
をご覧いただくとして、今回は「東京開催」ということで、「開催国枠」という特典がある。

参加標準記録やワールドランキング（Road to Tokyo）で日本人がひとりも出場権を得られなかった種目に関しては、「開催国枠」でひとりが出場できるというものだ。

その優先順位と条件は、
①「Road to Tokyo」におけるそれぞれの種目のターゲットナンバーに10を加算した順位以内で最上位にランクしている競技者。
②第109回日本選手権者、かつ、本連盟が定める開催国枠エントリー設定記録を2025年１月１日から８月24日までに満たした競技者。

②については、あまりにもレベルが低い記録でのエントリーを避けるため日本陸連が「開催国枠エントリー設定記録」というものを設けている。日本選手権優勝者でこのエントリー設定記録を８月24日までにクリアしていることが条件だ。具体的な記録は、上記選考要項の最後のページに記載されている。
その設定にあたっては、「派遣設定記録は、参加標準記録とターゲットナンバーをもとに、予選通過が期待できる水準に設定した。ただし、算出した記録が日本記録を上回る種目については、日本新記録を派遣設定記録とした。」というものである。

◆男子100ｍ

・予選／7月4日（金）15:35　7組3着＋3
・準決勝／7月4日（金）20:25　3組2着＋2
・決勝／7月5日（土）18:30



申し込み資格記録が10秒34でターゲットナンバー（出場枠）56名だったが、73名がエントリー。出場できるのは10秒31以内の59名で14名が涙を飲むことになった。
資格記録では９秒96のサニブラウン・アブデル・ハキーム（東レ）が抜け出ているが、2025年シーズンは６月６日の10秒31（+1.1）にとどまっている。
エントリー記録の２位以下は、10秒02栁田大輝（東洋大・４年）、10秒09小池祐貴（住友電工）と続き以下も大混戦。
10秒10、11、12＝２名、13＝２名、14＝５名、15、16＝３名、17、18＝２名。ここまでで21名。３組で行われるであろう準決勝進出の24番目の資格記録が10秒21。６月11日までの2025年シーズンのタイムに限っても10秒06から10秒14の０秒08の間に９名。10秒19以内に16名がひしめいている。スタートでの僅かな出遅れが命取りとなりそうな状況で、ミクロの闘いから誰が飛び出すか？
そして追風に恵まれれば、９秒95の日本記録が４年ぶりに破られるかもしれない。世界選手権参加標準記録は「10秒00」。９秒96で突破済のサニブラウンが３位以内なら代表内定だ。
６月10日現在の「Road to Tokyo」では、ターゲットナンバー48名中の29位に栁田、46位に井上直紀（早大４年）がランクイン。日本人４人目以降も、桐生祥秀（日本生命）、小池が48番目以内に位置している。

◆男子200ｍ

・予備予選／7月5日（土）14:00　3組0着+6
・予選／7月5日（土）16:15　3組2着+2
・決勝／7月6日（日）17:55



３連覇を目指す鵜澤飛羽（ＪＡＬ）に日本人初の「19秒台」の期待がかかる。５月３日の静岡国際の予選で20秒13（+0.8）の自己新で世界選手権参加票記録の20秒16をクリア、同決勝は20秒05（+2.1）。５月31日の韓国・クミでのアジア選手権が20秒12（+0.8）の自己新での２連覇。「機は熟したり」の感がある。
日本記録の20秒03（末續慎吾／ミズノ）は2003年６月７日の日本選手権でのもの。2002年11月25日生まれの鵜澤が、生後６カ月と13日の時にマークされた記録だ。五輪＆世界選手権で行われるトラック競技では、2001年８月10日の男子400ｍＨに続いて古い日本記録である。
鵜澤の他に24年に参加標準記録をクリアする20秒14をマークしている水久保漱至（宮崎県スポ協）も３位以内で内定だ。２人に続く選手は、６月10日現在の「Road to Tokyo」では、ターゲットナンバー48名中の34位に飯塚翔太（ミズノ）。日本人４人目は、48位相当に西裕大（MINT TOKYO）がいる。

◆男子400ｍ

・予備予選／7月4日（金）16:45　3組0着+6
・予選／7月5日（土）14:25　3組2着+2
・決勝／7月6日（日）17:15



高野進さん（当時、東海大教）が1991年６月16日に出した44秒78を佐藤拳太郎（富士通）が2023年８月20日に実に32年２カ月４日ぶりに０秒01更新。
今回のエントリー記録では45秒16から45秒28以内に４名。自己ベストは、44秒77、44秒88、45秒04、45秒28。2024年パリ五輪1600ｍＲ６位入賞の１・３・４走が顔を揃え競り合いの中から日本新が生まれるかも？「日本新」すなわち世界選手権参加標準44秒85のクリアである。
６月10日現在の「Road to Tokyo」では、ターゲットナンバー48名中の36位に佐藤風雅（ミズノ）、43位に佐藤拳がランクイン。ランキングではなく「日本新での標準突破」で決めてもらいたい。

◆男子800ｍ

・予選／7月4日（金）18:45　3組2着+2
・決勝／7月5日（土）16:45



滋賀学園高校３年生で日本選手権を制し８月のインターハイでは１分44秒80の日本新をマークした落合晃（駒大・１年）が連覇と１分44秒50の世界選手権参加標準記録に挑む。実現できれば、「日本新」の誕生だ。
落合の前に１分45秒75の日本記録を２人で持っていた川元奨（日大。現在は、スズキ）と源裕貴（環太平洋大。現在は、ＮＴＮ）も出場し、新旧日本記録保持者３人が揃う。
2019年の相洋高校３年時に日本チャンピオンとなったクレイ・アーロン竜波（ペンシルベニア州立大）とアジア選手権で落合に先着した石井優吉（ペンシルベニア州立大）もアメリカから参戦。日本インカレのラスト200ｍを13秒０・13秒２でカバーして１年生優勝を果たした山鹿快琉（育英大）にも勢いがありそうだ。
400ｍを51秒台前半あたりで通過し、２周目を53秒を切るか切らないかでまとめられれば、世界選手権参加標準クリアの日本新となる。６月10日現在の「Road to Tokyo」では、ターゲットナンバー56名中の46位に落合のみがランクインしている。

◆男子1500ｍ

・予選／7月5日（土）15:05　2組6着
・決勝／7月6日（日）17:00



世界選手権参加標準記録は３分33秒00で日本記録の３分35秒42を大きく上回る。が、６月10日現在の「Road to Tokyo」ではターゲットナンバー56名の60位に森田佳祐（SUBARU）、61位に荒井七海（Honda）がつけている。エントリー記録で３分35秒台、36秒台、37秒台が１名ずつ。38秒台４名に39秒台７名と日本記録に挑戦できそうなメンバーは揃っている。日本記録を更新するタイムをたたき出して、ターゲットナンバー内に入っていきたいところだ。
ひとりもターゲットナンバー内に入れずとも、その順位が66位以内の場合の最上位者は出場権を得られる。さらに、最上位者の順位が、67位以下の場合は、日本選手権優勝勝者で８月24日までに「エントリー設定記録」の「３分35秒65」をクリアできれば世界選手権に出場できる。

◆男子5000ｍ

・予選／7月4日（金）17:10　3組6着
・決勝／7月6日（日）18:05



日本記録に１秒05と迫る13分09秒45を2024年１月に室内でマークした佐藤圭汰（駒大・４年）を筆頭に資格記録13分17秒台までが６名。13分30秒以内が32名もいる。申し込み資格記録は13分38秒00でターゲットナンバーの設定がなく90名以上がエントリー。
初日（７月４日）に予選、最終日（６日）に決勝となる。記録を狙うには厳しい日程だが、６月10日時点での「Road to Tokyo」ではターゲットナンバー42名のところ、森凪也（Honda）が32位、佐藤が39位に位置している。参加標準記録の13分01秒00は日本記録を７秒40も上回るが、ターゲットナンバー内にとどまるために日本記録を破るようなタイムをたたき出して、ポイントを少しでも上乗せして順位をアップさせておきたいところだ。

◆男子110ｍハードル

・予選／7月4日（金）15:05　4組3着+4
・準決勝／7月4日（金）19:35　2組3着+2
・決勝／7月5日（土）18:05



2024年パリ五輪で５位に入賞し、2025年４月に世界選手権参加標準記録（13秒27）をクリアして代表に内定している村竹ラシッド（ＪＡＬ）は９月の本番に集中するため、今回の日本選手権にはエントリーしていない。
村竹とともに日本記録（13秒04）を持つ泉谷駿介（住友電工）を筆頭に、世界選手権参加標準記録をクリアしているのが野本周成（愛媛競技力本部／13秒25）、阿部竜希（順大４年／13秒25）、泉谷（13秒27）とレベルが高い。２人目、３人目の代表切符を争う中で日本記録更新の可能性もある。走幅跳との二刀流で挑む泉谷は、初日が110ｍＨの予選と準決勝、２日目が決勝。ここで勢いをつけて、最終日が走幅跳というスケジュールである。

◆男子400ｍハードル

・予選／7月5日（土）17:00　3組2着+2
・決勝／7月6日（日）17:30



2024年の日本選手権を47秒99で制した豊田兼（トヨタ自動車）が万全ならば、為末大さん（当時、法大４年）が2001年エドモントン世界選手権で銅メダルを獲得した時に出した日本記録47秒89を24年ぶりに破れるかもしれない。
24年８月１日からの有効期限発効後に世界選手権参加標準記録（48秒50）を唯一クリア（48秒46）している井之上駿太（富士通）を含め48秒台までの参加資格の７名が豊田を追う。そんなレースの中でどんな記録が生まれるか？
６月10日現在の「Road to Tokyo」では、ターゲットナンバー40名中の29位に小川大輝（東洋大・４年）がランクイン。髙橋遼将（法大・４年）があとひとつの41位だ。なお、豊田は、参加標準記録が有効となった24年８月１日以降にランキングポイント算出に必要な「５レース」を満たしていないためランキングには掲載されていない。

◆男子3000ｍ障害物

・決勝／7月4日（金）19:10



出場すれば、独走でも自身の日本記録８分09秒91を破れるかもしれない三浦龍司（SUBARU）は９月の本番に集中するためエントリーせず。８分20秒台がベストの新家裕太郎（愛三工業）と青木涼真（Honda）は、８分15秒00の世界選手権参加標準記録がターゲットだ。６月10日現在の「Road to Tokyo」では、ターゲットナンバー36名中の28位に新家、青木はランク外の41位相当で順位を上げる必要がある。
話は変わるが、国立競技場は日本国内では珍しく水濠が内側にある。その場合、通常は１周390ｍだが、国立は「396.25ｍ」。障害の間は「79ｍ」だが、ホームストレートの障害とフィニッシュラインを越えた最初の障害の間のみ「80.25ｍ」。通常のハードル種目と違って、競技場の違いで障害間の距離が異なるのは、珍しいというか、陸上競技では唯一の種目である。日本の競技場は、旧国立もそうだったようにほとんどが「直線80ｍ」の規格。だが、新国立競技場は「直線84.39m」。これは、曲走路の半径を「36.50m」にしている海外の競技場に多い規格にしたためである。と、かなりマニアックなお話でございました。


現地での観戦では、トラック種目に目がいきがちだが、フィールドにも気をつけていなければ「日本新記録誕生の瞬間」を見逃して口惜しい思いをしてしまうこともある。場内アナウンスで、トラックのレース中にも「砲丸投にご注目を」とか「走幅跳は○○君」とか簡潔に紹介してくれることも多いので、どの競技がどの場所で行われているのかを事前に把握しておくことが重要だ。



野口純正（国際陸上競技統計者協会［ATFS］会員）
写真提供：フォート・キシモト、アフロスポーツ

【チケット販売中】第109回日本選手権

日程：7月4日（金）～6日（日）
会場：国立競技場（東京）
種目：男子17種目、女子17種目
時間：https://www.jaaf.or.jp/jch/109/timetable/
・1日目（7月4日）：競技開始 14時頃／競技終了21時頃
・2日目（7月5日）：競技開始 11時30分頃／競技終了19時頃
・3日目（7月6日）：競技開始 14時頃／競技終了19時頃

▼チケット詳細はこちら
　https://www.jaaf.or.jp/jch/109/ticket/
▼大会情報はこちら
　https://www.jaaf.or.jp/jch/109/

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申込方法：https://www.jaaf.or.jp/jch/109/ticket/

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2025年、日本選手権は国立競技場で開催されます。
このプロジェクトは、その会場を“満員”にし、
選手と観客が一体となって熱く盛り上がる空間をつくるためのキャンペーンです。

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★特設サイト (https://www.jaaf.or.jp/2025/ns/) では★
➀「国立満員リレー」：選手・関係者・ファンのX（旧Twitter）投稿がつながる応援企画
➁「みんなの一歩」：賛同者数が可視化されるカウンター
（※回答いただいたGoogleフォームで人数がカウントされます！）