2022.03.11(金)選手

【記録と数字で楽しむJMCシリーズ】国内最終戦「名古屋ウィメンズマラソン2022」国内外出場選手のみどころと記録の振り返り



・文中敬称略。
・所属は当時のもの。

JMCシリーズ1・第1期・国内最終戦

3月13日に行われる「名古屋ウィメンズマラソン2022」が、「JMC(ジャパンマラソンチャンピオンシップシリーズ)」の「シーズンⅠ・第1期」の男子を含めて国内での最後のレースとなる。

以下に、テレビやラジオでの観戦のお供に、いくつかの視点からのデータを紹介する。
また、レース当日には日本陸連のJMCシリーズTwitter(https://twitter.com/jmc_series)でも情報発信される予定である。

【テレビ】

9時00分~11時50分 フジテレビ系 全国ネット
解説:有森裕子、高橋尚子、野口みずき、福士加代子、金哲彦
実況:森脇 淳 、加藤 晃

【ラジオ】

9時00分~12時00分 東海ラジオ
解説:長沼祥吾 (ユニクロ女子陸上競技部 監督)
松尾和美 (元 天満屋陸上部ランナー、2001年名古屋国際女子マラソン優勝)


「招待選手」「ペースメーカー」「一般参加選手/エリートの部」の出場予定選手は下記の通り。

21年はコロナのため日本人選手のみのレースだったが、今回は2時間17分台の2人を含む3人が海外から参戦予定である。

なお、一般参加選手の自己最高記録については、大会主催者の発表資料には記載されていなかったので、筆者の調査によったため誤りがあるかもしれないことをお断りしておく。また、参加資格記録(2020年3月1日~22年2月3日の記録)ではなく自己最高記録なので5年以上前の記録が掲載されている選手もいる。

<招待選手>

No.氏名生年月日年齢登録陸協所属自己最高記録
1安藤 友香1994/3/1627京都ワコール2.21.36.(17名古屋2位)
2川内 理江1995/3/1526徳島大塚製薬2.25.35.(22大阪女子7位)
3田中 華絵1990/2/1232東京第一生命グループ2.26.19.(17大阪女子3位)
4和久 夢来1995/7/126千葉ユニバーサルエンターテインメント2.26.30.(21名古屋4位)
5細田 あい1995/11/2726大阪エディオン2.26.34.(20名古屋8位)
6ルース・チェプンゲティッチ1994/8/827KENケニア2.17.08.(19ドバイ1位)
7ロナチェムタイ・サルピーター1988/12/1233ISRイスラエル2.17.45.(20東京1位)
8シニード・ダイバー1977/2/1744AUSオーストラリア2.24.11.(19ロンドン7位)

<ペースメーカー>

No.氏名生年月日年齢登録陸協所属自己最高記録
P1上杉 真穂1995/8/1626千葉スターツ2.22.29. (22大阪女子2位)
P2吉川 侑美1990/10/3131東京ユニクロ1.10.07. (21山陽女子ロード5位)
P3ステラ・バルソシオ1993/3/1228KENケニア2.22.08. (21ロッテルダム1位)
P4シャーロット・パデュー1991/6/1030GBRイギリス2.23.26. (21ロンドン10位)
P5イソベル・バットドイル1995/9/1426AUSオーストラリア1.10.16.(21メルボルンハーフ1位)
P6オマレ・ドルフィンニャボケ2001/7/120東京/KENユー・エス・イー1.07.56.(22実業団ハーフ1位)

<一般参加選手/エリートの部>

No.氏名年齢登録陸協所属自己最高記録
101岩出 玲亜27千葉千葉陸協2.23.52.(19名古屋5位)
102池田 千晴28茨城日 立2.27.39.(21名古屋9位)
103渡邉 桃子23岡山天満屋1.10.43.(21山陽女子ハーフ9位)
104池満 綾乃30鹿児島鹿児島銀行2.26.07.(19名古屋12位)
105福良 郁美24徳島大塚製薬2.28.31.(21名古屋10位)
106大森 菜月27大阪ダイハツ2.28.38.(21名古屋11位)
107竹本香奈子25大阪ダイハツ2.28.40.(21名古屋12位)
108坪倉 琴美26京都ワコール1.11.02.(21山陽女子ロード10位)
109足立 由真25鹿児島京セラ2.29.00.(21名古屋13位。1.10.21./22大阪ハーフ1位)
110枚田 茉優21京都ワコール1.11.15.(21実業団ハーフ18位)
111竹山 楓菜26大阪ダイハツ1.09.12.(20実業団ハーフ1位)
112エロイーズ・ウェリングズ39AUSオーストラリア2.29.19.(21メルボルン2位)
113松田 杏奈27三重デンソー2.29.52.(21大阪女8位。1.10.29./22実業団ハーフ10位)
114福居 紗希25東京三井住友海上2.30.31.(21名古屋15位)
115山口  遥34東京AC・KITA2.26.35.(20大阪女子7位)
116中野 円花30大阪岩谷産業2.27.39.(19大阪女子4位)
117佐藤 奈々32千葉スターツ2.33.42.(21防府2位。1.11.08/22実業団ハーフ11位)
118儀藤 優花21熊本肥後銀行2.35.04.(21名古屋22位)
119下門 美春31埼玉埼玉医科大学G2.27.54.(17名古屋6位)
120藤澤  舞47北海道札幌エクセルAC2.35.52.(21金沢1位)
121大西ひかり21東京JP日本郵政G1.11.48.(21実業団ハーフ24位)
122澤畠 朋美29埼玉埼玉陸協2.35.59.(18さいたま1位)東京との連戦
123清水 美穂31北海道ホクレン2.37.43.(20名古屋25年。1.09.41./16実業団ハーフ1位)
124清田 真央28静岡スズキ2.23.47.(17名古屋3位)
125野村 沙世32東京ユニクロ2.32.29.(14大阪女子9位)
126菊地 優子29北海道ホクレン1.11.32.(15山陽女子ロード12位)
127森田 歩実25滋賀センコー1.13.29.(22大阪ハーフ15位)
128大井 千鶴28奈良NARA-Xアスリーツ2.41.26.(21大阪女子20位)
129髙野 美幸27埼玉埼玉医科大学G2.43.25.(21名古屋31位)
130大塚英梨子29大分キヤノン2.43.35.(21名古屋32位)
131大樽 瑞葉25長崎メモリード2.40.41.(17神戸4位)
132鈴木 優花22秋田大東文化大1.11.27.(19松江ハーフ1位)
133合田なぎさ35東京東京陸協2.44.30.(22大阪女子25位)
134近藤  瞳32東京東京陸協2.44.38.(22大阪女子29位)
135中村 瑠花28愛知Run up2.38.32.(18名古屋28位)
136森田 光希27東京東京陸協2.45.17.(22大阪女子30位)
137西田 留衣27熊本肥後銀行2.46.02.(21大阪女子27位)
138兼松 藍子41埼玉TEAM R×L2.46.04.(22大阪女子32位)
139岩村 聖華37熊本熊本陸協2.33.15.(10大阪女子10位)
140好士理恵子42東京えもと塾2.47.27.(21防府6位)
141青山 由佳35神奈川相模原市役所RC2.47.22.(13東京22位)
142谷  舞子36兵庫尼崎ナイトランナーズ2.45.18.(16東京24位)
143太田 琴菜26東京JP日本郵政G32.42.63(21関西実業団トライアル)
144片貝 洋美30東京三井住友海上1.12.00(22実業団ハーフ19位)
145山本明日香24大阪エディオン2.34.26.(18東京14位)
146山ノ内みなみ29鹿児島ラフィネ2.46.45.(16勝田3位)
147西川 真由24千葉スターツ1.15.14.(22実業団ハーフ49位)
148田中 吉美33大阪走健塾2.49.10.(22大阪女子39位)
149佐橋 京子44愛知庄内RT2.49.21.(22大阪女子40位)
150野永 美咲26東京Athlete AC2.49.25.(21名古屋37位)
151安里真梨子34沖縄らんさぽ2.43.01.(10大阪女子16位)
152楠瀬 祐子42東京東京陸協2.49.42.(18名古屋41位)
153北谷友梨佳25愛知愛知県庁クラブ2.49.48.(22大阪女子41位)
154鎌田 沙樹42大阪大阪陸協2.48.37.(20大阪女子47位)


2時間17分台の2人の3度目の対決は?

海外招待選手では、世界歴代4位の2時間17分08秒のルース・チェプゲティッチ(ケニア)と同8位・2時間17分45秒のロナチェムタイ・サルピーター(イスラエル)の力が抜きん出ている。

チェプゲティッチは、19年ドーハ世界選手権の優勝者。
東京五輪では蒸し暑さにやられて途中棄権に終わったが、同じ日本の名古屋でのリベンジに燃えていることだろう。今回が9回目のマラソン。過去の成績は以下の通りだ。

【ルース・チェプゲティッチのマラソン歴】

12017.11.12イスタンブール1)2.22.36.
22018.04.08パ リ2)2.22.59.
32018.11.11イスタンブール1)2.18.35.
42019.01.25ドバイ1)2.17.08.
52019.09.28ドーハ世界選手権1)2.32.43.
62020.10.04ロンドン3)2.22.05.
72021.08.07東京五輪途中棄権
82021.10.10シカゴ1)2.22.31.

8戦して4勝、勝率50%。
94年8月8日生まれの27歳。日本人選手と変わらない体格である。陸上と取り組み始めた当初からロードのみをその舞台としてきた。
トラックの記録は見つけられなかった。ロードの年次ベストは、

【ルース・チェプゲティッチの年次ベスト】

10kmハーフマラソン
16--1.14.13.--
17--1.06.19.2.22.36.
1833.09.1.07.02.2.18.35.
1931.12.1.05.29.2.17.08.
2031.50.1.05.06.2.22.05.
21--1.04.02.=世界新(当時)2.22.31.

21年4月4日のイスタンブールでのハーフの世界新は、それまでの記録を29秒更新した。半年後の10月24日のバレンシアハーフで1時間02分52秒と1時間03分51秒が出て歴代3位に下がったが、6カ月と20日間は「世界記録保持者」だった。

マラソンの自己ベスト(2時間17分08秒)の時は、

5km16.16./16.16.
10km32.23./16.07.
15km48.30./16.07.
20km1.04.35./16.05.
Half1.08.10.
25km1.20.50./16.15.
30km1.37.16./16.26.
35km1.54.00./16.44.
40km2.10.09./16.09.
Finish2.17.08./ 6.59.
前後半68.10.+68.58.
前後半差▽0.48.

で、25km以降にペースが落ちかけたが、35km以降に16分09秒に盛り返し、さらにラスト2.195kmは6分59秒(5km換算15分55秒)とアップし、力のあるところを示した。

もうひとりのサルピーターは、88年12月12日生まれの33歳。165cm・52kgとチェプゲティッチよりもひとまわり大きい。ケニア出身だが、16年3月16日にイスラエルに国籍変更した。

3月6日の東京マラソンを2時間16分02秒で走った世界記録(2時間14分04秒)保持者のブリジット・コスゲイ(ケニア)に破られたが、19年の東京でマークした2時間17分45秒は、日本国内最高記録だった。

今回が13回目のマラソン。

【ロナチェムタイ・サルピーターのマラソン歴】

12016.02.27テルアビブ 1)2.40.17.
22016.08.14リオ五輪途中棄権
32016.09.25ベルリン11)2.40.16.
42017.08.06ロンドン世界選手権41)2.40.22.
52018.09.25フィレンツェ1)2.24.17.
62019.05.05プラハ1)2.19.46.
72019.09.28ドーハ世界選手権途中棄権
82019.10.27フランクフルト4)2.23.11.
92020.03.01東 京1)2.17.45.
102021.03.14ハフラ・ネイチャー・リザーブ1)2.22.37.
112021.08.07東京五輪66)2.48.31.
122021.10.03ロンドン5)2.18.54.

暑い時期に行われる五輪と世界選手権では本来の実力を出せずに終わっているが、春秋冬のレースでは「サブ20」を3回マークしている。

チェプゲティッチとは違って当初はトラックを中心に走っていて、16年からマラソンにも参戦してきた。

【ロナチェムタイ・サルピーターの年次ベスト】

800m1500m3000m5000m10000mハーフマラソン
12------------35.37.59------
132.10.204.30.549.26.4416.23.64---------
14------------35.12.991.19.09.---
15---4.28.73---16.41.3036.05.01------
16---------16.27.2035.01.331.14.11.2.40.16.
17---4.23.949.26.4416.12.5132.43.891.12.48.2.40.22.
18---4.11.698.42.8815.17.8131.33.031.08.58.2.24.17.
19---4.20.518.56.5514.59.0231.15.781.06.09.2.19.46.
202.06.634.15.729.06.3815.29.43---1.08.31.2.17.45.
21---------------1.07.09.2.18.54.

16年までは日本の100傑以下のレベル。29歳の17年に日本100傑に入るくらいとなり、18年に何があったのかはわからないが、各種目とも大ブレイクした。

20年の東京マラソンでその時点での世界歴代6位となる2時間17分45秒にまで伸ばした。
その時のスプリットは、

5km16.27./16.27.
10km32.49./16.22.
15km49.17./16.28.
20km1.05.38./16.21.
Half1.09.16.
25km1.22.00./16.22.
30km1.38.25./16.25.
35km1.54.19./15.54.
40km2.10.29./16.10.
Finish2.17.45./ 7.16.
前後半69.16.+68.29.
前後半差△0.47.

30~35kmを15分台に上げて「2時間17分台」に乗せた。
チェプゲティッチとは19年ドーハ世界選手権と東京五輪で対戦し1勝1敗。3度目の今回はどうなるか?

ペースメーカーの設定によっては、両者の競り合いによって1週間前の東京マラソンでのコスゲイの2時間16分02秒に迫るような記録が生まれる可能性もありそうだ。


初マラソン日本最高記録保持者・安藤の7回目のレースは?

日本人選手では、両腕を下げた独特のフォームで走る安藤友香(ワコール)がレースの中心になりそうだ。
94年3月16日生まれの27歳。22歳だった5年前の名古屋がマラソンデビュー戦で2時間21分36秒の初マラソン日本最高で2位となり、坂本直子(天満屋)が03年にマークした同最高記録を14年ぶりに破った。

【安藤友香のマラソン歴】

12017.03.12名古屋2)2.21.36.=初マラソン日本最高
22017.08.06ロンドン世界選手権17)2.31.31.
32018.01.28大阪女子3)2.27.37.
42019.04.28ロンドン13)2.26.47.
52019.09.15MGC8)2.36.29.
62020.03.08名古屋2)2.22.41.

上述の通り、初レースでの自己ベストを更新できていないが、上り調子のようである。
名古屋に向けてのチェックレースとなった2月13日の全日本実業団ハーフでは気温6~7℃前後の氷雨の中で、1時間08分13秒(3位)で走って1分25秒の自己ベストをマークした。

21年5月の日本選手権10000mでも31分18秒18で19秒53の自己ベストで新谷仁美(積水化学/30分20秒44)についで2位となり東京五輪代表(22位・32分40秒77)になっている。

安藤の10000m31分18秒18は世界陸連の採点表では「1176点」。ハーフの1時間08分13秒は「1190点」。この得点に相当するマラソンのタイムは、「2時間25分41秒」と「2時間24分17秒」だ。

が、しかしである。東京マラソンの新谷についての拙稿でもふれたが、x軸に距離(m)の対数値を、y軸に平均走速度(秒速)をとった片対数グラフから計算するという手法で、安藤の10000mとハーフの記録(平均秒速)からマラソンの記録(平均秒速)を予測すると、その回帰式は、

y=7.419-0.5236 logx

となる。

この式の「x」にマラソンの「42195」を入れて秒速である「y」を求めると「4.997m/s」。
そこからマラソンの記録を計算すると「2時間20分44秒」。女子単独レースの日本記録2時間20分29秒(一山麻緒・ワコール/20年名古屋1位)に迫るタイムだ。

なお、初マラソンで2時間21分36秒で走る前の10000mとハーフのベストは31分58秒71と1時間09分51秒だった。
そこから求めた回帰式は、「y=7.391-0.5450 logx」で、これからマラソンの記録を予測すると「2時間24分24秒」となった。しかし、実際にはそれよりも2分48秒も速い2時間21分36秒で走った。

「数字遊び」に過ぎないのかもしれないが、今回もそれが当てはまるようなら「2時間17分台」が出てもおかしくないということになる。

小難しい「対数」などを用いずに計算すると以下のようになる。
初マラソン(2時間21分36秒)の時、当時の10000mのベスト(31分59秒13)の「4.427倍」のタイムで、ハーフ(1時間09分51秒)の「2.027倍」のタイムで42.195kmを走った。

この倍率を現在の10000mとハーフのベストに当てはめると、「31分13秒18×4.427=2時間18分13秒」と「1時間08分13秒×2.027=2時間18分17秒」になる。野口みずきの日本記録2時間19分12秒を1分近く更新できるタイムとなる。

ただし、この倍率はマラソンを専門とする日本のトップクラスの選手の平均的な値と比較すると「非常に小さい数字」である。平均的な数値は「4.55倍前後」と「2.07倍前後」だ。つまり、安藤の10000mとハーフのタイムは「その時点での本来の力を100%出し切ったものではない」といえるかもしれない。

現在の両種目の安藤のタイムをトップ選手の平均的な値に当てはめてみるとマラソンは、「31分13秒18×4.55=2時間22分03秒」と「1時間08秒13.×2.07=2時間21分13秒」だ。
いずれにしても、今回の名古屋では安藤が自己ベスト(2.21.36.)を5年ぶりに更新し、女子単独レース日本記録(2時間20分29秒)、「サブ20」、そして男女混合レース日本記録(2時間19分12秒)を破ることに期待がかかる。

なお、自己ベスト(2時間21分36秒)とセカンドベスト(2時間22分41秒)はいずれも名古屋でのもの。
安藤にとって「相性のいいコース」でもある。


「サブ30」続出の可能性も……

安藤以外の日本人では、招待選手の川内理江(大塚製薬/2.25.35.)、田中華絵(第一生命グループ/2.26.19.)、和久夢来(ユニバーサルエンターテインメント/2.26.30.)、細田あい(エディオン/2.26.34.)が、自身初の「25分切り」あるいはそれよりも上の五輪や世界選手権でも入賞圏内の「21~23分台」あたりを目指すことになろう。

一般参加選手では、岩出玲亜(千葉陸協/2.23.52.=19年)と19年1月までスズキに所属していた安藤とチームメイトだった清田真央(スズキ/2.23.47.=17年)が「23分台」のベストを持っている。
岩出は、20年8月末で17年6月から所属していたアンダーアーマーを離籍。現在は個人で活動している。今回が15回目のマラソン。直近の22年大阪国際女子では2時間27分14秒(8位)の自己4番目のタイムで18年名古屋(2.28.29./9位)以来、5レースぶりに30分を切っている。

清田は、18年での名古屋(2.28.58./9位)を最後に「30分切り」のレースはないが、1月30日の大阪ハーフでは7年前の自己ベストに1分05秒遅れの1時間11分36秒(4位)で走り30分を切れる力を取り戻してきているようだ。今回が11回目のマラソンとなる。

その他にも、30分切り(26~29分台)のベストを持っている選手が9人。
その中では、19年ドーハ世界選手権代表の池満綾乃(鹿児島銀行/2.26.07.=19年)が「サブ30」を3回。
大森菜月(ダイハツ/2.28.38.=21年)は出場した4レースすべてで「サブ30」。
「市民ランナーの星」ともいえる山口遙(AC・KITA/2.26.35.=20年)は各種の情報を調べてた限りでは、今回が53回目(??)のマラソンとなる。10年のつくばでの初マラソンから11年あまりで50回以上。コロナ前の19年には1年間に9レースに出場している「女性版・川内優輝」ともいえるハイレベルな市民ランナーである。

22年になってのレースで好調そうなのは、1月30日の大阪ハーフで1時間10分21秒(1位)の足立由真(京セラ/2.29.00.=21年)、2月13日の実業団ハーフで1時間10分29秒(10位)の松田杏奈(デンソー/2.29.52.=21年)あたりだ。

これらの選手にとっては、自己ベストの更新とMGC出場権獲得が目標となろう。

また、ハーフで1時間09分12秒~12分00秒のベストを持つ8人と10000m32分台の1人が初マラソンに挑む。
その走力からして、東京マラソンで初チャレンジながら「MGC出場権」をゲットした森田香織(パナソニック/2.27.38.・7位=日本人3位)に続く選手が現れるかもしれない。

市民ランナーの中には、1週間前の「東京マラソンとの連戦」という猛者もいる!


名古屋ウィメンズマラソンの歴史

話は今回のレースからはそれるが、名古屋ウィメンズマラソンの歴史を振り返っておく。
1980年3月9日に豊橋市で行われた「中日20km女子ロードレース」がその起源。佐々木七恵(岩手盲学校教員/84ロス五輪代表)が1時間16分10秒の道路日本新で制した。

82年に舞台が名古屋に移り「中日名古屋スピードマラソン」という名称で20kmレースが2度行われた。82年には、キャシー・トゥミー(アメリカ)が1時間06分52秒の世界最高で優勝。最後に突き放されたものの千葉・成田高校3年生だった増田明美も3秒差でフィニッシュし、それまでの世界最高1時間09分30秒を2分35秒も上回った。当然、道路日本新で自身が保持していた記録を4分45秒更新した。

84年から瑞穂競技場を発着点とするフルマラソンとなり、「国際招待名古屋女子マラソン」として開催。翌85年から「名古屋国際女子マラソン」という大会名に変更された。2011年は3月13日に第32回大会を開催予定だったが、11日に発生した東日本大震災のため中止になった。

12年から「マラソンフェスティバルナゴヤ・愛知」(10km・ハーフマラソンやランニング商品などを展示する「マラソンEXPO」も開催)の中のメインレースとして「名古屋ウィメンズマラソン」に名称変更し開催されるようになり現在に至っている。

発着点も瑞穂競技場からナゴヤドームに変わり、市民ランナーも参加する女性限定15000人の大規模なレースになった。女性限定のフルマラソンとしては世界最大で、12年の参加者13114人は「ギネス世界記録」に「世界最大の女子マラソン」として認定された。なお、20年はコロナのため「エリートの部」のみでの開催となった。また、22年の優勝賞金は25万米ドル(約2875万円=レート115円で計算)と21年10月に発表されたが、これは世界の男女のすべてのレースを含めて現時点でのマラソンでの史上最高額である。

79年に東京国際女子マラソンが世界で初めて国際陸連(現、世界陸連)が公認する女子のみのレースとして始まった。82年に大阪国際女子マラソン、84年からは名古屋国際女子マラソン(12年から「名古屋ウィメンズマラソン」に名称変更)が産声を上げ国内の「三大女子マラソン」となった。
ただ、東京は08年に幕を閉じ、09年からの「横浜国際女子マラソン」に引き継がれる形となったが、こちらも14年に終幕。さらに15年から「さいたま国際マラソン(男子選手も出場する大会だが、男女時差スタート)」に継承されたが19年で終了。大阪と名古屋の女子マラソンが残った。


日本記録と大会記録のペース

大会記録は、2時間20分29秒 一山麻緒(ワコール)2020年。
この記録は、女子単独レースでの日本記録でもある。女子単独レースのそれまでの最高は、野口みずき(グローバリー)が2003年の大阪国際女子でマークした2時間21分18秒で17年ぶりに上回ったのだった。
なお、男女混合レースでの日本記録は、
2時間19分12秒 野口みずき(グローバリー)2005年ベルリン(優勝)。

女子単独レースの世界記録は、2時間17分01秒 マリー・ケイタニー(ケニア)17年ロンドン。
今回は、17分台のベストを持つ2人が出場するので、更新される可能性もある。

男女混合レースの世界記録は、2時間14分04秒 ブリジット・コスゲイ(ケニア)19年シカゴ。

【日本記録の5km毎と前後半】

距離日本記録(混合)日本記録(女子単独)
5km16.24./16.24.16.42./16.42.
10km32.53./16.29.33.20./16.38.
15km49.22./16.29.50.13./16.53.
20km1.05.43./16.21.1.06.50./16.37.
Half1.09.19.1.10.26.
25km1.22.13./16.30.1.23.30./16.40.
30km1.38.48./16.35.1.40.31./17.01.
35km1.55.19./16.31.1.56.45./16.14.
40km2.11.53./16.34.2.13.16./16.31.
Finish2.19.12./ 7.19.2.20.29./ 7.13.
前後半69.19.+69.53.70.26.+70.03.
前後半差(▽0.34.)(△0.23.)

【世界記録の5km毎と前後半】

距離世界記録(混合)世界記録(女子単独)
5km15.28./15.28.15.31./15.31.
10km31.28./16.00.31.17./15.46.
15km47.26./15.58.47.15./15.58.
20km1.03.27./16.01.1.03.26./16.11.
Half1.06.59.1.06.54.
25km1.19.33./16.06.1.19.43./16.17.
30km1.35.18./15.45.1.36.05./16.22.
35km1.51.14./15.56.1.52.39./16.34.
40km2.07.11./15.57.2.09.38./16.59.
Finish2.14.04./ 6.53.2.17.01./ 7.23.
前後半66.59.+67.05.66.54.+70.07.
前後半差▽0.06.▽3.13.

一山は30~40kmの10kmを32分45秒でカバーしているが、この区間の日本人選手の歴代4位である。
歴代1位は、32分17秒(坂本直子/2004年・大阪女子1位・2.25.29.)。同2位は、32分27秒(高橋尚子/98年・名古屋1位・2.25.48.)。同3位は、32分44秒(渋井陽子/2003年・大阪女子1位・2.23.42.)である。コースに違いがあるので単純な比較はできないが、トータルのタイムが2時間20分台だった中での一山の32分45秒は価値が高いといえよう。ラスト2.195km7分13秒も5km換算16分26秒でそれまでのペースを維持した。


名古屋で生まれた日本新記録

1998.3.82.25.48.高橋尚子(積水化学)
2020.3.82.20.29.一山麻帆(ワコール)=女子単独
・女子単独レースの日本記録は14年から公認されることになった。

マラソンの「世界記録」が公認されたのは04年1月1日からで、それ以前は「世界最高記録」という扱いだったが、日本では1971年から「道路日本記録」が公認され、女子マラソンも80年1月1日から同様になった。

高橋にとっては2度目のマラソンで自己ベストを5分44秒も更新しての道路日本新だった。
驚愕は、30km以降のペースアップ(上述の記事でも紹介)。それまでは5kmを17分21秒~18分01秒で刻んでいたが、30kmからは16分06秒・16分21秒と一気のアップ。ラスト2.195kmも7分10秒(5km換算16分20秒)でまとめて、朝比奈三代子(旭化成)の記録を4秒更新したのだった。
同年12月のバンコクでのアジア競技大会では30℃を超える中、スタートから独走し2時間21分47秒で走り、世界中の人を驚かせた。
その後の、00年シドニー五輪優勝、01年ベルリンでの人類初の「20分切り(2.19.46.)」はご存知の通り。


名古屋ウィメンズマラソンでの着順別最高記録

1)2.20.29.一山麻緒(ワコール)2020
2)2.21.36.安藤友香(スズキ浜松AC)2017
3)2.22.56.P・リオノリポ(KEN)2020
4)2.23.17.H・ティベブ(ETH)2020
5)2.23.27.佐藤早也伽(積水化学)2020
6)2.23.52.H・トラ(ETH)2020
7)2.24.00.S・ドッセナ(ITA)2019
8)2.24.09.福士加代子(ワコール)2019
9)2.24.19.上原美幸(第一生命G)2019
10)2.25.25.前田彩里(ダイハツ)2019
11)2.25.28.谷本観月(天満屋)2019
12)2.26.07.池満綾乃(鹿児島銀行)2019
13)2.26.15.李芷萱(CHN)2019
14)2.26.21.E・パシュリー(AUS)2019
15)2.26.56.R・クリフ(CAN)2019
16)2.28.02.上杉真穂(スターツ)2019
17)2.29.12.竹地志帆(ヤマダ電機)2019
18)2.29.27.細田あい(ダイハツ)2019
・以上、2時間30分00秒以内。

上記の通り、上位5位までは2020年が、6位以下は2019年がハイレベルだったことがわかる。
2位の最高2時間21分36秒の安藤の記録は、現在も「初マラソン日本最高」である。


日本人選手の「2時間30分切り」の大会別・1分毎の回数

下表は、22年3月6日現在の日本人選手の「2時間30分切り」の回数を大会別に1分毎にまとめたものだ。
トータルでは176人が計500回。「名古屋ウィメンズ」と「大阪国際女子」が他の大会を大きく引き離している。

「2時間20分切り」の3回はいずれもベルリンでのもので、高橋尚子(2.19.46.=当時の世界最高/2001年)、渋井陽子(2.19.41.=当時、世界歴代4位/2004年)、野口みずき(2.19.12.=当時、世界歴代3位/2005年)と日本記録を更新した。世界大会での入賞が狙える可能性がありそうな「2時間25分切り」は、43人・85回だ。

ちなみに、22年3月6日現在の世界歴代での「2時間20分切り」は、46人・79回。
「2時間25分切り」は、318人・864回。
「2時間30分切り」は、1140人・3873回。
「20分切り」の人数の日本のシェアは「6.5%」。「25分切り」が「13.5%」、「30分切り」が「15.4%」。
回数でのそれは「20分切り」が「3.8%」、「25分切り」は「9.8%」、「30分切り」は「12.9%」。
あくまでも歴代での人数や回数ではあるが、「20分切り」も「25分切り」も「30分切り」もエチオピア・ケニアに続き日本の層の厚さは世界3位だ。

【日本人選手の「2時間30分切り」の大会別・1分毎回数】

・2022年3月6日現在。
・大会名の「片or下」は「片道または下り坂コース」のため非公認。
分台→19分台20分台21分台22分台23分台24分台25分台26分台27分台28分台29分台合計
名古屋12310141420283038160
大阪女15410101027232727144
東京女111322313329
東 京211125517
横浜女11523214
北海道2323414
MGC134
埼玉女112
防 府22
神 戸11
勝 田11
91世選11
海 外332391221121927111
             
合 計3213102538427973102113500
(非公認)            
片or下112


【記録と数字で楽しむJMCシリーズ】女子マラソン日本選手権者、MGCファイナリスト、世界選手権代表の行方が見えてくる、国内最終戦「名古屋ウィメンズマラソン2022」』に続く……


文:野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)


▼「名古屋ウィメンズマラソン2022」直前!”スペシャル対談”

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▼JMCシリーズ「JMCシリーズ 第1期男子5戦目、女子第3戦目の東京マラソン」ダイジェスト



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【テレビ】9時00分~11時50分
フジテレビ系 全国ネット
解説:有森裕子、高橋尚子、野口みずき、福士加代子、金哲彦
実況:森脇 淳 、加藤 晃

【ラジオ】9時00分~12時00分
東海ラジオ
解説:長沼祥吾 (ユニクロ女子陸上競技部 監督)
松尾和美 (元 天満屋陸上部ランナー、2001年名古屋国際女子マラソン優勝)

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