2022.07.17(日)
【オレゴン世界選手権】1日目イブニングセッションコメント:男子走幅跳・橋岡が全体トップの記録で決勝へ進出!女子1500m・田中は日本人初の準決勝へ!!
「オレゴン2022世界陸上競技選手権大会」大会初日となる7月15日のイブニングセッションは、7種目の予選と1種目の決勝が行われました。このうち、日本は、男子3000m障害物、男子走幅跳、女子1500m、男子100mの予選に出場。男子走幅跳では、男子主将を務める橋岡優輝選手(富士通、ダイヤモンドアスリート修了生)が8m18(+0.4)をマークして、8m15の予選通過記録をクリアするとともに、A・B組を通してトップ記録で決勝に駒を進めました。世界選手権では2大会連続、世界大会としては昨年の東京オリンピックも含めて3大会連続のファイナル進出を達成しています。
7組上位3着+3の進出条件で行われた男子100m予選でも、素晴らしいパフォーマンスが飛び出しました。予選4組に出場した坂井隆一郎選手(大阪ガス)は、この種目の東京オリンピックチャンピオンであるLamont Marcell JACOBS選手(イタリア)と同じ組となりましたが、臆することなく得意のスタートで先行すると、3着(10秒12、+1.2)でフィニッシュ。初出場ながら準決勝へと駒を進めました。また、最終の予選7組に出場したサニブラウンアブデルハキーム選手(Tumbleweed TC)は、スタートからリードを奪うと、他の選手を寄せつけることなく先着。2019年に2回出して以来となる9秒台をマーク。全体でも6番目の記録となる9秒98(-0.3)のセカンドベストで準決勝進出を決めています。
女子1500mでは、昨年の東京オリンピック代表コンビの田中希実選手(豊田自動織機)と卜部蘭選手(積水化学)が出場。田中選手は7着でフィニッシュして着順での通過(6着まで)は叶わなかったものの、今季日本最高となる4分05秒30のシーズンベストをマークして、プラスの2番目の記録で、この種目で日本勢初の準決勝進出を果たしました。一方、日本勢が前回の東京オリンピックでフルエントリーを果たした男子3000mSCでは、エースの三浦龍司選手(順天堂大学)に再びの決勝進出が期待されましたが、3着+6の通過条件のなか8分21秒80・5着でフィニッシュ。タイムで拾われるプラス6の記録に0.74秒届かず、予選敗退を喫する結果となりました。
競技後の各選手のコメントは、以下の通りです。
◎山口浩勢(愛三工業)
男子3000m障害物 予選 1組10着 8分30秒92
写真:フォート・キシモト
昨年の(東京)オリンピックの予選では、一緒に走った選手が前に出て、急にスローペースにして、思うような走りがすることができなかった。このため、今回は、そういった展開も、逆に(ペースが)速くなる展開もイメージして、準備をしていた。結果的には予選落ちだったが、今の力は出せたと言いきることができる。トップの選手とは力の差があるし、国内でもワールドランキングでやっと(世界選手権に)出られたくらい。もっとベースの部分を上げてからでないと、しっかり戦うことはできないなと思った。ただ、今までもいろいろな国には行かせていただいていたが、昨年、オリンピックという舞台を走ったことで、一段と視野が広がり、世界に目を向けて取り組むことができるようになっている。そのあたりは、自分の殻が破れた部分といえるのではないかと思う。
◎三浦龍司(順天堂大学)
男子3000m障害物 予選 2組5着 8分21秒80
写真:アフロスポーツ
(5着という結果に)悔しいという気持ちもあったが、抵抗しながらも徐々に(突き放される)という形で、力の差を感じるレースとなった。しかし、自分のなかでは充実したレースだったと思えていて、(実際にできていたかは)あとで振り返ってみてからの判断になるが、自分の体感でも、レースの流れには、中盤のほうまではけっこう乗れていたように思う。(東京オリンピックのときと比較すると)選手層が明らかに厚くなってきている印象がある。東京オリンピックに出ていない選手が出てきたりもしていて、それぞれのパワーバランスが少し変わっていたかなという感触はある。
中盤で先頭に出て、引っ張ろうと思っていたのだが、そこで引っ張りきるというか、逃げきるような姿勢はなかった。そこは自信のなさというか、及び腰だったところがあるように思うが、先頭集団に絡んでレースを進めることができたことは、東京オリンピックを踏まえてよかった点なのではないかと思う。
◎青木涼真(Honda)
男子3000m障害物 予選 3組11着 8分33秒89
「全く通用しなかった」というのが一番の感想。今日は、入りからイメージ通りのレースができていたのだが、そこにうまく身体がついていかなかった感がある。また、ほかの選手のポジションどりのところで、最初は落ち着いてレースを進めたつもりだったが、リズムであったり、「あ、ここで動くんだ」というタイミングでがんがん動いてきたりと、自分が(展開を)決めつけすぎていたことが敗因というか、そういった部分で少しずつ(力を)削られていってしまったのかなと思うし、まだ、フィジカルや技術が置いてついていなかったのかなとも感じている。
去年は逆に(集団の)前方でやり合い過ぎてしまったというか、今回、それを反省して、様子を見ながら…とは思っていたが、自分の勝負所をうまく見極めきれていなかったのかなと思った。
◎卜部蘭(積水化学)
女子1500m 予選 1組14着 4分14秒82
写真:アフロスポーツ
もっと、もっともっと上のところに行きたかったのだが、力及ばずだった。(昨年の東京)オリンピックのときにラスト1周で勝負できなかったことへの反省があったので、そこでしっかり勝負したかったという思いが強かった。準決勝、決勝という「その先の世界」を見てみたいという思いが、東京オリンピック(を経験したこと)で強くなっていたので…。日本選手権前に行っていた高地練習の際に、力が入らなくなってしまうことがあり、その後、それが貧血だったことがわかったのだが、そこから身体の状態をみての練習となっていた。ただ、この大会前は動きもよくなってきて、走りも感覚もよくなっていたので、しっかり目標をぶらさずに取り組むことができたように思う。
今日のレースは、前のほうで進めていって、ラスト勝負のところで勝負ができたら…と思っていて、着順で通るフィニッシュを狙っていた。ウォーミングアップのときも(身体は)動いていて、感覚等も悪くなかったのだが、ペースの変化があったなかで対応できなかったことが惜しまれる。自分でレースをつくっていけるような力を今後つけて、(来年の)世界陸上、そして(2024年の)パリオリンピック、また、2025年には自分の地元といえる東京・国立競技場での世界陸上が決まったので、東京で活躍している姿というのを両親など応援してくれる方々にお見せしたい。1つ1つ力をつけていきたいなと思う。
◎田中希実(豊田自動織機)
女子1500m 予選 2組7着 4分05秒30 =準決勝進出
写真:フォート・キシモト
去年(の東京オリンピック)は着順で通過することができていたので、ずっとさっきまでハラハラしていて、タイムで拾われることがすごく怖かったが、無事に(準決勝進出を)決めることができて、今はホッとしている。(準決勝に)残れてありがたいという気持ちを、明日(のレースに)にぶつけたい。海外では、まだそこまで注目されているわけではないが、日本のなかでは準決勝や決勝に進むことを期待されていたと思うので、「予選敗退はしたくないな」という気持ちはあった。でも、もう1回走れるということと、世界選手権では準決勝に残ったのは日本人では初めてだと思うので、新しく歴史をつくれたということは、すごく自分にとってはプラスになる。
この競技場は、スクリーンで情報を細かく表示していただけるので、1組目のタイムを見てからスタートすることができたので、そこがすごくありがたかった。(1組目の結果を踏まえて)そこを目指して走ることができた。なので、着順で(準決勝に)行きたかったが、万一着順が取れなかったときのことも想定したレース展開はできたと思う。また、情報がわからなかったとしても、4分5(秒)というシーズンベストは最低限目指したいと考えていた。
(予選では)ある程度対応することはできたが、ラスト50mのスパートじゃなくスプリントという部分が全然効いていなかった。今日は、ラスト100mのところまでは、ほかの選手と変わらないスピードで、今季初めて走れたのではないかと思っているので、そこまで離されずに粘れた部分を明日はプラスに変えて、もっとハイペースになってもラストで離されないということを、意識すればタイムはついてくるかなと思う。
◎橋岡優輝(富士通・ダイヤモンドアスリート修了生)
男子走幅跳 予選 A組1位 8m18(+0.4) =決勝進出
写真:フォート・キシモト
とりあえずはホッとしている。まずは決勝に進むことが第一歩だったので、通過できてよかった。今日の跳躍は比較的いい跳躍ができたのかなと思う。自分の感覚通りに身体を動かすことができた。(決勝を迎える)明日、もっと本調子で身体は動くかなという感覚はあるので、明日に向けて、しっかり疲労をとって臨みたいと思う。今日は、事前の会見等でも発言していたように、気楽に迎えることができた。今までは予選からも、雰囲気に呑まれて、身体が動きづらいと感じることもあったのだが、今日はそれが全くなく、いつも通り、国内で試合する通りにできた。
(全体でもトップでの通過となったが、そこをどう感じているか…との問いに対して)そこは気にしていない。明日は明日なので。僕自身、120%以上の力を出して、とりあえずはこの予選の結果以上の記録は出したいなと思っているし、「行けるんじゃないかな」と思っている。
◎山川夏輝(佐賀スポ協)
男子走幅跳 予選 B組12位 7m75(+0.5)
写真:アフロスポーツ
初めての世界選手権。観客がこれだけ多いと、ちょっと呑まれてしまって、自分の動きはできていたと思うのだが、(空中動作で)足がすぐに落ちてしまったり、踏み切りで抜けてしまったり、腰の位置が低かったりといった面が出てしまった。集中しすぎて、冷静さを失って力んでしまい、不甲斐ない結果に終わってしまった。体調は万全で、ウォーミングアップのときも、今までのなかで一番動けていたのではないかと思う。それだけに、悔しい。「こんなに悔しいのか」というくらい悔しい。世界陸上は来年もある。「世界陸上の借りは世界陸上で」返したいと思うので、まずは出場権を獲得するところから集中していきたい。今回の日本選手権は5番だったが、そんな順位をとっている場合ではない。僕が勝つことはもちろん目標にしているが、(日本大学の後輩にあたる)橋岡といい勝負をして、いつでもワンツーをして、世界陸上、オリンピックに出場していければいいなと思う。
◎坂井隆一郎(大阪ガス)
男子100m 予選 4組3着 10秒12(+0.2) =準決勝進出
写真:アフロスポーツ
緊張していた部分はあったが、スタートから中盤の走りに関しては自分の持ち味を出せたのではないかと思うが、後半に関しては、着順に入らなきゃいけないというのと、「後半で絶対に来るんだろうな」という選手が多かったので、そこを意識して硬くなってしまった。そのために、日本のレースのときみたいに冷静になって走ることができなかったので、そこは反省点だということができる。走る前までは、後半に詰められて、だいぶ意識してしまうんだろうなと意識していたのだが、いざ、レースを走ってみると、思ったよりも前半は自分が(前に)出ていて、後半で(後続が追い上げて)来たのだが、そんなに気にはならなかった。
予選を終えてみて、自分の武器である「スタートから中間(疾走局面)」の部分は世界でも通用するのだな」と感じることができたので、そこは収穫だったと思う。準決勝も、スタートから中盤のはうまく出ることができるのではないかと思う。後半で硬くならないように意識していけたらいいなと思う。
◎サニブラウンアブデルハキーム(Tumbleweed TC)ダイヤモンドアスリート修了生
男子100m 予選 7組1着 9秒98(-0.3) =準決勝進出
写真:アフロスポーツ
やっといい感じで出ることができた。予選にあたっては、コーチから「しっかりと、ピストルに反応して、出て、40(m)からもしっかり、いい感じにまとめてこい」と言われていた。実際に、本当にいい形で60(m)くらいまですっと抜けて、そこからは気持ちよく走れた。とりあえずは、明日(の準決勝、決勝)に向けて、いい刺激の入る走りだったのかなと思う。(準決勝や決勝では)まだまだ力はないけれど、それでも1レース1レースしっかり大事にして、自分を出せるだけのパフォーマンスをしていきたい。
(久しぶりの9秒台だが)今日は、あんまりタイムを気にせずに走っていたので、「とりあえず9秒が出たんだ」くらいの感触。久しぶりに万全の状態で世界大会に出ることができていたこともあり、今回のレースは、当日を迎えるのがものすごく楽しみだった。この舞台を大いにもっと楽しめたらと思っている。
準決勝や決勝のプランは、今後、コーチと話して決めていこうと考えているが、本当の正念場は準決勝になると思っている。とりあえずそこで、今日以上のパフォーマンスができるように、今日は帰って、しっかり食べて、寝て、明日に調整できればと思う。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
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