2026年6月12日(金)~14日(日)に、愛知・パロマ瑞穂スタジアムで開催する「第110回日本陸上競技選手権大会」。
本大会は、劇場アニメ『ひゃくえむ。』とのコラボレーションを実施しており、大会2日目には映画のワンシーンにもなっている男子100m決勝も行われます。また、『ひゃくえむ。』の主題歌であるOfficial髭男dismの「らしさ」や劇中のサウンドトラックも流れる予定で、「ひゃくえむ。」の世界観とトップアスリートの熱戦を感じることができます。
大会を直前に控え、劇場アニメ「ひゃくえむ。」の岩井澤健治監督のスペシャルインタビューをお届けします。
陸上の魅力である「音」と「緊張感」で10秒の世界を表現し、観る人の予想を裏切るような驚きを表現された今作品について、たっぷりとお話いただきました。
当日は「日本陸上競技選手権大会×ひゃくえむ。」のコラボレーションによる、この瞬間にしか見られない“ 景色”を存分に体感してください!
▼劇場アニメ『ひゃくえむ。』日本陸上競技選手権大会 コラボレーション ーそういう景色を見ようぜー が開催決定!

――第49回日本アカデミー賞の優秀アニメーション作品賞を受賞、興行収入も8億円を超えるなど、大きな話題性とともに大ヒットした作品となりました。ご感想や、今回の作品に取り組んだ経緯などを教えてください。
岩井澤監督:陸上競技、特に100mをテーマにした長編映画は調べる限り邦画だと実写も含めて皆無だったので、そういったニッチな作品がみなさんにちゃんと届けられ、反響をいただけたことは改めて良かったと思っています。
最初にお話をいただいた時に『ひゃくえむ。』を「ロトスコープ」という実写をベースにアニメーション化する手法で制作しませんかというお話だったのですが、どこまで競技など実際に撮ったものを演出的に落とし込めるのか、正直なところわかりませんでした。
まずはロトスコープとの相性が良いか確認のためにパイロット版を制作しましたが、正直、「これで行けるぞ!」みたいな手応えはあまりありませんでした。その後、実際の試合を観てみようと実業団と学生の大会(実業団·学生対抗)を観戦しました。
この時に、待機場所から呼ばれてスタートに並び、スターティングブロックをセットして、選手紹介があって……という一連の流れを見ていた時に頭の中に映像が浮かびました。それが映画の劇中でも描いた“雨の高校全国大会”決勝へとつながっています。実写的なアプローチへの手応えを得たことからシナリオ作りがスタートしました。

――100mという競技、そして原作の魅力をどのように捉えましたか。
岩井澤監督:一般的にスポーツ作品には「青春」「努力」「友情」「勝利」といったイメージがあります。
『ひゃくえむ。』はそういったイメージとは違う切り口が魅力的な作品でしたし、100mという競技は試合も一瞬で終わってしまいフライング(不正スタート)をすれば走ることすらできない、すごく残酷で孤独なスポーツだと感じました。陸上競技はオリンピックや世界陸上をテレビで観るというぐらいの知識で、競技自体のイメージをそこまで深く持っていたわけではありませんでした。
――映画として制作する中で大切にしたものは何だったのでしょうか。
岩井澤監督:原作者の魚豊先生とは何度かやりとりさせていただき、割とスムーズに意見交換させていただけたのではないかと思います。
原作のボリューム的にエピソードを全て映画の中には落とし込めないので、どう再構築するかを考えていきました。アニメーション映画にすることで作品に触れる人たちの間口も広くなるので、映画をきっかけに『ひゃくえむ。』という作品を知ってもえればという意識はすごくありました。『ひゃくえむ。』は主人公であるトガシが大きな挫折を経験してもう一度這い上がろうとする物語でもあります。学生時代は天才と呼ばれていた選手が、社会人やプロになった後、鳴かず飛ばずでフェードアウトしてしまうことはどのスポーツでもあります。そんなスポーツの残酷でリアルな部分や、もうひと花咲かせようという物語が結構好きなので、そんな残酷さや希望が映画の核になるのではないかと思いました。
それから映画である以上は、エンタメとしていかに観てもらえるかという意識も強くありました。原作から映画の約100分にできるだけそぎ落としつつも、いかに映画なりの良さを入れていくかには拘りました。中でも「音」と「緊張感」が陸上としての魅力を引き出すので観客が没入できてすごく体感として残ります。同時に、陸上に興味を持ってもらう“導入”としても、陸上らしい音や緊張感が感じられることで、「陸上っておもしろいかも」と思ってもらえたら良いなと考えていました。それから当たり前のことですが、短距離の選手は生で見るととてつもなく速いんですよね。同じ人間とは思えないような、躍動感がある。
『ひゃくえむ。』という作品を作ることにならなければ、実際に競技場に足を運ぶことがなかったと思うので、そういったリアルな魅力は伝えたいと思いました。
そういう意味でも、ロトスコープによって表現できる動きの滑らかさ、リアルさは、作品との相性がすごく良かったと思います。
試合のシーンを実際のレースのように撮影しようとするとカメラが一瞬で置いていかれます。
イメージ通りのアングルを探ることも難しいので走るシーンは3Dモデルから作ることにして、陸上選手の方々走りのモデルにお願いすることで、違和感なく作品の中に入れ込めたと思っています。
それからシナリオを作る前に実際に現役選手にお話をうかがいました。
協力してくれたのが、竹田一平選手(オープンハウス)です。その時のお話から生まれたシーンもあります。高校全国大会決勝と同じく、話を聞いていて映像が浮かんできました。
竹田選手が当時の自己ベストが出た試合の日は、朝起きてから会場に着くまで足止めされることなく何もかもがすべてがうまいって「今日はすごい記録が出るかも」と感じたそうで、その話を聞いて、物語の終盤に入れられたらと思い、ほぼそのまま取り入れさせてもらいました。

――作品の中で、岩井澤監督ご自身が印象に残っているシーンや、言葉などはありますか?
岩井澤監督:印象に残っているシーンは、やはり高校全国大会決勝でしょうか。『ひゃくえむ。』という映画は、あのシーンを中心に考えたところがあります。映画は特別な見せ場やこの作品じゃないと体感できないものがあるとすごく記憶に残ります。どれだけ特別なものを提供できるか。観る人の予想を裏切るような驚きを提供できるかを意識した結果、100mという一瞬で決着がつく試合だからこそ、スタート前をじっくりと見せることで緊張感が生まれるのではないかと考えました。

好きなシーンで言えば、小宮と経田が対決する北九州大会の決勝ですね。スタートした後に小宮がフレームアウトして、カメラはそのまま空だけを写し、音の演出だけでレースを表現しました。自分でも、思いついた時は「これはなかなか攻めた演出ができた」と思いましたが、これも10秒で決着がつくスポーツだからこそできた演出でした。球技などのチームプレーのスポーツであれば、試合の見せ方を試行錯誤してバラエティに富んだ見せ方ができますが、
ただまっすぐ走って一瞬で終わる100mを何本も見せてもさすがにネタが尽きてしまいます(笑)。最後の決勝は映画のラストに相応しいベタだけど派手な演出で見せようと思っていたので、そこまではできるだけ抑えて抑えて、最後に盛り上げる流れを作りたかったのです。
そんな時に、音だけで見せる演出にたどり着きました。結果として、小宮という選手の狂気みたいなものが、あえて音だけにすることでより感じさせるものになったのかなと思っています。
劇中の好きな言葉は海棠の「現実か何かわかってなきゃ、現実からは逃げられねぇ」です。僕自身のお気に入りのキャラでもあるのですが、長い選手生活の中でいろいろな現実や自分の限界を感じているからこそ、辿り着けた境地。そういった哲学が自分の境遇にも重なる部分があるのだと思います。

――日本選手権とのコラボが決まったことについての思いと、監督自身が感じる陸上の面白さや大会の見どころを教えてください。
岩井澤監督:日本選手権とのコラボは作品がリアルな日常に浸透していったことの証でもあるので作り手としてすごく理想的な展開だと思っています。
昨年の東京世界陸上は盛り上がってる印象を受けましたが、陸上自体が盛り上がっていけるかはこれからなのではないでしょうか。でも、その盛り上がりのきっかけを『ひゃくえむ。』が作れたり、『ひゃくえむ。』を観て陸上を始めたという選手が将来すごい記録を出したり、そんなことがあったらめちゃくちゃ嬉しいですよね。
実際に大会を観に行った時に、最初はトラック全体で複数の競技が同時進行しているのに、徐々に少なくなって最後の100m決勝に観客の視線が集約されていく。あの流れは会場でしか味わえない独特のおもしろさを感じました。日本選手権も100m決勝がその日のラストに来ることが多いと思うので、そういった演出は楽しみです。
注目する種目は、やはり100m。制作中に、清水空跳選手(星稜高・石川)が10秒00を出して、「おもしろい展開になってきた」とスタッフみんなで話していました。劇中にも映画オリジナルキャラの森川という高校生が登場しますが、常に若い世代がどんどん記録を更新してくると、盛り上がりますよね。
でも、昨年の日本選手権で優勝した桐生祥秀選手(日本生命)のように、ベテランが結果を出すところも面白い。スポーツは年齢関係なく、実力の世界。100mもそうですが、いろいろな種目でスター選手が出てくるといいですね。

そんな大会を『ひゃくえむ。』の音楽が一層盛り上げてくれると思います。
エンタメの究極のところはやはり音楽。劇伴メインテーマ曲の「100 meters」はものすごくキャッチーで耳に残りますし、日本選手権で流れれば「あ、『ひゃくえむ。』の曲だ!」と広がっていくはず。日本選手権のメインテーマとしてずっと流れてくれれば嬉しいですね。
・劇場アニメ『ひゃくえむ。』コラボPV公開! 主題歌Official髭男dism「らしさ」使用バージョン ~ナンバーワンだけが、見られる景色がある~
©魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会
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原作の魚豊さんによる描き下ろしのボックスに加え、本作のキャラクターデザイン・総監督の小嶋慶祐さん描き下ろしのデジパックケースが付いてくる。先行解禁されたデジパックイラストは社会人のトガシ、小宮、財津、海棠、樺木、森川がスタートを切った瞬間の勢いのあるイラストが描かれている。さらに封入特典として、岩井澤健治監督×小嶋慶祐さんによる特別対談を収録した全52Pにわたるビジュアルブックレットやタイトルロゴステッカー(原作全5巻Ver.)5枚セットを同封。映像特典にはメイキングドキュメンタリーや各種舞台挨拶映像を収録。音声特典では、岩井澤健治監督をはじめ映画制作を支えた各セクションのスタッフ6名が語る撮影秘話や裏話を、106分にわたって楽しめるオーディオコメンタリーが収められているなどボリュームたっぷりだ。
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■大会概要
<名称> 第110回日本陸上競技選手権大会兼 愛知・名古屋 2026 アジア競技大会 日本代表選手選考競技会
<日時> 2026年6月12日(金)〜14日(日)
<競技日程>https://www.jaaf.or.jp/jch/110/timetable/
<会場> パロマ瑞穂スタジアム(愛知・名古屋)
<チケット> 前売チケット販売中 https://www.jaaf.or.jp/jch/110/ticket/
▼愛知・名古屋2026アジア競技大会 トラック&フィールド種目 日本代表選手選考要項
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202508/25_123227.pdf
▼愛知・名古屋2026アジア競技大会 トラック&フィールド種目 派遣設定記録
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202511/11_092940.pdf
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