2026.06.19(金)大会

【第110回日本選手権】総括会見レポート

9月に開催される愛知・名古屋2026アジア陸上競技大会(以下、アジア大会)の日本代表選考会を兼ねて6月12日から行われた第110回日本選手権は、6月14日、3日間の日程を無事に終了しました。最終日の競技終了後には、日本陸連強化委員会の山崎一彦委員長が対応して、大会を総括。メディアからの質問に答えました。会見の要旨は下記の通りです。


■山崎一彦強化委員長

まず、「日本選手権がこんなに盛り上がったのは初めてなのではないか」と思うほどの大会になった。昨年の東京世界選手権での盛況があって、そのあと押しがあって、これだけのお客さんが入ったということを、とても嬉しく思った。大会2日目の6月13日は、地下鉄に乗って帰ろうとしたら、(人が多くて)入れないほどだった。陸上の大会で、そんな光景が見られることは、なかなか今まではなかったこと。陸上競技としての進歩と、選手個々の頑張りの証しが、その光景によって証明されていたように感じた。

大会3日間を振り返ってみると、天気と新設されたこの競技場に恵まれて、総じて記録が良かったという印象がある。世界レベルで突出した記録というものはなかったものの、選手たちのレベルが全体的に上がってきている様子が見受けられた。
この大会は、アジア大会日本代表選手の最終選考会として行われたが、本大会における即時内定者(決勝終了時点までにアジア大会派遣設定記録を突破し、かつ日本選手権を獲得した競技者)は、男子15名、女子9名で、合計24名の内定者が新たに出ている。今回はオリンピック同様に、JOC(日本オリンピック委員会)派遣ということで(陸上選手団への)人数提示があるのだが、ほぼ、戦力として考えていた数の内定はとれたと思っている。
このほかについては、これから強化委員会を行って残りの派遣枠から選考していくことになるが、こちらは、アジアトップリストのおよそ8位を基準として、選考していくことになる。また、リレーについても、今回は、男女混合リレーとして4×100mリレーもさらに加わっている。そちらのほうも全力で臨みたいと思う。

前回の2023年杭州大会は、金メダル2個にとどまった。ただ、このときは、同年にブダペスト世界選手権、バンコク・アジア選手権、そしてアジア大会と3つの主要国際大会が重なったため、戦略的派遣を行った。必ずしも、すべてのトップ選手が出たわけではなかったので、今大会は、より多くの金メダル獲得を目指していこうと考えている。中国の台頭が顕著となってからの近年では、5個が最高(2006年ドーハ大会)となるが、それはもちろんクリアしなければならないし、私たち強化委員会で掲げている「中国に、どれだけ迫れるか」に挑戦していくことになる。現実はかなり厳しいということは十分に承知しているが、私たち強化スタッフも、選手も、「アジアナンバーワン」を目指していこうと思っている。


<質疑応答>

Q:男子400mハードルでは、後藤大樹選手(洛南高、ダイヤモンドアスリートNextage)が素晴らしい記録をマークしたが、レースについての見解を。

山崎:天候にも、競技場にも恵まれて、高校生が素晴らしい記録をマークして優勝した。ただ、ここはシニア日本代表の選考競技会ということになるので、チームジャパンとしてアジア大会を見通す形で答えると、男子400mハードルでは、カタールに46秒台、47秒台前半の自己記録を持つ選手がいる状態。高校生には、そこまでの目標は立てられないので、シニア年代の他の選手にも頑張ってもらいたいというところがある。ただ、そのなかであっても高校2年生での48秒09は、U18の世界最高記録となる出色のもの。じっくりと力をつけ、今後、46秒台で戦っていくような選手に育ってほしいと思っている。

Q:リレーについては、全種目で派遣することになるのか?

山崎:JOCから陸上に提示されている派遣の枠があるので、すでに内定している選手数に加えて、要項で示している優先順位に沿って決めていく。その兼ね合いということになるが、JOCとは、「リレーでも頑張りたい」という話をし、また、すべての種目について「入賞ではなく、メダルを目標にする」と伝えている。最終的な議論は、これから行っていく。


Q:強化委員長の目からみて、本大会で印象に残ったシーンやハイライト的な種目は?

山崎:最終日でいうと、男子200m決勝。水久保漱至選手(宮崎県スポ協)が20秒14(+0.6)をマークした。彼は、前日の予選でも20秒07(+0.5)をマークしており、記録の再現性という意味でも、「久々の20秒0台の前半 」が見えたなと思った。男子100mに関しては、準決勝までは、すごく良い運びだったと思うが、決勝は、少し全員が緊張してしまったのかなという印象である。そのなかで抜けだした多田修平選手(住友電工)が5年ぶりの優勝で内定を勝ちとった。このあとの選考では、リストに沿って選んでいくことになるが、いずれにしてもスプリント種目は、個人でもメダルを目指して臨んでほしいという思いがある。

また、男子400mについては、今回、中島佑気ジョセフ選手(富士通)が勝ったけれど、予選では、林申雅選手(筑波大)が、新たに44秒台スプリンター(44秒98)の仲間入りを果たしている。こうして44秒台の選手が増えてきたことは、北京世界選手権やロスオリンピックに向かっていくうえでも、今後の好材料になると考えている。

また、今回は出場していないが、男子800mでは落合晃選手(駒澤大)が1分43秒台に突入するなど、従来の強固だった「壁」を破っていくような種目が増えてきたと感じている。
それから、男子110mハードルでは、泉谷駿介選手(住友電工)が貫録勝ちを見せた。この種目は前回、日本が金メダルを獲得している(高山峻野、ゼンリン)が、歴史的には中国が非常に強く、中国勢によるワン・ツーなども見られてきた種目。今回はぜひ、村竹ラシッド(JAL)選手と2人で上位を占める走りを見せてほしい。

男子400mハードルについては、先ほど少し述べた通り。後藤選手は、高校生なので、世界水準でシニアと戦うとなった場合は、まだまだ課題はある。世界レベルのレースをするためには改善点はあるので、彼には、期待も含めて、これを貴重な機会としてワールドワイドになってほしい。

このほか、男子5000mについても、予選を経て臨むことになった今日の決勝レースが素晴らしかった。レース運びも良かったし、記録的にもよかった。ただし、世界は12分台。あれだけよい走りができているので、その点も含めて早く12分台突入を果たしてほしいと感じている。

女子については、井戸アビゲイル風果選手(東邦銀行)がショートスプリントで2年連続2冠を達成した。100mのほうはまだ内定は出せていないが、内定を獲得した200mについては素晴らしい走りを見せた。彼女については、今後、当人やコーチと相談していくことになるが、メダル獲得を目指すリレーにどう出場するかというところは、これから戦略を練っていきたい。

1つ1つを挙げていくときりがなくなってしまうのでこのあたりにするが、勝負が良かった種目としては山本有真選手(積水化学)が田中希実選手(豊田自動織機)を制した女子5000mを挙げておきたい。田中選手は、1週間前にダイヤモンドリーグに出場するなど、ずっと転戦してきているなかでの出場であった。世界的なビッグネームとなった田中選手と山本選手の競り合いは、非常に価値のある、見ごたえのあるものだったと思う。


Q:東京世界選手権入賞によって内定済みの選手が、エントリーを選ばなかったなかで実施された大会として、感じたことはあるか?

山崎:その選手たちの不在をカバーしてくれるような勝負が見られたのではないかと思っている。内定済みの選手で出場したのは中島選手のみだった。それ以外の選手たちは、ダイヤモンドリーグに出たり、あるいは故障からの回復に充てたりしている例もあり、逆にいえば9月に向けてうまく調節ができたのかなというところもある。本番は総力戦になるので、そうした選手たちがきちんと調整して大会を迎えてほしい。

また、このアジア大会に限ったことだけでなく、2028年ロスオリンピックまでをみて考えていくのであれば、入賞レベルに達している選手にとっては、今回のように6月あたりに日本選手権を配置するというのが、今のところ限界であるという背景もある。来年の北京世界選手権(9月11~19日)の選考の場合、参加資格獲得有効期間が8月22日(一部種目を除く)になっていることを考えると、来年の日本選手権が仮に6月開催ということになれば、約2カ月の期間が空くことになる。そこで世界挑戦をして、WAワールドポイントのランキングを上げていくことになると、ダイヤモンドリーグで戦っていける選手は日本選手権でなく、そちらに出ていくという戦略は当然出てくるものと受け止めている。このため、各選手やチームがより適切な戦略を組んでいけるようにすべく、北京世界選手権の代表選考要項の準備を進めている。

今回のアジア大会は、自国開催なので、地元の応援を受けることで選手が精いっぱい頑張ってくれると期待している。そこで高めた機運を、2027年北京世界選手権、2028年ロスオリンピックへとつなげられるよう何段階かで加速していけるような形で進めていければと思っている。


Q:新設されたスタジアムの感想を

山崎:非常に良いスタジアム。大きさも“陸上サイズ”というか、非常に素晴らしいサイズ感だと思う。2万8000人から3万人という収容人数は、今の陸上が目指すべき観客動員数だと思っている。代表内定選手たちは、これから、このスタジアムで日本選手がたくさんメダルを取っていく姿をお見せできるように調整してくれると思うので、ぜひとも、会場に足を運んで、アジア大会を超満員にしていただきたいと思う。また、メディアの皆さまにも、ぜひ陸上の話題を数多く取り上げて、発信していただければと思う。

※本内容は、6月14日に実施した囲み取材における、山崎強化委員長の発言および質疑内容の要旨をまとめました。より明瞭に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


【日本代表オフィシャルサイト】

>>https://www.jaaf.or.jp/teamjapan/




【愛知・名古屋2026アジア競技大会】

期日:2026年9月23日(水・祝)~29日(火)※陸上競技
会場:パロマ瑞穂スタジアム(愛知)

大会ページはこちら
~競技日程、チケット情報など掲載中!~

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