2024.03.13(水)委員会

大きく変わった! さらに進化中! もっと良くなっていく!日本陸連の『公認指導者資格』について、聞いてみました(Vol.1)



日本陸連では、2017年度に競技団体としてのあり方や目指す将来像を明文化した「JAAF VISION 2017」を発表。さらに「競技者育成指針」「指導者養成指針」をとりまとめ、「すべての指導者が、コーチ資格を取得する」「コーチが学び続けていくことのできる体制や環境をつくる」ことを目指して、コーチ養成システムの再構築に取り組んできました。
「実際に、どんなコーチ資格があるの?」「現在行われている講習の特徴は?」「コーチ講習を受けることで、何を学ぶことができる?」「勉強って、どのくらい大変?」「これからの社会で、コーチ資格の取得は、どう生きてくる?」
そんな疑問を、新しいシステムつくりの“事情通”と呼ぶべきスペシャリスト、森健一さん(日本陸連指導者養成委員会ディレクター兼幹事)と田中悠士郎さん(日本陸連強化部指導者養成課長)の二人にぶつけてみました。

今回は全3回シリーズのVol.1をお届けします。(Vol.2はこちら、Vol.3はこちら

文・写真:児玉育美(日本陸連メディアチーム)


「すべての指導者に、コーチ資格取得を!」

コーチ養成システムを再構築

―――お話を伺うにあたって、田中さんと森さん、それぞれの日本陸連での立場を教えてください。
田中:私は、日本陸連で、強化部指導者養成課の課長を務めています。主に、指導者資格制度に関することや資格講習会の開催を担当しているほか、普及事業では小学生陸上の大会運営を担当するなど、幅広く競技者の育成や指導者の養成というところに携わる業務に取り組んでいます。

森:私は大学の教員ですが、日本陸連では、指導者養成委員会でディレクター(カリキュラム担当)と幹事を務めています。カリキュラムディレクターとしては、日本スポーツ協会(以下、JSPO=ジェイスポ)が認定するコーチデベロッパー(コーチ育成者)として、陸連の専門科目で扱う講習の中身とJSPOが扱う共通科目とを摺り合わせながら、陸連で実施する講習会全体のカリキュラムを作成したり、まとめたりする役割を担っています。幹事としては、指導者養成委員会で行っていること全般のコーディネートが担当です。



―――日本陸連は、指導者資格の仕組みを見直し、この近年で、資格の取得のみにとどまらず、取得後も含めた養成システムの再構築に取り組んできました。その経過をお聞かせください。
田中:日本陸連では、日本スポーツ協会が実施する「JSPO公認スポーツ指導者システム制度」と連携し、2012年度以降、「JAAF公認コーチ」「JAAF公認ジュニアコーチ」の2種類の資格を制定して、指導者を養成してきました。また、並行して陸連内では、日本陸連の存在意義、目的やあり方、ミッション、今後のビジョン等についての議論も行われていて、2017年にはそれらを明文化した「JAAF VISION 2017」( https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/jaaf-vision-2017.pdf )を発表。そこで「国際競技力の向上(トップアスリートが活躍し、国民に夢と希望を与える)」と「ウェルネス陸上の実現(すべての人がすべてのライフステージにおいて陸上競技を楽しめる環境をつくる)」という2本柱が、ミッションとして示されたのです。これを踏まえて、2018年度には、競技者育成の方向性を示す「競技者育成指針」( https://www.jaaf.or.jp/development/model/ )が公表されました。
そうした流れのなか、JAAF VISION 2017の打ち出された方針に則って、2019年には、これまで指導者養成を担っていた普及委員会(委員会の中では指導者育成部が担当)から、指導者養成委員会に名称変更となり、また、事務局の担当部課名も強化部普及事業課から強化部指導者養成課に変わりました。もちろん「普及事業」も、とても大切なことには変わりないのですが、アスリートや陸上に携わる方々に対して、大きな影響力を及ぼすのは指導者であるという認識から、日本陸連としては、まずは指導者の養成にウエイトを置くことにしたんです。指導者の皆さんが、安心・安全な環境も含めて、陸上競技の魅力をしっかりと伝える存在になってくれれば、一人に対してアプローチしたものが、将来的に何十倍何百倍になってくれるという考え方です。
そして、指導者養成委員会の中で、「JAAF VISION 2017」や「競技者育成指針」で示した事柄を実現するために、日本陸連は、どんな指導者の養成を目指すのかという議論のなかで、「まずは、良い指導者を輩出するシステム、指導者になるための良い教育を提供するシステムを整えていくべき」として、「指導者養成指針」( https://www.jaaf.or.jp/development/model-coach/ )が作成され、2020年度に発表されることとなりました。

―――指導者養成指針では、どんなことが示されたのでしょう?
田中:「陸上競技の指導現場に立つすべての指導者に、コーチ資格の取得を」ということと、「資格取得後も継続的に学習できる環境を」ということを目指し、コーチ養成システムの再構築を掲げています。我々は今、その指針に沿って、まさにシステム構築をしているところ。日本スポーツ協会が実施しているように、できるだけ講習会を受講される方々がそれぞれにお持ちの経験や知識を、うまく引きだしながらシェアし、より広い気づきや学びにつながるようなカリキュラムに変えていっているところです。また、コーチ養成の拡充を図ることも目指していて、その一環として、2022年度にはスタートコーチを新設しました。

―――では、現状は、正式名称でいうと、「JAAF公認コーチ」「JAAF公認ジュニアコーチ」「JAAFスタートコーチ」の3つに分かれているわけですね。
田中:はい、そうです。ここは、表を見ていただいたほうがわかりやすいかもしれませんね。また、これまでは公認コーチは、都道府県から推薦を受ければ、誰でも受けられる体制になっていたのですが、より高度で専門的な内容となる公認コーチは、ジュニアコーチで受講した内容から積み上げ式で学ぶことが必要ですし、本来はジュニアコーチを経て公認コーチ受講につながっていくことを前提としていたものの、なかなか思うような成果が上がっていないという点も課題となっていました。そこで、ステップを踏んで上がっていくようなパスウェイを整え、ジュニアコーチを受けたあと、都道府県陸協からの推薦を受けて公認コーチに進むという体系にしました。これが本格的に始まったのは2022年度からです。



―――都道府県からの推薦を得るとき、以前は、枠自体が少ないために、中学生や小学生年代を指導している方や女性指導者、クラブチーム指導者に、なかなか推薦の枠が回っていかないという課題もあったと聞きました。
田中:はい。そこも改善してきました。まず、都道府県の推薦枠を1人から2人に増やし、さらに女性指導者の増加を活性化させるために、女性が1人入る場合は3人まで推薦できるようにするということも始めました。こうした動きは、実は2016年あたりから段階的に実施していて、現在では、都道府県からの推薦は最大4枠(女性2名以上)、さらに来年度からは、4枠を埋めきってしまった場合には、男女各1人ずつの次点も上げられるようにしているんです。

―――では、最大で6名の推薦が可能に?
田中:全体数に対する調整ができる場合が前提になりますが、できるだけ受け皿を大きくしていこうという方針のもと、可能にできるよう整えているところです。

―――講習の行い方もずいぶん変わったと聞いています。
田中:そこは、日本スポーツ協会が、2019年度からカリキュラムを刷新したことも影響しています。このとき、従来は一方向型で実施されていたカリキュラムを、双方向型のものへと大きく転換し、それに伴い講師の養成も始めたんです。それが先ほど森先生が述べた「コーチデベロッパー」、日本語で言う「コーチ育成者」という役割です。日本スポーツ協会の資格制度の改築に合わせて、我々陸連の制度も整備しようということで、このとき私たち2人が、日本陸連を代表として研修を受けに行きました。こうして、日本スポーツ協会が新しく変えたカリキュラムの内容や方向性を理解し、基本的な点をリンクさせたうえで、我々の掲げる「JAAF VISION 2017」や「競技者育成指針」「指導者養成指針」を軸としたなかで、陸上という我々の専門科目についても時代とニーズに合った講習会にしていく改築を行いました。

―――すべてにおいて根本のところを理解したうえで、陸上の指導者資格に落とし込んでいかれたわけですね。日本スポーツ協会との連携も大切にしているようですね。
田中:ほかの競技団体では、独自で資格を設定し、養成しているところもあります。しかし、日本陸連は、日本スポーツ協会と一緒に進めていくことで、「他競技にも通用するコーチングのノウハウやスキルにかかわることを意識しつつ、それらを陸上のなかで、どう生かしていくか」や「ほかの競技団体とどう連携していくのか」などを大事にしようという考え方なんです。

―――陸上競技は、すべてのスポーツの基礎や基盤になる要素が多く、すべての競技に必要な要素を包括している面もありますから…。
田中:そうなんです。陸上競技には、すべてのスポーツの基本となる面があるので、実は「スタートコーチ」を新設した際には、ほかの競技スポーツの指導者が、まず初めに学ぶ資格として選んでいただけるようにすることも想定していました。

<<資格制度・講習会開催要項>>
〇資格制度概要
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/
〇公認スタートコーチ養成講習会
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/startcoach.html
〇公認ジュニアコーチ
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/juniorcoach.html
〇公認コーチ
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/coach.html

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