2023.05.24(水)大会

【セイコーゴールデングランプリ陸上2023横浜 大会レポート】初開催の日産スタジアムで世界王者カーリーが9秒台連発で快勝、泉谷は今季世界2位となる13秒07でV!


セイコーゴールデングランプリ陸上2023横浜」(セイコーGGP)が5月21日、初夏を感じさせる好天気のなか、神奈川県横浜市の日産スタジアムで開催されました。
ワールドアスレティックス(WA)が展開する「コンチネンタルツアー」シリーズのなかでも、最高峰カテゴリーの「ゴールド」に位置づけられているこの大会。オレゴン世界選手権や東京オリンピックのメダリストなど、今年も多くの海外トップ選手がエントリーし、男子9、女子6の全15種目が行われました。そのうち日本選手は9種目で優勝を果たしています。


カーリー、圧巻の9秒88 & 9秒91!

日本人トップは、坂井



「世界体感」をキャッチコピーとして開催されたこの大会では、随所で、その言葉通りのパフォーマンスが飛び出しました。
まず挙げるべきは、男子100mといえるでしょう。トラック種目最初のレースとなった予選の1組目で、オレゴン世界選手権金メダリストのフレッド・カーリー選手(アメリカ)が、いきなり今季世界2位となる9秒88(+1.5)をマーク。会場の空気を、一気に「世界水準の国際大会」へとヒートアップさせたのです。カーリー選手は、決勝でも、注意によるやり直しで3回目のスタートで出発する形となったにもかかわらず、中盤で難なく抜けだし9秒91(+0.4)でフィニッシュ。今季初戦となった100mを圧勝で飾りました。日本人トップは、オレゴン世界選手権で準決勝に進出した坂井隆一郎選手(大阪ガス)。坂井選手は、予選をセカンドベストの10秒08(+1.7)で通過すると、決勝では左ふくらはぎにケイレンが起きていたなか、2位のロアン・ブラウニング選手(オーストラリア)と同タイムの10秒10でフィニッシュ。0.005秒の着差ありで3位となりました。日本人2番手には、小池祐貴選手(住友電工)が0.01秒差の10秒11(4位)で続いています。


男子110mハードルは泉谷がV

今季世界2位の13秒07



男子110mハードルでは、日本記録保持者(13秒06)の泉谷駿介選手(住友電工)が、世界水準の快走を披露しました。好調を維持し、12秒台も狙える状態で臨んでいたという泉谷選手は、レース後、「70点」と評価した内容ながら、セカンドベストの13秒07(+0.8)で優勝。この記録は、今季世界リストで2位に浮上するもので、昨年のオレゴン世界選手権では銀メダルに相当する好記録です。2位には、昨年、日本歴代2位の13秒10を記録して、ブダペスト世界選手権参加標準記録(13秒28)を突破済みの高山峻野選手(ゼンリン、元日本記録保持者)が13秒25で続き、3月にこの記録をマークしている村竹ラシッド選手(順天堂大)とともに、今季世界リスト6位に並ぶところまで順位を上げてきています。


田中&三浦、

世界レベルのキックで快勝!



レース展開で、「世界体感」を堪能させてくれたのは、ともに日本記録保持者で、東京オリンピックで入賞を果たしている女子1500mの田中希実選手(New Balance、3分59秒19)と男子3000m障害物の三浦龍司選手(順天堂大、8分09秒92)。プランとして掲げていた「レース終盤で切り替え、ペースアップして勝ちきる」内容通りのレースを展開。ラスト1周で圧巻のキックをみせ、会場を大きくどよめかせました。田中選手は4分11秒56で、三浦選手は8分19秒07で快勝し、ブダペスト世界選手権に向けて順調に推移している様子を印象づけました。なお、ここまで1500mや5000mに出場してきた三浦選手は、3000m障害物としては今回がシーズン初戦でしたが、いきなり今季世界リスト3位に名を連ねることになりました。


男子走幅跳は吉田が8m26!

世界王者に勝利



男子走幅跳では、「大金星を上げる」パフォーマンスが飛び出しました。オレゴン世界選手権金メダリストの王嘉男(中国)を相手に、吉田弘道選手(神崎陸協)が勝負、パフォーマンスともに素晴らしい内容を見せたのです。前半の試技を5番手で終えていた吉田選手は、5回目に8m11(+2.6)を跳んで、3回目に8m07(+0.2)をマークしていた王選手らを逆転して首位に躍り出ると、最終跳躍では日本歴代3位となる8m26(+1.0)の大ジャンプで、自己記録(8m14、2021年)を大きく更新。6回目の試技で8m22(+1.5)まで記録を上げてきた世界選手権覇者を4cm差で制しました。この結果、ブダペスト世界選手権参加標準記録(8m25)も突破。ハイレベルな水準にある男子走幅跳で、一躍、代表争いの有力候補へと名乗りを上げる形となりました。
日本勢で吉田選手に続いたのは、東京オリンピック代表の津波響樹選手(大塚製薬)で、6回目に7m95(+1.4)をマークして4位で競技を終了。津波選手と同じく東京オリンピック代表で、1回目に7m94(+1.4)を跳んでいた城山正太郎選手(ゼンリン、日本記録保持者8m40)が5位に、東京オリンピック7位入賞、オレゴン世界選手権ファイナリストの橋岡優輝選手(富士通、自己記録8m36=日本歴代2位)は7m90(-0.5)で8位という結果でした。


女子100mハードルでは

日本人5選手が12秒台をマーク


写真提供:フォート・キシモト

毎回ハイレベルなレースが繰り広げられている女子100mハードルも、好記録が続出する結果となりました。木南記念を12秒86(日本歴代2位)の自己新記録で制していた寺田明日香選手(ジャパンクリエイト)が、再び12秒86(+0.4)をマークして優勝。2位には、織田記念で12秒97、木南記念で12秒91と進境著しい田中佑美選手(富士通)が、12秒89の自己新記録で続き、日本記録保持者(12秒73)でオレゴン世界選手権セミファイナリストの福部真子選手(日本建設工業)が12秒91で3位に。福部選手とともにオレゴン世界選手権で準決勝進出を果たした青木益未選手(七十七銀行)が12秒94・5位でフィニッシュしたほか、6位の清山ちさと選手(いちご)が12秒96をマークして12秒台ハードラーに仲間入りしたのです。1レースで日本人ハードラーが12秒台を5人がマークするのは初の出来事で、まさに歴史に残るレースとなりました。なお、13秒13で9位の芝田愛花選手(エディオン)も、木南記念で更新したばかりの自己記録(13秒14)を再び塗り替えています。


400mハードルは児玉がV

世界選手権参加標準記録に0.07秒まで肉薄



このほか男子400mハードル、男子やり投、男子400m、男子3000mで日本勢が優勝。男子400mハードルでは、5月3日の静岡国際で、自己記録を大幅に更新する49秒01をマークして優勝したことで注目を集めていた児玉悠作選手(ノジマ)が再び快走。黒川和樹選手(法政大)とのラスト勝負を制して、ブダペスト世界選手権参加標準記録(48秒70)に0.07秒に迫る48秒77まで自己記録を更新して優勝を果たしました。また、男子やり投は、ディーン元気選手(ミズノ)が2回目に82m03をマーク。4回目以降は79m台2本、最終投てきで81m94と安定した力を見せつけ、連覇を果たしています。男子400mは、中島佑気ジョセフ選手(東洋大)が45秒31でV。4月16日の出雲陸上から6週連続でのレース出場の疲労も影響し、目指していた日本人2人目の44秒台突入には届きませんでしたが、静岡国際、木南記念に続いて再び自己記録を更新。静岡国際で佐藤拳太郎選手(富士通)がマークした今季日本最高に並び、日本リスト1位タイに浮上しました。男子3000mでは、オレゴン世界選手権5000mに出場した遠藤日向選手(住友電工)が、左アキレス腱痛からの回復途上ながら日本歴代4位の7分45秒08で優勝。2位の塩尻和也選手(富士通)も日本歴代5位の7分46秒37でフィニッシュしています。


秦と北口は日本人トップながら

修正しきれず優勝ならず


写真提供:フォート・キシモト

なお、今季初戦からレベルの高いパフォーマンスを見せてきたことで、記録更新への期待が集まっていた女子走幅跳の秦澄美鈴選手(シバタ工業)と女子やり投の北口榛花選手(JAL)は、どちらも日本人1位の座は確保したものの、好調ゆえに生じた技術面の小さな狂いを修正しきれず、ほろ苦い結果となってしまいました。ビッグジャンプを繰り出しつつも、わずかなファウルが続いた秦選手は6m48(+0.7)で4位。1回目の試技で助走のリズムを乱したことで、やりの穂先のコントロールに狂いが生じた北口選手は、5回目を終えた段階で59m02が最高記録で8番手という展開に。最終投てきで61m34を投げて、4位に浮上して競技を終えました。ここで出た課題の改善に取り組み、2週間後の日本選手権で挽回に挑むことになります。

各種目の優勝者および注目選手のコメントは、本稿とは別に、大会特設サイトのニュース欄(https://goldengrandprix-japan.com/2023/news/)において掲載しています。あわせてご覧ください。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)


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