写真:フォート・キシモト
7月23日、「オレゴン2022世界陸上競技選手権大会」9日目のイブニングセッションは、1日目の十種競技を除いても6つの決勝種目が行われるタイムテーブルで、週末の夜ということもあり、たくさんのファンがヘイワードフィールドに集まりました。日本選手が駒を進めた決勝は、女子5000mと男子やり投の2種目。女子5000mでは、今回、800m・1500m・5000mの3種目に出場した田中希実選手(豊田自動織機)が、1500m予選、準決勝、5000m予選、800m予選に続き今大会5本目となるレースに臨みました。決勝は、入りの1周が78秒、1000mを3分14秒20で通過していくというスローな展開に。田中選手は、序盤は3~4番手に位置していましたが、その後は入賞が狙える位置でレースを進めていきます。しかし上位集団のペースが上がって、人数が絞られていくうちに、徐々に順位を下げる形に。15分19秒35・12位でフィニッシュしました。
男子やり投決勝には、ディーン元気選手(ミズノ)が出場。1回目の試技を80m69で滑りだしましたが、その後、記録を伸ばすことができず3回の試技を終えた段階で9位に。トップエイト進出は叶いませんでしたが、2012ロンドンオリンピックでの10位というシニアの世界大会における自身の最高成績を上回りました。
また、これらの決勝種目に先駆けて行われた男子4×400mリレー予選には、日本チームが予選1組に登場。佐藤風雅選手(那須環境)、川端魁人選手(中京大クラブ)、ウォルシュジュリアン選手(富士通)、中島佑気ジョセフ選手(東洋大学)のオーダーで挑みました。日本は激しい3着争いを制して3分01秒53でフィニッシュ。アメリカに次いで2着となり、着順での決勝進出を確定させました。世界選手権では予選を突破するのは、実に7位入賞を果たした2003年パリ大会以来です。決勝は、最終日の7月24日に行われます。
競技後の各選手のコメントは、以下の通りです。
◎男子4×400mリレー 予選1組2着 3分01秒53 =決勝進出
1走:佐藤風雅(那須環境)
写真:フォート・キシモト
1走ということで、チーム全体に流れをつくることが僕の仕事だったので、しっかりと前半から攻めたレースをしたが、やはり外(側のレーン)がアメリカということもあり、差がついてしまった。だが、2走の川端選手の顔を見た瞬間、力が湧いてきて、あとは川端に頼むしかなかったので、そこで(彼を)信じて全力で走った。ラップタイムが(4)5秒5(※主催者発表のデータによると45秒51)ということだが、もう少し…45秒前半を目標にしていた。一歩及ばずという形だったので、決勝ではやはり45秒前半でもってこられるように頑張りたい。
2走:川端魁人(中京大クラブ)
写真:フォート・キシモト
1走の佐藤選手がいい位置で(バトンを)もってきてくれたので、僕のところでいいポジションを取るという気持ちで、前半200mを攻めたわりに落ち着いてしっかり走ることができた。個人種目の400mでラスト100mですごく悔しい思いをしたので、マイル(4×400mリレー)ではラスト100mを絶対に切り替えて(走る)というイメージがあった。それをしっかり、ラストで切り替えて、3着でバトンを渡せたということで、僕自身すごく嬉しい。また、落ち着いて走れたのは、残り3・4走に頼りになるメンバーがいたということが大きいかなと思う。3走:ウォルシュジュリアン(富士通)
写真:フォート・キシモト
前の2人がいい順番で来てくれたので、あとは自分が頑張るだけ、そして、4走に渡すだけだった。そして、結果的にいい順位で渡すことができた。「(決勝進出は)もう安心かな」という感じで(バトンを)渡すことができたので、焦りはなかった。自分の走りも、個人(種目のとき)の走りよりもいい走りができたんじゃないかなと思う。
決勝は、あとはもう攻めきるレースをして、みんなでメダルを目標に頑張りたい。この世代からまたマイルチームのレベルが変わっていくと思うので、あとは皆さん、見届けてください。
4走:中島佑気ジョセフ(東洋大学)
写真:フォート・キシモト
楽しかった。目標も達成できて、2着ということで、明日(の決勝)もたぶんいいレーンがもらえると思うので、明日に向けて、さらにもう1回ステップアップして頑張りたい。(バトンが)2番手で来たので、めちゃくちゃ安心ではあった。先輩方があんなにいい走りをしてくれて、僕がここで(順位を)落とすわけにはいかないので、しっかり落ち着いて走れた。バックストレートで、けっこうアグレッシブに来た選手がいたが、うまくブロックされないように、ただ力を使いすぎないように頑張った。そこで落ち着いて走れたことが最後のラストスパートにつながったと思う。マイルっぽい競り合いで楽しかった。◎田中希実(豊田自動織機)
女子5000m 決勝 12位 15分19秒35
写真:アフロスポーツ
昨日から、何の涙がわからない涙が出てきて、自分でもその答えがわからない。その理由の1つとしては、今までの世界陸上やオリンピックでは1回1回に収穫が得られたり、経験だけではなくてタイムか順位かというどちらかは必ずついてきたりしていたのだが、今回の世界陸上は、目に見えてわかるタイムとか順位というものは、せっかくの世界陸上なのに、最後までついてこないまま終わるのではないかという恐怖があったのではないかと思う。そのなかでも、挑戦しようとしたのは、自分がこういうことを初めてやって、身をもって「結果より過程が大事」と胸を張って言えるんじゃないかと思ったから。しかし、さっき(の5000m決勝で)は、最後まで食らいつくというようなことができなかった。全部が中途半端になってしまったんじゃないかなという部分の悔しさがある。5000mの展開については、事前にあまり考えても仕方のない部分があった。万全の状態だったら、いろいろなレースを想定して、いろいろなレースに対応できる身体を仕上げていくと思うのだが、今は、今の身体の状態でできることをするしかないので、あまり展開は考えないようにして、それよりもどんなレースになっても、いかに自分を見失わずに走れるかという精神的な部分に重点を置くようにした。力的には、シュバイツァー選手やマッコルガン選手あたりには食らいついていかないといけないと思ったので、ケニアやエチオピアの選手やハッサン選手にはまだ及ばないが、入賞ラインを考えたときに、つくべき選手はたくさんいたので、「その選手たちがつけるなら、自分もつけるはず」と言い聞かせながら、その選手たちに合わせようとした。しかし、合わせられなかったところがあって、そこは力不足の部分プラス、前に2種目を走っていたことも(理由として)あるかなと思う。
(今回の総括と今後の展望を、との問いに)来年の世界陸上をどうするかも未確定な部分もあるのだが、「今回に懲りる」のではなくて、「今回の経験があったからこそ」次につながるというふうにしたい。次は、逆に1つの種目に絞るかもしれないし、もう1回3種目でどこまで戦えるかやってみるかもしれない。そのときに、自分の心の向くほうに挑戦し続けたい。
◎ディーン元気(ミズノ)
男子やり投 決勝 9位 80m69
写真:アフロスポーツ
いや、強すぎっす、みんな(笑)。(参加)標準記録(85m00)の3m上を投げないとメダルを取れない試合。(トップ)エイトを見ると、自分も残れているラインだったので、(そこに届かなかったのは)悔しいのひと言だが、その上を見て、今日はたくさん学んだ。どちらかというと、「標準記録を切って楽に出て、ここで勝負するレベル」ではない。今日の結果を受け入れて、次、いかに標準記録を切って、ここで戦う準備をしてこられるかというフェイズに行くのが次の段階だと思う。それに向けて頑張りたい。投てき自体は、落ち着いてできたのだが、2投目を外してしまったので、そこが今日の敗因といえる。もうちょっとやりが(高く)上がれば、(トップ)エイトラインくらいは飛んだのかなというのがあるのだが、それも実力だと思う。まあ、最低限80mを投げることもできた。10年前(初めてシニアの世界大会代表となった2012年ロンドンオリンピックでの決勝記録)は確か79m95だったが、今回はしっかり決勝で80(m)を越えたので、大目に見れば、ちょっと成長したのかなという感じ。力はあると思うのだが、それを出す力がないというところだと思う。昨日はいいもの(女子やり投で北口榛花選手が銅メダルを獲得)を見せてもらえたし、今日は今日で90mの投てきを3回も見られたので、いい世界陸上になったと思う。
冷静な試合運びもできたし、(今日の結果の原因は)シンプルに力不足かなというのを感じているので、また日本に帰って、ちょっと休んで、新井涼平(スズキ)とかとも合宿は予定しているので、そういうところで情報交換をしながら、どうやって次、世界と戦っていこうかというところ。男子はレベルが本当に高いので、いかにメダルとか距離にこだわらずに自分の動きにこだわれるかというところが、これからの課題かなと思う。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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