大会もいよいよ終盤にさしかかった「オレゴン2022世界陸上競技選手権大会」。大会8日目となる7月22日のイブニングセッションに行われた女子やり投決勝で、女子キャプテンの北口榛花選手(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)が63m27で銅メダルを獲得しました。
日本の女子競技者が、フィールド種目でメダルを獲得するのは、オリンピックを含めて史上初の快挙です。
以下、北口選手の喜びの声をご紹介しましょう。
◎北口榛花(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)
女子やり投 決勝 3位 63m27
Q:まず、今の心境を。
北口:すごく嬉しいというのが一番。なかなかうまく行かなかった時期もたくさんあったし、海外で過ごす時間が長くて、家族と一緒に過ごせなかったり、友達と一緒に遊べなかったり、コーチとたくさんケンカしたり(笑)、そういうことがあったのだが、世界ユース(2015年世界ユース選手権)で勝ってから、世界にまた戻ってこられたのはすごく嬉しいこと。このメダルが、また日本女子やり投界の勢いを、より加速できたらいいなと思う。
Q:メダル獲得が決まった瞬間の心境は?
北口:正直、ダメだと(笑)思っていた。後ろの(試技順の)2人が強いことはわかっていて、「ああ、絶対に抜かれる」と思っていたので、私は「ダメだ、ダメだ」とコーチに言っていたのだが、最後に(メダル圏外になるまで)抜かれなかったときは(すぐには)よくわからなくて、「ホッとした」というような安心感が強かった。自然に涙が出てきた。
Q:投てきを1回目から振り返ってみてください。
北口:今回は「1回目を大事に」と言われていたので、1投目で62m(07)を投げられたことにはすごく安心して、その後の試技に臨むことができた。しかし、ちょっと安心しすぎたみたい(笑)で、2・3投目(ファウル、55m78)がダメだった。このところ(出場する)参加人数が多い試合というのをあまりしてきていなかったこともあり、12人のペースというのがうまくつかめず、(試技間に)動きすぎたり動かなすぎたりというのがあった。また、5投目(ファウル)はグリップがうまく握れなくて、真下にやり先が向いたまま、55(m)くらいまで飛んでいったと思うのだが、「そのくらい力があるのなら、普通は投げられるでしょ」と言われて(笑)、6投目(63m27=決勝記録)に臨んでいた。
(6投目は)あまり自分のなかでは、完璧な投てきができたというイメージはなくて、ちょっと物足りないと感じるくらいの投てき内容だったので、そこで2番まで上がるとは思っていなかった。また、映像のラインを見たときに銅メダルのラインよりも手前に刺さっているように見えたので、「ああ、ダメだったか」と思っていたのだが、表示を見て「え、2番じゃん」と思って(笑)…。でも、残りのメンバーを見たら、すごい顔ぶれ。しかも(差が)2cmとか5cmとかだったので、「絶対に無理だ」と思い、コーチからは「このあとの選手の試技は見るな」と言われたので、(ピットに背を向けて)スタンドのほうをずっと向いていた。やっぱりアメリカの選手は強かったし、最後、中国の選手のときも、すごくドキドキしながら見ていた。
Q:メダルが決まったとき、コーチからはなんと言われたか?
北口:あまり話していないが、「おめでとう」と言われた。でも、その前に「6投目が64(m)行かなかったことが残念だ」と言われて、「はいー」と思いながら(笑)聞いていた。でも、コーチのほうが緊張していたし、私が投げるときに力んでいたと思う(笑)ので、(メダルが取れて)よかった。
Q:二人三脚でやってきたコーチとの今までを改めて振り返って感じることを。
北口:違った文化を受け入れることは、そう簡単ではないと思うし、長い移動もたくさんして日本に来てくれたりすることも、チェコに家族もいながら、教えている子もいながら、私のためだけにそういう行動をとるのは、なかなかできないことだと思うので、すごく感謝している。
Q:一度、順位を落としたときは、どんな心境だったか?
北口:5位くらいまで落ちたときは…、「あ、これが、私が乗り越えなきゃいけない局面だ」と思った。ここ最近はそういう試合がなかなかなくて、6投目が強いというイメージは持たれていないと思うが、高校時代は6投目が強かったので、そのときの気持ちを思い出して、「6投目、(自分は投げることが)できる子だ」(笑)と思っていた。「誰より投げる」とかそういうことではなく、「自分がもっと投げられるのに投げられていない」ということがすごく嫌だったので、とにかく「自分が投げられる最大限の距離を投げたいな」と思って臨んだ。
Q:投てき内容は、満足したものはなかった?
北口:満足した感じはない。1本目が終わったときに、コーチから「今日は65(m)が狙えるぞ」と言われて、そのつもりでやっていたので、試合内容を含めて、やっぱりバーバー選手が途中で66(m)を投げたのも、「やっぱり強いな」と思った。
Q:来年の世界選手権や、パリオリンピックにつながる大きな一歩となったと思うが…。
北口:(世界選手権が行われる)ブダペストは、コーチの計算ではチェコから近く、車で行く気でいるらしい。600kmもあるのだが(笑)。(チェコ滞在時にお世話になっている)コーチの家族とかにも恩返しできるチャンスかなと思っているし、パリ(オリンピック)に向けては、入賞を目標にしていたのだが、こうやってメダルを今取ることができて、また、同じようにメダルを取り続けて、最終的には「一番いい色」のメダルを取れるようにやっていきたい。
Q:女子やり投でメダルを取ったことへの評価を。
北口:これを続けること(メダルを獲得し続けること)が大事だし、自分がやっていることは「私だからできること」じゃなくて、「みんなができること」だというふうに思って、日本のやり投の選手たちがみんなで頑張っていけたらいいなと思う。
※コメントは、競技後、ミックスゾーンで行われた共同インタビューでの発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォートキシモト
>>オレゴン2022世界陸上競技選手権大会 特設サイト
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■【オレゴン世界選手権】女子やり投・北口榛花(JAL)事前会見
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