2021.06.23(水)大会

【第105回日本選手権展望】男子フィールド編Vol②(投てき)



第105回日本選手権が6月24~27日、U20日本選手権との併催で、大阪市のヤンマースタジアム長居において行われる。ご存じの通り、この大会は、コロナ禍により1年延期されて今年の7月30日から東京・国立競技場で開催されることになった東京オリンピックの日本選手代表選考会。別の会期で行われた男女10000m(5月3日実施)と男女混成競技(十種競技、七種競技;6月12~13日実施)を除くトラック&フィールド34種目(男女各17種目)において、“2021年日本一”が競われるとともに、自国で開催されるオリンピックの出場権を懸けた最後の戦いが繰り広げられる。
この日本選手権で、自国開催のオリンピック出場を即時内定させるためには、「日本選手権で3位内に入ること」と「日本選手権も含めた有効期間内に、世界陸連(WA:World Athletics)の設定した参加標準記録を突破していること」が必須条件となる。つまり、すでに参加標準記録を突破している者にとっては、日本選手権上位3選手に授与される「金・銀・銅のライオン(の顔が彫り込まれた)メダル」が、そのまま「五輪行きプラチナチケット」となるということ。参加標準記録突破者が複数出ている種目では、このメダルを巡る戦いは、壮絶なものとなるはずだ。
一方で、WAは、今回の東京オリンピックから、ワールドランキングによるオリンピック出場の道も採用した。これは各種目の出場枠(ターゲットナンバー)を上限として、まず参加標準記録突破者(ターゲットナンバーの約半数を想定)に出場資格を与え、残りの枠を、1カ国3名を上限に参加標準記録者を含めて順位づけたワールドランキングの上位者が得るという仕組みだ。これにより参加標準記録を突破できていない競技者、あるいは参加標準記録突破者がゼロの種目でも、このランキングでターゲットナンバー内(詳細および最新のランキング順位へのリンク先は、https://www.jaaf.or.jp/news/article/14737/ で紹介)に入っていれば、出場権を獲得することができる。ただし、この場合も、同条件となった場合は、日本選手権の順位が最優先されるため、日本選手権でいかに上位を獲得しておけるかが明暗を分けることになる。
参加標準記録、ワールドランキング。どちらの場合においても、この日本選手権の結果が大きな鍵となるだけに、第105回の歴史のなかでも例のない激戦や名勝負を期待することができるだろう。 ここでは、特に「東京オリンピック代表選考争い」にスポットを当てて、大会4日間の見どころを、男女それぞれにトラック種目、フィールド種目に分けて、ご紹介していく。
なお、会場での観戦については、開催地である大阪府の新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が延長されたことにより、ぎりぎりまで最終決定が待たれる形となったが、人数制限はあるものの、各日ともに観客を迎えて実施できることが発表され、観戦チケットが6月22日から販売されることとなった(チケット販売に関する詳細は、https://www.jaaf.or.jp/jch/105/ticket/ を参照されたい)。
一方で、まだまだ“コロナ禍前”のように、気軽に現地観戦へ出向くのは難しいという状況にある方々も、残念ながら多いはず。大会の模様は、NHKがテレビ放映を行うほか、インターネットによるライブ配信も実施を予定している。これらも利用して、ぜひ熱い声援を送っていただきたい。また、この放映・配信スケジュールのほか、タイムテーブルやエントリーリスト、記録・結果の速報、競技者たちの声は、日本選手権特設サイト( https://www.jaaf.or.jp/jch/105/ )や日本陸連公式SNSにおいて、随時、最新情報をお届けしていく計画だ。こちらもぜひ観戦に役立てていただきたい。

※記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は6月18日判明分により構成。ワールドランキング情報は、同日以降に変動が生じている場合もある。なお、欠場に関しては、大会本部が受理し、6月15日に発表した公式情報に基づいているが、一部、6月22日に追加発表された情報を反映した。

 
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト

 

【男子フィールド】

◎投てき

・男子砲丸投&円盤投

東京オリンピックの参加標準記録は、砲丸投が21m10、円盤投は66m00。どちらも日本記録(砲丸投18m85、円盤投62m59)で比較しても大きな差があり、残念ながら日本選手には、非常に遠い記録と言わざるを得ない。
 その両種目ともに、今季の日本最高は18m01と60m69で、18m台は1名、60m台は2名しか突破できていない。投てき練習等の環境づくりを考慮すると、コロナ禍の影響を受けやすい種目ともいえるが、オリンピックイヤーという点では、もう少し全般的な記録の盛り上がりが欲しいところだ。
砲丸投で最も安定感があるのは、今季リスト1位に立つ森下大地(第一学院高教)。記録会2戦を経て臨んだ静岡国際で18m01をマークして優勝すると、水戸招待2位となったが、その後、RSTと東日本実業団を制している。自己記録は昨年出した18m29で、日本選手権は2019年の2位が最高位。今回では、その両方を上回っていける好機といえる。18m85の日本記録を2018年に出している中村太地(ミズノ)は、今季は16m49がシーズンベスト。ダイナミックな回転投法は、ハマれば大きく記録を伸ばせるだけに、18m台を大きく上回るパフォーマンスが多かった2017~2019年あたりの記録水準に戻したい。このほか、18m台の自己記録を持つ佐藤征平(新潟アルビレックスRC、18m20)、村上輝(日本体育施設、18m03)も、“金色のライオン”を狙っての1投を期しているはずだ。18mラインを前後する勝負になった場合は、2019年にタイトルを獲得している武田歴次(栃木スポ協)も含めて混戦となるだろう。
前回、初優勝を果たした幸長慎一(四国大)は、円盤投は中学時代から、砲丸投は高校時代から、年代別のトップで活躍してきた選手。持ち記録では、水準が高いと思われていた円盤投より先に、この種目で日本一の座に収まった。大学院2年目となる今季も砲丸投と円盤投の2種目に取り組んでいるが、5月末に円盤投で日本人5人目となる60mオーバーを果たして、日本歴代4位の60m69をマークし、今季日本リストトップに立っている。砲丸投のシーズンベストは、円盤投との2冠を獲得した日本学生個人選手権でマークした17m76で、これは自己3番目の記録となる。円盤投に続く18mの大台突破なるか。実現すれば、2連覇も見えてくるはずだ。
さて、円盤投は、前回2年連続7回目のタイトル獲得に成功した日本記録保持者(62m59)の堤雄司(ALSOK群馬)が優勢とみられていたが、2018年に62m16の日本記録を出して優勝を果たしている湯上剛輝(トヨタ自動車)が、5月に遠征したスウェーデンで58m60を2回投げるなど、まずまずの記録で推移していること、前述の通り幸長が60m台をマークしたことなどもあり、三つ巴の戦いとなる可能性が出てきた。堤は、初戦の兵庫リレーが51m57にとどまる波乱の滑りだしで、その後も、水戸招待、東日本実業団を制したが、記録的には今ひとつ。6月のデンカチャレンジで60m62をマークして、ようやく60mラインを超えてきた。2017年以降にマークした60m台は、これで通算9回(設備の不備により非公認となったものを加えると10回)に。このレベルの高さは国内では群を抜いている。感触さえ取り戻すことができれば、日本選手権でも60mスローが見られるはずだ。できることなら、この3人による、60mラインをはるかに超える落下点の応酬が見られることを願いたい。


 

・男子ハンマー投

男子ハンマー投もオリンピック参加標準記録は77m50と、現時点では突破が困難な種目だが、国内の記録水準は少しずつではあるものの確実に高まってきている。今季の日本リストには、3選手が71m台で並んだ。2017年日本リストでは上位3選手が70m以上をマークしているが、日本選手権前の段階で2名以上が70mを超えていた年は、少なくともここ10年はない。また、トップ3の記録が、すべて自己記録を更新してのものである点も、頼もしく感じられる。
記録と安定性という点では、前回覇者の柏村亮太(ヤマダホールディングス)の充実ぶりが際立つ。静岡国際、RST、東日本実業団をすべて71m超えで優勝。各大会の試技内容を振り返ると、静岡では1回だった71m台が、RSTでは2回となり、4年ぶりの自己ベストとなる71m50の今季日本最高をマークした東日本実業団では、最初の3回で71m台、4・5回目を70m台、6回目も69mでまとめた。優勝記録は、2回目の投てきでまず71m40の自己新を出したうえでの再更新という内容だった。すべてが噛み合えば、74m前後の“一発”が出てもおかしくないような印象を受ける。2年連続4回目の優勝に向けて、視界良好といえるだろう。
躍進著しいのが、木村友大(ゼンリン)と中川達斗(九州共立大)の“九州共立大先輩後輩コンビ。”大学院を修了して今春から社会人となった木村は、4月の大学記録会で71m21(日本歴代7位)を投げて、2017年出した自己記録(70m06)を更新。このときのシリーズでは、2回目に71m21、3回目に70m06、そして4回目に再び71m21をマークしている。静岡国際、東日本実業団も70m台を投げており、全体のレベルが一段階上がった印象を受ける。一方の、中川のほうは、急成長という言葉がぴったりくる伸び方をしている。昨年までのベストは、前回日本選手権でマークした66m10だったが、今季は初戦の記録会を69m61スタート。これを含む出場5試合すべてで昨年までの自己記録を上回った。シーズンベストの71m10(日本歴代8位)は、静岡国際で先輩の木村を抑えて、柏村に続いたときに出した記録だ。
このほか、昨年70m台に乗せてきた植松直紀(スズキ、70m46)、古旗崇裕(みかん山、70m23)に加え、2018年に70m63を投げている2018年チャンピオンの墨訓熙(小林クリエイト)、今季リスト4位(69m62)にいる保坂雄志郎(埼玉医科大学G、70m46、2016年)も70mスロワー。昨年、大学2年生ながら70mに迫る69m61をマークした福田翔大(日本大)も含めて、70mラインを超えたところに落ちるハンマーが数多く出るなかで入賞争いが繰り広げられるようだと、会場は大いに盛り上がることだろう。

・男子やり投

前回の日本選手権は、7年ぶりに自己ベスト(84m28、2012年)に迫る84m05を投げて復活を印象づけていたディーン元気(ミズノ)の2012年以来となるV奪還なるか、それとも日本のエースとして王座を守り続けてきていた新井涼平(スズキ)の7連覇なるかが注目されたなか行われ、5回目に80m07を投げてトップに立ったディーンを、新井が最終投てきで逆転して81m57で優勝するというスリリングな展開となった。男子やり投は、85m00という高いレベルが参加標準記録ながら、東京オリンピックに向けて“世界で戦える”位置づけで強化が進められてきた種目。その軸になる存在として期待されてきたのがこの2人だった。新井は標準記録を上回る自己記録(86m83、2014年)を持ち、2015年北京世界選手権(9位)・2016年リオ五輪(11位)で決勝に進出。ディーンもベストは84m28(2012年)ながら2012年ロンドン五輪でファイナリスト(10位)になっている。表舞台に飛び出したのはディーンのほうが先だったが、1991年生まれの同い年。どちらも故障に苦しむ時期が長かっただけに、前回の戦いぶりは、「ようやく、両エースが揃って戻ってきた」という印象を残すものだった。
しかし、今季は、再びやや様相が変わってきている。新井は、3月に79m20を投げてシーズンインしたものの、織田記念を欠場したのちに、RSTは記録なしに終わり、その後は競技会に出てきていないのだ。この結果、春の段階では日本勢の1番手にいたワールドランキングも日本人3番手となる36位へ後退し、ターゲットナンバー(32)の圏外へ。非常に厳しい状態で日本選手権を迎えようとしている。一方のディーンは、例年同様にオフシーズンから春にかけて海外でしっかり強化し、3月には南アフリカで82m15をマークする上々の滑りだしを見せていたが、強風下で行われた兵庫リレーで感覚に狂いが生じ、その後、織田記念とデンカチャレンジで80mラインは越えているが、これという投てきを見せることができていない。また、兵庫リレー以降、勝つことができていない点も気にかかる。
両エースが苦戦するなか、快進撃を見せているのが、この2人に続くとみられていた小南拓人(染めQ)と小椋健司(栃木スポ協)。特に充実が著しいのは小南で、織田記念で日本歴代5位の82m52でマークして、2019年に出していた自己記録81m73を更新すると、RSTで80m98、木南記念でも82m43を投げて、3大会に勝利した。これによってワールドランキングも日本勢最上位の27位へとジャンプアップ。五輪代表の座に最も近い場所で日本選手権を迎えようとしている。この小南に、今季2回土をつけている小椋も侮れない存在だ。小南とは、学生時代から同学年ライバルとして競い合ってきた。今季は、織田記念(79m30)、東日本実業団(79m27)で自己記録79m36(2019年)に迫る投てきを見せたのちに、木南記念で79m74の自己新をマーク。東日本実業団から3連勝となったデンカチャレンジでは81m63まで記録を伸ばしてきた。この猛チャージによりワールドランキングのポイントもアップ。日本選手2番手となる34位へと浮上し、“ターゲット圏内”が見える位置につけている。
小南と小椋は、もちろん標準記録突破と初優勝を目指しつつも、まずは自己ベストに迫る記録と3位以内を意識しながらの戦いとなるだろう。ワールドランキングで日本人4番手となるディーンは、標準記録を突破しての即時内定に挑むことになる。楽ではない戦いだが、実現できれば、9年ぶりの自己新記録と2大会ぶりの五輪チケットを手に入れるとともに、9年ぶり2回目の王座奪回も確実だろう。また、新井は、他選手の状況にもよるが、2大会連続の五輪代表入りを果たすためにはターゲットナンバー圏内に再浮上できる記録をマークしたうえで表彰台に立つことが必要だ。いずれにしても記録が求められる状況だけに、気象条件に恵まれることを祈りたい。

 
■チケット情報
https://www.jaaf.or.jp/jch/105/ticket/
■【日本選手権】応援メッセージキャンペーン!あなたの言葉で東京の舞台を目指す選手の背中を押そう!
https://www.jaaf.or.jp/jch/105/news/article/14925/
■東京2020オリンピック競技大会 代表選手選考要項
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/201907/01_171958.pdf
■【日本選手権】エントリーリスト
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1556-4.pdf
■【日本選手権】競技日程
https://www.jaaf.or.jp/jch/105/timetable/

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