第105回日本陸上競技選手権(https://www.jaaf.or.jp/jch/105/)の最終日は6月27日、大阪市のヤンマースタジアム長居で12種目の決勝を行いました。男子110mハードルで泉谷駿介(順天堂大)が13秒06の日本新記録を樹立し、男子走幅跳でも橋岡優輝(富士通)が8m36の大会新記録をマークするなど好記録が相次ぎました。また、泉谷、橋岡をはじめ4種目で9人の選手が東京2020オリンピック競技大会の代表に内定しました。
今大会では、2種目で日本新記録、4種目で大会新記録が誕生し、オリンピック代表にも新たに15人が加わりました(男子=6種目・14人、女子=1種目・1人。他に女子で2人が自身2つ目の種目で内定)。最優秀選手には泉谷と、女子やり投で代表に内定した北口榛花(JAL)が選ばれました。新型コロナウイルス感染拡大防止のためさまざまな対策や制約の下での開催でしたが、選手の皆さんの全力を尽くしたパフォーマンスや、テレビやライブ配信などによる応援も含めたファンの皆さんの力強い後押しにより、充実した4日間となりました。
内定者以外のオリンピック代表は、今週の世界各国の大会結果を反映した世界ランキングも踏まえて代表選考要項にのっとって選考され、7月2日以降に発表します。東京オリンピックの陸上競技は7月30日から行われます(敬称略)。
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男子110mハードル決勝は、今大会で最も大きな驚きを呼んだレースとなりました。泉谷が金井大旺(ミズノ)とともにスタートから鋭く飛び出し、終盤に競り合いから抜けてリードを広げ初優勝。13秒06(+1.2)の速報表示にスタジアムがどよめき、そのタイムが確定すると、大きな拍手が沸きました。
泉谷の記録は、4月29日に金井が樹立した日本記録(13秒16)を大幅に更新するだけでなく、今年の世界の記録リスト(6月27日判明分)で3位に相当する素晴らしいもの。2位の金井も13秒22。さらに3位の高山峻野(ゼンリン)は13秒37と、いずれも高いレベルの記録で続きました。3人ともオリンピック参加標準記録(13秒32)を突破済みで、今大会で3位以内という条件を満たし代表に内定。多くの選手が切磋琢磨しながら著しいレベルアップを果たしてきた日本の男子110mハードルの勢いを、さらにアピールしました。
興奮を呼んだレースの前には、思わぬ出来事もありました。最初のスタートで、前日の予選で全体のトップとなる13秒28の大会新記録をマークし参加標準記録も突破していた村竹ラシッド(順天堂大)と、13秒37の自己記録を出していた石川周平(富士通)が、ともに不正スタートと判定されて失格となり、戦わずしてスタートラインを離れたのです。2人が不在という異例の状況でやり直されたスタートは、緊張感が一層高まりました。そんな中での泉谷らの快走は、なおさら価値が高いとも言えるでしょう。
男子走幅跳決勝も、スリリングな展開となりました。昨年から8m台を連発している橋岡優輝(富士通)が、1回目、2回目とファウル。しかし動じることなく、絶対に記録を残さなければならない3回目に大会記録を17年ぶりに更新する8m27(+0.6)を跳び、一気にトップに立ちました。上位8人が進出できる4回目以降はしなやかさを増し、5回目に8m29(+1.1)、最後の6回目には自己記録を更新し日本記録まであと4cmと迫る8m36(+0.6)と記録を伸ばして、2年ぶりに日本一の座を奪還。4回目の優勝を果たしました。
昨年覇者の津波響樹(大塚製薬)は1回目に7m91(-0.6)を跳んで2位に入り、日本記録保持者の城山正太郎(ゼンリン)も6位で迎えた4回目に7m90(+0.1)と伸ばして3位に浮上。オリンピック参加標準記録(8m22)を突破している3人が3位以内に並び、そろって代表に内定しました。
女子5000m決勝は、実力者が改めてその力を見せつけました。廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が序盤から日本人選手ではただ一人、先頭で引っ張るオープン参加のカリウキ・ナオミムッソーニ(ユニバーサルエンターテイメント)につき、ラストで離されたものの後続の日本人選手を大きく離して15分05秒69で初優勝。5月3日に行われた10000mに続き、今年度の日本選手権で2種目制覇となりました。
2位には廣中から離れながらもしぶとく走った新谷仁美(積水化学)が終盤で日本人2番手に上がり、15分13秒73で入りました。廣中と新谷はオリンピック参加標準記録(15分10秒00)を突破しているため、ともに今大会の結果で10000mに続いて代表に内定しました。新谷はロンドン2012オリンピックでも両種目に出場しており、再びの2種目挑戦となります。
昨年12月の前回日本選手権長距離でこの種目を制して一足先に代表内定をつかんでいた田中希実(豊田自動織機TC)は15分18秒25で3位でしたが、力走が注目を集めました。田中は5000mのわずか35分前にスタートした800mでも2分04秒47で3位に入ったばかりだったからです。異例の挑戦でどちらも表彰台に立つ奮闘は、高い能力を改めて証明しました。
今大会を締めくくるレースとなった男子200m決勝は、小池祐貴(住友電工)が終盤の強さを発揮し、20秒46(+1.0)で制覇しました。2日前に4位となった100mとあわせ、両種目で活躍している小池ですが、日本選手権のタイトルはこれが初めて。オリンピック参加標準記録(20秒24)も突破しているため、100mではわずかに届かなかった代表内定をつかみました。
デーデー・ブルーノ(東海大)が20秒63の自己新記録で100mに続いて2位に入りました。ロンドン2012、リオデジャネイロ2016の両オリンピックを経験している飯塚翔太(ミズノ)は20秒93で6位にとどまりました。
男子やり投決勝は、小南拓人(染めQ)がただ一人80mを超える80m08で初制覇。今大会前の時点の世界ランキングではオリンピック出場権獲得圏内に位置しており、今大会後に更新される世界ランキングが注目されます。
女子200mは、兒玉芽生(福岡大)が23秒46(-1.0)で2年ぶり2回目の優勝を果たし、100mとの2冠を獲得しました。男子砲丸投は武田歴次(栃木スポ協)が6回目に日本歴代3位に並ぶ18m64を投げ、逆転で2年ぶり2回目の制覇。男子800mは田母神一喜(阿見AC)が自己記録を更新する1分46秒68で初優勝しました。
同時開催されていた、20歳未満の競技者で競うU20日本選手権も13種目の決勝を行いました。男子800mは後田築(長崎・創成館高)が1分48秒87の大会新記録で制覇。男子走幅跳は深沢瑞樹(静岡・東海大翔洋高)が6回目に7m72(-0.3)を跳んで逆転優勝を果たしました。女子400mハードルは工藤芽衣(立命館大)が58秒97で制し、女子3000mは杉森心音(宮城・仙台育英高)が9分10秒01で優勝しました。
ケニアのナイロビで8月17〜22日に開かれるU20世界選手権の代表は、7月上旬に発表の予定です。
次回大会となる2022年度の第106回日本陸上競技選手権、第38回U20日本陸上競技選手権は2022年6月9~12日の開催を予定しており、開催地は今後決定します。
写真提供:フォート・キシモト
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