このページでは、第102回日本選手権の記録や数字に関しての少々(かなり?)マニアックな「みどころ」などを紹介します。
なお、過去に紹介したものと重複している内容も含まれていることをお断りします。
2018年3月20日から31日の間に8回にわたって本HPで「9秒台」に関わる様々なデータを紹介したが、2017年の「日本10傑」と世界リストにおける順位は、以下の通りだった。
【2017年日本10傑と2017世界リスト・世界歴代(2017年末現在)の順位】
「2017年世界100位(10秒17。計104人)以内」は「7人」で、28人のアメリカ、15人のジャマイカ、8人のイギリスと南アフリカに続き「5位」。4人で6位に並ぶカナダとトリニダードトバゴに水をあけている。よりハイレベルな「50位(10秒08。52人)以内」は「6人」で、31人のアメリカ、8人のジャマイカに続き堂々の「3位」。5人で4位に並ぶイギリスと南アフリカを上回る。
「10傑平均記録」は「10秒104」。2016年以前の歴代最高だった16年の「10秒181(10.01~10.27)」、歴代2位だった14年の「10秒201(10.05~10.27)」、歴代3位だった13年の「10秒223(10.01~10.33)」を大きく上回った。
「2017年・国別10傑平均」の「トップ8」は、
で、100位以内の人数と同じくこちらも「5位」。アメリカとジャマイカとの差はまだまだ大きいが、3位・南アフリカ、4位・イギリスに僅差で迫り、6位以下の国からは明らかに抜き出ている。
では、2018年シーズンはどうなのかを2017年の同じ時期(6月15日時点)のデータと比較してみた。
2018年6月15日現在の10傑は、
【2018年日本10傑(6月15日現在)】
で、「10傑平均」は、「10秒230」。
6月15日現在の「2018年・国別10傑平均」の「トップ8」は、
2017年の1年間トータルでの5位と比較すると、カナダに先行を許してひとつダウンの6位だが、それでも世界のトップ6だ。
2017年の同じ時点での日本10傑は、
【2017年日本10傑(6月15日現在)】
で、「10傑平均」は、「10秒134」だった。
「10秒230-10秒134」で、その差は「0秒096」。
上記の平均タイムからすると、2017年の同じ時期よりも「見劣りする」と感じるかもしれない。
しかし、2017年のこの時点での10傑のすべてが「+1.3~1.9m」という「いい追風」に恵まれ、その平均風速が「+1.78m」だったのに対し、2018年の平均風速は、「+0.88m」で、その差は「0.90m」。
「たら」「れば」の話にはなるが、追風で0.9mの風速の違いが記録に及ぼす影響を算出すると、用いる計算式によって違いはあるが、「0秒05~0秒07程度」という数字になる。
ということは、2018年の10傑が2017年6月時点並みの平均で「+1.8m程度」の追風に恵まれていれば、10傑平均は「10秒16~10秒18程度」という計算になる。つまり同じ6月中旬時点の平均タイムの2017年と2018年の風速を考慮したタイム差は「0秒03~0秒05程度」ということで、それほど「見劣りする」という訳ではないといえそうだ。
なお、この維新記念競技場では2011年10月に国体が行われた。成年100mでは、慶大1年生だった山縣選手が10秒23(+1.8)のジュニア新(当時)で3位入賞、もちろん自己新。少年A100mでは、東京高校3年生だったケンブリッジ選手が10秒67(-0.1)で4位入賞、準決勝では10秒59(+0.4)の自己新記録。少年B100mでは、洛南高校1年生だった桐生選手が、10秒58(-0.2)の自己新で優勝し、立命館慶祥高校1年生だった小池祐貴選手(ANA)が10秒63の自己新で2位だった。と、それぞれにとって思い出に残る競技場でもあることだろう。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
・「/」の後ろは、追風参考での最高記録
1)10.05 2002・2017年
2)10.16 2017年/10.12w 1999年
3)10.18 2017年
4)10.26 2017年/10.22w 1999年
5)10.35 1998・2004・2013・2014年/10.25w 1999年
6)10.36 2013年/10.28w 1999年
7)10.36 2013年/10.28w 1999年
8)10.38 2014年/10.30w 1999年
以上の通りで、上位4人に関しては2017年が史上最高のレベルであったことがわかる。
100mの9秒台は130人(888回)だから、200m19秒台の方が「希少価値」が高いといえる。
昨年6月中旬時点までのデータだが、200m19秒台の選手の100mの最高記録を調べ、それぞれの種目の平均値と標準偏差、100mに対する200mの記録の倍率を算出すると以下のようになる。
200m19秒台の選手の中には、「200mが本職」であったり「100mが本職」であったり、中には「400mが本職」という人が混在する。標準偏差が200mよりも距離の短い100mの方が大きいのはそのためであろう。
上記のデータからすると、200m19秒台の選手は平均的には100mのベスト記録の「1.982391倍」で200mを走っている。逆算すると、100mを10秒08で走れる選手ならば、200mを「19秒台(19秒99)」で走れるということになる。この倍率を桐生選手の100m9秒98に当てはめると200mは、「19秒784」。ルールに従って1000分の1秒単位を切り上げると「19秒79」だ。標準偏差を考慮すると「19秒478~20秒091」である。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
1)20.03 2003年
2)20.31 2016年
3)20.33 2016年
4)20.48 2013年=3着が2人いて実質的には4位(4番目)にあたる
5)20.52 2013年
6)20.62 2013年
7)20.76 2003年
8)20.95 2003年
金丸選手の連勝がストップした16年に勝ったウォルシュ・ジュリアン選手(東洋大)は、17年はケガのため欠場。これまた今回は「巻き返し」の日本選手権となる。
また、今年5月6日に45秒81走っている駿河台大の若林康太選手が制すれば、同大学にとってすべての種目を含めて初の日本チャンピオンとなる。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
1)44.78 1991年
2)45.71 2016年
3)45.78 2001年
4)45.95 2001年
5)46.12 2003年
6)46.25 2003年
7)46.52 2016年
8)46.64 2016年
なお、17年の予選第2組の2着は45秒67、第1組の4着が45秒95で上記とタイ、5着が45秒99、6着が46秒06だった。また、15年の予選1組も好条件の風のもと非常にレベルが高く、2着が45秒52、3着が45秒58、4着が45秒85で、17年の予選のさらに上をいった。
17年に優勝した館澤亨次選手(東海大)が、連覇の有資格者だが、今回も別な選手が制することになれば、「10年連続連覇なし」となる。
過去のデータを調べると、1942年から戦争をはさんで54年までの「10大会連続連覇なし」というのがある。「9大会連続連覇なし」は、100年近く前の1920年から29年まで9大会(年数は10年だが24年は開催されず)と31年から39年の9年間というのがある。
今回の「参加標準記録」の「A/3分45秒00」をクリアして出場するのは、28人。「B/3分46秒50」での出場者は2人で、計30人。一方、90年の1年間と91年の日本選手権前までに「3分45秒00以内」で走っていた選手は、6人。「3分46秒50以内」を加えても10人しかいなかった。そんな状況でも、下のようなタイムが出た。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
1)3.38.88 1991年
2)3.40.59 2005年/3.40.19 1989年=1位が外国人だったレース
3)3.41.19 1991年
4)3.41.42 1991年
5)3.41.84 1991年
6)3.41.85 1991年
7)3.42.20 1991年
8)3.43.21 1991年
「日本一」や「表彰台」、あるいは「入賞」を目指して「勝負重視」の展開になるのは致し方ないところではあろうけれども、そろそろ「3分40秒切りが続出」というレースを見せてもらいところである。
長期間、連覇が出なかった過去のデータを調べると第1回大会の1913年から23年までの9大会連続(5000m未実施を含め11年間)、51年から60年までの10年連続、62年から77年まで16年連続というのがある。
ただし、51年からの10年連続と62年からの16年連続では複数回勝った選手がいる。「すべて別人が優勝」ということであれば、1913年からの9大会連続(11年間)というのがあり2017年段階で肩を並べていることになる。
なお、矢澤選手は11年にも勝っていて4回目の制覇となれば、優勝回数の歴代5位タイとなる(トップは7回の安田寛一さん/1957~64年)。今シーズン、13秒5台前半を連発している金井大旺選手(福井県スポーツ協会)に、関東インカレを13秒45(+3.5)で制した古谷拓夢選手(早大)も初優勝に向けて虎視眈々であろう。
13秒そこそこの世界のレベルとは日本記録でも0秒4~5あまり差があるが、「2017年世界100位(13秒65。計103人)以内」に入った日本人は9人。これは、26人のアメリカに続き、何と「2位」で、ジャマイカの7人、フランス・ブラジルの各6人を抑えている。
決勝における着順別の最高記録は、下記の通り。8着の最高記録である13秒92以内の参加資格記録を有する選手が22人エントリーしているので、各順位の最高記録の更新も期待できそうだ。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
・「/」の後ろは、追風参考での最高記録
1)13.45 2017年
2)13.59 2014年/13.51w 2016年
3)13.61 2017年/13.61w 2016年
4)13.67 2013年/13.66w 2016年
5)13.72 2013年/13.71w 2016年
6)13.80 2007・2017年/13.78w 2016年
7)13.80 2017年
8)13.92 2013・2017年
2017年は「向風0.2m」の条件だったが、タイ記録を含めて1・3・6・7・8着が着順別最高記録となった。なお、日本記録に0秒01と迫る大会記録の13秒40(増野元太/ヤマダ電機)は、2017年の予選でマークされた。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト
なお、過去に紹介したものと重複している内容も含まれていることをお断りします。
【100m】
★今年も「ハイレベル」
2017年に100m・200mの「二冠王」に輝いたサニブラウン・アブデル・ハキーム選手が5月に痛めた右脚付け根の回復が間に合わず「欠場」となったのは残念。とはいえ、今回も男子100mは、「最注目」の種目のひとつだ。2018年3月20日から31日の間に8回にわたって本HPで「9秒台」に関わる様々なデータを紹介したが、2017年の「日本10傑」と世界リストにおける順位は、以下の通りだった。
【2017年日本10傑と2017世界リスト・世界歴代(2017年末現在)の順位】
順) | 記録 | 風速 | 氏名(所属) | 月日 | 2017世界 | 世界歴代 |
---|---|---|---|---|---|---|
1) | 9.98 | 1.8 | 桐生祥秀(東洋大) | 9.09 | 16位 | 98位 |
2) | 10.00 | 0.2 | 山縣亮太(セイコー) | 9.24 | 20位 | 126位 |
3) | 10.05 | 0.6 | サニブラウンAハキーム(東京陸協) | 6.24 | 33位 | 198位 |
4) | 10.07 | 1.8 | 多田修平(関学大) | 9.09 | 43位 | 236位 |
5) | 10.08 | 1.9 | 飯塚翔太(ミズノ) | 6.04 | 47位 | 265位 |
5) | 10.08 | -0.9 | ケンブリッジ飛鳥(ナイキ) | 6.23 | 47位 | 265位 |
7) | 10.13 | 1.9 | 原翔太(スズキ浜松AC) | 6.04 | 71位 | 411位 |
8) | 10.20 | 1.9 | 九鬼巧(NTN) | 6.04 | 125位 | 717位 |
9) | 10.22 | 1.9 | 諏訪達郎(NTN) | 6.04 | 148位 | 861位 |
10) | 10.23 | 1.9 | 藤光謙司(ゼンリン) | 6.04 | 161位 | 935位 |
10) | 10.23 | 0.6 | 宮本大輔(洛南高) | 6.16 | 161位 | 935位 |
「2017年世界100位(10秒17。計104人)以内」は「7人」で、28人のアメリカ、15人のジャマイカ、8人のイギリスと南アフリカに続き「5位」。4人で6位に並ぶカナダとトリニダードトバゴに水をあけている。よりハイレベルな「50位(10秒08。52人)以内」は「6人」で、31人のアメリカ、8人のジャマイカに続き堂々の「3位」。5人で4位に並ぶイギリスと南アフリカを上回る。
「10傑平均記録」は「10秒104」。2016年以前の歴代最高だった16年の「10秒181(10.01~10.27)」、歴代2位だった14年の「10秒201(10.05~10.27)」、歴代3位だった13年の「10秒223(10.01~10.33)」を大きく上回った。
「2017年・国別10傑平均」の「トップ8」は、
順) | 平均 | 国名 | (1位~10位) |
---|---|---|---|
1) | 9.958 | アメリカ | (9.82~10.03) |
2) | 10.021 | ジャマイカ | (9.90~10.12) |
3) | 10.08 | 南アフリカ | (9.92~10.21) |
4) | 10.086 | イギリス | (9.97~10.18) |
5) | 10.104 | 日本 | (9.98~10.23) |
6) | 10.213 | カナダ | (10.01~10.32) |
7) | 10.232 | トリニダードトバゴ | (10.08~10.36) |
8) | 10.245 | 中国 | (10.03~10.37) |
で、100位以内の人数と同じくこちらも「5位」。アメリカとジャマイカとの差はまだまだ大きいが、3位・南アフリカ、4位・イギリスに僅差で迫り、6位以下の国からは明らかに抜き出ている。
では、2018年シーズンはどうなのかを2017年の同じ時期(6月15日時点)のデータと比較してみた。
2018年6月15日現在の10傑は、
【2018年日本10傑(6月15日現在)】
順) | 記録 | 風速 | 氏名(所属) | 月日 |
---|---|---|---|---|
1) | 10.12 | 0.9 | ケンブリッジ飛鳥(ナイキ) | 6.03 |
1) | 10.12 | 0.7 | 山縣亮太(セイコー) | 6.03 |
3) | 10.15 | 2 | 桐生祥秀(日本生命) | 6.1 |
4) | 10.20 | 1.4 | 小池祐貴(ANA) | 4.28 |
5) | 10.21 | -0.7 | 飯塚翔太(ミズノ) | 6.03 |
6) | 10.26 | 1.8 | 宮本大輔(東洋大) | 4.29 |
6) | 10.26 | 1.7 | 多田修平(関学大) | 5.11 |
8) | 10.30 | -0.7 | 長田拓也(富士通) | 6.03 |
9) | 10.34 | 0.9 | 原翔太(スズキ浜松AC) | 6.03 |
9) | 10.34 | 0.7 | 川上拓也(大阪ガス) | 6.03 |
で、「10傑平均」は、「10秒230」。
6月15日現在の「2018年・国別10傑平均」の「トップ8」は、
順) | 平均 | 国名 | (1位~10位) |
---|---|---|---|
1) | 9.975 | アメリカ | (9.92~10.06) |
2) | 10.122 | 南アフリカ | (10.03~10.21) |
3) | 10.125 | イギリス | (9.91~10.30) |
4) | 10.135 | ジャマイカ | (10.00~10.21) |
5) | 10.182 | カナダ | (10.01~10.29) |
6) | 10.230 | 日本 | (10.12~10.34) |
7) | 10.255 | フランス | (10.00~10.45) |
8) | 10.286 | 中国 | (10.05~10.42) |
2017年の1年間トータルでの5位と比較すると、カナダに先行を許してひとつダウンの6位だが、それでも世界のトップ6だ。
2017年の同じ時点での日本10傑は、
【2017年日本10傑(6月15日現在)】
順) | 記録 | 風速 | 氏名(所属) | 月日 |
---|---|---|---|---|
1) | 10.04 | 1.4 | 桐生祥秀(東洋大) | 3.11 |
2) | 10.06 | 1.3 | 山縣亮太(セイコー) | 3.11 |
3) | 10.08 | 1.9 | 飯塚翔太(ミズノ) | 6.04 |
3) | 10.08 | 1.9 | 多田修平(関学大) | 6.1 |
5) | 10.12 | 1.9 | ケンブリッジ飛鳥(ナイキ) | 6.04 |
6) | 10.13 | 1.9 | 原翔太(スズキ浜松AC) | 6.04 |
7) | 10.18 | 1.8 | サニブラウンAハキーム(東京陸協) | 4.14 |
8) | 10.20 | 1.9 | 九鬼巧(NTN) | 6.04 |
9) | 10.22 | 1.9 | 諏訪郎(NTN) | 6.04 |
10) | 10.23 | 1.9 | 藤光謙司(ゼンリン) | 6.04 |
で、「10傑平均」は、「10秒134」だった。
「10秒230-10秒134」で、その差は「0秒096」。
上記の平均タイムからすると、2017年の同じ時期よりも「見劣りする」と感じるかもしれない。
しかし、2017年のこの時点での10傑のすべてが「+1.3~1.9m」という「いい追風」に恵まれ、その平均風速が「+1.78m」だったのに対し、2018年の平均風速は、「+0.88m」で、その差は「0.90m」。
「たら」「れば」の話にはなるが、追風で0.9mの風速の違いが記録に及ぼす影響を算出すると、用いる計算式によって違いはあるが、「0秒05~0秒07程度」という数字になる。
ということは、2018年の10傑が2017年6月時点並みの平均で「+1.8m程度」の追風に恵まれていれば、10傑平均は「10秒16~10秒18程度」という計算になる。つまり同じ6月中旬時点の平均タイムの2017年と2018年の風速を考慮したタイム差は「0秒03~0秒05程度」ということで、それほど「見劣りする」という訳ではないといえそうだ。
★過去5年間、異なる選手がいずれも初優勝
2009年から12年まで江里口匡史選手(大阪ガス)が4連勝したあと、13年からの5年間は、山縣亮太選手、桐生祥秀選手、高瀬慧選手、ケンブリッジ飛鳥選手、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手と、毎回異なる選手が優勝していて、いずれも「初」の選手権獲得。6月23日の20時35分過ぎ、維新百年記念公園競技場のホームストレートを最も速く駆け抜け、そのトルソーがフィニッシュラインに真っ先に到達するのは誰か? そして、そのタイムは?なお、この維新記念競技場では2011年10月に国体が行われた。成年100mでは、慶大1年生だった山縣選手が10秒23(+1.8)のジュニア新(当時)で3位入賞、もちろん自己新。少年A100mでは、東京高校3年生だったケンブリッジ選手が10秒67(-0.1)で4位入賞、準決勝では10秒59(+0.4)の自己新記録。少年B100mでは、洛南高校1年生だった桐生選手が、10秒58(-0.2)の自己新で優勝し、立命館慶祥高校1年生だった小池祐貴選手(ANA)が10秒63の自己新で2位だった。と、それぞれにとって思い出に残る競技場でもあることだろう。
★日本選手権・決勝での「着順別最高記録」
これまでの日本選手権・決勝での「着順別最高記録」は、以下の通り。桐生選手に続く「9秒台」とともに各順位の歴代記録の更新にも注目!!<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
・「/」の後ろは、追風参考での最高記録
1)10.05 2002・2017年
2)10.16 2017年/10.12w 1999年
3)10.18 2017年
4)10.26 2017年/10.22w 1999年
5)10.35 1998・2004・2013・2014年/10.25w 1999年
6)10.36 2013年/10.28w 1999年
7)10.36 2013年/10.28w 1999年
8)10.38 2014年/10.30w 1999年
以上の通りで、上位4人に関しては2017年が史上最高のレベルであったことがわかる。
【200m】
★優勝者が毎年変わる混戦を制するのは?
100mのところでも述べたが、2017年に「100m・200m二冠」のサニブラウン・アブデル・ハキーム選手が欠場。12年からの6年間は、高瀬慧選手(今回は100mのみにエントリー)、飯塚翔太選手、原翔太選手、藤光謙司選手、飯塚選手、サニブラウン選手の順で優勝してきている。100mでこの5年間、毎年チャンピオンが変わっているのと同じような状況にある。これに100m9秒98の桐生選手も参戦予定で、誰が勝つのか100mと同じく興味深い。また、その「タイム(19秒台)」にも期待がかかる。★藤光謙司選手が連続入賞を継続中
この種目での最多優勝回数は、2017年に現役を退いた高平慎士さんの5回(2004・05・08・09・11年)。また、2003年から15年まで13年連続入賞も、この種目での歴代最高。連続入賞の歴代2位は、2017年2着で07年から17年まで11年連続を継続中の藤光選手だ。★「19秒台」なるか??
6月15日現在の世界歴代で200mを19秒台で走った選手は69人(305回)。100mの9秒台は130人(888回)だから、200m19秒台の方が「希少価値」が高いといえる。
昨年6月中旬時点までのデータだが、200m19秒台の選手の100mの最高記録を調べ、それぞれの種目の平均値と標準偏差、100mに対する200mの記録の倍率を算出すると以下のようになる。
100m | 200m | 倍率 | |
---|---|---|---|
平均 | 10.003 | 19.826 | 1.982391 |
標準偏差 | 0.172 | 0.165 | 0.030725 |
200m19秒台の選手の中には、「200mが本職」であったり「100mが本職」であったり、中には「400mが本職」という人が混在する。標準偏差が200mよりも距離の短い100mの方が大きいのはそのためであろう。
上記のデータからすると、200m19秒台の選手は平均的には100mのベスト記録の「1.982391倍」で200mを走っている。逆算すると、100mを10秒08で走れる選手ならば、200mを「19秒台(19秒99)」で走れるということになる。この倍率を桐生選手の100m9秒98に当てはめると200mは、「19秒784」。ルールに従って1000分の1秒単位を切り上げると「19秒79」だ。標準偏差を考慮すると「19秒478~20秒091」である。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
1)20.03 2003年
2)20.31 2016年
3)20.33 2016年
4)20.48 2013年=3着が2人いて実質的には4位(4番目)にあたる
5)20.52 2013年
6)20.62 2013年
7)20.76 2003年
8)20.95 2003年
【400m】
★北川貴理選手が連覇すると史上16人目
2017年は、「3組2着+2」で行われた予選で好記録が続出。走る方向にトラックを回るような「いい追風」にも恵まれ、45秒99で走っても「プラスの3番目で落選」というすごいレベルだった。決勝では風の状況が予選の時とは変わって、誰も前日のタイムを上回れなかったが、予選で45秒48の最速タイムをマークしていた北川貴理選手が、順大の現役学生としてはこの種目では「初」となる優勝を果たした。今回2連覇となれば、この種目では16人目(3連勝以上も含む)になる。5月に痛めた足首(捻挫)の回復具合次第。★金丸祐三選手&ウォルシュ選手の巻き返しは?
金丸祐三選手(大塚製薬)は大阪高校3年生だった2005年から15年まで、個人のトラック同一種目で男女全種目を含めて歴代最多優勝11回(11年連続優勝)を続けてきた。が、その偉業は、故障などもあって16年にストップ(予選で落選)し、17年は7位。3年ぶりの復活優勝となれば、最多優勝回数を「12」に上乗せすることになる。金丸選手の連勝がストップした16年に勝ったウォルシュ・ジュリアン選手(東洋大)は、17年はケガのため欠場。これまた今回は「巻き返し」の日本選手権となる。
また、今年5月6日に45秒81走っている駿河台大の若林康太選手が制すれば、同大学にとってすべての種目を含めて初の日本チャンピオンとなる。
★「U20選手」が勝てば……
5月3日の静岡国際で、東海大学1年生の井本佳伸選手が「U20歴代6位」の45秒82をマーク。井本選手が初優勝すれば、「U20選手」のタイトル獲得は、金丸選手が法大1年生だった06年以来12年ぶりとなる。★日本選手権・決勝での「着順別最高記録」
上述の通り、2017年の予選は45秒台が9人という超ハイレベルな関門だった。そのため、「2017年日本10傑」は「45.99」が10位となり、「日本10傑平均記録」も「45秒760」で歴代2位だった。これまでの日本選手権・決勝での「着順別最高記録」は、以下の通り。<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
1)44.78 1991年
2)45.71 2016年
3)45.78 2001年
4)45.95 2001年
5)46.12 2003年
6)46.25 2003年
7)46.52 2016年
8)46.64 2016年
なお、17年の予選第2組の2着は45秒67、第1組の4着が45秒95で上記とタイ、5着が45秒99、6着が46秒06だった。また、15年の予選1組も好条件の風のもと非常にレベルが高く、2着が45秒52、3着が45秒58、4着が45秒85で、17年の予選のさらに上をいった。
【800m】
★川元奨選手、連勝記録と優勝回数の単独トップに立つか?
2013年から5連勝中の川元奨選手(スズキ浜松AC)が「V6」となれば、この種目の連勝記録でトップタイの石井隆士さん(1974~78年)を突き放して単独首位となる。また優勝回数も6回で横田真人さんと並んでトップに立つことになる。★「実質的大会記録」は?
大会記録の1分46秒21は、ブラジルのバルボサさんが1993年にマークしたが、日本人の「実質的大会記録」は、川元選手の1分46秒22(2016年)。【1500m】
★9年間連覇なし
日本記録(3分37秒42/2004年)保持者の小林史和さん(NTN)が2005年から08年まで4連勝(01・02年も優勝で計6回)したあとの09年からの9年間は連勝をした選手はいない。ただし、田中佳祐選手(富士通)が、12年と14年に勝っている。17年に優勝した館澤亨次選手(東海大)が、連覇の有資格者だが、今回も別な選手が制することになれば、「10年連続連覇なし」となる。
過去のデータを調べると、1942年から戦争をはさんで54年までの「10大会連続連覇なし」というのがある。「9大会連続連覇なし」は、100年近く前の1920年から29年まで9大会(年数は10年だが24年は開催されず)と31年から39年の9年間というのがある。
★混戦を制するのは誰か?
09年以降の9年間のチャンピオン8人のうち、今回もエントリーしているのは、15年に勝った荒井七海選手(Honda。優勝時は、東海大)と連覇を目指す館澤選手のみ。16・17年と連続入賞を継続中なのは、遠藤日向選手(住友電工。16年4位、17年2位)と中川智春選手(トーエネック。16年7位、17年8位)の2人。4月20日に3分38秒65(日本歴代5位、日本人学生歴代2位)で走っている舟津彰馬選手(中大)が勝てば、中大の現役生としては62年の岩下察男さん以来、56年ぶりとなる。★「着順別最高記録」は27年前のものがズラリ
下に示した「着順別最高記録」には、27年も前の1991年のタイムが数多く残ったままだ。今回の「参加標準記録」の「A/3分45秒00」をクリアして出場するのは、28人。「B/3分46秒50」での出場者は2人で、計30人。一方、90年の1年間と91年の日本選手権前までに「3分45秒00以内」で走っていた選手は、6人。「3分46秒50以内」を加えても10人しかいなかった。そんな状況でも、下のようなタイムが出た。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
1)3.38.88 1991年
2)3.40.59 2005年/3.40.19 1989年=1位が外国人だったレース
3)3.41.19 1991年
4)3.41.42 1991年
5)3.41.84 1991年
6)3.41.85 1991年
7)3.42.20 1991年
8)3.43.21 1991年
「日本一」や「表彰台」、あるいは「入賞」を目指して「勝負重視」の展開になるのは致し方ないところではあろうけれども、そろそろ「3分40秒切りが続出」というレースを見せてもらいところである。
【5000m】
★9年間連覇なし
1500mと同じ小見出しだが、2006年から08年まで松宮隆行選手(コニカミノルタ。現、愛知製鋼)が3連勝したあとの09年からの9年間は、毎回異なる選手が優勝している。松枝博輝選手(富士通)が連覇を果たせば、この種目では12人目の連勝(3連勝以上も含む。うち、外国人が1人)となる。長期間、連覇が出なかった過去のデータを調べると第1回大会の1913年から23年までの9大会連続(5000m未実施を含め11年間)、51年から60年までの10年連続、62年から77年まで16年連続というのがある。
ただし、51年からの10年連続と62年からの16年連続では複数回勝った選手がいる。「すべて別人が優勝」ということであれば、1913年からの9大会連続(11年間)というのがあり2017年段階で肩を並べていることになる。
★入賞回数
2011年から4連勝した佐藤悠基選手(日清食品グループ)は、05年から17年までの13年間で4回の優勝を含めて8回入賞している。この種目での入賞回数としては、1932年から40年まで9年連続9回入賞(34年からの6連勝を含む)の村社講平さんがトップで、上野選手は歴代2位。今回も入賞すればトップに並ぶ。★日本人の大会最高記録
大会記録は外国人選手が持っていて、13分14秒18(1998年)。日本人の「実質的大会記録」は、高岡寿成さん(カネボウ)で13分26秒06(1998年2位)。【10000m】
★大迫傑選手欠場で混戦模様か?
2016年と17年を連覇した大迫傑選手(Nike ORPJT)が「次への準備に向かうため」とのことで欠場。連続入賞継続中は、市田孝選手(旭化成。16年4位、17年3位)のみ。11年から4連勝した佐藤悠基選手(日清食品グループ)が4年ぶりにタイトルを獲れば、村社講平さんの優勝回数6回(34年から6連覇)にあと1回と迫ることになる。★日本人の大会最高記録
5000mと同じく大会記録は外国人選手が持っていて、27分26秒26(1995年)。日本人の「実質的大会記録」は、5000mと同じく高岡寿成さん(カネボウ)で27分49秒89(1998年)。【110mH】
★5年間は高山・矢澤・増野選手が入れ替わりで優勝
2017年に1~3位を占めた高山俊野選手(ゼンリン)、矢澤航選手(デサントTC)、増野元太選手(ヤマダ電機)の3人が、2013年からの5年間は代わる代わるで優勝している。13年・矢澤、14年・増野、15年・高山、16年・矢澤、17年・高山といった具合。さて、今回もこの3人からチャンピオンが生まれるのか、あるいはその他の選手が割って入るのか?なお、矢澤選手は11年にも勝っていて4回目の制覇となれば、優勝回数の歴代5位タイとなる(トップは7回の安田寛一さん/1957~64年)。今シーズン、13秒5台前半を連発している金井大旺選手(福井県スポーツ協会)に、関東インカレを13秒45(+3.5)で制した古谷拓夢選手(早大)も初優勝に向けて虎視眈々であろう。
★順位別の最高記録
「2016年日本10傑平均記録」は「13秒669」で史上最高だったが、17年はそれを大幅に上回る「13秒546」で、素晴らしい勢いでレベルアップしている。18年も6月15日時点の10傑平均で「13秒664」と、16年のそれを上回っている。「いい追風」に恵まれれば、14年ぶりの「日本新」のアナウンスを聞くことができるかもしれない。13秒そこそこの世界のレベルとは日本記録でも0秒4~5あまり差があるが、「2017年世界100位(13秒65。計103人)以内」に入った日本人は9人。これは、26人のアメリカに続き、何と「2位」で、ジャマイカの7人、フランス・ブラジルの各6人を抑えている。
決勝における着順別の最高記録は、下記の通り。8着の最高記録である13秒92以内の参加資格記録を有する選手が22人エントリーしているので、各順位の最高記録の更新も期待できそうだ。
<日本選手権・決勝での着順別最高記録>
・「/」の後ろは、追風参考での最高記録
1)13.45 2017年
2)13.59 2014年/13.51w 2016年
3)13.61 2017年/13.61w 2016年
4)13.67 2013年/13.66w 2016年
5)13.72 2013年/13.71w 2016年
6)13.80 2007・2017年/13.78w 2016年
7)13.80 2017年
8)13.92 2013・2017年
2017年は「向風0.2m」の条件だったが、タイ記録を含めて1・3・6・7・8着が着順別最高記録となった。なお、日本記録に0秒01と迫る大会記録の13秒40(増野元太/ヤマダ電機)は、2017年の予選でマークされた。
【400mH】
★安部孝駿選手がV2に挑む
1992年から2016年までの25年間、関東の大学関係者(現役生or卒業生)が優勝していきた。が、17年は中京大卒の安部孝駿選手(デサントTC)が制して、89年の清川隆さん(中京大)以来28年ぶりに同大学および関東以外の大学関係者の優勝となった(ただし、90・91年は外国人が優勝)。なお、2017年の予選では10人が50秒を切って、「49秒64でも落選」という史上最高の狭き門となった。今シーズン48秒台を連発している安部選手が連覇を果たせば、14人目(3連勝以上を含む)となる。★層の厚さは、世界2位!!
「2017年世界100位(49秒88)以内」に入った日本選手は12人。110mHと同じく、アメリカの19人についで「2位」で、9人で3位のジャマイカ、5人で4位の南アフリカよりもその層は厚い。★日本人の大会最高記録
大会記録の48秒08(91年)は、ザンビアのマテテさんが保持。日本人の最高記録は48秒34で苅部俊二さん(富士通/97年)。【3000mSC】
★塩尻和也選手の優勝ならば……
潰滝大記選手(富士通)が3連勝していたが、今回は昨年夏からの故障のため不出場。10000mを27分台で走る塩尻和也選手(順大)がこの種目一本に絞って出場する。塩尻選手が制すれば、順大の現役生としては2001年の岩水嘉孝さん以来17年ぶりとなる。★日本人の大会最高記録
大会記録の8分19秒21は、1994年にダニエル・ジェンガ選手(仙台育英高)がマークしたもので当時のジュニア世界新記録。日本人選手の大会最高記録は、岩水嘉孝選手(トヨタ自動車)の8分25秒56(2003年)。野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト