2018.03.30(金)選手

【第7回/ダイヤモンドアスリート】塚本ジャスティン惇平選手インタビュー

2020年東京オリンピック、その後の国際競技会での活躍が期待できる次世代の競技者を強化育成する「ダイヤモンドアスリート」制度。単に、対象競技者の競技力向上だけを目指すのではなく、アスリートとして世界を舞台に活躍していくなかで豊かな人間性とコミュニケーション能力を身につけ、「国際人」として日本および国際社会の発展に寄与する人材に育つことを期して、2014-2015年シーズンに創設されました。すでに3期が終了し、これまでに9名が修了。昨年11月からは継続・新規含め全11名が認定され、第4期がスタートしています。

 ここでは、第4期となる「2017-2018認定アスリート」へのインタビューを掲載していきます。第7回は、100m・200mの塚本ジャスティン惇平選手(城西大城西高校)です。

◎取材・構成/児玉育美(JAAFメディアチーム)
◎写真/フォート・キシモト、陸上競技マガジン


地元の陸上大会での優勝契機に
小学4年から陸上を始める


――陸上競技は、いつ、どういうきっかけで始めたのですか?
塚本:小学4年生のとき、地元の陸上大会に出て優勝したのがきっかけです。誰でも出られる大会で、周りの人に「出てみたら」と言われて出場したんです。そのころ学童に通っていたのですが、学童の先生の旦那さんが陸上教室をやっていて、「やってみないか」と声をかけてくれて始めることになりました。

――小学校のときは、何か大きな試合とかに出たことは?
塚本:いえ、県大会くらいですね。100mに出ました。

――それで中学でも陸上を?
塚本:そうですね、もう自然と、という感じでしたね。

――新座市(埼玉県)は、陸上が盛んですものね。
塚本:はい。

――新座五中の陸上部では短距離を?
塚本:100mをやっていました。

――2年生のときにジュニアオリンピックBクラス100mで3位に。これが初の全国大会?
塚本:大きな大会に出たのは、それが最初です。

――初めての全国大会で、いきなり3位。どんな気持ちだったのですか?
塚本:この年に初めて10秒台が出て、「ああ、自分は足が速いんだな」と気づいていたのですが、出力に身体(の成長が)追いつかなくて肉離れしていて、ジュニアオリンピックは大会1週間前くらいにようやくまともに走り始めたという状態でした。まあ、当時の自分は、たぶん優勝したいと思っていたのだろうと思うのですが(笑)、「どこまで行けるか」という感じで出ていたので、悔しいという結果ではなかったと思います。

――3年生のときは、中学歴代8位タイとなる10秒69まで記録を伸ばし、この年の中学リスト1位となりました。全日本中学校選手権は100mで3位という成績でしたが、この結果には満足していたのですか?
塚本:いや、満足は全くしなかったですね。このときは、アップとかのときに、県の先生から言われていたことが頭に残っていて、「On your marks」がかかるまでずっと考え込んじゃう感じになってしまっていたんです。

――自分のレース、自分の走りに集中できなかった?
塚本:はい、そうですね。

――秋のジュニアオリンピック(Aクラス100m)で全国大会初優勝。準決勝、決勝ともに自己ベストとなる10秒69を2回マークしていますね。このときはどうだったのしょう?
塚本:準決勝で10秒6台が出て、決勝も調子がよかったので、何も考えずに走ることができました。大会2週間くらい前から調子が上がってきていたので、「走れば行ける」と思っていたんです。

――いい状態で臨めていたわけですね。
塚本:課題がはっきりわかっていたので、全中が終わってからは、それを克服する練習ができていました。あと、けっこう走り込む練習もできていたので。

――その課題というのは?
塚本:ピッチを上げることです。そのときの身長は178cmくらいだったのですが、160cmくらいの間隔にしたミニハードル走で、足を速く回す練習をかなりやりましたね。

 

「ハキーム先輩がいたから」城西大城西高校へ
大きかった山村先生との出会い


――高校は、東京の城西大城西高校へ進みました。ここに行こうと思った理由は?
塚本:ハキーム先輩(サニブラウン アブデルハキーム、現フロリダ大)がいたからです。

――サニブラウン選手と面識はあったのですか?
塚本:いいえ、ハキーム先輩のことは、国体で大会新を出したとき(※2014年:少年B男子100mを高1最高記録となる10秒45で優勝)に初めて知りました。

――こういう人がいるんだ。同じ学校へ行きたい、と?
塚本:そうですね。

――実際に入学して、どうでした? ご自宅から通っているのですか?
塚本:はい、家から通っています。電車は15分くらいしか乗らないので。

――そのくらいで通えるのなら楽ですね。
塚本:はい。近かったというのは、今考えるとよかったです。そして、何よりも山村(貴彦)先生に指導してもらえたことがよかったと思いますね。

――山村先生の指導は、どんな感じ?
塚本:山村先生って、指導中に答えを出さないんです。ヒントになるようなことをずっと言っていて、それを聞いて、自分で考えて、うまく身体で表現できるようにしていくという感じです。ただ、1年生のころは、それがなかなか難しかったですね。

――1年目は、自己記録を0.01秒更新する10秒68をマークしています。
塚本:記録的には中3の速かった時期に戻すのが精いっぱいという感じでした。

――インターハイ路線で、ケガしてしまったんですよね。
塚本:都大会で肉離れをして、個人種目はそこで終わりました。だだ、南関東大会までに回復したので、そこからはリレー(4×100mR)に専念することになりました。個人のインターハイ出場がなくなった段階で、自分としては国体(少年B100m)にピークをもっていこうと考えて、ハキーム先輩が出した記録の更新を目標にしていたのですが、その国体は10秒76で2位。今思うと、勝つことにこだわりすぎてしまったなと思いますね。

――2年のシーズンに向けての冬期練習は、順調に進められたのですか?
塚本:1年生の冬は、あまり好きじゃなかった長い距離も、そんなに抵抗なく走れるようになって、練習も順調に積めていたので、ある程度行けそうだなという気持ちでシーズンに入れました。

――身体つきが、がっちりしてきた印象がありました。
塚本:そうですね。高校で、練習メニューにウエイトトレーニングが入るようになってから筋肉がついてきたのですが、逆に、やればやるほどついてしまうので、やらなくなりました。今はもうほとんどやっていないです。1年の冬期練習のころ、ハキーム先輩の練習パートナーの人に「ハキーム先輩は、高1のとき、どんな冬期練習をしていましたか」と聞いたことがあるんです。そうしたら「とりあえず、がむしゃらに走っていたよ」ということだったので、じゃあ、自分もそうしようかなと思って(笑)。なので、1年の冬は、来シーズンどうのこうのと考えずに、ただがむしゃらに走っていましたね。

――走るなかで、必要な体力や身体をつくっていったという感じだったのですね。
塚本:そうですね。

肉離れの危険と背中合わせだった2017年




――そうして迎えた2017年シーズンは、初戦から追い風参考(+2.1)ながら10秒55をマークしています。
塚本:そうですね。(10秒)5台が出て、「まあいいかな」という感じで入ったのですが、都大会、南関東は、スピードと身体が合わなくて、どっちも通過するだけになってしまいました。

――スピードと身体が合わないというのは?
塚本:出ているスピードに対して、筋力がついていかなくて…。

――これ以上、スピードが上がるとケガしてしまいそうな?
塚本:はい。だから、ケガしない程度に走るという状態でした。(4位にとどまった)南関東も、肉離れする手前くらいの状態だったので。

――そこをうまく乗り越えて、インターハイでは、予選から10秒56(-0.6)の自己新、決勝も向かい風2.0mのなか10秒58をマークして2位となったわけですね。ただ、秋シーズンに入って、国体の準決勝で肉離れしてしまいました。
塚本:はい、愛媛国体です。国体に向けては、インターハイのマイル(4×400mR)で右膝の内側の腱を痛めたので、まずそれを完治させようと1カ月くらい全く走らずに過ごし、痛みがなくなってから走り始めました。国体の2週間前くらいにはある程度戻ってきていたのですが、レースの前日に刺激を入れたら、(身体が)動きすぎてしまって、南関東のときと全く同じ状態になってしまったんです。スピードを出したら(肉離れを)やっちゃうだろうし、でも、出さなければ準決勝で落ちしてしまう。どちらを選んでも決勝は無理という状況で…。

――では、ある程度、覚悟して臨んでいたのですね。
塚本:はい。そうしたら「案の定」って感じでした。

――回復には時間はかかったのですか?
塚本:いえ。自分、肉離れはいつもすぐ治っちゃうんですよね(笑)。

――そうなのですね! まあ、治りが早いのはいいけれど、でも、肉離れ自体を起こさないに越したことはありませんから…。
塚本:そうなんです。高2シーズンの自分の目標が、「ケガしない」というのだったので、正直、インターハイ2番とかどうでもよくて、「ケガしないで終わる」をクリアできなかったことが一番悔しいですね、昨シーズンは。

――7月には200mを走って21秒36をマークしていますね。向かい風(3.4m)じゃなければ、もっと行っているのかなと思いますが、200mに取り組んだのは2年生になってから?
塚本:そうです。まともにレースで走ったのは、このときが初めてでした。

――走りを見る感じ、200mでもいい結果が出せそうだなと思うのですが。
塚本:自分でも「なんか200mのほうが好きかな」と感じました。レースでも、練習でも、コーナーを走っているほうが楽なので。「200mで行くのもありなのかな」って、思うようになりましたね。

身体の使い方を見直し、2018年シーズンへ
U20世界選手権とインターハイ3冠が目標


――昨シーズンの反省を踏まえて、この冬はどこを課題に?
塚本:トレーナーさんに見てもらいながら、かなり細かいところから変えてもらっている感じです。

――具体的には?
塚本:筋肉の量を上げることはやっていなくて、筋肉の使えていない部分だったり、あとは体幹部分だったり、例えば、左足が出ているときの身体のひねりがどうなっているというような、かなり細かいところまでみてもらっています。

――何かわかったことは?
塚本:例えば、内転筋の出力が弱くて走っているときに脚が外に開いてしまうこととか、同じ動きでも右足はできるのに左足はできないというように意外な左右差があることとか。身体のなかで使えていない部分があったので、そういうところを変えています。

――改善されているな、という感覚はあるのですか?
塚本:変わってきたかなという感じはありますね。

――2018年シーズンの目標は?
塚本:U20世界選手権ですね、やっぱり。

――そこで戦いたい?
塚本:そうですね、決勝はマストかなと思っています。

――そうすると、サニブラウン選手と決勝で対戦することも…。
塚本:そうですね、一緒に走れたらいいなと思います。ハキーム先輩、練習とレースとでは全然違うので(笑)。実はまだ、試合で一緒に走ったことがないんです。ハキーム先輩が高校にいたころ、山村先生からも「一度レースで一緒に走ってみたら」と言われていたのですが、結局実現できなかったので。

――その実現の場が、U20世界選手権なら言うことなしですね。種目は、100m? 200m? それとも両方?
塚本:出られるのなら、どちらでもいいです。

――インターハイ路線については?
塚本:インターハイは3冠です。うちの陸上部は、年明けは1月4日から始まるのですが、そのときに、“お年玉”として先生から手紙をもらうんです。それに、“今年はインターハイに関しては3冠しよう”と書いてあったので。

――3冠、すなわち。
塚本:100m、200m、4継(4×100mR)です。自分も2冠は当たり前かなと思っていて、3冠できればいいなと思っていたので、そこは先生と同じ考えでしたね。

――U20世界選手権での活躍を目指しつつ、インターハイ路線も頑張って…となると、シーズン前半は、けっこう日程が重なってきますね。まずは、ケガをしないことが大切になってきそうです。トレーナーさんとの取り組みの成果が出るといいですね。

2024年オリンピックをピークに
2020年で、まず経験できれば


――2020年には東京オリンピックがあるわけですが、そこに向けて、イメージしているところはありますか?
塚本:まずは1回、2020年でオリンピックを経験できればいいなって感じですかね。年齢的に考えると、2024年のオリンピックや、その前後の世界陸上とかにピークを持っていければいいなと思っているので。

――日本の短距離は、今、トップのレベルがとても高くなっていますが、どう感じていますか? また、そこで一緒に戦えるようになりたいという思いは?
塚本:いつか勝てるようになりたいなというのはあります。また、身近な存在であるハキーム先輩が日本選手権に優勝したり、世界選手権で活躍したりしたことは、自分にはすごく刺激になっていますね。

――塚本くんは、自分の持ち味は、どこだと思います?
塚本:どこでしょう。学校の練習メニュー自体が、けっこう走り込んでいるので、後半のほうが強いのかなあと思いますね。

――では、課題と思っているところは?
塚本:スタートから中間までの部分です。振り返りで、去年のインターハイ決勝の動画をけっこう見るのですが、スタートから中間までの流れがスムーズじゃないので、そこをうまくつなげられればいいかなと思いますね。後半はそんなに悪くはないなと思っているので。

――そこがうまく走れるようになると、後半がもっと楽に走れそうですね。
塚本:はい。

――性格を自己分析するといかがでしょう?
塚本:緊張しないですね。

――大きい試合になっても緊張しない?
塚本:そうですね。でも、それが「世界」となったら、どうなるかはちょっと…(笑)。

――そうか、まだ出場したことがないから…。
塚本:そうなんです。だから、緊張するかもしれないな、と(笑)。

――では、それをまずU20世界選手権で体験して、改めて感想を聞かせてください。楽しみにしています。

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