6/12(金)~14(日)「第110回日本選手権」
名古屋で開催中!
 まだまだチケット購入可能!
2026.06.12(金)大会

【第110回日本選手権混成】レポート&コメント:女子は田中友梨が日本新記録でアジア大会内定、男子は奥田啓祐が4年ぶりの王者に



第110回日本選手権混成競技(日本選手権混成)は6月6~7日、岐阜・長良川メモリアルセンター長良川競技場において、U20日本選手権混成との併催で行われました。

9月に開催される愛知・名古屋2026アジア競技大会(以下、アジア大会)の日本代表選手選考競技会として行われた日本選手権の部では、女子七種競技で前回覇者の田中友梨選手(スズキ)が、日本人女子初の6000点突破となる6050点の日本新記録で連覇。この種目のアジア大会派遣設定記録(6019点)も突破したことで選考条件を満たし、出身地でもある名古屋で開催されるアジア大会の日本代表に内定しました。

1種目ごとに順位が目まぐるしく変わる混戦となった男子十種競技は、2日目でトップ戦線に浮上した奥田啓祐選手(ウィザス)が、最終1500mで逆転。7512点で4年ぶり2回目の優勝を果たしています。


女子七種競技・田中、日本女子初の6000点越え!
圧巻の日本新で、アジア大会代表に内定



大会が開催された週末の名古屋は、当初の予報よりもやや早く天候が崩れる空模様となりました。初日は、日本選手権の第1種目が始まるタイミングで雨に見舞われたものの、その後、大きく崩れることは避けられましたが、2日目は競技開始に合わせたかのように雨が降り始め、その後、競技が進むにつれて、どんどん雨脚が強まっていく状況に。結果として、この雨が、関東甲信地方の梅雨入りを決定づける形となりました。

こうした天候の崩れもあって、特に2日目は、最高気温が午前中の21.5℃で、その後は20℃へと低下。雨と相まって肌寒さが感じられるなかでの悪コンディションとなったなか行われることに。しかし、女子七種競技では、その悪条件をものともせず、新たな歴史の扉を開く好パフォーマンスが誕生しました。

前回覇者の田中友梨選手(スズキ)が、日本女子として初めて6000点台に突入する6050点の日本新記録を樹立して2連覇を達成したのです。日本陸連が定める七種競技のアジア大会派遣設定記録(6019点)もクリアしたことで内定条件をクリア。東京世界選手権入賞による内定者を除くトラック&フィールド種目における女子内定第1号となりました。田中選手は、昨年、著しい進境を見せ、前回大会で日本歴代5位(当時)に浮上する5782点をマークして初優勝している選手。今季も4月に日本人5人目の5800点越えとなる5807点へと自己記録を更新するなど、その躍進ぶりをさらに加速させた状態で、日本選手権を迎えていました。どちらかというと初日よりも2日目を得意とし、昨年の日本選手権も含めて、2日目で順位を上げていく戦い方をしてきましたが、今回は、課題種目でもあった最初の100mハードルを、13秒89(+1.4)の自己新記録でスタートすると、続く走高跳では自己記録を9cmも上回る1m70をクリアして、ここで早くも首位に浮上します。さらに砲丸投では1回目(12m59)・3回目(12m89)と2度の自己新記録をプット。200mこそ25秒72(-0.5)にとどまったものの、1日目自己最高得点となる3391点を挙げて、トップで前半を折り返しました。



悪天候のなかで競技が進行していくことになった2日目も、最初の走幅跳で2回目(5m72、-0.5)・3回目(5m76、+0.7)と、4月にマークした5m69の自己記録を上回るジャンプを連発すると、得意種目でもあるやり投では、雨粒が打ちつけるなか、3回目に54m82のビッグスローを披露。この種目でも前回マークした 54m32の自己記録を更新し、ここで6000点突破、さらにはアジア大会派遣設定記録クリアが確実視される状況に持ち込みました。2分14秒70以内で走れば、アジア大会内定が得られる状況下でスタートした最後の800mは、序盤は2番手でレースを進め、2周目のバックストレートでギアを上げてトップに立つと後続を突き放し、昨年のこの大会でマークした自己記録(2分12秒85)を更新する2分12秒52でフィニッシュ。実に、全7種目中6種目で自己記録を塗り替える圧巻のパフォーマンスでした。



名古屋市の出身である田中選手にとっては、今回のアジア大会が行われるパロマ瑞穂スタジアムは、新装こそされたものの“地元中の地元”といえる場所。「自分の地元である名古屋で行われるアジア大会は今年しかないので、このチャンスは絶対に逃せないという気持ちがあった」と、今季に向けては、アジア大会に出場すること、そこでメダルを獲得することを目指して取り組んできたと言います。試行錯誤を重ねる時期もあったそうですが、戦い終えたあとには、「今大会ではそれらがつながって、こうしてパフォーマンスとして出せたことが嬉しい」と晴れやかな表情を見せました(田中選手のコメントは、別記ご参照ください)。



2位は、梶木菜々香選手(ノジマT&FC)。単独種目でも日本選手権にエントリーしている得意の100mハードルで、自己記録を0.01秒更新する13秒32(+1.4)をマークする素晴らしい滑りだしを見せましたが、走高跳が1m58にとどまったことで、ここで4位に後退。2日目は、走幅跳で3位、やり投で2位に順位を上げ、最終的に5663点で競技終了。初日から6種目終了まで首位で戦った前回とは異なる戦いとなってしまいました。競技後は、「胸を張ってよかったと言えるのはハードルくらい。それでもベスト(5693点)に近いセカンドベストで終われたので、そこは去年よりちょっと成長したのかなと思う」と振り返るともに、「やっぱり1種目1種目のアベレージを上げていかないと…ということをすごく感じた」と振り返りました。



初日を、首位の田中選手と13点差の2位で折り返し、2日目もやり投が始まるまでは田中選手に迫る位置で勝負を進めていた大玉華鈴選手(日体大SMG)は、そのやり投でトップの田中選手に突き放されるとともに、ここで梶木選手に45点逆転されて3位に後退。最終的に梶木選手と63点差の5600点・3位で競技を終えました。



終了後には、今季で第一線から退くこと、七種競技はこの大会が最後になることを表明。囲み取材では、「今回の田中(友梨)ちゃんの2日間は、選手として尊敬するし、本当にすごいなと思った」と、まず田中選手を称え、「もちろん、優勝を狙って、今の状態できちんと仕上げて戦ったが、実際には、この状態で自分が優勝を果たすことは難しいところがあった」と明かす一方で、「それでも途中までは(田中選手に)食らいついていくことができたかなと思う」と述べ、「この3年くらいはケガが続いていたので、最後の試合で久々に、バチバチしながら戦うことができた。そして、日本人初の6000点が出て、切れないと思われていたであろうアジア大会派遣設定記録を突破する結果が出たこの試合を、一緒に最後まで戦うことができて本当によかった」と振り返りました。中学時代から混成競技で長く活躍してきた大玉選手は、自己記録は2023年にマークした5720点(日本歴代7位)で、同年のアジア選手権、アジア大会にも代表入りする実績を残した選手。自身、初めて日本代表に選出された2018年アジアジュニア選手権七種競技で金メダルを獲得したほか、3連覇を果たした日本インカレの初優勝を果たした(2019年)思い出の地であるこの岐阜が、最後の舞台となりました。




大混戦となった男子十種競技は
ケガ明けの奥田が4年ぶり2回目のV



今年4月に8321点の日本記録を樹立した丸山優真選手(住友電工)が出場しなかった男子十種競技は、上位陣が僅差で続き、初日から順位が目まぐるしく変わる展開となりました。前半5種目を終えた段階で、トップに立ったのは、社会人1年目の横内秀太選手(四国学院クラブ)。100mを種目別2位、走幅跳では7m16(-0.2)の自己新を跳んで種目別優勝と、上々の位置でスタートすると、4種目めの走高跳で唯一2m台となる2m02をクリアして、ここで首位へ。400mでは49秒59の自己新をマークし、2位の山本湧斗選手(大阪体育大)と13点差、3位・宮内夏葵選手(日本体育大)とは67点差の3936点を挙げて、1日目を終えます。優勝候補に上がっていた森口諒也選手(オリコ)は4位、奥田啓祐選手(ウィザス)は6位で、それぞれ初日を終了。実に、上位8選手が165点のなかで初日を折り返す接近戦となりました。


2日目に入ると、最初の110mハードルで山本選手が横内選手を逆転してトップに立ちましたが、円盤投を終えたところで42m38を投げた奥田選手が6位から首位へ急浮上。このまま点差を広げていくと思われていた奥田選手の棒高跳が4m20に終わり、種目別優勝を果たした山本選手が4m70、横内選手が4m60と続いたことで、順位はまたまた入れ替わり、横内、山本、奥田の順に続く形となりました。しかし、残り2種目となったやり投で61m70を放った奥田選手が再逆転し、2位の山本選手に107点のリードを奪うと、「この冬、人生で初めて1500mの練習をちょっとだけ頑張った」と振り返った最終種目の1500mで、自己記録を約1秒更新する4分37秒75をマークして、2着でフィニッシュ。4分45秒66で5着だった山本選手を突き放し、7512点で4年ぶり2回目の優勝を果たしました(奥田選手の優勝コメントは、別記ご参照ください)。



最後はベテランの地力に屈した形となったものの、山本選手は7335点で2位。上位候補に挙がっていた森口選手や佐田征義選手(渡辺パイプ)が途中棄権に終わる厳しい戦いとなっていたなか、5月中旬の関西インカレでマークした7468点に続くセカンドベストで、日本選手権初メダルを獲得しました。

3位には、悪天候下で7313点の自己新記録をマークした山岸幹選手(MAX)が、こちらも初のメダル獲得。13m94の自己新記録をプットした砲丸投と62m71をマークしたやり投の2種目で、種目別優勝を果たしています。


右代、「日本選手権は、これが最後」
偉大なデカスリートの静かな幕引き



七種競技では、田中友梨選手が日本女子初の6000点突破を果たし、新たな歴史を刻むこととなったこの大会、十種競技では、長年、日本陸上界に偉大な歴史を刻み続けてきたあるアスリートが、静かにそのデカスリート人生の幕を下ろしました。前日本記録保持者の右代啓祐選手(国士舘クラブ)が、その人です。

右代選手といえば、2011年に日本人として初の8000点突入となる8073点をマーク。2014年には、自身の日本記録を8308点へと更新した人物。記録だけにとどまらず、世界大会初出場となった2011年テグ世界選手権以降、オリンピックは2大会(2012年ロンドン、2016年リオ)、世界選手権には5大会(2011年テグ、2013年モスクワ、2015年北京、2017年ロンドン、2019年ドーハ)に連続出場を果たしたほか、アジア大会では2014年仁川大会と2018年ジャカルタ大会で2連覇、アジア選手権でも2019年ドーハ大会で金メダルを獲得するなど、日本が誇るデカスリートとして第一線を牽引してきました。

日本選手権は、2006年の初出場(5位)以降、今大会まで20回出場して、うち6連覇を含めて優勝は8回。2016年の途中棄権した以外は、2009年と2023年を除いて入賞を果たしてきました。東京オリンピックに向けたチャレンジが終わった2022年以降は、記録水準を少しずつ落としていったものの、昨年のこの大会では、国士舘大2年の2006年に7000点台を記録してから20年連続の年次ベスト7000点越えとなる7234点をマークして5位に入賞。これを今大会の資格記録として、20回目の日本選手権に臨んでいました。

しかし、初日は、100mは12秒10(+1.5)、走幅跳が5m91(-0.5)、砲丸投13m85、走高跳1m84、400mは55秒50と、すべて最下位で推移し、3157点で前半を折り返すことに。2日目も、110mハードルを16秒61(+0.4)でスタートすると、円盤投こそ43m15をマークして種目別優勝を手にしましたが、棒高跳は4m10、やり投50m89で、最終種目を迎えました。その1500mは、強い雨のなか他選手から大きく後れる形となったものの、苦悶の表情を見せつつも最後まで走りきり、5分20秒76でフィニッシュ。総合で6245点を挙げ、12位で競技を終えました。



終了後、取材に応じた右代選手は、試合の感想を求められると、普段と変わらぬ穏やかな物腰で、まず「2日間、疲れましたね。一所懸命頑張りました」とコメント。結果について問われると、「最後までやり抜くということがまず大事だと思って、十種競技を始めたときと同じような熱い気持ちで、この2日間挑んで、戦い抜いた結果がこの結果だった。今回は、記録が何点とかという意識も全くなくて、1個1個を噛みしめるというか、こんなに噛みしめて十種をしたことはないくらい、噛みしめて最後までやり抜いた2日間だった」と振り返りました。

準備状況については、「練習時間の確保ができたかどうかという話は言い訳にしかならないので、それはしたくない」と明言はしなかったものの、「自分でできる最大限の準備で、この日本選手権を迎えて、それが今日の結果になったということは、受け止めなければならないと思っている」と述べ、「これが例えば、(来年の日本選手権参加標準記録突破=未決定が見込める)7100点台とかであれば、“来年も出ます”という話になるけれど、今年は、その標準記録(の目安となる)記録が出せなかった時点で、もう、このチャレンジは終わる」と説明し、「僕の中では、この戦いが一つ終了したということです」ときっぱり。今後、単独種目で競技会に出ていくかどうかは、「ちょっとわからない」としつつも、「一応、十種競技は、もう“お腹いっぱい”(笑)かな? 標準記録を切るために戦うというつもりは全くないので、今回で(参加標準記録を上回るであろう)記録を出せなかったら、もう十種競技に出るのはやめようと考えて、初日からそのつもりで戦ってきた」ことを明かしました。

「引退という言葉は、僕にはよくわからないけれど…」と前置きしつつも、「初日を終えた段階で、標準は切れないなというラインがわかるので…」と、2日目の競技に臨む前に、学生時代からの恩師である岡田雅次・国士舘大監督に電話し、「今回、ひとつけじめとつけます」と報告。そうした状況で迎えたからこそ、「この2日目を、味わっていこうと思った」と振り返りました。

「悔いが残るか残らないかでいったら、“残らない”ですね。もう、やるべきことをやり尽くしたかなと思うので(笑)。よくここまでできたなと思う」と話すとともに、秋田で開催された日本選手権で競技を終えたあとに岡田監督から、“40歳までいけるよ”と言われたエピソードを明かし、「そのときは何を言っているんだと思ったけれど、それが自分のなかで目標になっていた。今年、(7月で)40歳。そういう意味では、先生との約束も果たせた」と話しました。

また、今大会では、国士舘大の後輩として一緒に戦ってきたOBたちや、今、指導に当たる学生たちが複数入賞したことを嬉しそうに話す場面も。スズキを退社して国士舘大へ戻った2017年度からは、トップアスリートとしてハイパフォーマンスを追求すると同時に、学生の指導にも取り組んできた成果が着実に表れていることに胸を張りました。実際に、今回の日本選手権でも、競技に取り組みつつも、常に学生たちの様子に目を配り、要所要所で声をかけてアドバイスしている様子が印象に残りました。

「これから混成がもっと男女ともに、盛り上がってほしいなと思う。僕も世界に羽ばたく選手を育てられるような指導者になることが、次の目標になってくるのかもしれないし、すでに今もそれに向かって頑張っている最中なので、僕のなかでは、何か終わってしまったというような(寂しさを伴う)感情ではなく、“十分やって楽しんだなあ、楽しかったなあ!”という気持ち」と話し、その心境を「なんか、ステーキ400gを食べました、みたいな(笑)。腹いっぱい、もういいやという感じ(笑)」と、朗らかな笑い声とともに、たとえてくれました。

「ずっと20年間応援してくれた仲間たち、トレーナーさんとか先輩方が1500mのスタート地点にいたときは、もう涙腺が崩壊してしまった」と打ち明け、「本当にたくさんの方に支えていただいて、ここまで健康に続けてくることができた」と多くの支えに改めて感謝するとともに、「今後は、別のことで取材してもらえるように、僕も腕を磨いていく。これからも、よろしくお願いします」という言葉で、最後となった囲み取材を締めくくりました。




U20日本選手権
男子十種は宮下、女子七種は大森が優勝

併催のU20日本選手権(男子はU20規格で実施)でも、男子十種競技と女子七種競技が行われ、どちらも15選手が出場。

男子は、昨年の広島インターハイ男子八種競技を、6325点の高校新記録で制した宮下輝一選手(筑波大)が、初日からトップに立つと、2日目も安定したパフォーマンスでトップを堅持。8月にオレゴン(アメリカ)が開催されるU20世界選手権出場を果たすために、自身が必要と想定していた7500点台には及ばなかったものの、2位に432点の差をつける7244点で快勝しました(宮下選手の優勝コメントは、別記ご参照ください)。

女子は、資格記録トップ(4924点)でエントリーしていた大森玲花選手(中央大)が4861点で、全国大会初優勝。もともと2日目を得意としている選手ですが、苦手種目だった100mハードルで14秒38(+0.7)の自己新記録をマークしたことで波に乗り、初日をトップと8点差で折り返したことが、勝機につながりました(大森選手の優勝コメントは、別記ご参照ください)。


【優勝者コメント】

<日本選手権混成競技>

◎男子十種競技
優勝 奥田啓祐(ウィザス) 7512点



「4年前とは違った勝ち方ができたかな」というのが率直な感想で、なんかとても感慨深い気持ち。今、(4月に8321点の)日本記録を出した丸山(優真、住友電工)とか、七種競技のヘンプヒル恵(アトレ)と一緒に練習をやっているのだが、彼らから、とても大きな刺激をもらっていて、そういう意味で、この勝ちを、どういうふうに生かして、次…来年の日本選手権だったり、北京世界選手権だったりに向けて準備していこうかというところを、もう一回やっていこうと思っている。

この大会に向けては、マウントサックリレーの直前に右アキレス筋腱移行部の肉離れに見舞われ、大会には100mだけチャレンジして、以降を棄権した。ただ、この大会へ行ったことで、丸山が日本新記録を出した場面を直接目にすることができ、強い感動と刺激を受けて、そこからリハビリに取り組んできた。しかし、そこからは、回復してきたかと思ったら別の場所を痛め、また、左脛には(古傷の)疲労骨折の影響が残っている状況だったため、とにかくバイクと補強で我慢する1カ月半を過ごすことになった。実際に練習を再開したのは5月末。10日少々でこの大会に合わせたという感じだった。去年の(日本選手権で第1種目の100mで肉離れを起こして途中棄権した)悔しさがあったので、「勝っても負けても今の自分の現在地はここだよ」というのを証明しようという気持ちで、この大会を迎えた。

1日目は、(初日で大きく出遅れて苦戦した)昨年のアジア選手権と同じような滑りだし。ただし、コーチからは「6~7割程度でいい」と言われていて、実際に、その通りの記録で進んだので、あとは落ち着いてやろうという気持ちで2日目に臨んだ。棒高跳など、やってきた練習通りにいかないものもあったので、そこは今後の課題となるものの、一番の収穫だったのは、最後の1500m。この冬、人生で初めて1500mの練習をちょっとだけ頑張った(笑)が、その成果が1秒の自己ベストとなって表れたことは素直に嬉しかったし、9種目の疲労が吹っ飛ぶくらいだった。十種競技として、まとめられたかなという感じ。

1日目を終えた段階で、(優勝争いまで)行けるかもという感触はあったが、何が起きるかわからないのが十種競技の試合。集中力を切らさないことを意識しながら取り組んだし、実際に本当に勝てるかどうかは、最後までわからなかった。

ケガが続いたこの数年間は、けっこうしんどくて、「これができなかったら最後の試合」と、自分の心を消耗する十種競技が続いていた。しかし、丸山やヘンプヒルと一緒に練習していくなかで、なんか学生のときに感じていた原点みたいなところに立ち返らせてもらったように感じて、「もうちょっとやりたいな」という気持ちになることができているし、「次は、どうしようか。こうやってみたいな」という思いで向き合うことができるようになっている。
練習に一緒にやっている丸山が日本記録を更新したし、自分がやっていることも間違っていないと思うことができている。また、8100点、8200点、もちろん8300点を越せるような可能性も、まだまだ感じることができている。どこまで行けるかはわからないけれど、もうひと踏ん張りやっていきたいと思っている。


◎女子七種競技
優勝 田中友梨(スズキ) 6050点 =日本新記録、アジア大会代表内定



今年は地元でアジア大会が行われるということで、昨年優勝してから、アジア大会出場を目指して取り組んできた。今大会、それらがつながって、こうしてパフォーマンスとして出せたことを嬉しく思う。今回は、200m以外の6種目が自己ベストで、「やってきたことがちゃんと身になっていたな」という感じ。自信をもって1種目1種目に臨むことができた。

自分のなかでは、日本記録を出すために必要な記録というのは7種目それぞれに設定していた。それは各種目とも自己ベストとなるものだったので、実際に達成するとなったら、7種目トータルでしっかりと(力を)出していかなければならないと思っていたのだが、「あ、この種目は、想像以上に行けたな」と、思っていた以上に(得点を)稼げた種目もあり、気持ちとしては、割と最後まで余裕がある状態だった。また、自分の競技、パフォーマンスに集中して臨むことができていたと思う。

(想定より記録が良かった種目は)苦手だったハードルと(自己記録を9cm更新した)走高跳。また、走幅跳は5m80以上を考えていたので、もうちょっと…という思いはあるが、それでも自己ベスト。こうした自分の苦手種目がけっこう行けたことは、すごく自信になった。

コーチの中村(明彦)さんは、「混成選手は、振れ幅が少ないほうがいい」と考えていて、「いつでも安定して95%を出すことが大事」ということで、それができるように、この冬は、細かい技術練習とかではなく、全体的な身体の使い方とかを教わってきた。今回も、しっかりと軸から身体を動かすとか、今までやってきたことができていたので、それは自分にとっては、今後の土台にもなるし、成長する大きな一歩だなと感じている。
冬場には、中村さんから言われたことを自分ではやっているつもりなのに、できていないと厳しく言われることもあり、すごく落ち込んだり、どうたらいいのだろうと悩んだりした時期もあった。しかし、中村さんから言われることには、“気づき”となる点が多く、厳しい言葉ではあったけれど、成長の糧となるようなものだったので、それを自分の普段の練習にどうやって落とし込めるかを考えて取り組むことをやってきた。その経験は、自分にとって、すごく大切なことだったと思う。

今回、一番頭にあったのは(アジア大会派遣設定記録の)6019点。日本記録はいつでも出せるけれど、自分の地元である名古屋で行われるアジア大会は今年しかないので、このチャンスは絶対に逃せないという気持ちがあった。アジア大会では、ここで出した記録をさらに上回る記録を出し、メダル争いには食い込みたい。会社の方々や地元の方々からが「応援に行くね」と言ってくださっているので、メダルを獲得して、そうした方々の思いに応えたい。

ずっと目標にしていた日本人初の6000点台というのは達成できたが、日本では七種競技のレベルが低いということもあり、ほかの種目の方々は、これが当たり前のレベルというなかで戦っている。そういう意味では、“やっと一歩踏み出した”というところ。ここからが勝負だなと思っている。一人が(高いレベルに)上がっていけば、その下に続く人(のレベル)もどんどん上がってくると思うし、そうすることで七種全体が盛り上がっていくと思う。自分もそこで引っ張っていく身として、日本の七種が“世界”というステージに上がれるように、もっと集中して取り組んでいきたい。


<U20日本選手権混成競技>

◎U20男子十種競技
優勝 宮下輝一(筑波大)7244点



目標にしていたのは7500点。今年はU20世界選手権(8月にアメリカ・オレゴンで開催)があり、7500点くらい出しておかないと(代表入りは)確実にならないと考えていたからだが(注:参加標準記録の7200点は突破しているが、日本代表選考要項では、加えて2026年U20世界トップリスト上位にいることが必要となっている)、あまりうまく行かなくて、さらに最後のほうは天気にも左右されてしまった。なんか、変な感じで終わってしまった。

(トップで折り返した)1日目は悪くはなく、「まあまあで入れたかな」という感じだったので、2日目も行けるかなと思っていた。自分は雨の試合が多いので、(悪天候には)慣れてはいると思っていたが、“得意”といえるほどではなかったという感じ。そこはちょっと悔しく感じている。
取り組みで必要と感じるのは、まずは(十種競技に)慣れていくことかなと思っている。もちろん技術とかに取り組んでいく必要もあるが、十種そのものに慣れていかないと、技術も発揮できないと思うので…。ただ、こんな“変な感じ”でも、この点数(7244点)は出せているので、まだまだ行けるという手応えはある。ちゃんとハマれば、もっといい記録は出せると思う。

今回、課題に感じたのは砲丸投。関東インカレからあまりうまく行っていない。次の試合は全カレ(日本インカレ)になるかU20世界選手権になるかはまだわからないが、そこに向けて安定させていきたいなと思う。

U20世界選手権は、去年のインターハイ(自身が6月に出した高校記録を再更新する6325点で優勝)が終わったときから目指してきた大会なので、「運良く選ばれないかな」という気持ち(笑)。筑波大は、自分がやりたいと思っていることがしっかりできる環境なので、(入学してからも)支障なく競技に取り組むことができている。シニアで戦っていくためには、やっぱりフィジカルがなければ…という気持ちがある。春先からの大会はここで1回区切りがつき、次の大会まで少し時間がとれるので、ウエイト(トレーニング)をびしばしやって(笑)、シニアの選手に引けを取らないような身体をつくろうと思っている。来年からはシニアに混ざって、そのなかで上位を目指せるようになっていきたい。


◎U20女子七種競技
優勝 大森 玲花 (中央大) 4861点



今大会は、資格記録1位(4924点)での出場だったので、優勝は絶対にするということと、全カレ(日本インカレ)のA標準(4950点)を切ることを目標にしていた。A標準に届かなかったことは悔しいが、優勝できたことは嬉しく思う。

私は、もともと2日目のほうを得意としているのだが、今回は、1日目のハードルからベスト(14秒38、+0.7)でスタートを切ることができ、(1日目最終種目の)200mまで流れに乗って、うまくつなぐことができた。しかし、2日目は、いつもは(5m)70くらいは跳べる走幅跳が、今回は(5m)47(+0.6)しか行けず、ここで得点を下げてしまった。そのぶんをやり投でカバーしたかったのだが、そこでも思うようにいかなかった(37m46)。これからは、2日目の3種目を課題としてやっていこうと思う。

全国大会の優勝は、今回が初めて。走幅跳で昨年のU20日本選手権で2位になっているが、これは高校2年のインターハイのときに、七種競技の走幅跳で3ファー(3回ファウル)したのがきっかけとなって、「走幅跳をしっかりやろう」と取り組んだことで、(5m)98まで記録が伸び(て、U20日本選手権2位の成績を収めた)、“得意種目”と言えるようになっている。

個別種目でも戦いたいとは思うが、私は、自分が小学生のとき(2019年度)から実施されるようになったコンバインド(コンバインドB=走幅跳・ジャベリックボール投)をやっていて、中学(四種競技)、高校(七種競技)と混成をやってきたので、大学でも混成競技を続けたいと思って取り組んでいる。練習では、(中央大OGの)梶木菜々香さん(ノジマT&FC)と一緒にやることもある。菜々香さんは全部すごくて、私が苦手とするハードルが得意種目。一緒に練習しているうちに、少しずつ走れるようになってきたので、(今回の自己新も)菜々香さんの存在が大きいと思う。

今後の目標は、まずはB標準(4750点)しか切れていない全カレのA標準を突破すること。七種競技の大会は少ないが、ぜひ突破したいと思う。また、跳躍種目の走幅跳と三段跳でもしっかり結果を出したい。今年の国スポ(国民スポーツ大会)の種目が三段跳しかないので、そこで活躍できるように記録を出すことを目指していきたい。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト/アフロスポーツ


【大会概要】

大会名 :第110回日本陸上競技選手権大会・混成競技
開催日程:2026年6月6日(土)7日(日)
開催会場:岐阜メモリアルセンター長良川競技場
主 催 :日本陸上競技連盟
主 管 :岐阜陸上競技協会
ハッシュタグ:#日本選手権混成

▼愛知・名古屋2026アジア競技大会 日本代表選手選考要項
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202508/25_123227.pdf
▼愛知・名古屋2026アジア競技大会 トラック&フィールド種目 派遣設定記録
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202511/11_092940.pdf
▼愛知・名古屋2026アジア競技大会 トラック&フィールド種目 参考競技会
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202512/25_095606.pdf


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