
男子100m、男子走幅跳、女子やり投の3種目については詳細な記事を紹介したが、他にも「日本新」のアナウンスが期待されたりそれに迫る好記録が生まれそうな種目がたくさんある。ここでは、全種目について、記録や数字に関する話題を中心にその見所を簡単に紹介する。
なお、以下に紹介する過去の日本記録は、「日本記録変遷史」に残るもので、「2位だったが従来の日本記録を上回った」というものは含まない。
・記録と情報は、原則として5月31日判明分。
・現役選手の敬称は省略。
・「アジア大会派遣設定記録」の有効期限は、2026年1月1日から日本選手権の決勝が実施された日まで。
・上記「派遣設定記録突破者」が日本選手権で優勝すれば「代表内定」となる。それ以外は突破者の記録最上位が選出される。ただし、全体の「派遣枠」の関係で条件を満たしていても選出されないこともある。
走高跳
・日本記録/2m35(室内)戸邉直人(つくばツインピークス)2019.02.02・アジア大会派遣設定記録/2m24/クリア済=長谷川直人、真野友博、坂井宏和、澁谷蒼

2022年からの世界選手権と五輪で日本勢は、真野友博(九電工/現・クラフティア)と赤松諒一(SEIBU PRINCE)の2人で4大会連続で世界大会入賞という結果を残している。22年8位・真野(2m27)、23年8位・赤松(2m25)、24年五輪5位・赤松(2m31)、25年8位・赤松(2m24)である。赤松はアジア大会代表内定済で今回の日本選手権には不出場。
日本選手権は、19年・戸邉、20年・真野、21年・戸邉、22年・真野、23年・赤松、24年・赤松、25年・真野の順にタイトルを獲得。
25年に自己ベストを4年ぶりに6cm更新する2m33をクリアした瀬古優斗(ヤマダホールディングス)が加わって自己ベスト2m30以上が長谷川直人(サトウ食品アルビレックスRC)を含めて3名。日本記録保持者の戸邉は、ターゲットナンバー外で出場できない。
さて、今回の日本タイトルを獲得し2枚目のアジア大会代表切符をゲットするのは果たして誰か? である。
棒高跳
・日本記録/5m83 澤野大地(ニシ・スポーツ)2005.05.03・アジア大会派遣設定記録/5m55/クリア済=柄澤智哉、江島雅紀、石丸颯太

澤野大地さんが5m83の日本記録をマークしてから21年の時が流れた。同年の世界リストでは7位タイだったが、25年に当てはめても19位。それほど大きく順位が下がっているわけではない。しかし、今回の日本選手権に出場する選手の25~26年の最高記録は、江島雅紀(富士通)の5m70がトップで25年世界リストの51位タイ。アジアの中でも7位タイで、1国2名でカウントしても6位。9月のアジア大会でのメダル獲得には苦戦が予想されそうな順位だ。
エントリー記録1~2位の江島雅紀(富士通)と5m66の柄澤智哉(東日本三菱自動車)、10年前に歴代2位の5m77を跳んだ山本聖途(トヨタ自動車)らを中心に20年以上前の澤野さんの5m83に少しでも迫ってもらいたい。
走幅跳
・日本記録/8m40(+1.5)城山正太郎(ゼンリン)2019.08.17・アジア大会派遣設定記録/7m93/クリア済=橋岡優輝、伊藤陸、藤原孝輝、津波響樹

別稿に詳細を述べたのでそちらをご覧いただくとして、26年シーズンに好調な橋岡優輝(富士通)に7年ぶりの「日本新」の期待がかかる。
この種目で日本選手権において「日本新」がアナウンスされたのは、1922年(6m54/下田貞晴/早大)、25年(7m24/織田幹雄/早大)、91年(8m10=タイ/下仁/千葉陸協)の3回だ。ただし、25年の7m24は十種競技中の走幅跳での日本新だった。
▼【記録と数字で楽しむ第110回日本選手権】男子走幅跳:好調・橋岡優輝に日本新の期待も
https://www.jaaf.or.jp/jch/110/news/article/23474/
三段跳
・日本記録/17m15(+0.9)山下訓史(日本電気)1986.06.01・アジア大会派遣設定記録/16m55/クリア済=なし

五輪と世界選手権で実施される種目の中で最古の日本記録がこの三段跳で「満40歳」となった。
17m15は、40年前の世界リストでは「21位」、世界歴代「60位」、国別記録では「19位」だった。しかし、現在は世界歴代は「257位」、国別記録では「49位」に下がっている。
「ところがどっこい」である。17m15を2025年の世界リストに当てはめると「17位相当」。40年前の21位よりも順位はアップしているのだ。
つまり、世界の20位あたりのレベルは40年前よりもダウンしているのである。25年東京世界選手権の入賞ラインは16m82、24年パリ五輪のそれは17m34、23年ブダペスト世界選手権は16m91、22年オレゴン世界選手権は16m86だった。パリ五輪こそハイレベルだったが、40年前の山下さんの日本記録で現在も世界大会で十分に入賞が可能なのだ。
砲丸投
・日本記録/19m09 奥村仁志(センコー)2024.08.30・アジア大会派遣設定記録/20m27/クリア済=なし

日本記録(19m09)の国別記録の順位は「82位」、アジアの中でも「13位」と非常に厳しいのが現状だ。
世界と日本の「大台突破」の年と世界からの遅れた年数は、「16m台」=世界1928年・日本1964年・36年差。「17m台」=世界1934年・日本1982年・48年差。「18m台」=世界1953年・日本1998年・45年差。「19m台」=世界1956年・日本2024年・68年差。「20m台」=世界1960年。世界が20m台に突入してから66年が経過している。日本はいつになるだろうか?
1998年に初めて18m台に到達してから27年で18m以上の人数は25年に過去最多の5名になった。このところの毎年の世界100位は、19m50台あたり。日本人で唯一の19m台の奥村仁志(センコー)を中心に切磋琢磨して、20m台に着実に近づいていってもらいたい。
円盤投
・日本記録/65m38 湯上剛輝(トヨタ自動車)2026.04.26・アジア大会派遣設定記録/63m55/クリア済=湯上剛輝

湯上剛輝(トヨタ自動車)が好調。26年初戦だった4月9日の61m38から6試合連続の60mオーバーで4月26日には65m38の日本新。自身がちょうど1年前の4月26日にマークした日本記録64m48を90cm更新した。
そのシリーズは、61m50-61m16-65m38-60m94-59m78-63m38で、6投中5投が60m台。63m43をマークした4月19日の試合でも5投が60m台だった。
日本選手権初日の6月12日15時50分競技開始予定だが、パロマ瑞穂スタジアムの投てき方向の上空に「いい向風」が吹いていれば2018年以来8年ぶりに日本選手権での日本新記録を目撃できるかもしれない。
8年前の会場は、山口の維新記念公園競技場で、湯上が3投目・4投目・5投目と3投連続で日本記録を伸ばしていった。日本選手権で日本新がマークされたのは、100年以上の歴史の中でこの3投のみ。なお、湯上がタイトルを獲得したのはこの時の1度だけ。
19年から24年は、堤雄司(ALSOK群馬)が6連覇(計11回優勝)、25年は幸長慎一(四国大AC)が初制覇している。
19年から25年までの7年間の、上位3人は順位に入れ替わりがあるが同じメンバーだ。藤原孝史朗(青森競技力本部)が加わって日本歴代1~4位が勢揃いする。
ハンマー投
・日本記録/84m86 室伏広治(ミズノ)2003.06.29・アジア大会派遣設定記録/73m10/クリア済=なし

自己ベストのトップは、福田翔大(住友電工)の74m57。25年の優勝記録で日本歴代3位。福田は、21年と23年も制している。
他の優勝経験者は、柏村亮太(ヤマダホールディングス/16・17・20・22年=4回)、墨訓熙(小林クリエイト/18年)、中川達斗(山陽特殊製鋼/24年)だ。
やり投
・日本記録/87m60 溝口和洋(ゴールドウイン)1989.05.27・アジア大会派遣設定記録/80m45/クリア済=﨑山雄太

前回87m16の日本歴代2位の大アーチを描いた﨑山雄太(ヤマダホールディングス)が今季もアジア大会派遣設定記録をクリアしている。他の優勝経験者は、ディーン元気(12・22・23年=3回)だ。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
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