
9月23日~29日に名古屋市パロマ瑞穂スタジアムで開催されるアジア大会の代表選手選考会を兼ねて行われる「第110回日本選手権」。その舞台は、アジア大会と同じ新装となったパロマ瑞穂スタジアム 。日本選手権がパロマ瑞穂スタジアムで行われるのは、2016年の第100回大会以来10年ぶり。「新瑞穂」ではもちろん初めてだ。
競技場での現地観戦、あるいはテレビやライブ配信での観戦のお供に、男子100m、男子走幅跳、女子やり投の3種目に限られるが「記録と数字で楽しむ第110回日本選手権」をお届けする。
なお、エントリー締め切りが5月25日で、エントリーリストの暫定版公表が5月29日(確定版の公表が6月5日)。この原稿は5月25日に執筆したため、記事中に名前の挙がった選手が最終的にエントリーされていないというケースがあるかもしれないことをお断りしておく。
過去に紹介したことがあるデータや文章もかなり含まれるが、可能な限り最新のデータに更新した。
スタンドでの現地観戦やテレビ観戦の「お供」にして頂ければ幸いである。
なお、「10000m」の日本選手権は12月5日(土)に東京・世田谷競技場で実施。「混成競技」は、6月6~7日に岐阜市(岐阜メモリアルセンター長良川競技場)で、「リレー種目」は、10月10~11日に国立競技場で行われる。また、「競歩種目」は「ハーフマラソン競歩」が2027年2月14日に神戸で行われ、「マラソン競歩」は2026年3月15日に石川県の能美市で開催済み。「マラソン」は、2026年3月から2027年3月に行われる「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ」の総合成績(ポイントランキング)の結果が「第110回日本選手権」という扱いになる。
・記録は、日本選手権参加資格記録の有効期限の5月24日現在(一部、それ以降の情報も含む)。
・その他の情報は5月25日時点でのものによる。
・現役選手については敬称略をご容赦いただきたい。
テレビの中継予定は以下のとおり(ライブ配信の予定は、後日発表)
【NHK BS・総合】
・第1日:6月12日(金)
BS 18:30~19:30/総合 19:30~20:42
・第2日:6月13日(土)
総合 16:30~18:43 ※17:59~18:05はサブチャンネル
・第3日:6月14日(日)
総合 16:30~18:43 ※17:59~18:05はサブチャンネル
アジア大会の代表選手選考要項は、
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202508/25_123227.pdf
を、
アジア大会日本代表内定選手一覧は、
https://www.jaaf.or.jp/news/article/22838/
を、ご覧頂きたい。
なお、日本選手権の期間中、ここで取り上げることができなかった種目以外の情報(データ)も日本陸連のSNS(X=旧Twitter or Facebook)で「記録や数字に関する情報」として、その都度発信する予定なので、ご覧いただきたい。
手始めに「ミニ情報」として紹介すると、
日本選手権の都府県別の開催回数は、
| 61回 | 東京都 |
|---|---|
| 11回 | 大阪府 |
| 7回 | 兵庫県 |
| 3回 | 埼玉県 |
| 3回 | 新潟県 |
| 3回 | 愛知県 |
「23」の都府県の「40」の競技場で開催している。
競技場別の開催回数は、
| 37回 | 東京・国立競技場(うち36回は旧国立競技場。1回が新国立競技場) |
|---|---|
| 12回 | 東京・明治神宮外苑(現国立競技場と同じ場所) |
| 7回 | 大阪・長居スタジアム |
| 4回 | 東京・東大農学部実科(駒場) |
| 3回 | 東京・陸軍戸山学校 |
| 3回 | 新潟・デンカビッグスワンスタジアム |
| 3回 | 愛知・瑞穂公園競技場 |
| 3回 | 大阪・大阪市立運動場 |
12回の「明治神宮外苑競技場」も現在の国立競技場と同じ場所にあったので実質的には国立競技場が「49回」となる。
好調・橋岡優輝に日本新の期待も
・決勝/6月12日 17:45橋岡の日本選手権での歩み
2年ぶり&7度目の優勝を目指す橋岡優輝(富士通)が春から好調だ。26年シーズンは以下の通り。
| 3月29日 | 8m14(+1.2) |
|---|---|
| 4月18日 | 8m12(+2.3)/公認8m11(+1.7) |
| 5月8日 | 8m27(+2.7)/公認8m09(+0.5) |
| 5月17日 | 8m22(+1.9) |
4試合連続の8mオーバーと安定している。
橋岡の8m台の連続記録は、2021年の4大会連続で、今年はそれと並ぶ。ただし、2021年は東京五輪の予選と決勝で8m台を跳んだので、これを2試合とカウントすると5試合連続となる。

21年は自己ベストの8m36(+0.6)をマークした年で、五輪の予選を含め7試合中6試合が8m台だった。全35回の試技のうち8m台は、9回で「25.7%」。一方で「ファウル」が21回もあって全試技の60%にもなった。
これに対し、26年の4試合での全試技は14回で8m台は追風参考を含めて9回(64.3%)。8m20台が3回、8m10台が4回、8m00台2回、7m90台1回と非常にコンスタントなジャンプが続いている。14試技のうちファウルは僅かに2回(14.3%)で21年と比較して激減している。
日本選手権は、日大2年生だった17年に初優勝し、そこから3連覇した。
「4連覇」になるはずだった20年はコロナ禍で春先からの多くの競技会が中止や延期となり、日本選手権も6月から10月に延期。会場も当初の大阪から新潟に変更された。
この年も橋岡は好調で9月の日本インカレでは、20年世界4位(室内の記録も含む)となる8m29(-0.6)をマーク。向風の中での記録だけに高い評価をえた。3週間後の日本選手権での「V4」は間違いなさそうと思われていた。
が、踏切脚のカカトやハムストリングスに違和感が出て無念の欠場。連覇がストップした。
翌21年は、前年の無念を晴らすかのように8m36(+0.6)の自己ベスト&大会新記録で2位に45cmの大差をつけて圧勝。
22年も8m27(+1.4)で2位に20cm差で5度目の優勝を飾った。
23年は日本記録保持者の城山正太郎(ゼンリン)が8m11(+2.1)で初優勝し、橋岡は5cm差の2位。
24年に橋岡がタイトルを奪い返し6度目の優勝。
25年は4位にとどまったが今回は7度目のタイトル奪取を目指す。
なお、25年の優勝者・山浦渓斗(勝浦ゴルフ倶楽部)は今回はエントリーしていない。
橋岡は毎年のシーズン初戦からどれくらい記録を伸ばしてきたか?
橋岡が今シーズンの初戦から4試合連続で8m台を跳んでいることを紹介した。では、これまでに橋岡は、毎年の初戦からシーズン中にどれくらいまで記録を伸ばしてきたのか?
そこで、橋岡が走幅跳に取り組み始めた高校1年生の14年からのシーズン初戦とその年のシーズンベストを調べてみた。
なお、中学生の頃にも陸上競技に取り組んではいたが、四種競技がメインで走幅跳はやっていない。
<橋岡優輝のシーズン初戦とその年の最高記録>
・初戦がすべて追風参考だった19年は次戦の公認記録を、初戦が室内競技だった場合は屋外での初戦も掲載

| 年月日 | 初戦記録 | → | 年最高 月日 | 記録の伸び |
|---|---|---|---|---|
| 2014.06.15 | 6m43(+0.9) | → | 6m73(±0)09.07 | 30cm |
| 2015.04.04 | 7m17(+1.7) | → | 7m70(+1.4)10.16 | 53cm |
| 2016.05.08 | 7m48(+0.7) | → | 7m75(-1.6)07.31 | 27cm |
| 2017.04.02 | 7m79(+1.9) | → | 8m05(+1.4)06.24 | 26cm/8m07w(+3.2)07.09 |
| 2018.04.29 | 7m74(+1.6) | → | 8m09(+1.2)06.23 | 35cm |
| 2019.03.30 | 8m25w(+4.2) | → | 8m32(+1.6)08.17 | (7cm) |
| 2019.04.23 | 7m81(+0.2) | → | 〃 | 51cm |
| 2020.02.21 | 8m02(室内) | → | 8m29(-0.6)09.11 | 27cm |
| 2020.08.23 | 7m96(-0.1) | → | 〃 | (33cm) |
| 2021.03.18 | 8m19(室内) | → | 8m36(+0.6)06.27 | 17cm |
| 2021.04.29 | 7m97(+1.1) | → | 〃 | (39cm) |
| 2022.03.18 | なし (室内) | → | 8m27(+1.4)06.12 | -- |
| 2022.04.09 | 8m07(+0.1) | → | 〃 | 20cm |
| 2023.04.28 | 8m11(+1.5) | → | 8m15(+1.2)09.17 | 4cm |
| 2024.03.15 | 8m28(+1.4) | → | 8m28(+1.4)03.15 | 0cm |
| 2025.04.20 | 8m10(+1.7) | → | 8m10(+1.7)04.20 | 0cm/8m19w(+2.2)05.11 |
| 2026.03.29 | 8m14(+1.2) | → | (8m22/+1.9/05.17) |
以上の通りで、ベストが8m台に乗った17年以降の室内を含めた初戦とシーズンベストの伸び(初戦が「すべて追風参考」と「記録なし」を除く)の25年までの平均値を計算したところ「20.0cm(範囲0cm~51cm)」だった。
この平均値を26年の初戦8m14に加えると「8m34」になる。自己ベストにあと2cmだ。
過去9年間のデータからすると橋岡は、今年はそれくらい跳べるであろうということだ。とはいえ、春先からの状況からして「自己ベストにあと2cm」ではなく、ここは城山正太郎が19年にマークした8m40の日本記録を7年ぶりに破ってもらいたいところである。
もうひとつ上のアジア記録は8m48(M・S・アル・フワリディ/サウジアラビア/06年)で20年間も破られていない。
打倒・橋岡を目指すのは?
「7m90以上」の参加資格記録でエントリーしているのは8名、うち8m台は5名。7m90以上の8名と22~25年の4年間の日本選手権で8位以内に入ったことがある選手で今回の申込資格記録(7m70)をクリアしている選手の入賞歴をまとめた。
<参加資格記録7m90以上と22~25年入賞選手で今回出場者の日本選手権入賞歴>
・記載順は参加資格記録の順
・「-」は9位以下
・「・」は不出場
| 資格 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 橋岡優輝 | 8.22 | ・ | ・ | 8 | 1 | 1 | 1 | ・ | 1 | 1 | 2 | 1 | 4 |
| 泉谷駿介 | 8.21 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ |
| 津波響樹 | 8.15 | ・ | ・ | ・ | ・ | 6 | 6 | 1 | 2 | 2 | - | 2 | 5 |
| 伊藤陸 | 8.11 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | 3 | 8 | ・ | ・ | ・ | 2 |
| 藤原孝輝 | 8.03 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | 6 | - | ・ | ・ | 6 | 3 |
| 松下凌晟 | 7.99 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | - | - |
| 関根拓真 | 7.92 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ |
| 北川凱 | 7.91 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | - | ・ | 6 |
| 山川夏輝 | 7.89 | ・ | ・ | - | 3 | 4 | 3 | ・ | - | 5 | - | 3 | 8 |
| 城山正太郎 | 7.85 | 8 | - | 2 | - | 2 | - | 7 | 3 | 4 | 1 | - | - |
| 鳥海勇斗 | 7.84 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | 6 | - | - | - | - |
橋岡ならば2年ぶり7回目。
城山ならば3年ぶり2回目。
津波ならば6年ぶり2回目。
その他の選手ならばいずれも初優勝となる。
小田は3位以内4回に8位以内7回。
山川は3位以内3回に8位以内6回。
山川、小田、鳥海は橋岡と同じ日大OB。日大関係者でのトリオ入賞が18・21・24・25年の4回ある。
今回、橋岡が7度目の優勝を飾れば、この種目での優勝回数としては、8回の臼井淳一さん(78年、80年、82~87年に6連勝)に続き、歴代2位となる。現在は、南部忠平さん(1928~33年に6連勝)と並んでいる。
なお、橋岡の父・利行さんは棒高跳で5連覇(85~89年)と2連覇(93・94年)を合わせ7回優勝している。
母の直美さん(旧姓・城島)も、100mHで2回(91・92年連覇)、三段跳で3回優勝(93年、95・96年連覇)しているので、計5回。
24年に母を上回ったが今回で父に並ぶことができるかどうか。
日本の層の厚さは、世界3位!
25年の世界リストの100位は、7m97。世界100位以内の国別人数が最も多かったのが、アメリカで16名、2位が14名の中国、3位が7名の日本だ。
以下、6名のフランス、5名のジャマイカ・南アフリカ、4名のスペイン・キューバと続く。
23年も24年もアメリカ・中国・日本の序列は同じ。
新型コロナウィルスが世界に広がる前年の「19年世界100傑」に日本は8名が入っていて、アメリカの16名に次いで世界2位。7名のジャマイカの上にいた。
20年はアメリカの競技会がコロナ禍でほとんど行われなかったこともあって、「20年世界100傑(7m82)」には、12名の日本人選手が名前を連ね「世界1位」の人数となったこともある。
この種目での五輪と世界選手権の入賞者は、21世紀になってからは橋岡のみであるが、「層の厚さ」ということでは日本は世界の中でもアメリカと中国に次いで「トップ3」だ。
日本選手権での8m台の記録のあれこれ
<日本選手権における8m以上の記録>・「w」は追風参考記録
・カッコ内数字は個人の回数
| 年 | 順位 | 記録 | 風速 | 氏名 |
|---|---|---|---|---|
| 1987年 | 1位 | 8.07 | +2.0 | 臼井淳一 |
| 1988年 | 1位 | 8.06w | +2.6 | 柴田博之 |
| 〃 | 2位 | 8.06 | +0.6 | 臼井淳一(2) |
| 1991年 | 1位 | 8.10 | ±0 | 下仁 |
| 〃 | 2位 | 8.04w | +2.2 | T・ボグダン |
| 1992年 | 1位 | 8.00w | +2.5 | 森長正樹 |
| 1994年 | 1位 | 8.06 | +0.8 | 朝原宣治 |
| 〃 | 2位 | 8.03w | +2.4 | 志田哲也 |
| 〃 | 3位 | 8.01 | +1.5 | 森長正樹 |
| 1997年 | 1位 | 8.10 | +0.9 | 朝原宣治(2) |
| 1999年 | 1位 | 8.05w | +3.5 | 稲富一成 |
| 〃 | 2位 | 8.02w | +3.0 | 田川茂 |
| 2001年 | 1位 | 8.03 | +1.7 | 渡邉大輔 |
| 2004年 | 1位 | 8.20 | +1.8 | 寺野伸一 |
| 2008年 | 1位 | 8.13w | +3.0 | 菅井洋平 |
| 2009年 | 1位 | 8.03 | +1.5 | 荒川大輔 |
| 〃 | 2位 | 8.00 | +0.6 | 菅井洋平(2) |
| 2010年 | 1位 | 8.10 | +1.8 | 菅井洋平(3) |
| 2017年 | 1位 | 8.05 | +1.4 | 橋岡優輝 |
| 2018年 | 1位 | 8.09 | +1.2 | 橋岡優輝(2) |
| 2021年 | 1位 | 8.36 | +0.6 | 橋岡優輝(3) |
| 2022年 | 1位 | 8.27 | +1.4 | 橋岡優輝(4) |
| 〃 | 2位 | 8.07w | +2.3 | 津波響樹/公認8.01 +0.8 |
| 〃 | 3位 | 8.07 | +1.9 | 松本彗佑 |
| 2023年 | 1位 | 8.11w | +2.1 | 城山正太郎 |
| 〃 | 2位 | 8.06 | +1.1 | 橋岡優輝(5) |
| 2025年 | 1位 | 8.14 | +0.3 | 山浦渓斗 |
| 〃 | 2位 | 8.11 | +0.1 | 伊藤陸 |
日本選手権において、8mを初めて超えたのは、1987年の臼井淳一さん。それから38年間で追風参考も含め、20人が28回8mをオーバーしている。
回数では、橋岡の5回がトップ。菅井洋平さんの3回が2位。
複数人が8m台を跳んだのは、1988年、91年、94年、99年、09年、22年、23年、25年の8回。
22年2位・津波のセカンド記録8m01は追風0.8mで公認記録。22年は3人以上が公認条件で8mを超えた史上初の年となった。
日本選手権での「順位別最高記録」
・走幅跳では、公認あるいは追風参考に関わらず順位がつくので追参の記録も含めた| 1)8.36 | 2021年 |
|---|---|
| 2)8.11 | 2025年 |
| 3)8.07 | 2022年 |
| 4)7.98 | 2022年 |
| 5)7.96 | 2022年 |
| 6)7.91 | 2022年 |
| 7)7.90 | 2022年 |
| 8)7.84 | 2022年 |
22年は超ハイレベルで、橋岡の優勝記録こそ自身の大会記録には及ばない8m27だったが、3位以下はすべての「順位別最高記録」を更新した。
今回もたくさんの「順位別最高」が生まれるかもしれない。
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