日本陸連は7月1日、前日まで行われた第108回日本選手権において内定条件を満たし、パリオリンピック日本代表選手に内定した競技者の記者会見を、新潟市内のホテルで行いました。
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会見に出席したのは、内定種目の日本記録保持者でもある4選手。男女MVPに輝いた村竹ラシッド選手(JAL;男子110mハードルで初優勝して代表内定)と田中希実選手(New Balance;女子1500m・5000mで2冠を果たし、内定済みの5000mに加えて1500mでも参加標準記録をクリアして内定)、参加標準記録を突破した状態で臨んだ女子走幅跳を制して内定を決めた秦澄美鈴選手(住友電工)、女子100mハードル準決勝で参加標準記録を突破し、2回目の優勝で代表入りを内定させた福部真子選手(日本建設工業)が登壇しました。
日本選手権で実施した「選手への応援メッセージキャンペーン」に参加し、抽選により会見に招待されたファン8名も見守るなかで行われた記者会見は2部構成で展開されました。
第1部として行われたのが、陸上競技日本代表選手がパリオリンピックで着用する新ユニフォームの発表です。日本陸連のオフィシャルパートナーで、長年ナショナルチームの代表ウエアを提供している株式会社アシックスから、新ユニフォームについて、「パフォーマンスとサステナビリティの両立」をコンセプトにライトウエイト(軽量性)、ブリーザビリティ(通気性)、サステナビリティ(持続可能性)の3テーマを実現させるべく開発されたこと、これまでと同様に朝日が昇る力強さをイメージした「サンライズレッド」をキーカラーとしていること、デザインには、決断や力強さを表す日本伝統の吉祥模様として知られる矢絣(やがすり)を取り入れた「YAGASURIグラフィック」を採用していることなどの紹介が行われたうえで、内定した4選手が、新たなユニフォーム姿で登場しました。
最初に感想を求められた田中選手は、「“このユニフォームでパリを戦っていくんだな”“次に袖を通すときには本番で、緊張しながら着るんだろうな”という思いがあった」と答えたうえで、デザインに用いられた矢絣について「ちょっと調べてみたら、日本の武士が使っていた文様で、矢というまっすぐにしか向かっていかないものを縁起物として使っていたとのことで、私はかなりネガティブになりがちなので前にしか飛ばない矢というのが、メッセージとして突き刺さってくるように感じた」とコメント。村竹選手、秦選手、福部選手も、「“代表になったんだな”と身の引き締まる思い。着心地は今からでも走れそうなくらい(笑)、軽い感じ。デザインもサンライズレッドと横にあるグレーと黒のいい按配がとても気に入っている」(村竹選手)、「今から毎日眺めて愛着を湧かせようと思う。跳躍種目ではいろいろな動きをするのだが、ホールド感がしっかりあるので、(着心地が)すごくいい」(秦選手)、「フィット感があって、走りやすそうだなという印象。パキッとした明るい色で、私は明るい色が好きなのでよかった」(福部選手)と、それぞれに感想を口にしました。
フォトセッションを挟んで、第2部では代表内定選手4人の記者会見が行われました。各選手は、代表に内定した現在の心境や、パリオリンピックでの目標や意気込みを述べたのちに、メディアからの質問に答えました。
会見における各選手のコメント(要旨)は、以下の通りです。
【日本代表内定選手コメント(要旨)】
女子走幅跳 秦澄美鈴(住友電工)
参加標準記録を突破して、日本選手権を優勝し、即時内定という形をとることを、各世界大会の代表選考で目標としていた。今回、そのような形で内定することができてすごく嬉しい。オリンピックでも上位入賞を狙っていけるように頑張りたい。
パリオリンピックでは、「まずは予選を通過して、決勝で戦う」ということを一番大きな目標にしている。予選を突破するには、例年の感じでは、6m70台後半を跳んでいれば、「うーん、まあ、安全圏だろう」というような感じ。今回、オリンピックでは参加標準記録(6m86)の突破者はかなり多く、「女子走幅跳のレベルが上がってきている」という印象をすごく受けるので、どうなるかわからないというところで、「自分ができる最大の跳躍を予選からしていかないな」と思っている。決勝に行ってからは、具体的に「この数字(目標記録)を」というふうには今は考えていない。そのときの、自分の気持ちだったり流れだったりを大切にして、その場で、乗っていけたらいいのかなと思っている。
女子1500m・5000m 田中希実(New Balance)
5000mの権利については日本選手権の前から決まっていたので、こうした会見に出席したときには5000mにおいての意気込みを語るのかなと思っていたが、1500mでもということになった。「2種目で(代表入りを目指す)」ことは自分が言っていたことだが、(ワールドランキングの)ポイントがどうなるかを待つことなく、(1500mでも参加標準記録を突破して)自分の力で勝ちとれた2種目の権利というところが、まずとても嬉しく、「パリが楽しみだな」という思いがある。一方で、純粋にタイムや世界との力関係をみたときに、自分の現在位置では「勝負するにはまだまだの位置かな」と思っている。東京オリンピックのときのようなチャレンジャーの気持ちで挑んでいくのではなく、今回は、一度オリンピックに出ていて、それでも(世界の)背中を追いかけるという立ち位置になるので、「怖い」という気持ちが大きくなってしまうのかもしれないが、まずは2種目に(出場して)走れる幸せというのを、しっかり感じる大会にしたい。
パリオリンピックに向けての当初からの目標は、「1500mと5000mの2種目で決勝に残ること」、そして、「どちらの種目でもいいから入賞以上の成績を残すこと」、できれば「2種目での入賞を目指すこと」だった。しかし、春から世界の水準がどんどん上がっていって、自分とのギャップがすごく大きくなっている。自分自身もすごく成長できたなという実感は、最近得られてはいるのだが、私の歩みが亀の歩みのように感じるくらい世界の動きが速くて、焦る気持ちのほうが今は大きい。このような場で消極的でネガティブなことを発言するのは良くないなと自分でも思ってはいるが、(こういう状況になってくることを)何も知らなかった春のころに口にしていた目標を、今、口にするのが怖いくらいの世界のレベルになっていると感じている。
ただ、そこに、敢えて勝負するための具体的な数字を示すとすれば、1500mは3分55秒以内で、5000mは14分20秒を切ること。このタイムを聞くと、日本の皆さんは「そんなの、日本人には無理だろう」と思われてしまうと思うが、でも、世界で勝負するということは、そういうところに向かっていくしかないということを意味する。私は今、自分でも、その数字を口にしたときに、「無理かもしれない」とか「今の自分では無理だな」と思ってしまったりするのだが、でも、そこに向かっていかないといけないんだなということを、今、この場に立って改めて感じている。
男子110mハードル 村竹ラシッド(JAL)
パリオリンピックの代表に内定して、すごく光栄に思っているし、今までこのパリオリンピックに出場することを目指してトレーニングを積んできたので、無事に計画通り事が運んでよかったなと思っている。オリンピックの舞台では、決勝進出、メダル獲得を目標にレースをするつもりでいる。残りの期間でしっかりと身体を仕上げて、パリオリンピックで最高のパフォーマンスができるように頑張りたい。
具体的なタイムとしては、まず12秒台。昨日の日本選手権では13秒07の記録だったが、あの悪天候のなか、ハードル(レース)の内容としては、そんなに満足のいくものではなかったが、そのなかで13秒0台が出た。この記録は、例年の世界選手権やオリンピックでも十分に通用するタイムだし、まだ、今季は日本選手権で3戦目と、まだまだ上積み(できる可能性)を残している状態で来ているので、もっともっとタイムは出る。オリンピックの舞台では、準決勝をしっかり通らないと話にならないので、まずはそこに向けてパフォーマンスと気持ちを高めていき、決勝進出を果たし、そこで12秒台を出して、メダル獲得に繋がったらいいなと考えている。
女子100mハードル 福部真子(日本建設工業)
パリオリンピックはずっと目指していた舞台。その舞台に、参加標準記録を突破して、日本選手権でも優勝して、しっかりその切符の獲得を決めきることができて、本当によかったと思っている。その舞台で、自分が走れるということを楽しみつつも、世界の選手としっかり肩を並べて走れるように頑張っていきたいなという気持ちでいっぱいである。
オリンピックで目標とするタイムとしては、12秒50を切っていかないと、ファイナルには進めないということを、去年の段階から思っていた。今の段階では、かなりの参加標準記録(12秒77)突破者がいる状態なので、「12秒4で走ってもファイナルには届かないのではないか」と踏んでいる。せめて自分の最高のパフォーマンスを出して、12秒5台というタイムを出して、少しでも決勝に近づけるように、しっかり走っていけたらと思っている。
なお、陸上競技では、このあと7月に3日以降に第1次内定選手が、7月7日以降に第2次日本代表内定選手が、それぞれ発表される予定。これら内定選手は、その後、派遣団体であるJOC(日本オリンピック委員会)に推薦し、JOCの認定を得て、正式にパリオリンピック日本代表選手に決定します。
※各選手のコメントは、記者会見における各選手の発言と司会者との質疑応答部分を抜粋し、まとめています。
取材・構成:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ
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