日本陸連は、パリオリンピック陸上競技において、最終種目となった8月11日午前の女子マラソン終了後に、囲み取材形式での総括会見を実施しました。中長距離、マラソン種目については、担当の高岡寿成シニアディレクターが対応し、各種目の今大会の成績、評価、今後の課題等について述べました。質疑応答の要旨は、下記の通りです。
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男女マラソンは、男子は赤﨑暁(九電工)が、女子は鈴木優花(第一生命グループ)が、ともに自己新記録で6位入賞を果たす結果となった。この種目では、自己記録で、外国の選手との差が非常に大きいことが課題になっていたのだが、レースに向けた準備といったところで、各チームがきっちり準備できたからこそ、このような結果になったのではないかと思う。レースの戦略については、専任コーチのもと、選手の状態に合わせた戦略をうまく練っていただいたことが、6位につながったと思っている。
大きなポイントになると見られていた坂の対策として、早い段階でコース下見をし、そのうえでの対策をじっくりと行うことができた。これは、まさにマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を10月に実施した恩恵と言うことができる。また、期間がたくさんあったことで、選手の特徴を知るための科学委員会の手厚いサポートも可能となった。それが選手たちに良い影響を与えたと思う。そのうえで、先ほど述べたように各チームがレース本番に合わせるために準備した合宿等が、強化につながったと考えている。
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前回の東京大会で、大迫傑(Nike)と一山麻緒(ワコール、現資生堂)が入賞し、今回も男女ともに入賞できたことは、本当に良かったと思っている。同じ選手が入賞することも大切だが、メンバーが入れ替わったことは、日本のマラソンの層の厚さを感じられる点といえるし、オリンピックを目指していた選手、取り組んでいる選手の力にもなると考える。もちろん上を見ると満足できない状況ではあるので、当然上を目指していきたいとは思うが、前回大会、今回と、入賞を続けられたことは評価できると思っている。
この点については、強化施策のなかで見えている部分ともいえるが、「(オリンピックに)出るための施策しか打てていない」というのが、今の日本の弱さと考えている。その次の「勝負すること」といった段階に持っていって、強化を進めることができればよいのだが、ワールドランキングでの出場を目指しているのが現状である。参加標準記録を突破できれば次の段階としてそういったことも考えていけるのだが、まだその一歩手前にいる。そこが「レースの中で勝負できるような状態になっていない」現状だと思っている。
※本内容は、8月11日に、現地で実施した囲み取材における高岡寿成シニアディレクターのコメントおよび質疑応答をまとめました。より明瞭に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
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◎高岡寿成シニアディレクター(中長距離、マラソン担当)
1.マラソンについて
男女マラソンは、男子は赤﨑暁(九電工)が、女子は鈴木優花(第一生命グループ)が、ともに自己新記録で6位入賞を果たす結果となった。この種目では、自己記録で、外国の選手との差が非常に大きいことが課題になっていたのだが、レースに向けた準備といったところで、各チームがきっちり準備できたからこそ、このような結果になったのではないかと思う。レースの戦略については、専任コーチのもと、選手の状態に合わせた戦略をうまく練っていただいたことが、6位につながったと思っている。
大きなポイントになると見られていた坂の対策として、早い段階でコース下見をし、そのうえでの対策をじっくりと行うことができた。これは、まさにマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を10月に実施した恩恵と言うことができる。また、期間がたくさんあったことで、選手の特徴を知るための科学委員会の手厚いサポートも可能となった。それが選手たちに良い影響を与えたと思う。そのうえで、先ほど述べたように各チームがレース本番に合わせるために準備した合宿等が、強化につながったと考えている。
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前回の東京大会で、大迫傑(Nike)と一山麻緒(ワコール、現資生堂)が入賞し、今回も男女ともに入賞できたことは、本当に良かったと思っている。同じ選手が入賞することも大切だが、メンバーが入れ替わったことは、日本のマラソンの層の厚さを感じられる点といえるし、オリンピックを目指していた選手、取り組んでいる選手の力にもなると考える。もちろん上を見ると満足できない状況ではあるので、当然上を目指していきたいとは思うが、前回大会、今回と、入賞を続けられたことは評価できると思っている。
2.トラック種目について
トラック種目については、男子3000m障害物で連続入賞した三浦龍司(SUBARU)以外は、同じく参加標準記録を突破して2種目に出場した田中希実(New Balance)も含めて入賞者を出すことができなかった。この点については、強化施策のなかで見えている部分ともいえるが、「(オリンピックに)出るための施策しか打てていない」というのが、今の日本の弱さと考えている。その次の「勝負すること」といった段階に持っていって、強化を進めることができればよいのだが、ワールドランキングでの出場を目指しているのが現状である。参加標準記録を突破できれば次の段階としてそういったことも考えていけるのだが、まだその一歩手前にいる。そこが「レースの中で勝負できるような状態になっていない」現状だと思っている。
※本内容は、8月11日に、現地で実施した囲み取材における高岡寿成シニアディレクターのコメントおよび質疑応答をまとめました。より明瞭に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト