2024.06.19(水)委員会

【すべての指導者がコーチ資格を】2024年度JAAF公認スタートコーチ養成講習会 東京特設会場で1回目を開催



「走・跳・投(運動)の指導に関する基本的な知識・技能を身につけ、安全で効果的な活動を提供する指導者」の養成を目的とした「JAAF公認陸上競技スタートコーチ」の養成講習会。以前から開催されていた「JAAF公認コーチ」「JAAF公認ジュニアコーチ」の前段階として、2021年に新設された講習会ですが、2024年度もゴールデンウィーク中の5月3日、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)にて、日本陸連主催で第1回目を開催しました。今回は、その講習会の様子についてレポートをします。

オリンピックや世界選手権代表クラスのトップアスリートが練習拠点として活動するNTCへ、朝8時30分集合で来場した受講者は、19歳から67歳まで幅広い年代の男女33人(受講資格はその年度の4月1日現在、満18歳以上)。受講の動機はさまざまで、「子供が中学校で陸上部に入ったので共通理解を得たい」という親御さんや、「陸上の経験はないけど、あらゆるスポーツの基礎となる走・跳・投の基本を学びたい」という他競技を専門とする方もいました。
「公認スタートコーチ」の養成講習会は一日で修了するのが特徴なのですが、受講者には事前にリファレンスブック(テキスト)が送付されて自宅での事前学習が課され、それらの学習時間も含めてカリキュラムは19時間となっています。

まず、午前中は、屋内で「競技者育成の考え方」(繁田進統括講師)、「指導者の役割と責任」(森健一講師)、「指導のプロセス」(村田龍講師)という3つの講義がありました。以前の講習会は対面式で、講師が前で一方的に話すことが多かったのですが、今はグループディスカッションなど受講者が主体的に講義へ参加できる双方向型の学習方式(アクティブラーニング)がとられています。受講者は3~4人のグループに分かれ、講師が出した課題についてグループ内で話し合います。その際、進行役・記録係・タイムキーパー・発表係と役割を分担し、順次その役を交替していきます。その為、事前の学習による基礎知識のインプットが必要であったり、積極的な参加が求められたりします。
2019年からカリキュラムの作成に関わってきた森講師(日本陸連指導者養成委員会ディレクター兼幹事)は、現代のコーチングの概念として「アスリートセンタード」であることを説明しました。主役はアスリート、ということです。その概念を説明した後に、森講師は「あなたが指導するうえで大切にしていることは?」と問いかけて、受講者は最初のグループワークに取り組んでいました。



昼食の休憩を1時間ほど取ってから、午後はNTCの陸上トレーニング場へ移動し、実技講習を行いました。五月晴れに恵まれたこの日は風も心地良く、初めてNTCのトラックへ足を踏み入れた受講者の中には、「五輪代表選手などがトレーニングする場所ですね」と感激の声を上げる人もいました。
実技講習は走種目と跳躍・投てき種目の2グループに分かれ、前半、後半で入れ替わります。走種目の講師は女子5000mで1996年アトランタ、2000年シドニーと2大会連続で五輪代表になった市川良子さん(日本陸連指導者養成委員会委員)。跳躍・投てきは、現役時代に日本選手権十種競技2位(2010年)の実績があり、現在は高校教員の村田講師(同)が務めました。



コーチの入門編とも言うべき「公認スタートコーチ」の養成講習会ですから、実技といっても各種目の専門的な技術を追求するわけではありません。そのあたりは基本を押さえることにとどめ、「指導法」の講習にほぼ時間が割かれています。ここで講師陣が強調されているのが「安心・安全」な指導と、的確なアドバイスを送るための「コーチの立ち位置」などです。


例えば、練習で使用するスターティングブロックやハードル、投てき物などの用器具を、不用意な場所に置いていないか。跳んだり、投げたりする時に、周囲へわかるようにきちんと声出しをしているか。投てきの際には必ず「入ってはいけないエリア」を設けているか。そして、投げる人の前からではなく、後ろから見ること、など。遊びの要素が入った練習もあり、受講者は真剣に取り組みながらも、時には和気あいあいと身体を動かし、学んでいました。



2時間ほどの実技講習を終えて屋内に戻ると、「コーチとしての視点」というタイトルで森講師による90分の講義があり、午前中とは違うグループ分けでディスカッションと発表が行われました。この講義の最後には、コーチ役と選手役に分かれての「シナリオ学習」が行われました。指導現場で起こりうるシナリオに基づいて、コーチは選手にどのように質問を投げかけるか。そこには「指示」「提案」「質問」「委譲」の4つのアプローチがあり、状況や選手とのコミュニケーションの中で使い分けることが大切ということでした。
一日の講習会の締めくくりとして、繁田講師が「コーチ自身の成長計画」について話し、受講者が事前課題で書いた「コーチの成長計画」を、講習会での学びを加味してアップグレード。講義後半に筆記試験を行って、午後6時過ぎに解散となりました。
「JAAF公認スタートコーチ養成講習会」は今後、全国各地で開催が予定されています。日本陸連はこの講習会では、コーチのイロハを学ぶ講習として位置づけ、自身の経験を蓄積し、次のステップへと繋げてほしいと考えます。十分な経験や知識がある方は、『公認ジュニアコーチ』を受講していただき、更にその上の『公認コーチ』の資格取得へ進んでほしいと考えています。

今回のレポートの詳細や受講者の声については、月刊陸上競技7月号に特集記事として、掲載されています。資格を取りたいけど自身がどの講習会が良いのか迷っている方、今後、指導に携わりたい方、そして現場で指導にあたっているがまだ資格をお持ちでない方は、ぜひご一読いただき、コーチ資格講習会にご参加ください。

東京特設会場のタイムテーブル


時間プログラム形態
8:50ガイダンス 
9:00競技者育成の考え方講義
9:30指導者の役割と責任講義
11:00指導のプロセス講義
12:30昼休み
13:30種目別指導実践実技
15:30コーチとしての視点講義
17:00コーチ自身の成長計画講義
18:00事務連絡 (18:15解散) 
 
▼JAAF公認スタートコーチ(日本スポーツ協会公認陸上競技スタートコーチ)に関して
~開催要項・受講フロー・Q&Aなど~
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/startcoach.html

<<資格制度・講習会開催要項>>
〇資格制度概要
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/
〇公認スタートコーチ養成講習会
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/startcoach.html
〇公認ジュニアコーチ
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/juniorcoach.html
〇公認コーチ
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/coach.html

▼指導者養成委員会ページ
https://www.jaaf.or.jp/about/resist/fukyu/


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