日本グランプリシリーズ「第11回木南道孝記念陸上」が5月12日、大阪市のヤンマースタジアム長居で開催されました。本大会は日本グランプリシリーズグレード1の第3戦で、ワールドアスレティックス(WA)コンチネンタルツアーブロンズ大会を兼ねています。
前日まで快晴が続いていましたが、グランプリ種目として男女合計16の決勝が行われた大会当日は、天候が下り坂に向かうコンディションに。この影響もあって、新記録の樹立は叶いませんでしたが、男子1500mでは日本歴代2位の好記録が誕生。また、男子400mハードルでは、今季国内大会で初めてとなるパリオリンピック参加標準記録突破者が出ています。
男子400mハードルは筒江がGP2連勝
パリ五輪参加標準記録も突破!
男子400mハードルでは、今季に入って、国内競技会では初めてパリオリンピック参加標準記録突破のアナウンスが流れ、場内を沸かせました。3組タイムレース決勝で行われたこの種目の3組目に出場した筒江海斗選手(スポーツテクノ和広)が、日本歴代7位タイで、今季アジア最高(日本最高)となる48秒58をマークしてフィニッシュ。48秒70のパリオリンピック参加標準記録を突破するとともに、昨年の秋に出した自己記録(48秒77)を更新して、大会2連覇を果たしたのです。筒江選手は、5月3日の静岡国際も制しており、これで日本グランプリシリーズ2連勝となりました。
昨年の今大会でグランプリ初優勝を果たしたあと、セイコーゴールデングランプリで49秒35まで記録を伸ばしてきた選手。7月にはアジア選手権代表にも出場し、秋には48秒台突入(48秒77)と躍進しました。しかし、昨年のブダペスト世界選手権には、ワールドランキングによる出場も見える位置にいたものの、日本選手権では5位にとどまり、代表入りは叶わず。そんな1年を筒江選手は、「今、思うと、まだ考えが甘かった」と振り返ります。それを痛感したのが初の日本代表に選ばれて出場を果たした7月のアジア選手権。準決勝敗退に終わったことで、「あのときに、木っ端みじんになったというか、なめていたのかなと思った」と筒江選手。「でも、そういうことがあったおかげで今の自分がいるし、そこで支えてくださった(信岡沙希重)先生のおかげで立ち直ることができた」と話してくれました。
強い思いを胸に、この冬は、ハードル練習はほとんど行わず、「スピードを求めつつ、距離も踏みつつ」と徹底的に走力を強化。そのことによって、「昔はバウンディングのようにハードル間に合わせていくような走りが多々あったが、スピードがついたおかげで、自分の走りにハードルが合っていくような感じになった」と手応えを感じつつ、「まだ課題はあるので、記録はもっと伸ばせる」と、視線は、ずっと先を見ています。
筒江選手が参加標準記録を突破したことで、この種目で標準記録をクリアした選手は、黒川和樹選手(住友電工)、豊田兼選手(慶應義塾大)を含めて3人に。また、木南記念では、静岡国際で48秒台突入を果たしたばかりの出口晴翔選手(ゼンリン、ダイヤモンドアスリート修了生)も48秒83と自己記録を再更新しており、参加標準記録のクリアが見える位置へ前進する結果を残しました。5月19日に行われるセイコーゴールデングランプリ、そして表彰台が絶対条件となってくる日本選手権に向けて、この種目での戦いは、ますますヒートアップしていきそうです(筒江選手のコメントは、別記ご参照ください)。
飯澤、男子1500mで復活V
日本記録に肉薄
この週末、日本列島は、土曜日の深夜あたりに西日本から天気が崩れ、近畿地方も朝から厚い雲が空を覆う天候となりました。グランプリ種目は、午前10時半の男子110mハードル予選から競技がスタートしましたが、その段階で、時折空からは小さな雨粒が落ちてくる状況。気温は24℃を上回り、湿度も50%越えと、蒸し暑さを感じるようなコンディションです。
しかし、そんな少し重苦しさを感じるような空気を吹き飛ばすかのように、トラック最初の決勝種目となった男子1500mで好記録が誕生しました。男子1500mで日本歴代2位の自己記録(3分36秒55、2022年)を持っていた飯澤千翔選手(住友電工)が、日本記録(3分35秒42、河村一輝、2021年)に0.35秒まで迫る快走を見せたのです。
日本陸連強化委員会では、この大会に際して日本記録更新も視野に入れてペースメーカーを用意。選手たちには、800mを1分55秒、1000mを2分24秒、ラスト1周となる1100mを2分39秒での通過を設定タイムとすることを伝えていました。スタートしてすぐにペースメーカーを務めた山陽特殊製鋼の井内優輔・片岡直人の2選手が前に出ると、今年2月にオーストラリアで3分37秒13の自己新記録をマークして好調な滑りだしを見せていた館澤亨次選手(DeNA)がつき、そのすぐ後ろに飯沢選手が続く形でレースが進むことに。先頭は、最初の400mを57秒で通過すると、800mを設定通り1分55秒で通過していきます。ペースメーカーの1人がレースを終えた900mを過ぎたところからは、山梨学院高2年の留学生、フィリクス・ムティアニ選手がすーっと前に出てくると先頭に立ってレースを引っ張る形となり、2分24秒で1000mを通過していきました。
残り1周は2分39秒で通過し、勝負はいよいよ大詰めを迎えます。バックストレートの終盤で館澤選手がトップに立つと、飯澤選手はすぐ後ろについて2番手に浮上。さらに、残り200mを切ったところで、金栗記念、織田記念とこの種目2連勝中のグエム・アブラハム選手(阿見AC)が大外から順位を上げてくると、今度は、すかさずアブラハム選手について最終コーナーを回り、ホームストレートへと出ていったのです。飯澤選手は、残り70~60m付近でアブラハム選手をかわすと、さらに差をつけて3分35秒77でフィニッシュラインに飛び込みました。2位のアブラハム選手も3分36秒55と自己記録を更新し、3位で続いたムティアニ選手も外国籍留学生で初めて3分40秒を切る3分37秒82の国内国際高校最高をマーク。上位10選手が3分40秒を切るハイレベルな結果となりました。
飯澤選手は、東海大1年の2019年に日本インカレを制して注目を集めると、同年秋に3分38秒94をマーク。以降、中距離界を彩る顔ぶれの1人として認知されるようになった選手。大学4年時の2022年には日本選手権で初優勝するとともに、秋には3分36秒55まで自己記録を更新する躍進を見せました。しかし、社会人となった昨年は、3月に行ったアメリカ合宿から帰国した直後に腸脛靱帯を痛めたのを皮切りに、次から次へと体調不良や故障等が続き、十分な活躍を残せず終わるシーズンとなりました。「走れるようになれば、絶対に(調子は)戻ってくると思っていたので、ケガしているときは、業務に集中しようと仕事に取り組んだ。業務をやっていたら、気づいたらケガも治って、走れるようになっていた」と振り返り、「走れない期間は苦しかったけれど、職場の方々も応援してくださった。周りの方々の支えが大きくて、それで復活できたと思うし、だから腐らずに頑張れたと思う」と感謝の言葉を口にしました。
ようやく十分な練習が積めるような状態となったのは今年1月に入ってからと言いますが、徐々に調子を上げて、再び世界を目指していけるところまで戻ってきました。今回の結果については、「記録は意識していなかったので、“やってきたことは間違っていなかったんだな”と思ったのと、ゴールして記録を見て、“わー、(日本記録まで)あとちょっとだったので悔しいな”という気持ちだった」そう。「トップから遠ざかっていた部分があったので、嬉しいというよりは、ホッしたというのが一番大きい」と振り返りました。
ペース設定については、「日本記録を狙うペースにすることは聞いていたけれど、自分のなかでは(そこについていくのは)“まだ厳しいかな”という思いがあった。ただ、勝負しないわけにはいかないし、金栗・織田と守りのレースが続いていたので、今回は最初から攻めようと決めていた。ダメだったら仕方ないし、行けたらラッキーという感じ」という気持ちで臨んでいたと言います。「まあ、今回は“行けたらラッキー”にハマったけれど」と笑顔を見せつつ、「これからは、これが当たり前になったらいいなと思う」と、声を弾ませました。
今後は、日本選手権に向けて調子を上げていく計画。パリオリンピックの出場にはやや厳しい状況となっていますが、「来年の東京世界選手権には、参加標準記録を切って出たい」ときっぱり。同大会の参加標準記録はまだ発表されていませんが、パリオリンピックの参加標準記録(3分33秒50)に準じるとしたら、3分33秒台という記録がターゲットとなってきます。これが達成できれば、「出すなら、少しではなくて大きく更新したい」と言う日本記録の更新も、自動的に実現することとなります。
注目の男女走幅跳
女子は秦が6m72で快勝、男子は津波・橋岡が2・3位
好記録の期待が高かった男女走幅跳は、男子、女子の順に行われました。男子では、3月に、現在トレーニング拠点としているアメリカの初戦で8m28(+1.4)をマークし、8m27のパリオリンピック参加標準記録を突破した橋岡優輝選手(富士通)が出場。橋岡選手は、帰国後、4月28日の日大記録会に出場して7m71(+1.2)の記録を残していますが、主要大会ではこの木南記念が国内初戦。助走のコントロールに苦しみ、1・2回目をファウルする滑りだしとなったあと、3回目は踏切板に乗るか乗らないかというところから踏み切り、7m73(+1.2)を残して5番手でベスト8に進出します。4回目に7m83(+1.2)へと記録を伸ばして3位に浮上しましたが、5回目はファウル、6回目は7m79(±0)にとどまり、3位で競技を終えました。
「3月に標準(記録)は突破したけれど、助走がまだ全然まとまりきっていないので、今日は助走練習のような感じ」での出場だったと言います。手応えは、「まあ、ぼちぼち」とのこと。助走については、参加標準記録を突破したハリケーン招待においても、「6本(の跳躍)全部がバラバラな助走をしていた」と課題を残していたのに加えて、その後、「そのときにできていたことができなくなったりしていた」面もあったそうですが、「それを今日、(修正する感覚を)なんとなく気づくことができた。またここから、“練習をいっぱいしないとな”と思っている」と振り返りました。
この冬は、 “スプリンターと言われるくらいのスピード”の体得を目指したうえで、抜本的な助走の改良に取り組んできました。この日の跳躍では1回の試技ごとに踏み切り位置に大きなばらつきが生じていたこともあり、助走についての質問も上がりましたが、「まだ、自分のものにしきっておらず、今は自分のなかでも理解している最中。言っていることが一転二転する可能性もあるので、(こういう動きと)言葉にするのは控えたい」と詳しく説明することを避けました。そのうえで、「(有効試技で踏切)板を踏まなかった跳躍も今日はけっこうあったが、それは僕としては、なんとなくやりたい方向に近づいているものではあった」と胸の内を明かし、「考えていることは同じだが、完全に体得できているわけではないので、その日の調子によって、ばらつきが出てしまう」と話しました。
しかし、「練習はいっぱいしているので、焦りはない」ときっぱり。現段階でも、しっかりとトレーニングを積んでいるなかで、特に調整することなく、質の高い跳躍練習の位置づけで競技会に臨んでおり、「シーズンは始まったけれど、試合と試合の合間も調整せずにずっと練習しているので…。陸上って、楽しいですね」とニヤリ。「僕は僕で自分の目標に向けてやるだけなので」と、オリンピックシーズンだという特別な思いも「全然ない」と言います。
参加標準記録を突破したことで、日本選手権では、優勝すればその時点で代表に内定します。「かなり有利だとは思っているが、でも、日本選手権で勝たないと意味がないので…」と橋岡選手。「それまでにしっかりと再現性を高めて、しっかりと1本、記録を跳ぶことができれば」と、目指す助走に向けて、さらなるブラッシュアップを目指します。
その男子走幅跳は、1・2回目に7m95(-0.1)・7m94(+0.3)でトップに立った津波響樹選手(大塚製薬)を、4月14日に8m32(-0.2)の自己新記録を跳んで参加標準記録を突破したばかりのクリストファー・ミトレフスキー選手(オーストラリア)が3回目に7m98(±0)で逆転すると、5回目にセカンドベストとなる8m24(-0.1)をマーク。好調を維持させたまま優勝を果たしました。ミトレフスキー選手はセイコーゴールデングランプリにも出場の予定。日本勢の強力なライバルとなってきそうです。
日本人トップで2位を占めたのは、東京オリンピック代表の津波選手。逆転はかなわなかったものの、6回目にはシーズンベストの7m99(+0.3)をマーク。全跳躍で記録を残し、6回のうちの3回は7m90台と安定した記録を残しました。「雨も降らずコンディションもよかった。最後は脚が攣りそうになったけれど、走りもよかったので、最後まで諦めたくなかった」と振り返りました。
「このところ、跳ぼうと意識しすぎて、踏み切りで止まってしまう状況が多かった」という津波選手は、「自分のいいところはスピード。橋岡からも“お前は走ったほうがいいよ”と言われていたので、今日は、走ることを意識した」と走って駆け上がっていくような踏み切りを心掛けたと言います。次戦はセイコーゴールデングランプリ。その後、台湾オープンに出場して、日本選手権に向かっていく予定。「本当は、今日、8mを越えてポイントを取りかったけれど、今回は最低ラインかな。来週(のゴールデングランプリ)はメンバーも豪華で大変そうだけど(笑)、そんな選手たちと日本で一緒に跳ぶ機会はあまりないので、楽しみながら、ちゃんと跳んで、しっかりポイントも取っていきたい」と意欲を見せました。
女子走幅跳には、昨年のアジア選手権を6m97の日本新記録で制し、参加標準記録(6m86)をクリア済みの秦澄美鈴選手(住友電工)が出場。ぱらついていた雨が、徐々に本降りとなってくるコンディションとなったなか、1回目に6m51(+0.6)を跳んで首位に立つと、2回目の6m50(+0.2)を挟んで、3回目に6m72(+0.1)をマーク。4回目の試技で助走に狂いが生じたことが影響し、後半で記録を伸ばすことはできませんでしたが、2022年に自身がマークした6m43の大会記録を更新して競技を終了。今季アジア最高に浮上するシーズンベストで、兵庫リレーカーニバルに続きグランプリ2勝目を挙げました。
ミックスゾーンで、まず感想を求められて、「兵庫リレーカーニバルのとき(6m39、-0.1)は、あまり噛み合わないなと不安もあり、でも、やるべきことはやっているので、そのなかで記録が出てくるだろうという気持ちもあった。それがまず形になったので、ホッとしている」と答えた秦選手。優勝記録となった6m72の跳躍については、「いい跳躍だったなと自分でも思った」と言います。
その跳躍を、「イメージしている助走ができて、そこに対して、踏み切りもしっかりハマって、ポコーンと(身体が)浮いたので、その助走と踏み切りが噛み合った部分がすごく良かった」と振り返り、「これから再現性を上げていけるようにすれば、もっといいのかなと思う」と話しました。また、自身は「1・2本目は良いとは思わなかった」と言いつつも、「6m51、6m50と、6m72と、3本続けて安定してベースが同じ跳躍をしていくなかで、1本ごとにイメージを変えて(修正して)いけた点はよかった」と評価。「助走のイメージはけっこう固まってきて、それが体現できるようになってきているので、あとは踏み切りが合えば…というところまで来た」と、今後が楽しみになるようなコメントを残してくれました。
高2の久保、女子800mでGP3連勝
男子100mは、今季初戦の坂井が制す
このほか、3組タイムレース決勝で行われた女子800mでは、5月3日の静岡国際で2分03秒57のU18日本新記録を樹立したばかりの久保凜選手(東大阪大敬愛高)が、セカンドベストとなる2分05秒11で制しました。久保選手は、これで金栗記念、静岡国際に続いて日本グランプリシリーズ3連勝となります。また、男子110mハードルでは、昨年13秒50まで急成長し、今季から社会人となった町亮汰選手(サトウ食品アルビレックスRC)が13秒45(+0.9)の自己新記録で日本グランプリシリーズ初優勝。男子円盤投では、1回目に58m04をマークした日本記録保持者(62m59)の堤雄司選手(ALSOK群馬)が勝利を手にしています。
上位5選手が、0.05秒内でフィニッシュする大混戦となった男子100mは、この大会が今季初戦となった坂井隆一郎選手(大阪ガス)が10秒20(+0.2)で、昨年に続き2連覇。2・3位には、デーデー・ブルーノ選手(セイコー)と和田遼選手(ミキハウス)が同タイムの10秒22で続きましたが、0.004秒の着差ありでデーデー選手が2位を占めました。デーデー選手は、予選では10秒18(+1.3)をマークし、東京オリンピックの選考会となった2021年日本選手権決勝で2位となった際に出した10秒19の自己記録を3年ぶりに更新。社会人となった2022年以降は、足踏みする結果に苦しんでいましたが、再びオリンピックシーズンを迎えたなかでの今回の好走に、今後の復調ぶりが注目されることになりそうです。
女子100mハードル、女子400mハードル、女子3000m障害物は、優勝した海外招待選手が大会新記録(女子100mハードルは大会タイ記録)を樹立。日本勢では、女子100mハードルは日本記録保持者(12秒73、2022年)の福部真子選手(日本建設工業)が12秒92(+0.2)で、女子400mハードルは宇都宮絵莉選手(長谷川体育施設)が57秒30で、女子3000m障害物は齋藤みう選手(9分50秒97)が、それぞれ2位で続いています。
同様に海外招待選手が制した男子400mでは伊東利来也選手(住友電工、46秒09)が、女子100mでは君嶋愛梨沙選手(11秒63、-0.2)が、女子400mでは久保山晴菜選手(今村病院、53秒65)が、女子円盤投では齋藤真希選手(東海大大学院、56m21)が、日本人トップとなる2位で競技を終えています。YAO Jie選手(中国)が5m60で制した男子棒高跳では、澤慎吾選手(きらぼし銀行)と江島雅紀選手(富士通、ダイヤモンドアスリート修了生)がともに5m50で2位に。2022年に日本選手権を優勝した直後に記録会で足を骨折するアクシデントに見舞われ、長い離脱を余儀なくされていた江島選手は、昨年9月の全日本実業団には出場(4m80)したものの、今季からが本格的な競技シーンへの復帰。4月13日の日大記録会で5m50を成功させていました。今回が、2022年水戸招待以来となる日本グランプリシリーズ出場でしたが、5m50までをすべて1回で成功。まずは2019年にマークした5m71の自己記録に向かって、再び歩みを進めています。
【好記録樹立者コメント】
◎筒江海斗(スポーツテクノ和広)
男子400mハードル
優勝 48秒58 =パリオリンピック参加標準記録突破
今回自己ベストを出すことができたのは、(福岡大時代から指導を受けている信岡沙希重)先生をはじめとした周りの方々のおかげ。まず感謝の気持ちをお伝えしたい。
静岡(国際)では前半に課題があったので、この大会では、そこを修正することに重きを置いて、そのなかで後半の苦しいなかでも動きを崩さないことを2つめに考えて試合に臨んだ。(静岡の前半では)スピードが上がりきっていないというところがあったので、そこをしっかりと走って、速度を上げていくことを頭に置いていた。
今季は、早い段階から試合を想定して、スピード強化を行っていたので、そのあたりが合致してきたのかなと思う。自己ベスト自体がオリンピックの参加標準記録を切れておらず、周りよりも劣っている状態だったので、まずはそこを切らないと戦うことはできないという思いから、早めに準備をしてきた。
(今日のレースを終えて)まだ前半部分(のスピード)が上がりきれていないなという反省はあるのだが、全体を通して走れてきたということと、48秒台が少しずつ安定してきたところは、自分にとって大きな収穫だと思っている。レース自体は、ただ、ゴールだけを見て、周りのことは気にせず、ひたすら自分の走りをすることに集中していた。(フィニッシュタイマーを見て)「出た!」と思った一方で、まだまだ課題点があったので、「修正して、もっと上を目指したい」という気持ちにもなった。
あのときには、まだ考えが甘かったし、“行けるんじゃないか”という気持ちでやっていた。今、振り返ると“行けていなくて当然だったんだな”と思うし、そこに対して本気で狙わなければ行くことができないステージだと思っているので、今年は本気でいきたい。
(激戦が必至となる)日本選手権では、「まずは負けない」ということを一番において、自分の走りを徹底する。そのなかで変なおごりや浮ついた感情にならず、毎日、コツコツやるしかないと思うので、戦うこと、自分がチャレンジするという気持ちを忘れずにやっていきたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:アフロスポーツ
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