2024.03.25(月)委員会

【すべての指導者がコーチ資格を】2023年度JAAF公認コーチ集合講習会・2日間密着レポート(Vol.1)



日本陸連(JAAF)では、日本スポーツ協会(JSPO)が実施する「JSPO公認スポーツ指導者システム制度」と連携して、公認指導者の養成と資格の認定を行っています。こうした指導者資格制度は、以前から実施されていましたが、日本陸連としての姿勢や方向性が、2017年度以降、「JAAF VISION 2017」(https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/jaaf-vision-2017.pdf)や「競技者育成指針」(https://www.jaaf.or.jp/development/model/)という形で明文化されていったなかで、その実現の中核になってくる「指導者の養成」についても改めて議論や検討が進み、2020年度に「指導者養成指針」(https://www.jaaf.or.jp/development/model-coach/)を発表。「すべての指導者がコーチ資格を取得する」「資格取得後もコーチが学び続けていける環境をつくる」ことを目指し、コーチ養成システムの再構築が行われてきました。現在のコーチ資格は、「JAAF公認コーチ」「JAAF公認ジュニアコーチ」「JAAF公認スタートコーチ」の3種類に設定。カリキュラムについても、コーチに求められる素養や基礎的な知識を学ぶだけに留まらず、受講者間でのコミュニケーションが増大するグループワーク方式を導入するなど、より広い気づきや学びが得られるような内容へと、大きく変貌しています。
「実際に、どんな講習が行われているの?」と思う方も多いはず。そんな疑問にお応えすべく、昨年12月に行われた「2023年度JAAF公認コーチ集合講習」に密着。2日間にわたって行われた講習の模様をご紹介しましょう。

今回は第1日目をお届けします。(第2日目はこちら、研修参加者のコメントはこちら

文・写真:児玉育美(日本陸連メディアチーム)


JAAF公認コーチとは?

「JAAF公認コーチ」(以下、公認コーチ)資格は、日本スポーツ協会との連携により「JSPO公認陸上競技コーチ3)資格を兼ねています。この資格は、都道府県代表、ナショナルチーム、実業団などのコーチングスタッフとして、地区ブロックや全国大会レベルのアスリートおよびチームに競技力向上を目的としたコーチングを目指す者を対象とし、各種目の指導に関して専門的かつ高度な知識や技能を身につけ、競技者のニーズやレベルに応じて効果的な指導・支援を提供する指導者となること、また、陸上競技の活性化に向けて指導者を統括する立場となる人材の養成を目的としています。
この資格の講習は、各年度150名程度を定員に、規定されている条件を満たした者が受講を認められます。受講者は、日本スポーツ協会が実施する共通科目150時間と、日本陸連が実施する62.5時間の専門科目を受講。共通科目・専門科目ともに、決められたカリキュラムを受けたのちに検定試験と審査が行われ、それらに合格し、必要な資質能力を修得したと認められた者が修了者として、「JAAF公認コーチ(JSPO公認陸上競技コーチ3)」の資格を得ることができます。
日本陸連が行う専門科目は、オンライン講習、集合講習(理論講習、実技、指導演習等)、自宅学習等により構成されています。受講者は、まずオンラインで、グループワークを含む理論講習(ライブ講義)を受けたのちに、オンデマンド講義(動画視聴と確認テストまたはレポート提出)により受講。その後、集合講習に向けた事前学習を行ったうえで2日間の集合講習に参加し、そこで理論および実技の講習を対面で受け、指導演習に臨みます。そして、集合学習の最後に出された事後課題(各自の指導現場における指導の実践を含む)を2週間後に提出するという流れで、修了に必要なカリキュラムを受けていくことになっています。
今回、密着した集合講習は「2023年度JAAF公認コーチ集合講習」として行われたものの一つ。専門科目講習における「総まとめ」ともいえる位置づけで実施されました。


【2023年度JAAF公認コーチ集合講習:第1日/2023年12月16日】

集合講習は、期日に応じて3つの会場が設けられていますが、2023年12月16~17日に行われた集合講習は「B会場」として、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて2日間の日程で開催され、全41名の受講者が参加しました。
初日の12月16日は、午前8時に受付が開始。講義会場には受講者たちが次々と入室し、5~6人ごとに分かれた7つのテーブルに、それぞれ着席していきます。そして、午前8時15分、2日間にわたる集合講習がスタート。開講に当たって、まず、指導者養成委員会の山本浩委員長が登壇。山本委員長は、日本で、江戸時代中期ころから米の相場を伝えるために用いられていた「旗振り通信」を例に、情報の伝達は、「伝えた相手が正しく受け止めたかを確認することによって、初めて正しく伝わっていく」ことを示したうえで、「スポーツ指導の場面でも、相手に本当に伝わっているのかを聞き返さないまま教えたつもりになり、せっかくの知恵が伝わっていかないことが起こりがち」と述べ、「今回の講習では、“今、何が大事か”を確認していただくと同時に、大事なことを相手に伝えるとき、最終的に自分の伝えたことが正しく伝わっているかを確認する、その仕組みまでを、しっかりと持ち帰っていただきたい」と呼びかけました。




講義:コーチに求められるコーチングスキル

最初に行われた講義は、「コーチングスキル」です。講師を務めた繁田進シニアコーディネーターの音頭で、まずは、アイスブレイク。会場の空気が少しやわらぎ、受講者同士が互いの距離を縮めたなかで、繁田シニアコーディネーターは、公認コーチ、ジュニアコーチの指定テキストでもある『陸上競技コーチングブック』(公益財団法人日本陸上競技連盟編、大修館書店発行。https://www.taishukan.co.jp/book/b606646.html)に掲載されている「コーチに求められるコーチングの知識」「コーチに求められるコーチングスキル」などを挙げ、そのなかでも、よく「コーチングハンド」という言葉で集約される「コーチに求められるスキル」(コーチに求められるスキルは、「関係の構築」「説明と指示」「デモンストレーション」「観察と分析」「フィードバック」の5つが、5本の指のように存在する。そして、その手のひらに位置するのが「安全・安心」。選手にケガをさせない、選手を不安な気持ちにさせない点も含めて、すべてが、まさに指導者の“手”に委ねられていることを示している)について解説を進めていくなかで、このあと行っていく実技講習で、どんな事柄を学んでいくかを示していきました。



また、ここでは、特に「安心・安全な指導環境を目指す」ことの大切さが、特に丁寧に解説されました。安心・安全に関する配慮は、日本陸連が指導者を養成する際に最も重視している事柄で、公認コーチだけでなく、JAAF公認ジュニアコーチ(以下、ジュニアコーチ)、JAAF公認スタートコーチ(以下、スタートコーチ)の養成においても、「安心・安全」を前提とするカリキュラムを組んでいます。資格の位が上がれば、必須とされる知識やスキルも広がっていくことから、公認コーチの場合では、「安心・安全であるかを把握して、実践できること」が大前提。スタートコーチ(認識する)やジュニアコーチ(把握し、意識する)に求める以上の、高い見識と実行力の獲得を必須としています。
受講者たちは、スポーツ活動中の事故を防ぐために、①活動時は指導者が立ち合うこと、②場所や用器具の点検、他団体との連絡・連携を行うこと、③無理のない活動時間を確保し、天候や気温、明るさを配慮すること、の大切さを再認識。そのうえで、繁田シニアコーディネーターは「公認コーチの指導者資格では、この安心・安全をしっかりと把握して、実践できていることが前提となっている。事故やケガを起こさないために、それに配慮して指導案を書いたり、指導に当たったりすることがとても大切。今回は、明日行う演習の指導案を書いてもらうことになるが、そこでも安全・安心への配慮が大きなポイントとなってくる」と、セイフティーファーストの重要性を強調しました。
最後に、コーチに大切として示されたのが「学習と内省」です。繁田シニアコーディネーターは、コーチに求められるものとして、誠実な態度、正しい知識、リーダーシップ、柔軟な発想力、豊かな想像力、コミュニケーション能力、広い視野、理解と対応、人間関係の構築、ビジョンと戦略の10項目を挙げ、「指導者は、何歳になっても学び続け、自分で反省し、日々バージョンアップしていくことが必要」と述べ、この講義を締めくくりました。


実技講習:各種目の指導方法と安全管理

その後、講習は、陸上トレーニング場に場所を移しての実技に移りました。
最初に行われた「跳躍の指導方法と安全管理」では2グループに分かれて、岸政智ディレクターが講師を務める「走高跳・棒高跳」のセッションと、佐藤孝夫シニアコーディネーターが講師を務める「走幅跳・三段跳」のセッションを、1時間で入れ替えて行う方法が採られました。
1時間の昼休みを挟んだあとは、森健一ディレクターが「短距離・リレー」を、泉水朝宏委員が「障害(ハードル)」を担当し、「中長距離・競歩」では、競歩を三浦康二委員が、中長距離を徳田由美子委員が、それぞれ指導。最後に行われた「投てき」は、下山良成シニアコーディネーターが「円盤投・ハンマー投」を、海老原有希委員が「砲丸投・やり投」が担当し、跳躍同様に2グループを入れ替える形で、それぞれ指導に当たりました。
どの種目においても、まず、徹底して注意喚起がなされていたのは、「指導を始めるに当たっての場の確認や設定:ケガや事故につながる恐れがある事柄を示し、何に注意するか、何に配慮するかを説明」「用器具の確認:用器具を使用する場合に、コーチが注意すべき点の説明」です。各種目で指導を行う場面ごとに、どこで、どんな事故やケガが起きる恐れがあるかを示し、それらを防ぐために何をすべきかが詳細に示されていました。例えば、
・トラックを利用する種目:スタートやゴール位置を設定する、ドリル等を行う際のセイフティエリアの設定、他の利用者との接触等への配慮など、
・ハードル利用:ハードルを反対向きや倒した形で設置しない/跳ばない、設置する場所の地盤(凸凹がないか等)への配慮など、
・水平跳躍種目:砂場整備(掘る、ならす)時のポイント、砂場シートのたたみ方、砂袋やレーキの置き方、ピット周辺の安全管理など、
・垂直跳躍種目:マットの正しい設置、マット周辺の安全性、支柱の安定確認。棒高跳ポールの傷チェック(折れる危険がある)、バーやポールを踏んだりすることがないよう置き場所の工夫など、
・投てき種目:投てき物の受け渡し(手渡しはNG。投てき物は必ずいったん地面に置き、受け取る側が地面から取り上げる形で受け渡しを完了させる)、セイフティエリアの設定方法(投てき方向には、指導者を含めて人の立ち入りがないようにする)、投げる前の声かけ確認、投てき物収容のタイミングなど、です。
これらの面は、日常では、つい注意が甘くなる、あるいは見過ごすことが起こりがちですが、どの講師も、「“大丈夫だろう”と考えるのではなく、“もしこうなったら危ない”“ケガするかもしれない”という視点で、リスク要因を排除する」ことを、徹底して呼びかけていました。
そうした安全面の管理を促したうえで、それぞれの種目を指導する際のポイントが、事前のオンデマンド講習等でレクチャーを受けたテクニカルモデル(基本的な動作や技術要素を示した動作・指導モデル)に沿って改めて説明。実際に、自身がデモンストレーションを行うときのコツなどのほか、各種目における指導時のポイントが、「コーチとして、選手に正しく、明確に伝える」という観点から紹介されていきました。また、コーチが、「どこでデモンストレーションするか」「どこに立って指導するか」「どこから選手の動きを見るか」についてのアドバイスも。「選手が見やすいように、逆光にならない場所に立つ(コーチが光に向かうようにして立つ)」「選手の動きを見るときは、必要なチェックができる位置へ移動して見るようにする」といったポイントも、各種目の講習のたびに示されました。
また、この「指導方法と安全管理」においても、受講者同士のディスカッションや技術チェックの時間が多く設けられていたことも印象的でした。最初に講師の説明を受けたあと、受講者たちによるグループワークの時間に。自身が普段行っている練習方法や指導のポイントを紹介する、その種目を得意とする人からアドバイスを受ける、互いにアイデアを出し合うなど、活発に意見交換しながら身体を動かしたあと、そこで出た意見を報告するなかで、情報を共有していました。




グループワーク:指導方法と安全管理

合計7時間にわたる実技講習を終えたあとは、再び屋内の会場に戻っての講義に。このセッションでは、泉水委員と海老原委員が講師を務めて、グループで情報を収集し、伝達・共有を図る能力を高めるグループワークが行われました。これは、陸上トレーニング場で受けた実技講習や安全管理の考え方を踏まえて、より高度で活発な議論を行い、現場に活きる学習の場として位置づけているもので、高い経験値と専門性を兼ね備えた受講者が集まる公認コーチならではのディスカッションが展開されることを期待しています。受講者たちが取り組むのは、①提示されたテーマについて、各グループでディスカッションを行い、グループ内で決めた女王蜂役(リーダー)が、そのグループの意見を集約する、②蜜蜂役のメンバーが、他のグループに行き、そのグループで出た意見を情報として収集する。女王蜂役は、ほかのグループからやってきた蜜蜂役に自分のグループで出た意見を伝える(5分間)、③蜜蜂役は自分のグループに戻り、他のグループで出た意見を報告、最終的にグループのなかで情報を共有する(5分間)ということを実施するもので、「蜜蜂と女王蜂」と呼ばれています。
受講者たちは、短距離を題材とする「リレーにおけるオーバーハンドパスとアンダーハンドパス、どちらを採用すると良いか」というテーマ、跳躍を題材とする「走幅跳選手がファウルをする要因には何が考えられるか」というテーマ、そして投てきを題材とする「回転種目のトレーニング方法について考えてみよう」というテーマの3つについて、①~③のグループワークに取り組みました。


講義:指導演習と成長計画(指導計画)

短い休憩時間を挟んで再開された講義では、2日目に実施する指導演習に関する概要と、演習を行うために用意する指導案を作成する際の留意点の説明が、森ディレクターから行われました。
翌日行う指導演習は、新たに設定した1グループあたり6~7名に振り分けた6グループで行われ、メンバーが順番にコーチ役を務め、選手役となる他のメンバーに、割り当てられた種目の指導を演習するという形で進められます。森ディレクターは、その概要を伝えたうえで、指導演習の条件設定や評価を行う際のチェック要素を説明。特に、評価のチェック要素については、「指導する内容云々ではなく、あくまでコーチとしての振る舞いや言動を見させていただく」として、「コーチとしての心構え」「環境や安全の確認・指導」「時間・空間や選手の管理」「目的や対象に応じた指導」「基本的な5スキルの流れ」の5項目を挙げ、それぞれについてポイントとなる事柄を述べていきました。
また、ここでは、演習を行うために用意する指導案(指導計画)についての説明や執筆する際の注意点も示されました。この指導案は、1日目の講習を終えたあとに受講者が個々に作成し、2日目の受付時に提出します。執筆に際して参考にできる資料の紹介なども行われたほか、特に、「どうしても内容のボリュームが大きくなってしまいがちだが、指導者資格を得るための演習なので、指導上の留意点、安全上の注意点等をしっかり書いてほしい」と促していました。
その後、演習時のグループ分けと評価担当者、どの受講者が、何の種目を指導するのか、指導を実施するエリアやタイムテーブル、どんな用具が使えるかなどが発表。各受講者に割り当てられるのは、自身の専門外の種目ということもあり、グループ分けの一覧が表示されたとたん、会場は一気にざわめきに満ちる状態となりました。
その後、指導案作成や演習についての質疑応答が行われ、そのなかで準備の仕方の留意点や、条件設定の確認、場の設定や大きな用器具(マットや砂場など)の準備、投てき物の扱いなど、細かな確認や補足が行われ、1日目の講習が終わりました。


<<資格制度・講習会開催要項>>
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