2024.03.27(水)委員会

【すべての指導者がコーチ資格を】2023年度JAAF公認コーチ集合講習会・2日間密着レポート(Vol.3)



日本陸連(JAAF)では、日本スポーツ協会(JSPO)が実施する「JSPO公認スポーツ指導者システム制度」と連携して、公認指導者の養成と資格の認定を行っています。こうした指導者資格制度は、以前から実施されていましたが、日本陸連としての姿勢や方向性が、2017年度以降、「JAAF VISION 2017」( https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/jaaf-vision-2017.pdf )や「競技者育成指針」( https://www.jaaf.or.jp/development/model/ )という形で明文化されていったなかで、その実現の中核になってくる「指導者の養成」についても改めて議論や検討が進み、2020年度に「指導者養成指針」( https://www.jaaf.or.jp/development/model-coach/ )を発表。「すべての指導者がコーチ資格を取得する」「資格取得後もコーチが学び続けていける環境をつくる」ことを目指し、コーチ養成システムの再構築が行われてきました。現在のコーチ資格は、「JAAF公認コーチ」「JAAF公認ジュニアコーチ」「JAAF公認スタートコーチ」の3種類に設定。カリキュラムについても、コーチに求められる素養や基礎的な知識を学ぶだけに留まらず、受講者間でのコミュニケーションが増大するグループワーク方式を導入するなど、より広い気づきや学びが得られるような内容へと、大きく変貌しています。
「実際に、どんな講習が行われているの?」と思う方も多いはず。そんな疑問にお応えすべく、昨年12月に行われた「2023年度JAAF公認コーチ集合講習」に密着。2日間にわたって行われた講習の模様をご紹介しましょう。

今回は研修参加者のコメントをお届けします。(第1日目はこちら、第2日目はこちら


【受講者コメント】

◎柿本崇志(ダイハツ陸上競技部、全日本実業団連合推薦)

実業団の長距離チームで、選手と一緒に走るランニングコーチという立ち位置で指導に携わっています。全日本実業団女子駅伝に出場する際、チームに1名、(JSPO公認陸上競技)コーチ3(公認コーチ)を持っている指導者がいないと参加できないという条件があり、そうした背景もあって、今回、私が受講することになりました。
私自身は、競技者として、大学まで長距離をやってきて、卒業後、そのまま会社に入って、現在に至っています。長距離以外の経験はなく、体育の教員免許を持っているわけでもないため、1日目の実技講習では、初めて経験する種目がほとんど。特に、やり投などの投てき種目、なかでも回転系のハンマー投などは本当に新鮮でしたし、短距離のドリルなんかも、自分がやることはなかったので、最初は動きがぎごちなくて…(笑)。今日は、いつもと違うところに筋肉痛が出ています(笑)。演習は短距離走を担当しましたが、指導案をまとめるのも苦労しましたね。昨夜は日付をまたいでしまう感じで、「どうしようかな」と、まさに振り絞りながら(笑)用意しました。
一方で、実技講習を受けていくなかで、「ああ、講師の方々は、こういったことに気をつけて、指導に当たっているのだな」と実感できた点は、とても勉強になりましたし、そこを自分なりに整理して、今日の指導演習の組み立てにも生かすことができました。基本的に、うちのチームは、選手自身の考えを尊重する方針でやっていて、選手も自主的に取り組んでいて、こちらから「これをやって」と投げかけることはあまりないのですが、選手側から意見を求められたときに、どう応じていくことができるか。今回の経験で、自分の引きだしを増やすことができたのかなと思っています。ここで学んだことや気づいたことを持ち帰って、選手に還元できたらいいなと思いますね。


◎坂本美智世(みんスポクラブ、福井陸協推薦)

私は、この(JSPO公認陸上競技)コーチ3(公認コーチ)の前となる(JSPO公認陸上競技)コーチ1(ジュニアコーチ)を受講したのが、もうずいぶん前となるので、今回、「最新の指導法を得たい」「自分をアップデートしたい」と思い、受講しました。普段は、小学生を対象とした指導が多く、週に2回だけ、外部講師として中学校の部活動をみています。
自分が得意とする短距離は心配はなったのですが、ほかの種目については、あまりかかわっていなかったこともあり、集合講習に来る前の段階から実技がうまくできるのかと、とても不安でした。でも、ここで、基礎をきちんと学び、実際に経験できたことは、今後の自信になると思います。受講して、本当によかったなと思います。
指導演習は、走幅跳を担当しました。指導案を書くのは苦にならなかったのですが、実は私、とても不器用で…。踏切り前のステップやリズムの見本がうまくできるかが心配で、昨日の夜は、ホテルで「叱られるかも」と思いながら(笑)、かなり練習しました。そのかいあってか演習では、緊張はしたけれど、自分の指導で、選手役の皆さんが伝えた通りに動けていることを確認できました。「ああ、きちんと理解してもらえたんだな」と嬉しくなり、指導していて楽しい気持ちになりました。
この経験を生かして、まずは自分のクラブの指導から…とは思っていますが。現在、エデュケーター候補ということで、並行してその勉強をさせてもらっていますので、そちらでも役に立てるようになりたいですね。そういう意味では、今回、講師を務められた方々の立ち居振る舞いは、とても参考になりました。
こういう所に来ると多くの方と知り合えるし、いろいろな考え方を学ぶことをできるので、本当に刺激になります。これからは指導者資格が必須となってきますし、ぜひ、多くの方に資格をとってほしいとも思っています。


◎白石祐利(町田第二中学校、東京陸協推薦)

自分自身がWA(世界陸連)の資格をとってから、けっこうな時間が経ったので、もう一回、自分の指導を見直したいという思いがありました。ちょうど東京都の中体連の先生から声をかけていただけたこともあり、受講することにしました。WAの資格は、10年ほど前に、レベルⅠコーチを取得しています。ただ、そのときに学んだことを徐々に忘れつつあるという思いがあり、自分自身の指導をブラッシュアップしたいなという考えがずっとあったんです。
指導演習は、とても緊張しましたし、「全然身体が動かないな」(笑)というのが正直なところでしたが、ほかの受講生の皆さんと、いろいろな話をできたことで、非常に大きな刺激を得た2日間となりました。特に、安全確認のところで、自分が思ってもいなかったような事故の可能性を、皆さんと話していくなかで見つけだし、共有できたことは貴重だったと思います。あとは技術論のところ。いろいろな種目で、「ああ、こういうふうに教えれば、選手たちはわかりやすいんだな」と、今までになかった目線でみることができた点は、とても勉強になりました。
現在は、勤務先の学校の部活動指導のほか、東京都中体連の強化事業に関わっています。日常の指導現場が中学校なので、本当に初心者という選手がすごく多いんですね。今回の講習で何度も出てきた「安心安全」への配慮や、演習の評価項目にもあった「明るく」など、日々の忙しさのなかでつい忘れがちになりそうなことをしっかり意識しなければ、と改めて実感しましたし、子どもたちが楽しみながら、陸上を続けていきたいと思ってくれるような指導をしてきたいと思いました。子どもたちの一生の宝物になるような、そんな時間や経験をつくることのできる指導者になりたいですね。そのために、これから自分自身も学ぶことを続けていきたいなと強く感じました。


◎寺田明日香(株式会社Brighter Hurdler、日本陸連推薦)

公認コーチ取得のお話自体は、日本陸連のほうからお声がけいただきました。“コーチを育てるコーチの養成”というところに関心がありましたし、現役のうちに次のキャリアを考えて勉強する機会をつくったほうが、次のキャリアに進むときにもスムーズに移行できるのではないかという思いもあったので、受講させていただくことにしました。
2度目の現役生活(笑)では、競技と並行して、いろいろな活動をしていますが、そのなかで、子どもたちに教える機会が増えてきていることもあり、集合講習のさまざまな場面で、「ああ、ほかのコーチの方々は、こんなことを考えながら指導されているのか」と、すごく勉強になりました。また、これだけ「安全」に配慮をして、練習や競技会に向けて取り組んでいかなければいけないのかということは、初めてくらいの感じで、その重要性を認識することができました。貴重な機会だったなと感じています。
指導演習ではやり投を担当しました。本当に全然やったことのない種目(笑)で、子どもたちに正しく伝えるために、どこがポイントになるのかということを、一から考えなければなりませんでした。やり投を専門としていらした受講者の先生方にヘルプを求め(笑)、教えていただいたことも勉強になりましたし、そういうコミュニケーションを通じて情報共有できるようになることも、コーチとしてすごく大切なんだなと実感しましたね。専門種目でなくても、子どもたちに楽しく、わかりやすく伝えること、より良い競技環境をつくっていくことはできる。いろいろなツールを使いながら、かつ自分の知識も深めながら、やっていければいいのだなと思いました。
また、競技者としてセルフコーチングのヒントになることが数多くありました。コーチとの関係性においても、「あ、コーチは今、こういうふうに考えているのかな」といった目線で見ることができそうです。そうした点は、今後、役立っていくと感じています。
選手の場合は、受講時期との兼ね合いにもよると思いますが、現役を終えてから資格取得を考えるようだと、次のステップを踏むまでに時間がかかってしまいます。セカンドキャリアの方向性を考えるうえでも、現役中にコーチ講習を受けるということが、選択肢の一つとしてあっていいのではないかと思いますね。




◎中江寿孝(鹿児島高校、鹿児島陸協推薦)

実は、ジュニアコーチの資格は、もう27年くらい前に取っています。まだ、公認陸上競技指導員という名称だったころですね。鹿児島県では、資格を持っていない先生に、まず取ってもらおうということで進めてきたのですが、ここへ来て、上のほうから、「なんだ、ジュニアコーチは持っていても、まだ公認コーチは取っていないじゃないか」と言われ…(笑)。また、システムが変わって、公認コーチを受講するためには、ジュニアコーチの資格を持っていることが条件になったことで、県内でジュニアコーチ資格を持っていて、公認コーチを持っていない先生が少なかったこともあり、私が受講することになりました。のちのち大きな競技会に行くときのことを考えると取っておいいたほうがいいなと考えたのと、タイミング的に、もう一回自分の指導を見直すため良い機会になるという思いもありました。受講したことで、初心に返ったような気持ちになれたので、本当によかったと思っています。
集合講習に参加された方々は、全体に、私よりもずっと年下の人が多く、そのなかで一緒に受講したことで、自分もすごく若返った(笑)ような気になりましたね。鹿児島県では、高校での指導のほかに、スタートコーチやジュニアコーチの講師を担当したり、普及活動で小学校や中学校を回って陸上教室をやったりと、いろいろな場面で自分が誰かに伝える側、教える側を務める機会のほうが増えていますから、今回のように、自分がレクチャーを受ける立場になったことで、気持ち的にも若返ったと思います。
今回の講習で、改めて、参考になったのは、立ち位置ですね。指導者がどこに立つのか、選手にどの位置から指導者に目を向けさせるかというのは、種目ごとの特性や競技場の場所、太陽の位置や風の向きとかによって変わってくるわけですが、普段、学校のグラウンドやよく利用する競技場だと、自分のいる場所はどうしてもて決まってしまうんです。そこにとらわれることなく、必要に応じて立ち位置を考えたほうがいいなと改めて実感しました。戻ったらすぐに実践してみようと思っています。




<<資格制度・講習会開催要項>>
〇資格制度概要
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/
〇公認スタートコーチ養成講習会
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/startcoach.html
〇公認ジュニアコーチ
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/juniorcoach.html
〇公認コーチ
https://www.jaaf.or.jp/development/coachlicense/coach.html



▲2023年度公認コーチ養成講習会B会場の受講者と講師

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