「あのカーリー選手に、速く走る方法を教えてもらった!」
5月21日の「セイコーゴールデングランプリ陸上2023横浜」で、男子100mに出場するフレッド・カーリー選手(アメリカ)が、5月18日に、横浜市の小学校を訪問。児童と交流する機会を持ちました。子どもたちは、カーリー選手の見守るなかSDGsをテーマとした発表を行ったのちに、校庭で一緒に身体を動かしたり、50m走対決に挑んだりするなかで、「世界」を体感。夢のような時間を過ごしました。
日本陸連は、2022年2月に発表した中長期計画「JAAF REFORM」の中で、「陸上」の力を活用しながら、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて貢献していく方針を明示しました。昨年7月からは、陸上を通して、SDGsなどの社会的な課題をみんなで考え、取り組んでいく「#LETSTHINK_(レッツシンク)」プロジェクトをスタートさせるなど、アスレティックファミリー(競技会参加者、審判、指導者)が、「陸上」にかかわっていくなかで、身近で実現できるところからアクションを起こしていけるような環境づくりや意識づけをしていく取り組みを進めています。
今回のイベントは、持続可能な開発のための教育(ESD)の一環として企画されたプログラム。5月21日に行われる「セイコーゴールデングランプリ陸上2023横浜」出場のために来日したオレゴン世界選手権男子100m金メダリストのフレッド・カーリー選手(アメリカ、東京オリンピック男子100m銀メダリスト)という最高にゴージャスな協力を得て、子どもたちが超一流アスリートと交流する時間を持つなかで、目線を世界に向けるきっかけをつくること、陸上をはじめとするスポーツへの興味・関心を深める契機にすることを期して行われました。
この日、カーリー選手が訪問したのは、セイコーゴールデングランプリの会場となる日産スタジアムと同じ横浜市港北区に位置する横浜市立大綱小学校です。朝から雲一つない快晴に恵まれた当日は、最高気温が32℃まで上がる5月とは思えない陽気となりました。
プログラムに参加したのは6年1組~6年4組の児童127名。まず、体育館に集合した生徒たちは、スポーツDJとして数多くのスポーツイベントを手がける司会のDJケチャップさんが繰り出す軽妙な声かけで、「ワクワク感」を大いに高めてカーリー選手の登場を待つことに。体育館入り口の扉が開いてカーリー選手が姿を現すと、大きな歓声と拍手が上がり、ハイタッチで出迎えました。
「皆さん、こんにちは。今日は、ここに来られて嬉しいです。今日は、一緒に楽しみましょう!」というカーリー選手の言葉で、プログラムはスタート。まず、生徒の代表者10名、全5チームによるSDGsの発表が行われました。当初、カーリー選手のために椅子が用意されていましたが、「みんなと一緒に床に座るよ」とカーリー選手。大喜びする子どもたちと一緒に、“体育座り”で舞台にセットされたモニターを見ながら、発表を熱心に聞き入りました。
発表されたテーマは、「地球温暖化の仕組み」が1件、「海の豊かさを守ろう」が2件、「気候変動について考える」が2件。それぞれに、このテーマを選んだ理由を述べたあと、実験した結果や学習してわかった事柄、考えられる原因、対策や解決方法、これから自分はどうすべきかなどを、タブレットを使って、わかりやすくテンポ良く発表していきます。どれも普段からSDGsについて考えたり学んだりするなかで、意識を高めてきたことがよくわかる内容で、カーリー選手も、「素晴らしいプレゼンテーションでした。今日は、新しいことを学ぶことができました」と称賛しました。
プログラムの後半は、校庭に場所を移して“実技”による交流です。
まず、日本陸連指導者養成委員会の森健一先生が音頭を取って、全員で準備運動。全身を使って行う「からだじゃんけん(Rock-paper-scissors)」でカーリー選手と勝負したあと、アキレス腱やお尻、前もものストレッチやリズミカルに行う連続ジャンプなどで身体をほぐしていきました。
次に行われたのは、カーリー選手による「速く走るポイントレッスン」。カーリー選手は、「速く走るためのドリルを紹介します」と、まず、その場で行う連続もも上げとワンステップ加えての連続もも上げを披露。「姿勢を良く、背筋を伸ばして、リズミカルに」とポイントを紹介しました。続いて、支持脚でしっかりと地面を押して身体を引き上げるもも上げ歩行を紹介。ここでは、「自分の身長が20cmくらい伸びるような意識で、背伸びするような感じで」とアドバイスしていました。
走る準備が整ったところで、校庭の真ん中に引かれた5レーンの直走路へと移動。6年生だけでなく、教室から出てきた1~5年生を含めた全校生徒が見守るなか、カーリー選手が走りのデモンストレーションを1本行ったあと、カーリー選手と6年生の代表4人による50m走対決が行われました。カーリー選手が子どもより10m後方からスタートしてのレースは、2人の生徒とカーリー選手が最後まで競り合い、そのうちの1人の八島孝太くんがわずかに先着する結末となりました。“現役世界最速スプリンター”に勝った同級生の大健闘に、子どもたちからは大きな拍手が。八島くんは、「ハンデがあったとしても、すごく嬉しいです」と笑顔を見せました。
実技の最後には、カーリー選手によるスタート合図で、8チームに分かれた6年生が30mを走ってつなぐシャトルリレーが行われました。その後の質問コーナーでは、生徒たちが次々と手を上げ、「好きな食べ物は?」「なぜ、アスリートになったの?」「嫌いな食べ物は?」「アスリートでなかったらやりたいことは?」「50mは何秒で走る?」「陸上を続けられる理由は?」と質問。カーリー選手は1つ1つに丁寧に答えていました。
すべてのプログラムを終えてカーリー選手は、「皆さん、健康な身体と健全な心を維持して、今、やっていることをやり続けてください。そして、日曜日には、ぜひ、セイコーゴールデングランプリで会いましょう」と子どもたちに挨拶しました。
生徒代表で御礼の言葉を述べたのは、カーリー選手との対決を制した八島くんと、日暮煌星くんの2人。八島くんが「今日は、僕たちのために一緒に走ってくださって、ありがとうございます。カーリー選手と一緒に走れて、陸上に興味を持ち、自信を持てました。今日はありがとうとございました」と感謝の思いを述べると、日暮くんが、流暢な発音で、それを英訳して伝えました。
最後に行われた記念撮影のあとも、カーリー選手は校庭にとどまって、6年生の1人1人にサイン。子どもたちが、嬉しさで身体を弾ませ、「やったー!」「すげー!」「かっこいい!」と言い合いながら教室へ戻っていく姿が印象的でした。
【フレッド・カーリー選手コメント】
アメリカ以外で、こういう機会を持つのは初めてだったが、新しい文化を学ぶこともでき、とても良かった。「走る」という自分が普段取り組んでいる競技生活以外の世界に、こういう形で関わることができたのは、本当に素晴らしい経験だった。またこのような機会があったら、ぜひ参加したい。
次世代の子どもたちと走るのは、私がいつもとても楽しみにしていること。一緒に走ることで、私が彼らのインスピレーションとなって、次の世代のアスリートが育ってくれるのであれば、とても嬉しく思う。
セイコーゴールデングランプリでは、まずは勝つことが第一となるが、歴史に残るような走りがしたい。横浜は、世界リレー(2019年)で来て以来、2回目。皆さんから暑さを心配されるのだが、私は、普段マイアミやアリゾナといった、もっと暑いところにいるので、このくらいなら問題ない。調子もすごくいいので、日曜日は、ぜひ期待してほしい。ぜひ、会場へ足を運んで、応援してもらいたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
■#LETSTHINK_特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/sdgs/
日本陸上競技連盟では、「陸上」と社会とのかかわり方や課題解決について、新たな活動を積極的に行いながら、アスレティックファミリーの皆さんと共に、身近に出来るところから行動できる環境や意識づけをしていきたいと考えています。
■【JAAF×SDGs】#LETSTHINK_ 2023年も取り組み募集!
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17668/
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