オレゴン世界選手権3日目の7月17日は、男子マラソンが早朝6時15分から開始となるタイムテーブル。フルエントリーしていた男子マラソンは、日本記録保持者の鈴木健吾選手(富士通)が新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出たために残念ながら欠場となり2名で戦うことに。マラソン終了後、ヘイワード・フィールドで行われた男子400m予選に3選手が、男子10000m決勝に2選手が出場しました。
スタート時の気温が13℃、フィニッシュ時は16℃と、涼しく、雲の多い天候下で行われた男子マラソンは、ゆったりとしたペースでの入りとなった前半から一転して、終盤で大きくペースアップする展開に。優勝したのは34kmあたりでリードを奪ったTamirat TOLA選手(エチオピア)で、大会新記録となる2時間05分36秒をマークしました。ともに2度目のマラソンとなった日本の西山雄介選手(トヨタ自動車)と星岳選手(コニカミノルタ)は13位と38位でのフィニッシュ。西山選手は、世界選手権における日本人最高記録となる2時間08分36秒をマークしました。
世界選手権では2001年エドモントン大会以来のフルエントリーとなった男子400mは、佐藤風雅選手(那須環境、45秒88)とウォルシュジュリアン選手(富士通、45秒90)がともに予選を4着でフィニッシュ。プラスで拾われる競技者の2・3番手で準決勝へ駒を進めました。
モーニングセッションにおけるトラック唯一の決勝種目として行われた男子10000mには、田澤廉選手(駒澤大学)と伊藤達彦選手(Honda)が出場。田澤選手が20位、伊藤選手は22位という結果でした。
午前のセッションに出場した選手のコメントは、下記の通りです。
◎西山雄介(トヨタ自動車)
男子マラソン 決勝 13位 2時間08分35秒
率直に「世界の壁は高い」というのが一番の印象。30kmからペースアップしたのだが、そのことは事前に走っているなかで、最初が遅かったので30kmから上がるだろうなと考えていた。そのために、しっかり前で準備することを意識して構えていたのだが、コースの小刻みなアップダウンや、ペースの上げ下げというので少し足を使ってしまったというのがあり、その30kmのペースアップに対応できなくて、一番肝心なところで対応できなかったということが悔しい気持ち。自分は、本当にそこを意識していたので、構えていたなかで対応できなかった悔しさがすごく強い。
足に来たのは27~28kmくらい。30kmのときには、少しまだ残っていた感じだったが、ペースが3分05(秒)になったり2分50(秒)になったりと、ほぼ給水のタイミングのところで上げ下げがあった。(集団の前に)いたかったので毎回対応していたところが、足に来てしまったのだと思う。
練習で、自分のやるべきことを本当にしっかりやってきて、ほぼパーフェクトでできたなかで、練習でも後半の落ち込みがないように意識して練習してきたので、そこは練習の成果がまとめられたことはよかったのかなと思う。タイムについては、正直、特に意識していなくて、自己ベスト以外、そんなに気にしないので、今回の結果もなんともいえないという感じである。それよりも、タイムというよりも、勝負できなかったことが悔しい。
こういったペースの上げ下げを世界の舞台で経験できたことは大きかったし、日本のように30kmまでペースメーカーのいない、生きたレースを経験できたことは今後につながると思う。これを絶対に無駄にしちゃいけない。練習のレパートリーとか、バリエーションとかを、これから増やしていかなければいけないということを、すごく感じている。
◎星 岳(コニカミノルタ)
男子マラソン 決勝 38位 2時間13分44秒
ペースメーカーがつかない、ペース変動の大きい世界陸上の舞台というのは、やっぱりひと味違うなと思ったし、そこに対応できる力はまだまだなかったなというのをすごく感じています。
今日のレースは、「積極的、かつ冷静に、ペースの上げ下げにもうまく対応できる」ことを意識していた。序盤はうまく流れに乗れていたと思うが、やはり力不足の部分が大きくて、後半は全く対応できなかったなと思う。
対応できなかった部分は、最初は足に来た。2周目が終わる直前の上りのタイミングで、ペースが上がったタイミングで動かすことができなくて、置いていかれてしまった。
対応しやすいように、前のほうにポジションをとることを心掛けて、序盤は位置取りをしていた。
結果は振るわなかったと思うが、今日のレースと、代表として向き合っていた時間と、本当にすごく成長できたなと思う。自分のなかではプラスしかないので、今後に生かしたい。
◎ウォルシュジュリアン(富士通)
男子400m 予選 1組4着 45秒90 =準決勝進出
前半は、けっこういい感じでついていけたかなと思う。それで、25(250m)あたりから切り替えたつもりなのだが、なんかあまりうまくいかなかった。
うまくいかなかったと思うのは、後半が持たなかったこと。タイムと自分の感覚とのギャップもすごくあった。練習からめちゃ調子がよく、アップもめちゃよかったのだが、(その割にタイムが伸びず)あれ? という感じである。
調子は一番いい状態に持ってきたつもりなので、走りは今季で一番よかったと思う。
今、入りの(200mの)タイムがわからない状態であるが、最近、前半を行きすぎてしまって、後半が持たないということが(課題として)ある。準決勝は、前半を積極的に行くけれど、そのなかでも冷静に、レースを展開していきたい。
◎佐藤風雅(那須環境)
男子400m 予選 5組4着 45秒88 =準決勝進出
もともと立てていたプランでは予選から全開で44秒台のタイムを狙いにいって、準決勝でも全力でいって44秒を目標にしていた。タイムは振るわなかったけれど、最低限の内容で予選を突破できたことをとても嬉しく思う。
今シーズンは、前半をうまく走れていたので、この試合でもそれは変えずに前半からしっかり勝負しようと臨んだが、向かい風が強かったぶん少し力んだ前半となってしまった。300mまでは海外選手と変わらないタイムで行けたが、彼らの元々のスピードが速いぶん、ラストの直線で彼らには余力があったのに対して私はもう出しきった状態で、落ちないようにするので精いっぱいだった。ラストは少し脚が流れてしまったが、たれているなかでも最低限まとめきれたと思う。ただ、今シーズンやってきたことが、できていない走りになってしまったので、準決勝では、日本選手権や調子がよかったレース(の映像)をもう一度見直して、今回と何が違うのかを分析して準決勝に臨みたい。
◎川端魁人(中京大クラブ)
男子400m 予選 6組5着 46秒34
前半は積極的に行こうと決めていたので、そこはしっかりできたと思うが、やはり課題である後半が落ちてしまい、記録も自分が予定していたものより、はるかに遠いものとなってしまった。終わってみて、情けない、悔しい気持ちで今はいっぱいである。ここに入るまで、すごく調子もよくて、ウォーミングアップでも、調子は悪くないなと思ってレースに挑んだのだが、いざ走ってみたら、自分の感覚とタイムに大きな誤差があった。そこをアスリートとして力量が足りなかったなという反省として感じるとともに、今回、初めて個人種目で出場したわけだが、このプレッシャーと緊張のなか、いかに調子を合わせていくかということが、すごく勉強になったと思う。
(対戦した外国人競技者は)走る前は、自分よりもひと回りもふた回りも大きいなと思ったが、予選のボーダーラインをとかを見てみると、突破できないわけではない。そこは世界との壁というよりは、自分との壁という感じ。力を出しきれない自分を弱いなと感じた。
マイル(4×400mリレー)に関しては、個人で準決勝に行った(佐藤)風雅さん、(ウォルシュ)ジュリアンさんもいて、アベレージで見ても近年のなかでもとてもいいメンバーが揃っている。チームとして、2分台というのを絶対条件として、まず決勝に駒を進めることを目標にしているので、(レースまでの)残り1週間で、自分がやるべき仕事をしっかりと状態を整えて挑みたい。
◎田澤 廉(駒澤大学)
男子10000m 決勝 20位 28分24秒25
暑いなかのレースになることはわかっていたので、その準備はしていた。5000mあたりのペースが上がったところで、ついていけたのはよかったのだが、そこで差し込みが来てしまって、全然思うような走りができなかった。ただ堪え忍ぶレースになったということが、非常に悔しい。レース展開については、途中から(ペースが)上がっていくということと、ペースの上げ下げが激しいのではないかと思っていた。その通り、ペースの上げ下げが激しくて、5000mからは一気にペースが上がる形となった。ただ、それも一応予想はできていたのだが、差し込みのせいで、ほかの選手との差もあまり肌で感じることができず、ただ参加しただけのレースになってしまった。
自分のなかでは、先頭は5000mを13分45秒くらいで通過するのではないかと思っていたので、比較的余裕を持って、ペースが上がったところで自分も(ペースを)上げて、粘るレースをしたかったので、それができなかったことは、もったいないなと思う。
今回、スタートラインに立てたことはよかったと思うし、今後の自分の陸上人生においても、なんらかのプラスになると思っていたので、改めて振り返ってから今後に向けて考えたい。
◎伊藤達彦(Honda)
男子10000m 決勝 22位 28分57秒85
出場が急きょ決まったことで、調整という部分であまりできていなかったところもあったが、もし調整できていたとしても、(先頭集団には)7000mあたりでついていけなかったと思う。そこはやっぱりまだまだ。日本国内と世界とではレベルが違いすぎるので、そこを実感できたことはよかったと思う。今日はハイペースになってもスローペースになっても、どんな展開になっても、とりあえずついていくことしか考えておらず、特に作戦とかはなく挑んだ。
10月に5000mで13分10秒台を出すことを目標にしていたので、それに向けて、ショートインターバル系とか、レペティションなどをやっていたのだが、VO2max系の練習をしていなかったので、スピードに対応できなかったいうのはある。
日本選手権(で上位を得ること)や(参加)標準記録を切ることに100%を使っていつも挑んでいるが、そこで使いきってしまうと、本番をベストコンディションで迎えられないことが東京オリンピックでも、また今回でも感じたので、日本選手権を楽勝で、ダントツで突破して内定を決めて、この舞台に立てるように、またこの1年を頑張りたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
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