「ダイヤモンドアスリート」第8期生に向けた栄養セミナーが6月15日、オンラインで行われました。ダイヤモンドアスリートは、オリンピックや国際大会での活躍が大いに期待できる次世代の競技者を強化育成することを目指して、2014年度に創設された制度で、陸上競技を通じて、競技的にはもちろん、豊かな人間性を持つ国際人となり、今後の日本および国際社会の発展に寄与する人材として育成することを狙いとして、多角的な視点からさまざまなプログラムが実施されています。
アスリートの競技力向上に欠かせない栄養に関する知識と実践に関するセミナーも、その一つ。「豊かな食環境」への提案を通じたサポートに実績があるエームサービス株式会社が、ダイヤモンドアスリートたちの栄養サポートを行うとともに、定期的にセミナーを実施しています。
今回は、第8期生に向けたセミナーの第1回。これまでのプログラムで、すでにサポートを受けてきている中村健太郎選手(日本大学3年)、出口晴翔選手(順天堂大学3年)、藤原孝輝選手(東洋大学2年)、柳田大輝選手(東洋大学1年)のほか、今期から新たに加わった西徹朗選手(早稲田大学1年)の5名が出席。ダイヤモンドアスリートたちを長くサポートしているエームサービス株式会社の松岡未希子さんと岡本香さんによる講義が行われました。
まず、松岡さんは、ダイヤモンドアスリートにおける栄養サポートの目的として、“あらゆる食環境において、ダイヤモンドアスリートが食生活を自己管理できるようになること”をテーマにしていることを挙げ、「寮や自宅での日常の食事、国内・海外における合宿や遠征先、体調を崩したりケガをしたりしたときなど、あらゆる状況で食事を摂ることになるが、いつでも、どこでも、どんなときでも、自分に必要な食事(量・内容)が選べるようになることをゴールにしている」と述べ、「ダイヤモンドアスリートに認定された皆さんを何年かみていると、徐々に意識が高まっていることがよくわかる。皆さんが自立していけるお手伝いをしていきたい」と呼びかけました。第8期生に向けてのセミナーは今回が1回目。特に西選手に関しては栄養サポートのセミナー自体を初めて受けるという状況であったため、まず、アスリートにおける食事の意義や、食事の基本といった基礎的な内容が紹介されたあと、梅雨から夏へと向かっていくこの時期に身につけておきたい「暑熱対策」について、説明が進められました。
アスリートにおける食事の意義については、松岡さんがダイヤモンドアスリートたちに、「アスリートにおける食事の役割は何か」を質問し、各選手がそれに答えていくなかで、食事は、①競技に適した身体をつくること、②身体を動かすエネルギー源の補給、③コンディションの維持、④競技で起こしやすい障害の予防やケガをしたときの早期回復、といったさまざまな役割を担っていて、これらが総合的に作用することで競技力の向上や最高のパフォーマンス発揮に結びつくと説明。さらに、人間の身体はすべて、古いものから新しいものへと毎日少しずつ入れ替わっていて(代謝)、それぞれの代謝のサイクルは部位によって期間が異なると述べました。そして、その新しく替わっていくものは、すべて「食べたもの」からできていることから、「意識して毎日の食事をしっかりと摂っていかなくてはならない」と話しました。
次に説明されたのは「食事の基本」です。アスリートが普段の食事について、簡単に気を配ることができる方法として、毎回の食卓に、①主食、②主菜、③副菜、④果物、⑤乳製品という、それぞれに持つ栄養素や身体に対する働きが異なる5つのカテゴリーを揃えることを基本形とすれば、栄養バランスをうまく整えられることが紹介されました。また、単品に偏りがちな朝食や昼食においては、タンパク質や野菜が不足しがちなので意識的に摂取していく必要があること、特にタンパク質については、3食均等に摂取したほうが体内でより効果的に筋タンパクの合成(筋肉を大きくしていくこと)が行われるため、朝食や昼食でもしっかりとタンパク質を摂ることが大切である点が強調されました。
続いて、「梅雨に入って、これから夏に向かっていくが、本格的な暑さに備えて、この時期から対策をとっておくことが大事」として、暑熱対策に関する基本的な知識が紹介されました。
まず、体温調整の仕組みが示され、どういう状況になると熱中症が起きるのかの説明がなされたあと、暑さや熱中症への対策として、①暑さに身体を適応させる方法(暑熱順化)、②身体を外部あるいは内部から冷やす方法(身体冷却)、③脱水が体重の2%以内にとどめられるよう水分摂取に注意すること(水分補給)の3つについて、それぞれに具体的な方法や留意点が挙げられました。さらに、「夏バテ」とはどういう状況であるか、夏バテを防ぐ食事のポイントや効果のある食材、さらには食欲を増進する食材などが具体的に挙げられました。
最後に、岡本さんが、「個々の面談でダイヤモンドアスリートから挙がった質問について説明することで、情報を共有したい」として、ダイヤモンドアスリートたちに、質問を投げかけながら、次の点について、具体的な事例を交えながら、解説を進めていきました。
・肉の種類(牛・豚・鶏)や部位(カルビ、ロース、タンなど)によるエネルギー量の違い
・肉の種類や部位の説明と、それぞれの特徴
・大豆ミートというタンパク源の紹介
・魚と肉の違い、魚に含まれる栄養価や特徴
・食材や調理法、調味料によるエネルギー量の違い。どんなときに選べばよいか
・自炊を継続する際の食材選びのコツ
セミナーが進められるなかで印象深かったのはダイヤモンドアスリートたちの意識の高さです。西選手は、今回が初めての受講だったにもかかわらず、「アスリートにおける食事の役割は何か」という問いに対して完璧に答え、「初めてなのにすごい!」と松岡さんたちを驚かせていました。また、すでに栄養サポートを受けているダイヤモンドアスリートも、普段、食事で気をつけている点を問われた際に、「(調理したものが)茶色ばかりにならないよう意識している」「食べる内容もだが、食べる時間を固定できるように気をつけている」「ごはんの量、タンパク質、野菜がきちんと摂れるようにしている」などとコメントし、日常生活のなかで、無理なく、自然に、栄養に関して配慮がなされていることが垣間見えました。出口選手からは、「ぜひ、実技講習をやってほしい」というリクエストも出るなど、ダイヤモンドアスリートたちが、積極的にプログラムを活用している様子がうかがえました。栄養セミナーを含めて、ダイヤモンドアスリートのプログラムは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大した影響で、この2年ほどは対面型の実施が叶わずにきていますが、今後は状況をみながら集合しての実施も計画していく予定です。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
【ダイヤモンドアスリート】特設サイト
>>https://www.jaaf.or.jp/diamond/
■第8期認定アスリートクレイアーロン竜波(テキサスA&M大学)
中村健太郎(日本大学3年)
出口晴翔(順天堂大学3年)
藤原孝輝(東洋大学2年)
柳田大輝(東洋大学1年)
アツオビンジェイソン(福岡大学2年)
佐藤圭汰(駒澤大学1年)
西徹朗(早稲田大学1年)
▼【ダイヤモンドアスリートスペシャル対談】
室伏由佳×新規認定アスリート佐藤圭汰&西徹朗
https://www.jaaf.or.jp/news/article/16072/
▼サポート企業へのインタビュー
~豊かな人間性を持つ国際人への成長を支えるために~
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15260/
▼【日本選手権】ダイヤモンドアスリートの活躍を振り返る!
修了生の橋岡・サニブラウンがオレゴン世界選手権日本代表に決定!
https://www.jaaf.or.jp/news/article/16596/
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