2022.06.01(水)選手

【記録と数字で楽しむ第106回日本選手権・混成競技】男子十種競技:勝つのは誰だ?大混戦のエントリー記録を徹底分析!

・文中敬称略
・記録は5月30日判明分


ここでは、6月4日~5日に秋田で行われる「第106回日本選手権・混成」の「見どころ」や「楽しみ方」を「記録と数字」という視点から紹介する。なお、「日本選手権・混成」とともに20歳未満の日本一を決める「U20日本選手権・混成」も同時開催される。また、「オレゴン世界選手権」と「カリU20世界選手権」の代表選手選考競技会でもある。

走跳投のオールラウンドのトータルポイントで競う十種競技のチャンピオンは「キング・オブ・アスリート」、七種競技は「クイーン・オブ・アスリート」として称えられる。
今回の日本選手権では果たして誰がその称号を手に入れるのか?

残念ながらテレビの生中継はないが、日本陸連HPで2日間とも競技開始から終了までライブでのネット中継がされる。
解説は、学生時代に自身も十種競技に取り組んでいた石井朗生日本陸連事務局次長(元毎日新聞社運動部記者)が担当予定。豊富な知識とデータに基づく興味深い話が次々と出てきて、2日間トータル16~17時間あまり、飽きることなく楽しませてくれるはずだ。

▼ライブ配信の詳細はこちらから▼
https://www.jaaf.or.jp/jch/106/news/article/16252/



<男子十種競技>

<5月27日に、丸山優真(住友電工)の欠場が発表された。以下は、欠場発表前に執筆したものではあるが、今回の「第106回日本選手権・混成競技」を楽しむお供にしていただければ幸いである>

・日本記録&大会記録:8308点 右代啓祐(スズキ浜松AC)2014.5.31~6.1 長野
・オレゴン世界選手権参加標準記録:8350点


過去12年間の優勝は、右代8回、中村4回、今回は??

2010年からの12年間は右代啓祐(スズキ浜松AC→国士舘クラブ)と中村明彦(スズキ浜松AC)の2人が「キング・オブ・アスリート」の称号を手にしてきた。
右代が、10~15年、18・19年で計8回。中村が16・17年、20・21年で計4回。

右代の8回は十種競技での最多優勝回数。10年からの6連覇は、90年から7連勝した金子宗弘(順大→ミズノ)に続き歴代2位。

過去の優勝者をみていくと、1928年アムステルダム五輪の三段跳で陸上競技のみならず、すべての競技を含めて日本人初の五輪金メダリストとなった織田幹雄(早大)が1925・27年に十種競技を制している。また尾縣貢(みつぎ)現日本陸連会長も筑波大学時代の81・82年に連覇。タレントとして活躍している「百獣の王」こと武井壮も中央学院大学の学生だった97年に優勝している。


エントリー記録では、69点以内に5人の大混戦

今回の日本選手権参加資格記録有効期限(2021年1月1日~22年5月9日)における上位選手の記録は以下の通り。
・所属は、22年のもの。一番後ろの <>内は、自己ベストを示す。
1)7833 中村明彦(スズキ)2021.06.13<8180 2016.06.12=日本歴代2位>
2)7816 右代啓祐(国士舘クラブ)2021.05.03<8308 2014.06.01=日本歴代1位>
3)7807 丸山優真(住友電工)2022.05.01<同左=日本歴代5位>
4)7768 奥田啓祐(第一学院高教)2021.06.13<同左=日本歴代8位>
5)7764 田上 駿(陸上物語)2022.05.01<同左=日本歴代9位>
6)7590 片山和也(烏城塗装工業)2022.05.01<7603 2020.09.27=日本歴代21位>
7)7298 佐田征義(順天堂大)2021.05.03<同左=日本歴代51位>
8)7286 森口諒也(東海大)2022.04.16<同左=日本歴代54位>

自己ベストでは、日本記録保持者の右代と歴代2位の中村が抜きんでているが、21年以降の記録では大混戦の状況だ。
参加資格記録トップの中村と5位の田上との差は69点。最終種目の1500mで10秒ちょっとの差に過ぎない。
トップ5が参加資格記録をマークした時の種目別記録と得点は以下の通り。カッコ内は累計得点と「=*」は5人の中での通算順位を示す。

【参加資格記録トップ5の参加資格記録マーク時の種目別内訳】
種目中村明彦右代啓祐丸山優真奥田啓祐田上 駿
100m10.7711.4611.0110.7010.98
得点912761858929865
(合計点=順位)(912=2)(761=5)(858=4)(929=1)(865=3)
走幅跳7.36w6.947.377.357.28
得点900799903898881
(合計点=順位)(1812=2)(1560=5)(1761=3)(1827=1)(1746=4)
砲丸投12.8414.4912.3012.6712.54
得点657758625647639
(合計点=順位)(2469=2)(2318=5)(2386=3)(2474=1)(2385=4)
走高跳1.941.952.021.941.86
得点749758822749679
(合計点=順位)(3218=2)(3076=5)(3208=3)(3223=1)(3064=4)
400m49.3852.0348.9647.5949.42
得点843723863929842
(合計点=順位)(4061=3)(3799=5)(4071=2)(4152=1)(3906=4)
110mH14.3415.0614.1314.5414.00w
得点931842958906975
(合計点=順位)(4992=3)(4641=5)(5029=2)(5058=1)(4881=4)
円盤投34.8148.4341.9538.1338.31
得点560838704627630
(合計点=順位)(5552=3)(5479=5)(5733=1)(5685=2)(5511=4)
棒高跳4.804.904.504.404.50
得点849880760731760
(合計点=順位)(6401=3)(6359=4)(6493=1)(6416=2)(6271=5)
やり投56.1862.4556.3854.9959.07
得点681775684663724
(合計点=順位)(7082=3)(7134=2)(7177=1)(7079=4)(6995=5)
1500m4.29.034.39.674.48.094.38.704.26.28
得点751682630689769
(合計点=順位)(7833=1)(7816=2)(7807=3)(7768=4)(7764=5)

上記のように、参加資格記録による「仮想対決」では、抜きつ抜かれつの大接戦となる。
最初の100mでトップに立った奥田が6種目めまで首位をキープ。この時点で5位の右代とは417点もの大差がつく。
7種目めから9種目めまでは丸山がトップに立つ。右代は、7種目めからの円盤・棒高・やりで猛追し丸山と43点差の2位に。右代と52点差で中村が3位。
そして最後の1500mでも順位変動があって、中村・右代・丸山・奥田・田上という順で仮想対決は終了となる。

本番でも上記と同じような抜きつ抜かれつの争いとなるかもしれない。


種目別自己ベストの合計得点では右代と中村が抜きんでる

以下には5人の十種競技中だけではなく単独種目での試合を含めた各種目の公認ベストとその合計得点。さらには十種のベストとの達成率も示した。それぞれの「潜在能力」を知るための指標となるだろう。

【参加資格記録トップ5の種目別公認ベストと十種ベストとの達成率】
種目中村明彦右代啓祐丸山優真奥田啓祐田上 駿
100m10.6611.1410.8010.5610.83
得点938830906961899
(合計点=順位)( 938=2)( 830=5)( 906=3)( 961=1)( 899=4)
走幅跳7.667.457.537.527.62
得点975922942940965
(合計点=順位)(1913=1)(1752=5)(1848=3)(1901=2)(1846=4)
砲丸投12.8415.6513.3413.5912.98
得点657830688703666
(合計点=順位)(2570=3)(2582=2)(2536=4)(2604=1)(2530=5)
走高跳2.102.062.021.941.99
得点896859822749794
(合計点=順位)(3466=1)(3441=2)(3358=3)(3353=4)(3324=5)
400m47.1749.6648.9647.5948.02
得点950830863929908
(合計点=順位)(4416=1)(4271=3)(4221=5)(4282=2)(4232=4)
110mH14.0614.7113.9014.5413.97
得点967885987906978
(合計点=順位)(5383=1)(5156=5)(5208=3)(5188=4)(5210=2)
円盤投38.5350.2342.3339.5239.52
得点635875712655655
(合計点=順位)(6018=2)(6031=1)(5920=3)(5843=5)(5865=4)
棒高跳5.005.004.804.704.60
得点910910849819790
(合計点=順位)(6928=2)(6941=1)(6769=3)(6662=4)(6655=5)
やり投56.1873.8261.7265.4560.13
得点690948764820740
(合計点=順位)(7618=2)(7889=1)(7533=3)(7482=4)(7395=5)
1500m4.08.244.26.684.38.114.38.704.20.37
得点894767692689809
(合計点=順位)(8512=2)(8656=1)(8225=3)(8171=5)(8204=4)
十種PB81808308780777687764
 (%)(96.1%)(96.0%)(94.9%)(95.1%)(94.6%)

このデータでは、歴代1・2位の右代と中村の公認ベストの合計点がやはり抜け出ている。さらにその合計点に対する実際の十種競技の得点の達成率も96%台と他の3人よりも高い。競技歴が長いだけに十種目トータルでうまく自身の力を発揮できているということであろう。他の3人も96%台の達成率を実現できれば、現在の十種のベストを100点前後伸ばせる可能性がありそうだ。

ちなみに5人の種目別ベストで最もいい記録の得点を合計すると「9226点」。十種の世界記録はケビン・マイヤー(フランス)の「9126点(2018.9.15~16)」。日本歴代1・2・5・8・9位の選手の各種目のベストのトータルでようやくマイヤーの世界記録を100点上回れる計算だ。そんな記録を出したマイヤーは、やはりスゴイ!
参考までにマイヤーの各種目の自己ベストの合計と達成率は、「9455点・96.5%」。室内の記録も含めると「9513点・95.9%」である。


十種競技中の種目別日本最高記録

トータル得点6500点以上の十種競技中の各種目の日本最高は、

【十種競技中の種目別と前半・後半の日本最高】
・トータル6500点以上の記録に限る
・追風参考は4.0m以内の記録
100m10.53(1.2)968音部拓仁2015.07.05
100m/追参10.52(2.4)970中村明彦2015.04.25
走幅跳7.65(0.8)972中村明彦2016.06.11
走幅跳/追参7.69(3.1)982丸小野仁之1992.09.11
砲丸投15.65830右代啓祐2015.07.05
走高跳2.16953氏野修次1981.09.12
400m47.17950中村明彦2012.06.02
110mH13.97(0.2)978能登谷雄太2015.07.06
110mH/追参13.89(2.1)989森口諒也2019.06.09
円盤投50.23875右代啓祐2015.10.31
棒高跳5.301004横山 学1996.11.03
やり投73.82948右代啓祐2009.10.11
1500m4.08.24894中村明彦2009.09.05
前半 4278中村明彦2016.06.11
後半 4188右代啓祐2014.06.01

各種目の最高記録(追風2.0m以内)の合計得点は「9372点」である。上述の世界記録保持者マイヤーの自己ベスト9455点には残念ながら及ばない。

今回、8308点を8年ぶりに更新する日本新記録が生まれれば「万々歳!!」である。が、8年間破れていないことからしても、「8308点」は非常に高い頂(いただき)でもある。
トータル得点では及ばなくとも、種目別の日本最高を知っていれば、各種目を観戦する際の楽しみもアップすることだろう。


オレゴン世界選手権への道は?

世界選手権参加標準記録は、日本記録を上回る8350点のハイレベル。
が、これを上回るのは世界で十数名であろうからそれ以下の選手は世界陸連のワールドランキングでの出場を目指すことになる。
世界選手権のターゲットナンバー(参加人数制限)は24人。
ワールドランキングは、「順位ポイント+記録ポイント=ランキングポイント」の有効期間内の上位2試合の平均ポイントで順位付けされる。
「順位ポイント」は、大会の規模によっていくつかのグレードに区分されている。日本選手権のカテゴリーは「B」で、各順位のポイントは以下の通りだ。
1位 60pt
2位 50pt
3位 45pt
4位 40pt
5位 35pt
6位 30pt
7位 25pt
8位 20pt

「記録ポイント」は、その試合での十種競技の記録(得点)を世界陸連採点表によって「記録ポイント」として採点する。
そして、「順位ポイント」と「記録ポイント」をした合計ポイントの上位2試合の平均がワールドランキングでのポイントなる。
2021年の東京五輪の時には2試合平均が「1221pt」が24人に滑り込むボーダーラインだった。

2022年に改訂された最新版の記録ポイント(十種競技は2017年版と変更なし)は、以下の通りだ。

記録pt十種の記録
1200pt8473点
1190pt8408点
1180pt8344点
1170pt8280点
1160pt8215点
1150pt8151点
1140pt8086点
1130pt8022点
1120pt7957点
1110pt7893点
1100pt7828点
1090pt7763点
1080pt7698点
1070pt7633点
1060pt7568点
1050pt7503点
1040pt7438点
1030pt7373点
1020pt7308点
1010pt7243点
1000pt7178点

例えば8022点で今回の日本チャンピオンとなった選手は、順位ポイント「60pt」に記録ポイント「1130pt」の計「1190pt」が、日本選手権でのポイントとなる。

5月24日時点での1国3人まででカウントしたワールドランキングで日本人最上位は、35位の中村で2試合平均1168pt(19年アジア選手権1176ptと21年日本選手権1160ptの平均)、右代は1167ptで36位(19年アジア選手権1216ptと21年日本グランプリ混成1118点の平均)。
なお、世界選手権に向けての成績の有効期限は2020年12月27日~22年6月26日だ。ただし、アジア選手権など地域選手権の成績は開催された年から3年目の年末まで有効になる特例がある。よって、19年4月のドーハでのアジア選手権の右代と中村の成績は22年末まで有効となる。

オレゴン世界選手権に出場できる「24人」に入るためのボーダーラインがどの程度になるかは、外国人選手の成績次第で変わってくる。

仮に東京五輪と同じ「1221pt」とするならば、右代と中村は日本選手権でどれくらいの記録が必要となるのか?

現段階では、中村が右代を1ポイント上回っているが、「オレゴンへの道」という点では右代が中村よりも優位な位置にいる。

事情は、こうだ。

19年アジア選手権で優勝した右代の「順位ポイント」は「110pt」で「記録ポイント」の「1106pt=十種7872点」との合計は「1216pt」。対する中村は、アジア選手権3位で「順位ポイント」が「75pt」で「記録ポイント」が「1101pt=十種7837点」で合計が「1176pt」。右代が2試合平均で「1221pt」に到達するには、今回の日本選手権で「1226pt」が必要。中村は、「1266pt」が必要となる。日本選手権優勝の「順位ポイント」の「60pt」が加わったとして、「記録ポイント」で右代は「1166pt」、中村は「1206pt」を獲得しなければならない。

右代の「1166pt」に相当する十種の記録は「8254点」、中村の「1206pt」となると「8511点」をマークしなければならない。ということは、中村の場合は「8350点」の参加標準記録をクリアするしかない。右代の場合も、自己の日本記録8308点に迫る記録が要求されるので「オレゴン世界選手権への道」は非常に厳しい道のりではある。

なにはともあれ、今回の秋田では、2014年の日本選手権以来の「複数人の8000点オーバー」を見せてもらいたいところだ。

この十数年は右代と中村が牽引してきたが、それに続く選手の中から3人目あるいは4人目の「8000点台」のデカスリートが誕生すれば、今後の十種界にとっての光明となる。


日本選手権での順位別最高記録

最後に、これまでの日本選手権での各順位の歴代最高記録を紹介しておく。

1)83082014年右代啓祐(スズキ浜松AC)
2)80352014年中村明彦(スズキ浜松AC)
3)77522018年丸山優真(日大)
4)76792015年川崎和也(順大)
5)76342015年清水剛士(中京大)
6)74922015年能登谷雄太(ニューモード)
7)74802015年相沢翔(SELECT)
8)74532015年谷浩二朗(つくばTP)
9)72942015年二枚田一平(チーム綺麗屋)
10)72522015年坂本都志記(鹿屋体大)
11)71422015年右代啓欣(国士大)
12)70952015年森本公人(京教大)
13)70422015年村中智彦(順大)
14)70172015年村田龍(チームミズノ)
15)68801997年田代章(デカスロン)
16)68281997年小林諭(東学大)
17)67522017年柏倉飛鳥(チームAccel)
18)66251997年清川隆(富士通)
19)65582010年川口幸男(中京大)
20)62601998年前田裕也(大教大)
・以上20位まで

上記の通り2014年が唯一の複数8000点オーバー。
それ以下では15年のレベルが非常に高く、14人が7000点オーバー。
7000点以上の人数では、13人の16年と18年がこれに続く。
最初に紹介した通り、今回はエントリー記録7700点以上が5人、7500点以上が7人。
3位以下の順位別記録もいくつか更新されるかもしれない。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト、アフロスポーツ


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