・文中敬称略
・記録は5月30日判明分
ここでは、6月4日~5日に秋田で行われる「第106回日本選手権・混成」の「見どころ」や「楽しみ方」を「記録と数字」という視点から紹介する。なお、「日本選手権・混成」とともに20歳未満の日本一を決める「U20日本選手権・混成」も同時開催される。また、「オレゴン世界選手権」と「カリU20世界選手権」の代表選手選考競技会でもある。
走跳投のオールラウンドのトータルポイントで競う十種競技のチャンピオンは「キング・オブ・アスリート」、七種競技は「クイーン・オブ・アスリート」として称えられる。
今回の日本選手権では果たして誰がその称号を手に入れるのか?
残念ながらテレビの生中継はないが、日本陸連HPで2日間とも競技開始から終了までライブでのネット中継がされる。
解説は、学生時代に自身も十種競技に取り組んでいた石井朗生日本陸連事務局次長(元毎日新聞社運動部記者)が担当予定。豊富な知識とデータに基づく興味深い話が次々と出てきて、2日間トータル16~17時間あまり、飽きることなく楽しませてくれるはずだ。
▼ライブ配信の詳細はこちらから▼
https://www.jaaf.or.jp/jch/106/news/article/16252/
・日本記録 5975点 山﨑有紀(スズキ) 2021.5.22~5.23 九州共立大(福岡)
・大会記録 6594点 L・ナスターゼ(ルーマニア) 1992.6.12~6.13 国立
・日本人大会最高記録 5962点 中田有紀(さかえクリニックTC) 2004.6.5~6.6 布勢(鳥取)
・世界選手権参加標準記録 6420点
・所属は、22年のもの。一番後ろの <>内は、自己ベストを示す。
21年5月に日本記録をマークした山﨑有紀(スズキAC)が18年から4連勝中。
「V5」となれば、02年から10年まで9連勝した中田有紀(サカツコーポレーション→さかえクリニック→日本保育サービス)、77年から6連勝の内田知子(筑波大→茨城陸協→茗名ク)に続き86年から5連勝の磯貝美奈子(群馬大→ナイキジャパン)と並ぶ。
21年夏から秋にかけてアキレス腱の故障で練習を中断した時期はあったが、今季は3月21日に5468点 5月1日に5599点。5連覇に向けてしっかりと仕上げてくることだろう。
中大時代の15年から3連勝したヘンプヒル恵(アトレ)が勝てば5年ぶり4回目の戴冠となる。
この5年あまり、ヘンプヒルは大きなケガに見舞われた。
5907点の自己新で3連覇を果たした17年日本選手権の約2カ月後、左ひざ前十字靱帯を断裂。18年春には復帰したが、4連覇を目指した日本選手権では、中田に70点差で敗れた。19年前半は肘の故障で投げることができず日本選手権は欠場。20年の冬には足首の捻挫。
故障から復帰した20年9月の日本選手権では当時の日本記録(5962点/中田有紀/04年)を更新するかもしれないペースだったが、6種目めのやり投で右ひざの前十字靱帯断裂。
21年の日本選手権も欠場し、10月に5578点を出した試合が21年唯一の七種競技となった。
その後、11月から3月にかけて東京五輪に出場した2人(6位と9位)を指導するコーチに師事するため2度の渡米。
22年シーズン第一戦となった5月の木南記念では、山﨑と直接対決。5732点と5599点で19年10月20日以来の白星となった。
山﨑とヘンプヒルに追いつけ追い越せを目指すのが社会人1年生の大玉華鈴(日体大SMG横浜)だ。
日体大では2年生の時から日本インカレ3連覇。日本選手権もこのところ2年連続2位。大学2年の19年に初めて5500点台に乗せ、5528点→5541点→5633点と少しずつではあるが毎年着実に伸ばしてきている。今年3月末の大学生としての最後の試合でも5539点をマークして元気だ。ユニバ代表に選出されたが、5月6日に延期が発表された。その無念を日本選手権で晴らすような結果を残したいところだろう。
カッコ内は累計得点と「=*」は3人の中での通算順位を示す。
この「仮想対決」では、100mHでトップに立ったヘンプヒルを走高跳で大玉が逆転し、砲丸投でも首位をキープ。初日最後の200mでヘンプヒルが逆転し16点差で大玉と山﨑が並ぶ。2日目の走幅跳で山﨑がトップに立ち、大玉・ヘンプヒルの順でやり投までが終了。最後の800mで山﨑が差を広げ、ヘンプヒルが大玉を逆転という経過となる。
ここでの「仮想対決」でも、参加資格記録でのそれと同じく100mHでトップのヘンプヒルを走高跳で大玉が逆転し砲丸投まで首位をキープ。200mで山﨑がトップに。2日目の走幅跳でヘンプヒルが首位を奪い返しそのままトップを守り、山﨑・大玉の順となる。
自己ベストの合計ではヘンプヒル6203点、山﨑6161点、大玉5989点となるが、七種の実際の自己ベストとの達成率では山﨑97.0%、ヘンプヒル95.2%、大玉94.1%の順。ヘンプヒルが山﨑並みの達成率を実現できれば、6015点。大玉ならば5808点となる。
3人の各種目の公認ベストで、最も点数が高いもののトータルは「6410点」だ。
それでもオレゴン世界選手権参加標準記録の6420点には僅かに届かない。
・追風参考は4.0m以内の記録
上記の種目別日本最高の公認(追風2.0m以内)の得点の合計は「6759点」。ジャッキー・ジョイナー・カーシー(アメリカ)の世界記録7291点とは500点以上の差で世界歴代24位相当だ。世界のトップレベルの選手はやはり「スゴイ」といえる。
カーシーの世界記録の時および彼女の7種目の公認自己ベスト(七種競技中でない単独種目の記録も含む)と単独種目の日本記録の「仮想対決」は以下の通りだ。
以上の通り、7種目トータルでは日本記録が上回るが、カーシーの自己ベストとの比較では5種目めの走幅跳までは抜きつ抜かれつを繰り返す。この時点でカーシーが5805点で181点のリード。6種目めのやり投で北口の66m00が効いて逆転し最後の800mでも杉森が突き放し最終的には7人の日本記録保持者に軍配が上がる。
ただし、日本歴代2位の記録の合計では7763点でその差が109点。同3位では7648点でカーシーの自己ベストの合計が6点上回る。
ここまでは、単独種目の日本歴代記録との比較だが、21年の日本1位記録と比較すると、日本1位の合計は、7332点で、七種競技の世界記録との差は41点。6種目めまでカーシーがリードし、最後の800mで田中希実(2.02.36)が何とか逆転するという計算になる。
ちなみに、カーシーの各種目の自己記録合計(7654点)に対する七種の記録(7291点)の達成率は95.3%である。
と、カーシーのすごさばかりが強調されるが、日本の七種選手のトップも国内のレベルの中では「クイーン・オブ・アスリート」の名に値するレベルで頑張っている。
どんな種目でもその年の「日本100傑」に名を連ねるのは、多くの選手にとって目標になっていることだろう。
七種競技で行われる各種目の21年日本100位記録は、100mH14秒03、走高跳1m66、砲丸投12m23、200m24秒72、走幅跳5m78、やり投44m99、800m2分11秒85。その合計は、5853点で山﨑の七種の日本記録には122点及ばない。
山﨑の日本記録(5975点)の各種の記録の21年日本リストでの相当順位は、100mH14秒00・91位、走高跳1m65・120位、砲丸投12m39・94位、200m24秒63・69位、走幅跳6m01・27位、やり投48m62・55位、800m2分13秒95・176位。走高跳と800m以外の5種目は100位以内に入っている。
七種競技の世界選手権参加標準記録は、日本記録をはるかに上回る6420点。残念ながら、これを超える可能性は薄い。
世界選手権のターゲットナンバー(参加人数制限)は24人。参加標準記録をクリアできるのは世界で十数人。残りはワールドランキングで24位以内を目指すことになる。
5月24日時点で日本人最高順位の山﨑が45位(上位2試合平均で1104pt。1117pt+1092pt)。5月24日時点の24位は、1186pt。東京五輪の時のボーダーラインが1187ptだった。山﨑が、平均で1187ptを上回るには、今回の日本選手権で1257ptを獲得しなければならない。日本選手権1位の順位ポイントは60ptなので、記録ポイントで1197ptが必要だ。これに相当する七種の記録は、6618点。参加標準記録の6420点を破るしかない。
そんなことで、世界選手権出場は難しそうだが、今回の日本選手権での3人にとっての目標は、「6000点突破」であろう。
2003年に中田有紀(さかえクリニック)が5910点、翌年に5962点。ヘンプヒルも17年に5907点、そして21年には山﨑が5975点で中田の記録を17年ぶりに更新。山﨑は21年に計3回5900点台マークし、「6000点台」を指呼の間にとらえた。が、この20年あまり日本のヘプタストリートが挑んでははね返されてきたのが「6000点の壁」だ。今回の秋田で、是非とも打ち崩してもらいたい。
山﨑の日本記録は6000点まであと25点。各種目の記録に当てはめると、100mHで0秒2程度、走高跳で2cm程度、砲丸投で35cm強、200mで0秒25ちょっと、走幅跳で10cm弱、やり投で1m20~30cmあまり、最終種目の800mなら2秒弱。日本記録をマークした時の記録を上記のいずれか1種目で上乗せできれば「6000点」に届く。
また、ヘンプヒルは、U18記録(5454点)、高校記録(5519点)、U20記録(5678点)、学生記録(5907点)とすべてのカテゴリーの記録を保持している。残るは日本記録のみである。
・以上、20位まで
全体的に2018年と16年のレベルが高かった。
5500点以上を3人がマークしたのは、16年のほかに18年と19年の3回。
5000点以上の人数は、18年の12人が最多。11人の19年、9人の14・16・20年と続く。
今回は、日本人初の6000点台のほか、2・3位の最高記録の更新が有望。
5300点台や5200点台がエントリー記録の選手の中から、誰が抜け出すかにも注目だ。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト
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・記録は5月30日判明分
ここでは、6月4日~5日に秋田で行われる「第106回日本選手権・混成」の「見どころ」や「楽しみ方」を「記録と数字」という視点から紹介する。なお、「日本選手権・混成」とともに20歳未満の日本一を決める「U20日本選手権・混成」も同時開催される。また、「オレゴン世界選手権」と「カリU20世界選手権」の代表選手選考競技会でもある。
走跳投のオールラウンドのトータルポイントで競う十種競技のチャンピオンは「キング・オブ・アスリート」、七種競技は「クイーン・オブ・アスリート」として称えられる。
今回の日本選手権では果たして誰がその称号を手に入れるのか?
残念ながらテレビの生中継はないが、日本陸連HPで2日間とも競技開始から終了までライブでのネット中継がされる。
解説は、学生時代に自身も十種競技に取り組んでいた石井朗生日本陸連事務局次長(元毎日新聞社運動部記者)が担当予定。豊富な知識とデータに基づく興味深い話が次々と出てきて、2日間トータル16~17時間あまり、飽きることなく楽しませてくれるはずだ。
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https://www.jaaf.or.jp/jch/106/news/article/16252/
<女子七種競技>
・日本記録 5975点 山﨑有紀(スズキ) 2021.5.22~5.23 九州共立大(福岡)
・大会記録 6594点 L・ナスターゼ(ルーマニア) 1992.6.12~6.13 国立
・日本人大会最高記録 5962点 中田有紀(さかえクリニックTC) 2004.6.5~6.6 布勢(鳥取)
・世界選手権参加標準記録 6420点
山﨑5連覇か? ヘンプヒル5年ぶり4回目か? それとも大玉か?
今回の日本選手権参加資格記録有効期限(2021年1月1日~22年5月9日)における上位選手の記録は以下の通り。・所属は、22年のもの。一番後ろの <>内は、自己ベストを示す。
1)5975 山﨑有紀(スズキ) | 2021.05.23 | <同左=日本歴代1位> |
---|---|---|
2)5732 ヘンプヒル恵(アトレ) | 2022.05.01 | <5907 2017.06.10=日本歴代3位> |
3)5633 大玉華鈴(日体大SMG横浜) | 2021.05.23 | <同左=日本歴代6位> |
4)5366 熱田心(岡山陸協) | 2022.05.01 | <同左=日本歴代22位> |
5)5364 利藤野乃花(わらべや日洋) | 2021.06.13 | <同左=日本歴代23位> |
6)5300 大菅紗矢香(中京大) | 2021.06.13 | <同左=日本歴代34位> |
7)5260 萩原このか(とらふぐ亭) | 2021.06.13 | <5471 2019.05.26=日本歴代12位> |
8)5232 猪岡真帆(小島プレス) | 2021.04.04 | <同左=日本歴代43位> |
21年5月に日本記録をマークした山﨑有紀(スズキAC)が18年から4連勝中。
「V5」となれば、02年から10年まで9連勝した中田有紀(サカツコーポレーション→さかえクリニック→日本保育サービス)、77年から6連勝の内田知子(筑波大→茨城陸協→茗名ク)に続き86年から5連勝の磯貝美奈子(群馬大→ナイキジャパン)と並ぶ。
21年夏から秋にかけてアキレス腱の故障で練習を中断した時期はあったが、今季は3月21日に5468点 5月1日に5599点。5連覇に向けてしっかりと仕上げてくることだろう。
中大時代の15年から3連勝したヘンプヒル恵(アトレ)が勝てば5年ぶり4回目の戴冠となる。
この5年あまり、ヘンプヒルは大きなケガに見舞われた。
5907点の自己新で3連覇を果たした17年日本選手権の約2カ月後、左ひざ前十字靱帯を断裂。18年春には復帰したが、4連覇を目指した日本選手権では、中田に70点差で敗れた。19年前半は肘の故障で投げることができず日本選手権は欠場。20年の冬には足首の捻挫。
故障から復帰した20年9月の日本選手権では当時の日本記録(5962点/中田有紀/04年)を更新するかもしれないペースだったが、6種目めのやり投で右ひざの前十字靱帯断裂。
21年の日本選手権も欠場し、10月に5578点を出した試合が21年唯一の七種競技となった。
その後、11月から3月にかけて東京五輪に出場した2人(6位と9位)を指導するコーチに師事するため2度の渡米。
22年シーズン第一戦となった5月の木南記念では、山﨑と直接対決。5732点と5599点で19年10月20日以来の白星となった。
山﨑とヘンプヒルに追いつけ追い越せを目指すのが社会人1年生の大玉華鈴(日体大SMG横浜)だ。
日体大では2年生の時から日本インカレ3連覇。日本選手権もこのところ2年連続2位。大学2年の19年に初めて5500点台に乗せ、5528点→5541点→5633点と少しずつではあるが毎年着実に伸ばしてきている。今年3月末の大学生としての最後の試合でも5539点をマークして元気だ。ユニバ代表に選出されたが、5月6日に延期が発表された。その無念を日本選手権で晴らすような結果を残したいところだろう。
山﨑・ヘンプヒル・大玉の種目別記録
トップ3が参加資格記録をマークした時とヘンプヒルの自己ベストの種目別記録と得点は以下の通り。カッコ内は累計得点と「=*」は3人の中での通算順位を示す。
【参加資格記録トップ3の参加資格記録マーク時の種目別内訳とヘンプヒルの自己ベスト時】
種目 | 山﨑有紀 =自己ベスト | ヘンプヒル恵 | 大玉華鈴 =自己ベスト | ヘンプヒル =自己ベスト |
---|---|---|---|---|
100mH | 14.00 | 13.76 | 13.98 | 13.35w |
得点(合計点=順位) | 978( 978=3) | 1013(1013=1) | 981( 981=2) | 1072(1072) |
走高跳 | 1.65 | 1.72 | 1.75 | 1.71 |
得点(合計点=順位) | 795(1773=3) | 879(1892=2) | 916(1897=1) | 867(1939) |
砲丸投 | 12.39 | 11.48 | 12.09 | 11.13 |
得点(合計点=順位) | 687(2460=3) | 627(2519=2) | 667(2564=1) | 604(2543) |
200m | 24.63 | 25.10 | 25.77 | 24.87 |
得点(合計点=順位) | 921(3381=2) | 878(3397=1) | 817(3381=2) | 899(3442) |
走幅跳 | 6.01 | 5.65 | 5.82 | 6.06w |
得点(合計点=順位) | 853(4234=1) | 744(4141=3) | 795(4176=2) | 868(4310) |
やり投 | 48.62 | 44.52 | 45.67 | 45.02 |
得点(合計点=順位) | 833(5067=1) | 754(4895=3) | 776(4952=2) | 764(5074) |
800m | 2.13.95 | 2.19.04 | 2.30.92 | 2.19.32 |
得点(合計点=順位) | 908(5975=1) | 837(5732=2) | 681(5633=3) | 833(5907) |
この「仮想対決」では、100mHでトップに立ったヘンプヒルを走高跳で大玉が逆転し、砲丸投でも首位をキープ。初日最後の200mでヘンプヒルが逆転し16点差で大玉と山﨑が並ぶ。2日目の走幅跳で山﨑がトップに立ち、大玉・ヘンプヒルの順でやり投までが終了。最後の800mで山﨑が差を広げ、ヘンプヒルが大玉を逆転という経過となる。
種目別自己ベストの合計得点ではヘンプヒルと山﨑が大玉を引き離す
以下には3人の七種競技中だけではなく単独種目での試合を含めた各種目の公認ベストとその合計得点、さらには七種のベストとの達成率も示した。それぞれの「潜在能力」を知るための指標となるだろう。【参加資格記録トップ3の種目別公認ベストと七種ベストとの達成率】
種目 | 山﨑有紀 | ヘンプヒル恵 | 大玉華鈴 |
---|---|---|---|
100mH | 13.58 | 13.37 | 13.66 |
得点(合計点=順位) | 1039(1039=2) | 1069(1069=1) | 1027(1027=3) |
走高跳 | 1.71 | 1.73 | 1.78 |
得点(合計点=順位) | 867(1906=3) | 891(1960=2) | 953(1980=1) |
砲丸投 | 12.84 | 12.21 | 12.20 |
得点(合計点=順位) | 717(2623=3) | 675(2635=2) | 674(2654=1) |
200m | 24.51 | 24.87 | 25.30 |
得点(合計点=順位) | 932(3555=1) | 899(3534=2) | 859(3513=3) |
走幅跳 | 6.05 | 6.28 | 5.85 |
得点(合計点=順位) | 865(4420=2) | 937(4471=1) | 804(4317=3) |
やり投 | 48.62 | 47.88 | 51.51 |
得点(合計点=順位) | 833(5253=2) | 819(5290=1) | 889(5206=3) |
800m | 2.13.95 | 2.13.54 | 2.23.03 |
得点(合計点=順位) | 908(6161=2) | 913(6203=1) | 783(5989=3) |
七種PB | 5975 | 5907 | 5633 |
(%) | (97.0%) | (95.2%) | (94.1%) |
ここでの「仮想対決」でも、参加資格記録でのそれと同じく100mHでトップのヘンプヒルを走高跳で大玉が逆転し砲丸投まで首位をキープ。200mで山﨑がトップに。2日目の走幅跳でヘンプヒルが首位を奪い返しそのままトップを守り、山﨑・大玉の順となる。
自己ベストの合計ではヘンプヒル6203点、山﨑6161点、大玉5989点となるが、七種の実際の自己ベストとの達成率では山﨑97.0%、ヘンプヒル95.2%、大玉94.1%の順。ヘンプヒルが山﨑並みの達成率を実現できれば、6015点。大玉ならば5808点となる。
3人の各種目の公認ベストで、最も点数が高いもののトータルは「6410点」だ。
それでもオレゴン世界選手権参加標準記録の6420点には僅かに届かない。
七種競技中の種目別日本最高記録
トータル得点4500点以上の七種競技中の各種目の日本最高は、【七種競技中の種目別と前半・後半の日本最高】
・トータル4500点以上の記録に限る・追風参考は4.0m以内の記録
100mH | 13.43(1.7) | 1060 | ヘンプヒル恵 | 2016.06.11 |
---|---|---|---|---|
100mH/追参 | 13.35(2.3) | 1072 | ヘンプヒル恵 | 2017.06.10 |
走高跳 | 1.81 | 991 | 屋ケ田直美 | 1984.10.05 |
砲丸投 | 14.76 | 845 | 平戸案紀子 | 2002.04.20 |
200m | 24.35(0.9) | 947 | 笠原瑞世 | 2003.06.06 |
走幅跳 | 6.30(0.5) | 943 | 磯貝美奈子 | 1988.04.24 |
〃 | 6.30(1.7) | 943 | 中田有紀 | 2010.06.13 |
走幅跳/追参 | 6.41(2.9) | 985 | 中田有紀 | 2004.06.05 |
やり投 | 57.45 | 1005 | 森 友佳 | 2018.11.04 |
800m | 2.09.80 | 968 | 宇都宮絵莉 | 2018.04.22 |
前半 | 2463 | 中田有紀 | 2003.06.06 | |
後半 | 2534 | 中田有紀 | 2004.06.05 |
上記の種目別日本最高の公認(追風2.0m以内)の得点の合計は「6759点」。ジャッキー・ジョイナー・カーシー(アメリカ)の世界記録7291点とは500点以上の差で世界歴代24位相当だ。世界のトップレベルの選手はやはり「スゴイ」といえる。
カーシーの世界記録の時および彼女の7種目の公認自己ベスト(七種競技中でない単独種目の記録も含む)と単独種目の日本記録の「仮想対決」は以下の通りだ。
種目 | カーシー=世界記録 | カーシー=自己ベスト | 日本記録 | |
---|---|---|---|---|
100mH | 12.69(0.5) | 12.61(0.2) | 12.86(-0.2) | 青木益未 |
1172(1172) | 1184(1184) | 1146(1146) | ||
走高跳 | 1.86 | 1.93 | 1.96 | 今井美希 |
1054(2226) | 1145(2329) | 1184(2330) | ||
砲丸投 | 15.80 | 16.84 | 18.22 | 森千夏 |
915(3141) | 985(3314) | 1078(3408) | ||
200m | 22.56(1.6) | 22.30(0.0) | 22.88(1.8) | 福島千里 |
1123(4264) | 1150(4464) | 1091(4499) | ||
走幅跳 | 7.27(0.7) | 7.49(1.3) | 6.86(1.6) | 池田久美子 |
1264(5528) | 1341(5805) | 1125(5624) | ||
やり投 | 45.66 | 50.12 | 66.00 | 北口榛花 |
776(6304) | 862(6667) | 1172(6796) | ||
800m | 2.08.51 | 2.08.51 | 2.00.45 | 杉森美保 |
987(7291) | 987(7654) | 1109(7905) |
以上の通り、7種目トータルでは日本記録が上回るが、カーシーの自己ベストとの比較では5種目めの走幅跳までは抜きつ抜かれつを繰り返す。この時点でカーシーが5805点で181点のリード。6種目めのやり投で北口の66m00が効いて逆転し最後の800mでも杉森が突き放し最終的には7人の日本記録保持者に軍配が上がる。
ただし、日本歴代2位の記録の合計では7763点でその差が109点。同3位では7648点でカーシーの自己ベストの合計が6点上回る。
ここまでは、単独種目の日本歴代記録との比較だが、21年の日本1位記録と比較すると、日本1位の合計は、7332点で、七種競技の世界記録との差は41点。6種目めまでカーシーがリードし、最後の800mで田中希実(2.02.36)が何とか逆転するという計算になる。
ちなみに、カーシーの各種目の自己記録合計(7654点)に対する七種の記録(7291点)の達成率は95.3%である。
と、カーシーのすごさばかりが強調されるが、日本の七種選手のトップも国内のレベルの中では「クイーン・オブ・アスリート」の名に値するレベルで頑張っている。
どんな種目でもその年の「日本100傑」に名を連ねるのは、多くの選手にとって目標になっていることだろう。
七種競技で行われる各種目の21年日本100位記録は、100mH14秒03、走高跳1m66、砲丸投12m23、200m24秒72、走幅跳5m78、やり投44m99、800m2分11秒85。その合計は、5853点で山﨑の七種の日本記録には122点及ばない。
山﨑の日本記録(5975点)の各種の記録の21年日本リストでの相当順位は、100mH14秒00・91位、走高跳1m65・120位、砲丸投12m39・94位、200m24秒63・69位、走幅跳6m01・27位、やり投48m62・55位、800m2分13秒95・176位。走高跳と800m以外の5種目は100位以内に入っている。
七種競技の世界選手権参加標準記録は、日本記録をはるかに上回る6420点。残念ながら、これを超える可能性は薄い。
世界選手権のターゲットナンバー(参加人数制限)は24人。参加標準記録をクリアできるのは世界で十数人。残りはワールドランキングで24位以内を目指すことになる。
5月24日時点で日本人最高順位の山﨑が45位(上位2試合平均で1104pt。1117pt+1092pt)。5月24日時点の24位は、1186pt。東京五輪の時のボーダーラインが1187ptだった。山﨑が、平均で1187ptを上回るには、今回の日本選手権で1257ptを獲得しなければならない。日本選手権1位の順位ポイントは60ptなので、記録ポイントで1197ptが必要だ。これに相当する七種の記録は、6618点。参加標準記録の6420点を破るしかない。
そんなことで、世界選手権出場は難しそうだが、今回の日本選手権での3人にとっての目標は、「6000点突破」であろう。
2003年に中田有紀(さかえクリニック)が5910点、翌年に5962点。ヘンプヒルも17年に5907点、そして21年には山﨑が5975点で中田の記録を17年ぶりに更新。山﨑は21年に計3回5900点台マークし、「6000点台」を指呼の間にとらえた。が、この20年あまり日本のヘプタストリートが挑んでははね返されてきたのが「6000点の壁」だ。今回の秋田で、是非とも打ち崩してもらいたい。
山﨑の日本記録は6000点まであと25点。各種目の記録に当てはめると、100mHで0秒2程度、走高跳で2cm程度、砲丸投で35cm強、200mで0秒25ちょっと、走幅跳で10cm弱、やり投で1m20~30cmあまり、最終種目の800mなら2秒弱。日本記録をマークした時の記録を上記のいずれか1種目で上乗せできれば「6000点」に届く。
また、ヘンプヒルは、U18記録(5454点)、高校記録(5519点)、U20記録(5678点)、学生記録(5907点)とすべてのカテゴリーの記録を保持している。残るは日本記録のみである。
日本選手権での順位別最高記録
最後に、これまでの日本選手権での各順位の歴代最高記録を紹介しておく。1)6594 | 1992年 | L・ナスターゼ(ルーマニア) |
---|---|---|
・日本人1)5962 | 2004年 | 中田有紀(さかえクリニック) |
2)5766 | 2018年 | ヘンプヒル恵(中大) |
3)5555 | 2016年 | 宇都宮絵莉(長谷川体育施設) |
4)5495 | 2018年 | 宇都宮絵莉(長谷川体育施設) |
5)5444 | 2016年 | 山﨑有紀(九州共立大) |
6)5411 | 2018年 | 伊藤明子(筑波大) |
7)5250w | 2016年 | 高橋このか(東学大) |
8)5217w | 2018年 | 南野智美(早大) |
9)5166 | 2018年 | 酒見三咲(九州共立大) |
10)5100 | 2018年 | シュレスタまや(筑波大) |
11)5096 | 2018年 | 山手美久莉(国士舘ク) |
12)5083 | 2018年 | 大玉華鈴(日体大) |
13)4959 | 2019年 | 三輪ダリヤ(中大) |
14)4953 | 2019年 | 山下紗稀子(立命大) |
15)4866w | 2016年 | 大日方紗愛(中京大) |
16)4842 | 2018年 | 松岡絵里(環太平洋大) |
17)4841 | 2018年 | 掛井真子(城西大) |
18)4819 | 2018年 | 山田夏葵(中大) |
19)4804 | 2018年 | 橋本春菜(筑波大) |
20)4623 | 2018年 | 津吹アイリ(東学大) |
全体的に2018年と16年のレベルが高かった。
5500点以上を3人がマークしたのは、16年のほかに18年と19年の3回。
5000点以上の人数は、18年の12人が最多。11人の19年、9人の14・16・20年と続く。
今回は、日本人初の6000点台のほか、2・3位の最高記録の更新が有望。
5300点台や5200点台がエントリー記録の選手の中から、誰が抜け出すかにも注目だ。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:フォート・キシモト
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