2022.04.20(水)大会

【日本選手権35km競歩 レポート】男女初代チャンピオンは川野と園田に決定! 世界選手権日本代表に5名内定!



4月17日、50kmからの35kmに変更されて最初となる第106回日本選手権35km競歩が、石川県輪島市で開催されました。この大会は、7月にアメリカで開催されるオレゴン世界選手権と9月に中国で開催される杭州アジア大会の日本代表選考会を兼ねており、あわせて男女20kmでも、日本陸連が定める派遣設定記録やワールドアスレティックス(WA)が設けている参加標準記録突破を狙っての特別レースが実施されました。
大会は、前日(4月16日)から行われている第61回全日本競歩輪島大会との併催。より世界大会で用いられている仕様に準じることを目指して、コースも、前年まで用いられていた1周2kmの周回コースから、海側の500mを折り返す1周1kmの周回コースへと変更。各種目でハイレベルなレースが繰り広げられました。




川野、今季世界最高の2時間26分40秒で逆転V

初代タイトル獲得とともに、世界選手権代表に内定!

大会2日前まで荒れ模様の天候に見舞われていた輪島市ですが、前日の午前中には回復傾向に向かい、日本選手権当日の4月17日は、朝から雲一つない青空が広がりました。気温10℃、懸念されていた風も、ほぼ感じられない上々といえるコンディションのなか、午前8時00分、日本選手権男女35km競歩の号砲が鳴り、国内では初めての35kmレースがスタートしました。
男子の派遣設定記録は2時間30分00秒、参加標準記録は2時間33分00秒。それぞれをイーブンで換算すると、指標となる1kmあたりペースは、4分17秒と4分22秒になります。しかし、レースは、上位の選手たちが、これらのペースをはるかに上回る入りをみせる滑りだしとなりました。
スタートとともに、3月の全日本競歩能美大会ですでに20kmでの代表権を獲得している松永大介選手(富士通)が、20kmのレースかと思うくらいの勢いで先頭に立つと、スピードを緩めることなく、あっという間に集団から抜けだし、これに50kmで実績を持つ川野将虎(旭化成)、丸尾知司(愛知製鋼)、野田明宏(自衛隊体育学校)の3選手が続きました。松永選手は、最初の1kmをなんと3分53秒という“超ハイペース”で通過。次の1kmも3分58秒を刻んだことで、後続との差が開き、さらに2位集団が丸尾・川野選手と野田選手に分かれることとなりました。この段階で単独歩となった松永選手は、さすがに3km以降は4分台にペースを落としたものの、それでも4分05秒を切るハイペースで歩を進め、5kmを20分02秒で通過。その後も4分05~08秒で周回して、40分31秒(この間の5kmは20分29秒、以下同じ)での通過となった10kmでは、2位グループを形成した丸尾・川野両選手との差を13秒、4位の野田選手には1分の差をつけました。
8時45分から男女20kmの特別レースがスタートしたことで、松永選手は、13~14kmで再び3分56秒にペースを引き上げて、20kmに出場した高橋英輝選手(富士通)、池田向希選手(旭化成)、諏方元郁選手(愛知製鋼)らと笑顔で“並歩”する場面もみられましたが、15kmを1時間00分52秒(20分21秒)で通過して以降は、4分05~10秒前後のペースでレースを進め、20kmは1時間21分34秒(20分42秒)で通過。ここで2位集団との差を1分34秒まで広げました。続く25kmまでの5kmは21分12秒にペースダウン。21km以降から野田選手と川野選手で形成することになった2位グループが、この5kmを20分53~54秒で刻んだことで、ここで双方の差が徐々に縮まってきました。26km以降を4分22秒から4分27秒へと徐々にペースを落としたものの、松永選手は30kmを2時間04分38秒と、従来の日本記録(2時間09分15秒、2021年日本選手権50km競歩中の通過計時)を大きく上回るタイムで通過。しかし、この辺りから、進み具合の翳りは、明らかなものになってきます。
29~30kmで野田選手を突き放した川野選手が、30kmの地点で松永選手に18秒差まで詰め寄ると、31kmを通過した段階で、その差を3秒に肉薄。31kmからの周回に入ってほどなく松永選手を抜き去り、単独首位に立ちました。川野選手もさすがにその後はペースを徐々に落とす形となりましたが、大崩れすることなく最後まで押しきって、派遣設定記録を3分20秒も上回る2時間26分40秒でフィニッシュ。この種目の初代日本選手権獲得者になるとともに、オレゴン世界選手権の代表内定を決めました。2位には松永選手が続き、最後の5kmは22分31秒までペースを落としたものの、派遣設定記録を大きく上回る2時間27分09秒をマーク。優勝を逃したことで内定には至りませんでしたが、20kmに続いて、35kmでの代表入りも、ほぼ確実なものにしました。
2時間27分18秒で3位となったのは野田選手。30km手前で川野選手に突き放されましたが、最後の5kmを21分39秒でカバー。代表入りに向けて可能性を残しました。4位の丸尾選手も2時間29分19秒をマークして派遣設定記録を突破。5位(2時間30分41秒)の勝木隼人選手(自衛隊体育学校)、6位(2時間31分26秒)の高橋和生選手(ADワークスグループ)、7位(2時間31分38秒)の伊藤佑樹選手(サーベイリサーチセンター)、8位(2時間32分51秒)の荒井広宙選手(富士通)と、実に入賞者全員が参加標準記録を突破する、非常にレベルの高いレースでした。
ちなみに、川野選手の記録は、2022年世界リスト1位に躍り出る好記録、松永選手が同2位、野田選手と丸尾選手も4・6位にランクインしています。また、対象者全員が無事にレースをフィニッシュしたことで、松永選手を筆頭とする川野・野田・丸尾・勝木までの上位5選手が、30km競歩の日本記録更新達成となりました。
一方で、男女35km競歩の記録自体は、今年度から新種目として実施されることになったため、本年4月1日から12月31日までに出された記録のうち、最も良い記録が2023年1月1日に日本記録として公認されます。このため、今大会における35kmの記録は、現段階では「日本最高記録」の扱いとなります。




女子35kmの園田も世界選手権代表に内定!

今季世界6位の好記録で初代女王に

女子35kmでは、3月の全日本競歩能美大会20kmを制していた園田世玲奈選手(NTN)の圧倒的な強さが際立つレースとなりました。2kmまでは5選手で先頭グループを形成していましたが、3kmを14分30秒で通過した段階で、園田選手と河添香織選手(自衛隊体育学校)の2人がリードを奪う形となり、4周目に入った段階で園田選手が3秒ほどの差をつけて、歩を進める形となりました。園田選手の最初の5kmは24分08秒、10kmは、ややペースが上がって48分03秒(23分55秒)での通過となり、ここまでは3~4秒差で河添選手が追う展開でしたが、そこまで4分45~49秒のペースを刻んでいた園田選手が10~11kmを4分42秒へと引き上げ、逆に河添選手が4分52秒までペースを落としたことで、両者の差は一気に14秒まで開くことに。以降は、園田選手の“独り旅”となりました。
園田選手は、1時間35分19秒で通過した20kmまでの5kmを23分36秒に、1時間58分48秒での通過となった25kmまでの5kmを23分39秒へとビルドアップ。続く30km(2時間22分19秒)までの5kmは23分31秒と2秒落ちましたが、最後の5kmは再び23分29秒でカバー。最後の1周では、レースを通じての最速ラップとなる4分40秒で戻ってくる強さを見せ、派遣設定記録の2時間51分00秒を大きく上回る2時間45分48秒でフィニッシュ。2018年のこの大会において初代日本選手権獲得者となった女子50kmに続いて、この35kmでも最初の日本チャンピオンの座に収まるとともに、条件を満たして、世界選手権の代表に内定しました。なお、園田選手がマークした2時間45分48秒は、今季世界リストで6位となる好記録。気象条件やコースに難があったため一概はしづらいものの、3月に行われた世界競歩チーム選手権女子35km競歩の優勝タイム(2時間45分48秒)も上回っています。
2位は2時間54分25秒で河添選手、3位には矢来舞香織選手(千葉興業銀行)が2時間55分55秒でフィニッシュと、20kmを専門とする2選手が園田選手に続きました。20kmの前日本記録保持者で、50kmでも日本記録を持つ渕瀬真寿美選手(建装工業)は故障からの回復にやや不安が残るなかでのレースだった影響もあり、2時間59分18秒で4位という結果になりました。
日本選手権男女35kmを制して世界選手権代表に内定した川野・園田両選手のコメント、および今村文男競歩シニアディレクターによる日本陸連総括コメントはこちら




池田、藤井、岡田が派遣設定記録を突破

20kmの代表に内定!

この大会では、世界選手権派遣設定記録・参加標準記録の突破を目指して、男女20kmの特別レースも実施されました。男子は、東京オリンピック銀メダリストの池田向希選手(旭化成)、日本選手権ですでに代表内定済みの高橋英輝選手(富士通)、世界競歩チーム選手権代表の諏方元郁選手(愛知製鋼)の3名が、女子は、世界競歩チーム選手権5位入賞の藤井菜々子選手(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)と、藤井選手とともに東京オリンピックに出場し、2月の日本選手権を制している岡田久美子選手(富士通、日本記録保持者)の2名が出場。“記録を狙っての一発勝負”に挑みました。
最初の1kmを3分55秒で入った男子は、その段階から高橋選手が先頭に立ち、すぐ後ろに池田選手、その後ろに諏方選手が続く隊列でのスタートとなりましたが、4kmが過ぎたところで諏方選手が後れてからはマッチレースに。最初の5kmは19分34秒で通過していきました。6kmからは池田選手が前に出て、1km3分54~55秒のペースをきっちりと刻みながらレースを展開。10kmは、1時間18分台前半のフィニッシュタイムが見込める39分07秒(19分33秒)で通過していきます。
12~13kmの周回で池田選手が3分50秒にペースアップし、次の1kmも3分53秒で回ったことで、ここでペースを維持した高橋選手との差が開きました。池田選手は15kmを58秒38秒(19分31秒)と、この5kmのスプリットをさらに2秒引き上げて通過。ラストの5kmはペースを落としてしまったものの最後までよく粘り、今季世界3位となる1時間18分53秒でフィニッシュ。派遣設定記録の1時間20分00秒を大きく上回って、世界選手権の代表に内定しました。高橋選手は、中盤から終盤にかかるあたりでロス・オブ・コンタクトによる2回のレッドカードが出て、ペースが上げられなかった影響もあったものの、それでも再び派遣設定記録をクリアする1時間19分16秒をマーク。諏方選手は、1時間23分46秒でのフィニッシュとなりました。
2人揃っての派遣設定記録突破を狙ってのレースとなった女子は、スタート直後から2人で、1km4分30秒を下限としてペースを刻んでいくことに集中する展開となりました。2人が対戦する場合は、これまでは岡田選手がリードし、藤井選手がつくケースが常でしたが、今回は藤井選手が前に出てペースをつくる展開に。5kmを22分25秒、10kmを44分52秒(22分27秒)、15kmを1時間07分17秒(22分25秒)と安定したペースを刻んでいきました。
残り5kmを22分43秒で歩けば派遣設定記録突破が見込めるなか、最後の5周は4分30秒を切るペースで回り、18~19kmではレース中の最速ラップとなる4分25秒をマーク。ともに派遣設定記録が確実となった状態で回ることになった最後の1周で、4分23秒へとペースを上げた藤井選手がリードを広げて1時間29分29秒で先着。岡田選手が2秒差の1時間29分31秒でフィニッシュして、ともに派遣設定記録を突破し、前回の2019年ドーハ大会に続く代表入りを内定させました。
男女20km競歩で世界選手権代表に内定した3選手のコメントおよび今村競歩シニアディレクターによる日本陸連総括コメントはこちら




U20女子10kmで高2の大山が

高校最高記録に肉薄してV

例年同様に併催の形で4月16~17日の2日間で行われた第60回全日本競歩輪島大会では、斉藤和夫杯として実施される男女10km、8月上旬にカリ(コロンビア)で開催されるU20世界選手権の代表選考会としてU20男女10kmなど全10種目が行われました。
全日本の部男子10kmは村山裕太郎選手(富士通)が40分28秒で、女子は林奈海選手(佐賀県スポーツ協会)が49分39秒で、それぞれ優勝。U20男女10kmは、男子は下池将多郎選手(鹿児島工業高校)が41分11秒、女子は大山藍選手(鹿児島女子高校)が45分19秒(大会タイ記録)と、ともに鹿児島勢が学生選手を抑えて制しました。大山選手は、日本選手権20km競歩と併催された2月のU20選抜競歩5kmを1年生ながら学生や上級生を押さえて快勝し、3月末には5000m競歩で22分31秒74の高1最高をマークしている選手。2年生になっても好調で、ラスト1kmでの逆転劇で2回目の全国タイトルを獲得とするとともに、この種目の高校最高記録(45分16秒、板倉美紀、1992年)に3秒まで迫る“快歩”でした。
このほか、高校男女5kmは鈴木葵選手(我孫子高校、21分22秒)と石田さつき選手(大津商業高校、23分21秒)が、高校1・2年男女3kmは、豊島楓也選手(鵬学園高校、13分11秒)と奥田夕楓選手(奈良大学附属高校、15分07秒)がそれぞれ優勝。石田選手は、2連覇を達成しています。また、男子が全員欠場したことにより、女子のみの実施となった中学3kmは、石塚みのり選手(北陸学院中学校)は17分19秒で勝利しました。


※本文中の記録および5kmごとの通過タイムは公式発表の記録。ただし、1kmごとの通過およびラップタイムは、レース中の速報を採用している。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト


【日本選手権35km競歩】オレゴン世界選手権内定選手、今村シニアディレクターコメントはこちら



〇【第106回日本陸上競技選手権大会・35km競歩】ダイジェスト

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