・男女20km競歩特別レース
この大会では、男女20km競歩の特別レースを実施することになった。これは、男女20km競歩の各選考競技会において上位の成績を残しても、気象状況やコースの影響で参加標準記録を突破することができなかった場合に、国内の対象選考会後、海外レースで標準記録突破に挑む必要が生じるためで、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響で、渡航等に支障が出る恐れがあることも懸念して設定されたもの。実際に、2月の日本選手権20km競歩では、強風と寒さの影響で派遣設定記録・参加標準記録を突破したのは男子優勝者の高橋英輝(富士通)のみにとどまり、また、3月の世界競歩チーム選手権は、男子20kmで金・銀メダル、男子35kmで4位、女子20kmで5位という好成績を挙げながらも、暑さと起伏の大きなコースの影響を受けて派遣設定記録突破者・参加標準記録突破者ともゼロに終わった。代表選考会として設定されていた全日本競歩能美大会までの期間が2週間ということもあり、特別レースが設定されたことで、該当する選手たちは、少なくとも1カ月以上のスパンをとって次戦に臨める状況となった。出場できる選手は、これまでの選考競技会上位者のみが対象となっており、まさに、標準記録突破を狙ってのトライアル。レースは、4月17日、男女35kmが午前8時に競技を開始したのち、午前8時45分に男女ともにスタートする予定となっている。
男子では、世界競歩チーム選手権20kmに出場して、山西に続いて銀メダルを獲得した池田向希(旭化成)と、23位でフィニッシュして、この種目の国別団体銀メダル獲得に貢献した諏方元郁(愛知製鋼)、そして日本選手権ですでに内定を得ている高橋英輝がエントリーした。
男子20km競歩は、ワイルドカードによる山西利和(愛知製鋼)を除くと、日本選手権で高橋英輝が、全日本競歩能美大会で松永が、それぞれ出場権を内定させており、残る枠は1つとなっている。高橋は、歩型を含めた現状の確認を、レースのなかで行うことを意図しての出場で、1周1kmに変更され、国際競歩審判員の目にさらされる回数が増えることになった新コースのなかで、すでに世界選手権本番を見据え、フォームのチェックやレース勘を磨くことに取り組んでいく計画だ。池田は、派遣設定記録の1時間20分00秒切りを念頭においたレースを進めることになるだろう。1時間17分25秒の自己記録(2019年)を筆頭に、1時間18分台の記録を3回マークしていることを考えると、決して難しい条件ではない。天候にもよるだろうが、高橋英輝が出場することで、タイムを意識してのレースは、より進めやすくなるはずだ。35kmと両方にエントリーしている諏方が、もし20kmを選択した場合は、まずは自己記録(1時間20分49秒、2020年)の更新が指標となりそうだ。池田や高橋英輝と一緒にレースを進めていくのか、それとも自分でペースを設定して、それを刻んでいくのか、どういう戦略をとるのかも興味深い。
一方、女子の出場は、1時間33分28秒で日本選手権を制した岡田久美子(今季より富士通、日本記録保持者)と、世界競歩チーム選手権で世界大会最高位となる5位(1時間33分16秒)入賞を果たした藤井菜々子(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)の2人で、東京オリンピック以来の同一レースとなる。女子20km競歩の派遣設定記録は1時間30分00秒、参加標準記録は1時間31分00秒。岡田は1時間27分41秒、藤井は1時間28分58秒の自己記録を持っているが、これらはともに2019年にマークしたもの。風などの気象コンディションによる影響は、おそらく男子以上に大きくなるだろうが、2人でともにレースを進めることで、記録を狙ってのペースメイクは格段にしやすくなるはず。岡田が6位、藤井が7位と、ダブル入賞を達成した2019年ドーハ世界選手権を超える成果をオレゴンで上げるためにも、1時間30分を切れるようなペースで、レースを進めていきたいところだ。
いずれにしても、どの種目においても、最低でも参加標準記録をクリアすることが必要になることを考えると、特に当日の気象コンディションが気になってくる。この時期、輪島では、気圧配置によって強風に見舞われがちな傾向にあるが、ウォーカーたちのパフォーマンスを後押しするような穏やかな天候となることを祈りたい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
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〇東京2020オリンピック・特別インタビュー(池田選手)
〇東京2020オリンピック・特別インタビュー(川野選手)
〇競歩特説サイト「Race walking Navi」
~競歩のルール、歴史、過去のライブ配信をチェック!~
https://www.jaaf.or.jp/racewalking/
〇大会ページ
https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1635/
〇競歩日本代表選考要項(オレゴン2022世界選手権/杭州アジア競技大会)
- 普及・育成・強化
- 第106回日本陸上競技選手権大会35km競歩
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