女子七種競技で山﨑有紀(スズキ)が5975点の日本新記録をマークしました。5月22~23日に九州共立大学陸上競技場(福岡県北九州市)で開催された第4回九州共立大学チャレンジ競技会で、中田有紀(現・愛知つばさTCA)が2004年日本選手権で出した5962点を更新。自己記録も5873点から大きく伸ばしました。
17年も止まっていた日本記録をようやく前進させた山﨑。それでも「3年間出なかった自己ベストが出たのがうれしかったが、日本記録は狙っていたわけではなく、出ちゃった、という感じ」と、さほど大きな喜びは見せていません。母校での競技会出場を決めたのは5日前。日本選手権混成競技(6月12~13日、長野市営陸上競技場)に向けた調整の一環という位置づけだったからです。
それでも最初の100mHを14秒00(+1.5)で発進すると、前半の4種目を3381点と自己記録時よりわずか30点下回るだけの順調なペースでこなし、「自己記録や日本記録も行けるかも」という感触をつかみました。後半、6種目めのやり投で48m62の自己ベストを出し、最後の800mを2分14秒台で走れば日本記録に届く計算に。絶好のチャンスを逃すまいと「死ぬ気で走って」自己記録を1秒66更新する2分13秒95の好記録で走破して、中田の記録を13点、800mに換算して約1秒上回りました。後半3種目の2594点は中田の2534点を上回る後半の日本最高でした。
実業団4年目で25歳(日本選手権時は26歳)の山﨑は、長崎・長崎南高ではベストが4551点、2013年全国高校総体14位と目立つ存在ではありませんでした。九州共立大に進んでスプリントの強化が実り、3年時の2016年に5751点と飛躍。2017年には日本学生対校選手権で優勝しました。2018年にスズキ浜松アスリートクラブに入ると、インドネシアのジャカルタで開催されたアジア大会で5873点の自己ベストで銅メダルを獲得。日本選手権も同年から3連覇しています。
順調に歩みを進めてきたようにも見えますが、その後は記録が足踏み。日本記録も目標にしていたものの「近いようで遠いと思っていた」。今年も5月2~3日の鹿児島県記録会(日本グランプリシリーズポイント対象大会)で5692点にとどまるなど、決して満足できない結果が続いていました。それでも地力が向上している手ごたえはあり、鹿児島では「スプリント系でまだかみ合っていないところがあるが、そこがしっくり来れば、記録更新を狙わなくても自然にいい記録が出ると思う」と話していました。
今回はまさに、その言葉通りの結果。さらに、「よくやった、と思えるのは800mだけで、100%のパフォーマンスではない。だからこそ、まだ伸びしろがある」という新たな自信も得ました。6月の日本選手権では4連覇が懸かりますが、「目標はいつもと同じ、自己記録更新と優勝。日本記録を出したことは忘れて、楽しんで自分のパフォーマンスを発揮したい」と語っています。持ち味の、思い切りの良い戦いぶりが、長野の大舞台でも注目されます。
<山﨑有紀 日本記録の内訳>※日本記録は申請中
種目 | 記録 | 得点 |
---|---|---|
100mH | 14秒00 (+1.5) | 978点 |
走高跳 | 1m65 | 795点 |
砲丸投 | 12m39 | 687点 |
200m | 24秒63 (+2.0) | 921点 |
走幅跳 | 6m01 (-1.3) | 853点 |
やり投 | 48m62 | 833点 |
800m | 2分13秒95 | 908点 |
写真:フォート・キシモト
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