◎男子200m
男子200mは、記録的に見て、サニブラウンが本命中の大本命。サニブラウンの場合は、日本記録(20秒03、末續慎吾、2003年)の更新、あるいは日本人初の19秒台突入という歴史的な瞬間を、我々に見せてくれる可能性も大いにあるといってよいだろう。これにストップをかける一番手と挙げるとしたら小池か。100m10秒04のスピードを考えると、自身が“本業”と位置づける200mで20秒23の自己記録を大きく上回ってくることは確実だ。また、この種目には、桐生も参戦を表明している。しっかりとトレーニングを積んで挑んでいる今季の状態を考えると、初戦でマークした20秒39の自己記録を塗り替えていく力はある。初めて2種目に挑戦した前回の200mは4位だったが、ここで桐生が優勝争いに加わるようになると、勝負の行方は一段と面白くなる。前回覇者で、日本歴代2位の20秒11の自己記録を持つ飯塚翔太(ミズノ)は、今季は3月末に100m(10秒38、+1.3)でシーズンインしたものの、その後、急性虫垂炎に見舞われたことで、アジア選手権を欠場、代表に選ばれていた世界リレーもサポート役に回った。200mの初戦はGGPで、20秒76(-0.4)をマーク。その後、100mでアジアグランプリを転戦して2戦目では10秒19(+1.9)で走っている。シーズン序盤の予定こそ大きく狂ってしまったが、オフシーズンのトレーニングは順調に積めてきたこともあって当人には不安はない。200mで4回目の優勝を狙うとともに、100mにも出場して、自己記録(10秒08、2017年)の更新を目論んでいる。
世界選手権標準記録は20秒40。ドーハ行き切符を巡っては、サニブラウンと桐生以外は、まずこの記録の突破が必須となる。ここまでに挙げた選手以外では、20秒13(2015年)の自己記録を持つベテランの藤光謙司(ゼンリン)、GGPで飯塚に0.01秒差で先着した山下潤(筑波大、ダイヤモンドアスリート修了生)、静岡国際200mで20秒68(+0.6)をマークしている白石も射程圏内にいるといってよいだろう。
◎男子400m
日本は、5月に横浜で開催された世界リレーで、男子4×400mRと男女混合4×400mRの世界選手権出場枠を確保した。ドーハで戦うことを考えると、フラットレース(400m)でのさらなる走力アップは必須。個人での標準記録(45秒30)突破とともに、各選手がいかに記録を高めていくかが求められる状況だ。そんななか男子400mで筆頭に上がるのは、前回覇者のウォルシュ・ジュリアン(富士通)。400mではアジア選手権(45秒55、5位)、GGP(46秒29、2位)とも日本人トップ。4×400mRでは、優勝したアジア選手権、4位となった世界リレーともにレースの流れをつくる1走を務めて、エースとしての大役を果たした。日本選手権では自己記録(45秒35、2016年)はもちろんのこと、日本人2人目となる44秒台突入、東京五輪標準記録の44秒90や日本記録の44秒78(髙野進、1991年)といった記録を視野に入れている。今季の日本リストを見ると、ウォルシュに続く選手はすべて46秒台にとどまり、誰が続いてもおかしくない状況だ。記録的には、疲労骨折の影響でアジア選手権や世界リレーのメンバー入りには間に合わなかった河内光起(近畿大、46秒24)、関東インカレ覇者の北谷直輝(東海大、46秒28)が続いている。これにアジア選手権4×400mR優勝メンバーの佐藤拳太郎(富士通)、伊東利来也(早稲田大)、若林康太(駿河台大)らが上位争いに挑む。トップで予選を通過した世界リレー(4×400mR)の2走として好走を見せた井本佳伸(東海大、ダイヤモンドアスリート)はその後、ケガで関東インカレを欠場しているが、回復が間に合えば、この争いに加わる力は十分に持っている。
※記録、競技会の結果は、6月14日時点の情報で構成。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォートキシモト
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