2019.06.18(火)大会

【第103回日本選手権】展望:男子100m



第103回日本選手権は、9月27日~10月6日にドーハ(カタール)で行われる第17回世界選手権の代表選考会を兼ねて開催され、別開催済みの男女10000m、男女混成競技を除く34種目において、「日本一」が競われる。

トラック&フィールド種目についてのドーハ世界選手権の代表選考要項は、https://www.jaaf.or.jp/files/upload/201812/18_144136.pdf に示されている通りだが、今回の日本選手権で即時に内定する条件は、1)優勝者が世界選手権参加標準記録を突破している場合、2)優勝者がその種目でアジア選手権に優勝している場合の2つ。現地で観戦する場合は、まずはこの点に着目するとよいだろう。

また、この大会は、来年に迫った東京オリンピックの出場権獲得という点でも大きな意味を持ってくる。国際陸連(IAAF)は東京オリンピック参加資格制度として、種目ごとに出場枠を設定し、約半数を高い水準の参加標準記録(以下、五輪標準記録)突破者で埋め、残りをIAAFワールドランキング制度上位者で決めていくという方法を採用しており、この日本選手権は、五輪標準記録突破、あるいはIAAFワールドランキングの獲得ポイントを高める好機となるからだ。さらに、日本陸連は5月末の理事会において、世界選手権個人種目でメダルを獲得した日本人最上位選手が東京オリンピック参加標準記録を満たしていれば同日本代表に内定すること(満たしていない場合は、該当種目の2020 年日本選手権終了までに突破した時点で内定する)とした。「メダル獲得、参加標準記録突破」という非常に高い条件をクリアする必要はあるものの、最短でオリンピック代表の座をドーハで獲得できるようになったのだ。

自国開催となる東京オリンピックまであと1年。ここ数年で日本陸上界は、各種目で好記録が誕生し、その水準もぐんぐんと上がってきている。今大会では、どの種目でどんな記録が、そして、どんな名勝負が繰り広げられるだろうか。大会の見どころを、ブロックごとにご紹介しよう。


◎男子100m

毎年のように「史上最高」と謳われ、注目の的となる男子100mだが、今年もまた「史上最高の大激戦」は必至の情勢で、私たちが「歴史的な瞬間」に立ちあえる可能性は非常に高い。その核となってくるのは、桐生祥秀(日本生命)、サニブラウン・アブデルハキーム(フロリダ大)、山縣亮太(セイコー)の3選手。なかでも、桐生とサニブラウンに勢いがある。





2017年に9秒98をマークし、日本人初の9秒台スプリンターとなった桐生は、今季初戦で100mを10秒08(+2.0)、200mは自己新の20秒39(+1.5)をマークし、2種目でドーハ世界選手権の参加標準記録(以下、世界選手権標準記録、100m10秒10、200m20秒40)をクリアすると、4月のアジア選手権男子100mを10秒10(+1.5)で優勝。国内初戦となったゴールデングランプリ(GGP)ではジャスティン・ガトリン(アメリカ)と大接戦を演じて0.01秒差で2位に。セカンド記録で自身3回目となる10秒01(+1.7)をマークして、五輪標準記録(10秒05)も突破した。その後の布勢スプリントでも、予選・決勝を10秒04(+1.3)・10秒05(+0.1)でまとめるなど好調を堅持。滑り出しが今ひとつで、うまく調子を上げきれずに終わった昨シーズンとは全く異なる足どりを残している。日本選手権では、東洋大1年時の2014年に初優勝を果たしているが、特にここ3年ほどは優勝候補の筆頭に上がりながらも勝つことができずに悔しい思いをしてきた。それだけに5年ぶりのタイトル奪還に向ける思いも強いはずだ。





桐生を上回る活況ぶりを示しているダイヤモンドアスリート(DA)修了生のサニブラウン。フロリダ大2年目の今季は、1月末から室内60mでスピードを磨き、3月の全米大学室内選手権では予選で6秒54と2月に更新されたばかりの室内日本記録(川上拓也、大阪ガス)に並ぶと、決勝は6秒55をマークして3位に食い込んだ。屋外シーズンに入ると、その勢いは加速。5月11日に100mで9秒99(+1.8)をマークして日本人2人目の9秒台スプリンターになると、5月26日には200mで大幅な自己新記録となる20秒13(+1.1、当時日本歴代3位タイ)を叩き出し、両種目であっさりと世界選手権と五輪の標準記録を突破。そして、6月上旬の全米大学選手権では、100mの準決勝で追い風参考ながら9秒96(+2.4)をマークすると、決勝では、まずフロリダ大の2走を務めた4×100mRで今季世界最高となる37秒97をマークして優勝(ちなみに、フロリダ大が更新するまでの今季世界1位の記録だったのが、GGPで日本チームがマークした38秒00である)。50分後に行われた100mで、9秒97(+0.8)の日本新記録を樹立すると、そのわずか45分後に行われた200mでも、日本歴代2位となる20秒08(+0.8)をマークして、両種目で3位の成績を収める快走劇を見せたのだ。

サニブラウンは、2017年の第101回大会で、年長選手を押さえて100m10秒05(大会タイ)、200m20秒32で2冠を達成し、同年のロンドン世界選手権100mで準決勝に進出、200mでは史上最年少ファイナリストとなって7位の結果を残している。万全の状態で臨むことができれば、一昨年以上の強烈なインパクトを残すパフォーマンスを両種目で披露し、再び戴冠する可能性も十分にある。





前回の100m覇者で、昨シーズン、日本選手に全勝するとともに記録的にも高い水準での安定感を誇った山縣亮太(セイコー)は、脚の違和感からアジア選手権の決勝を棄権したことで状態が懸念されていたが、2走を務めた世界リレー(予選で失格)、GGP(38秒00で優勝)の4×100mRでは、どちらも好走を見せており、心配はなさそう。抜群の調整力も彼の強み。着実に調整を上げてくるだろう。しかし、周囲のレベルが高いだけに連覇を果たすためにはベストの状態に仕上げることは必須。今季、やや精彩を欠くスタート直後の局面をどこまで磨くことができるか。





この3選手に割って入るとしたら、GGPの100mで日本歴代7位の10秒04(+1.7)をマークして、山縣に先着(日本人2番手の4位)した小池祐貴(住友電工)になりそうだ。昨シーズンに急成長、秋にはアジア大会200mで大接戦を制して20秒23(+0.7)で金メダリストとなった選手。今季もアジア選手権200mで2位(20秒55、+1.7)、世界リレー、GGPともに4×100mRのメンバー入りを果たして3走を務めるなど、すっかり代表チームに定位置を占める存在となった。100mは初戦で追い風参考のなか10秒0台をマークしていたが、公認記録では昨年マークした自己記録を一気に0.13秒更新して、自身がメイン種目と位置づけている200mより先に世界選手権、五輪の標準記録を突破する形となった。6月上旬にはヨーロッパで100m2レースを転戦。中1日で臨んだオスロDLは、そのレースを今季世界最高の9秒85(+0.9)で制したクリスチャン・コールマン(アメリカ)ら9秒台スプリンター6選手と対戦して、5位・10秒15でフィニッシュしている。パワフルな走りで、気象状況やハードなタイムテーブルをものともしないタフさが強み。昨年のこの大会は100m4位、200m2位と「メダル、優勝」に届かず悔しさを顕わにしていたが、今年は2冠に挑めるだけの力が十分についている。





このほかでは、GGPで10秒12をマークし、昨シーズンの不振から復調の兆しを見せている多田修平(住友電工)や、春先の脚を痛めた影響で出遅れているケンブリッジ飛鳥(Nike、2016年優勝者)も、本来の力が発揮できる状況になれば、確実に上位争いに加わってくるはず。さらに、今季10秒19まで記録を伸ばしてきている白石黄良々(セレスポ)、4.3mの追い風参考記録ながら10秒02をマークして関東インカレを制したダイヤモンドアスリートの宮本大輔(東洋大)、その宮本を抑えて6月8日の日本学生個人選手権100mを10秒12(+1.2)で優勝している坂井隆一郎(関西大)など、次々と名前を挙げることができる。「複数選手による9秒台での優勝争い」だけでなく、決勝進出ライン自体が非常にレベルの高いものになることは確実で、予選から息が詰まるような激戦が繰り広げられるだろう。まずは気象、風向ともによいコンディションに恵まれることを祈るばかりだ。


※記録、競技会の結果は、6月14日時点の情報で構成。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォートキシモト


■第103回日本陸上競技選手権大会

2019年6月27日(木)~30日(日)福岡市博多の森陸上競技場
チケット絶賛発売中!
https://www.jaaf.or.jp/jch/103/


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