
男子マラソン競歩・決勝

勝木隼人(自衛隊体育学校)
1位 3時間03分36秒2年連続で自国開催の国際大会(東京世界選手権、名古屋アジア大会)で、日本人最高順位を取れたことがすごく嬉しいし、まず、出させてもらえたこと、そして、こんなにも多くの方が沿道に応援に来てくださったことを、すごく嬉しく思う。
この大会では、当初、僕は世界記録(注:新設種目につき、2026年1日1日以降に、WAが設定した世界記録基準2時間56分30秒を上回った場合に、世界記録として認定される)を狙おうと思っていた。しかし、(大会初日の)ハーフマラソン(競歩)のレースを見てから一気に作戦を変更した。というのも、もうジャッジが本当に怖いなと思ったから。そこで、まず本当にスローペースで、ジャッジを確認しながら入っていく…最初は(1km)4分30(秒)を切るくらいで入り、そこあら1kmで1秒行くか行かないかくらい、ちょっとずつ(ペースを)上げて、どの程度までいったら浮いていると判断されるのかを確認しながら進めていった。そうしたら、4分15秒くらいでレッドカードも出たので、「(4分)15秒はちょっとまずいな」と思い、その段階で他の選手も、レッドカードが出たりペナルティ(ゾーンに)入っていたりしたので、「ちょっとだけ(4分15秒で)押して、あとは4分20秒くらいまで落とそう。そこで(他選手が)離れなければ、最後で上げよう」と思っていた。しかし、その段階でほかの選手が離れてくれたので、そこからはもう本当に安全運転。僕もいつペナルティ(ゾーン)に入るかわからないという、そういう心理状態ではあったので、本当に安全運転で最後まで行くことになった。
<レッドカードとして出た1枚はベントニーであったが…の投げかけに>
浮き(ロスオブコンタクト)はイエロー(パドル)で、レッドカードとしてはベントニーで出た。ただ、ハーフマラソン(競歩)のときに、ベントニーとして出ていたレッドカードが、そのあとロスオブコンタクトに変わっていたので、「もしかしたら、この膝曲がりは、浮きとして出ているかもしれない」と考えた。イエローパドルは、ロスオブコンタクトでもベントニーでも出ていたので、「どちらの可能性もあるな」と。そこで、そのどちらであっても大丈夫なように細心の注意を払っていこうと最後まで気をつけながら歩いた。
そうしたジャッジの怖さがあったために、ほかの選手が離れた段階でも金メダルの確信は持てず、ラスト2周くらいになってようやく「これ以上は、カードは出ないだろう」と判断できたところで優勝を確信することができた。最後にペースを大きく落としたのは疲労ではなく、何が起こるかわからないという思いから。僕が見た限りちゃんと膝は伸びていると思っていた諏方(元郁)くんでもベントニーをとられるなら、僕にも出される可能性はあると考え、とにかく安全運転で行こうとペースを落とし、最後まで意識して歩いた。
<ジャッジとの戦いも含めてのレースは大変だったか? の問いに>
レース中は精神的に病みそうだった(笑)。いつもは、基本的には大丈夫で、1枚出たら気をつけようと対処していくが、今回は、42.195kmまるまる全部気をつけなければならなかった。最初から細心の注意を払っていても、「それでも出されてしまって、どうすればいいんだ。そこまで行けるんだろう」と、ずっと心の中でものすごくせめぎ合うような厳しさのあるレースだった。
<東京世界選手権からの進化や成長は? の問いに>
全てにおいて上がっている。練習のタイムも、間違いなく去年よりもかなりアップデートされていて、身体の能力的には負けることはないなという状態だった。技術的なところは、夏にちょっとペースを上げすぎたときに、もしかしたら去年より劣っているかもと感じたこともあったのだが、でも、最後の最後に修正できていたことはすごく大きいし、何より、これだけベタベタ歩いても42.195kmをしっかりある程度のタイムでまとめるのは、去年には絶対にできなかったこと。今大会では、フォームを修正しながらも、そこそこのペースで行けるようになっているので、それはこの1年ですごく成長したと感じている。
<世界記録の樹立については? の問いに>
僕じゃない可能性はあるけれど、日本選手の誰かが、この1年以内に間違いなく出せると思っている。10月の高畠競歩(全日本競歩高畠大会)には、僕も一応エントリーしているが、早ければこの大会で、神戸(の日本選手権ハーフマラソン競歩)のときのように上位4人が世界記録という可能性はあると思っている。

諏方元郁(愛知製鋼)
3位 3時間08分57秒この大会は、メダル獲得を目標にしていた。それをまず銅メダルという形でも取れたことをすごく嬉しく思っている。
今回は、レッドカードが3枚出て、ペナルティゾーン入りとなった。中国の選手を追いかけた段階では、1枚しか出ていなかったのだが、自分のなかでペースアップするところは決めていて、そのときに中国の選手に2枚目(のレッドカード)が出たのが見えたので、そのタイミングでペースアップを図ったのだが、そこで一気に2枚出てしまったために対応できなかった。今思うと、その判断が自分のなかでちょっと甘かったのかなと思っていて、もうちょっと粘って37~40kmくらいまで中国の選手と一緒に行きながらラスト勝負に持ち込めていたら、(レッドカードは)1枚のままで抑えられていたのかもしれないし、結果も変わったかもしれない。最初にたまっていた黄色(イエローパドル)の枚数に対して、「そこから赤(レッドカード)は出ないだろう」と勝手に思ってしまった部分があったので、そこでもっと突き詰めて歩型を意識していれば…という反省がある。ただ、3枚ともベントニー(膝曲がり)ということについては、練習の段階では、自分の中に膝曲がりは全く想定になくて、もし取られるとしたら浮き(ロスオブコンタクト)だと思っていたので、自分の認識と審判団の見え方にギャップが生じている可能性もある。あとで動画とかを見返して、きちんとすり合わせをするとともに、チーム(愛知製鋼)には丸尾(知司)さん、山西(利和)さん、土屋(温希)、原(圭佑)というスペシャリストたちがいるので、皆さんに教えを請いながら修正していけたらと思っている。
ここに至るまで、会社の皆さんや先輩たちからもたくさん温かい言葉をいただいた。また、チームの拠点である愛知で行われるということで、地の利がある名古屋ということで(レースに向けての)対策はすごくしやすかった。また、沿道に応援に来てくださった皆さんの言葉がすごく温かくて、日本代表としてその声援の中で歩けたことは、自分の競技人生の中でも大切な大切な思い出になると思う。
<フィニッシュ直後、感情を昂らせていた場面をあったが…という投げかけに>
3月の日本選手権(マラソン競歩)のときは、初めて日本一をとったことで嬉し涙を流したけれど、今回に関しての銅メダルは自分には悔しい結果だったので、流したのは悔し涙だった。来年の北京世界陸上は、フルマラソン(競歩)の代表を目指してやっていく。オリンピックに関してはハーフマラソン(競歩)だけになってしまうので、今季は(来年)2月のハーフマラソン(日本選手権ハーフマラソン競歩)もしっかりとしたタイムで歩いたうえで、マラソン(競歩)でも2時間56分くらいは必要になると考えている。まだまだそこには足りていないので、しっかり取り組んでいきたい。
女子マラソン競歩・決勝

梅野倖子(LOCOK)
3位 3時間34分59秒※ミックスゾーン対応時点は4位だったが、その後、レース翌日の9月28日に、上位選手の失格により3位が確定した
完全に実力不足。自分のなかでは夏もしっかり練習して、準備はできていたし、調子としては、けっこういいかなという状態で来ていたのだが叶わなかった(他国の選手に比べて)土台の部分から自分のほうが何段階も下だったということを突きつけられてしまった。
レースプランとしては、(1km)4分55秒から5分くらいで歩くことを設定していた。最初は(4分)50秒を切ったりしていて、でも、このくらいのペースにはなるのかなとは思っていた。ただ、そのことで思ったよりも後半で足に来てしまって、「もっと(ペースを)上げたい。上げられるはずなのに足がついてこない」という感じになってしまった。
そのことで気持ちのほうもよりしんどくなってしまって、最後は全然上げることができないレースになってしまった。
後半の自分のポジションはなんとなく把握できていた。中国の3番の選手がペナルティ(ゾーン)に入ったことはわかっていたので、おそらく追いついてくるだろうと思っていたのだが、その段階で完全に足が残っていなくて、ついていくことができなかった。そのあとは、あっち(中国の選手)はペナルティゾーンに入っているし、(レッドカードが)もう1枚出れば失格ということもあり得るから、ついていきさえすれば希望もあったのに、自分の足が思うように動かなったというのがあった。
この夏は、今までよりも長い距離の練習に多く取り組んで、しっかり脚は鍛えた。練習は、すごく調子よくできていたし、9月いっぱいはNTC(ナショナルトレーニングセンター)でトレーニングして暑いなかでも30kmを1回できていた。それだけに、なんでこんなに涼しい気候なのに、ここまでタイムを落としてしまったのだろうという気持ち。
まずは岡田さん(久美子、LOCOK監督)と話し合って、考えていこうと思う。来年の北京世界陸上はマラソン競歩での出場を目指している。今後は、おそらく元旦競歩に出たあと、神戸(日本選手権ハーフマラソン競歩)、能美(日本選手権マラソン競歩)ということになると思う。
【追記:順位が繰り上がってから実施されたメダルセレモニー後のコメント】
気持ちは昨日の試合後と変わらず、「悔しい」のひと言。タイム的にも、試合中の動きなどに関しても、上位の選手に敵わなかったことが悔しい。
<正式結果が出るまで時間がかかったが、どういう気持ちだったか? の問いに>
自分自身は順位のことは全く気にしていなくて、試合内容のほうに反省すべきことが多かったので、結果はもう過去のこととして気持ちを切り替え、悪かったことや反省すべき点を考えて過ごした。北京世界選手権はマラソン競歩での出場と入賞を目標にしているが、このままでは全然足りていない。昨日もレースのあとに岡田監督と話し、「根本から全然違うよね。やるべきことはまだまだたくさんあるよね」という話になった。3月の選考レースまで半年くらいしかないが、しっかり準備をして、参加標準記録を突破し、そこで代表入りをしっかり決めたい。

矢来舞香(千葉興業銀行)
4位 3時間36分40秒これはいつものことなのだが、レース前には自分のこれまでの練習が足りていたのかなとちょっと不安に思ってしまうところがあって、今回もそれはまだあった。それだけに、後半、少したれてしまったものの、今回はちゃんと自分のペースを守って最後まで歩ききれたことに、今はすごくホッとしている。
最初から先頭についてレースを進めるプランは、今の私にはまだできないので、スタート後は、最初から自分のペースをしっかりと刻んで、周りにつられず自分のレースを貫くことを意識してレースを進めた。最初からずっと一人で歩くことになったが、中京大学の出身ということで陸上部の先輩・後輩・同期が来てくれて、また(所属先のある)千葉や(出身の)兵庫からもたくさん応援に来てくださった。去年の世界陸上もそうだったが、本当につらい時、このたくさんの応援の力で、「前に、前に」といった形で進めていくことができた。まだまだ自分には、スピードがなく、また、距離に対する感覚も、35kmから長くなってしまったと考えてしまう。これが、「42.195kmしかないんだ」と思えるくらいの距離を積み、序盤から先頭に絡んでいけるようなスピードがつけることが、来年の世界陸上に向けての課題かなと思っている。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:©AINAGOC、アフロスポーツ、フォート・キシモト
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