
日本陸連は4月30日に招集した第111回理事会において、「酷暑環境下における競技会のあり方と育成年代競技会の抜本点的見直し」を根底に据えた「2026年夏期大会(全日本中学校選手権、インターハイ、全国定時制・通信制)の主催」について最終的な判断を議論。各大会の主催に入ることを決議し、同日実施したメディアブリーフィングにおいて、最終判断に関する説明を行いました。
主催を決議した最終判断の詳細は、後日ご報告を予定していますが、まずは本件に対する日本陸連の基本的な考え方、実現に向けて取り組んできた検討・対応内容を、改めてご紹介したく、第111回理事会開催中にメディアに向けて実施された経過説明を、先にレポートします。
2026年夏期に予定されている全日本中学校選手権(以下、全中)、インターハイ、全国定時制・通信制(以下、全国定通制)の主催可否について、日本陸連は3月26日の第109回理事会において、4月末を期限として各団体において必要事項の再検討をしていただき、その回答を踏まえて最終判断を行うことを決議していました。4月30日には、各団体からの回答を踏まえて、18時30分より第111回理事会を開催。約2時間にわたって、それぞれの大会について一つずつ議論を行い、最終的に各大会ともに「主催に入る」ことを決議しました。
メディアブリーフィングは、この理事会開催中となる19時からスタート。理事会における最終判断を報告する前段階として、本件を担当する日本陸連事業部の平野了部長が会見に臨みました。平野部長は、「現在、2026年夏期大会の主催について、まさに最終的な判断を議論しているところだが、ここでは、酷暑環境下における競技会のあり方、育成年代の競技会の抜本的見直し、2026年夏期大会の主催判断について、日本陸連内で共有してきた内容や、これまでの経緯を含めて説明させていただく」と述べ、この問題に関して、日本陸連がなぜアクションを起こしたのか、その本質はどこにあるのか、そして、ここまでどのような経過を辿ってきたかを整理。以下の形で、改めて解説しました。
「酷暑環境下における競技会のあり方、育成年代の競技会の抜本的見直し」と、「2026年夏期大会の主催」について
平野 了(日本陸連事業部部長)

はじめに
まず、代表的な屋外スポーツである陸上において、酷暑下の競技会のあり方をどうすべきかについて、日本陸連としてのガイドラインと基本方針を示したい。これは、単に運営上のルールという話ではない。我々が考えているのは「命にかかわる重大な事態なのだ」という強い認識のもと、中央競技団体として定款の上で果たすべき責任や、大会主催として負う不法行為、債務不履行等の重大な法的な賠償責任を正面から受け止めた結果といえる。
具体的には、スポーツ庁や日本スポーツ協会のガイドラインを徹底遵守し、以下の3つを原則として進めてきた。
1)WBGT31度以上となる暑熱環境下においては、ウォーミングアップを含めて競技活動は行わず、活動の中断・中止を徹底する。
2)この措置は、アスリートだけでなく、競技役員、補助員、ボランティアといった大会関係者はもとより、観客などに対しても、相応の安全確保を講じていく。
3)WBGT31度以上となる可能性が極めて高い、7月・8月においては、原則として日本陸連は競技会を主催しない。
暑熱の問題に関して、我々はこれまでも問題意識は持っていたものの、競技団体として具体的な対応を示しきれていなかったという反省がある。日本陸連科学委員会は、2007年の段階で、「インターハイの暑熱動態」と題する原稿を専門誌で発表しており、夏期における安全な大会運営と注意を促すとともに、過酷な暑熱環境下での競技に対する警鐘を鳴らしている。つまり、暑熱の問題は、近年になって顕在化したものではなく、約20年近く前から、そのリスクは認識されていたものの、競技会構造は変わっていないということである。したがって、今回の議論は、新しい問題への対応ということではなく、日本陸連としても、また日本のスポーツ界としても、積み残してきた課題に対する構造的な見直しを求めるものであると位置づけている。
この暑熱問題を通じて、中央競技団体としての役割と責任を改めて自問自答し、暑熱と真正面から向き合い、「アスリートの命と未来を関係者とともに守り抜く」ことを第一の目的として、具体的な行動を起こすことを決意した。
その行動の第一歩として、2023年の北海道インターハイをきっかけとして、関係者との協議を重ねてきた。日程変更などの抜本的な対応が間に合わなかった2025年度は、我々が主催する日本選手権、また、全国高等学校体育連盟(以下、高体連)と一緒に主催するインターハイ、日本中学校体育連盟(以下、中体連)と一緒に主催する全中においては、大会のなかで暑熱対策を徹底するという形でなんとかしのいだ。
しかし、2026年度に向けては、「いよいよ抜本的な対応を行う年」と位置づけ、インターハイや全中といった全国大会をはじめ、各都道府県の地区予選大会等についても、7・8月の実施を回避することを強く要請してきた。もし、日本陸連主催の全国大会を7・8月に開催せざるを得ない場合、WBGT31度以上のガイドラインを厳格に順守し、関係者の安全が確保されたうえで、実際の運営ができるのかを確認したうえで、主催に耐え得るかどうかの判断を下すこととなる。
酷暑の日本において、屋外の運動は回避すべきであり、この状況は、今後、さらに厳しさを増すことが想定される。そうしたなか、暑熱だけの問題ではなく、とりわけ育成期の子どもたちが、どのように競技と向き合っていくか、その具体的な解決案として、「育成年代における競技会のあり方」をたたき台として提出した。
皆さまに強く理解いただきたい点は、この議論が、単に「インターハイや全中を主催するか、しないか」という表面的なものではないこと。ますます厳しさを増す酷暑の日本における屋外スポーツの代表格である陸上のあり方、ひいてはスポーツのあり方そのものを問う議論と考えている。そのために、我々は「今まではこうだったから」「すでに決まっていることだから」という思考停止状態から抜け出さなければならない。これまで手つかずであったこの課題解決への推進のエネルギーは、本質的な議論を進めて具体的な行動を起こすことでしか生まれない。そのリード役を日本陸連が果たしていくという自負と覚悟を持っている。
実際、日本陸連の内部にも、「いきなりで乱暴だ」「丁寧な議論が必要だ」「主催する・しないで脅すのか」という声があることも事実である。しかし、ここで言いたいのは「もうすでに(会場が)決まっているから動かせない」というこの3年間が、時間として短いかどうかということ。日本陸連をはじめとする主催団体は、競技会を主催する責任を正しく理解しているのか? 命にかかわる問題であるにもかかわらず、決断できずにいる組織でよいのか? この議論は、日本陸連という組織が、社会からの期待に応えることができる組織であるかを問われているのだと受け止めている。この点において、日本陸連内においても、特に2025年3月の第97回理事会以降は、理事・評議員をはじめとする役員に向けても回を重ねて丁寧な議論と認識の共有を実施。執行部の案に、単に良し悪しを判断するのではなく、自らの問題として責任のある判断を下すことができるか否かを問われていることを強く認識いただいたうえで、現在、議論に臨んでいただいている。
夏期(酷暑下)における競技会のあり方と、日本陸連としてのスタンス
最初に、現在、私たちが直面している問題の現実について共有したい。近年の夏の競技会では、暑熱環境が、大会運営そのものを脅かす状況が発生している。象徴的な事例として挙げることができるのが、2023年の北海道インターハイ。涼しいであろうという想定に反して厳しい暑さとなったことで多数の救急搬送が発生し、競技場内の医務室のベッドがすべて埋まる事態となった。この出来事は、暑熱環境のなかで全国大会を開催することの危険性と、大会運営の現場が非常に厳しい状況に置かれていることを示すものとなった。そして、翌2024年の福岡インターハイなどを経て、従来の夏休みに屋外で全国大会を開催するというスポーツモデルは、もはや持続可能ではないのではないかという認識が広がっている。ただし、ここで重要なのは、この問題は、インターハイや全中といった全国大会だけの問題ではないということである。全国大会の背後には、その出場権を争う都道府県予選や地域予選が存在し、競技会の数としては、それらのほうが圧倒的に多数となる。さらに、これらの大会では、全国大会ほど医療や運営の体制が整えられていない場合も多く、酷暑環境の中で競技が行われるリスクはむしろ、全国大会よりも地域の大会のほうが高いといえる。つまり、この問題は、特定の全国大会の運営方法だけの問題ではなく、夏期に屋外競技会を行うというシステムそのものの課題として捉える必要がある。
これに対する日本陸連としての立場は明確で、「アスリートはもちろん、審判員や大会関係者、さらには観客を含めて、大会にかかわるすべての人の命と安全を守る。それらは主催者の責任で、安全が担保できない競技会は主催しない」ということが大原則である。この点はいかなる事情があったとしても譲ることができない、本連盟としての基本的なスタンスであると考えている。
表面的な課題と根本的な構造問題
ここで強調したいのが、これを単なる暑熱対策の問題と捉えてはならないということ。課題となっている暑熱問題というのは、あくまで氷山の一角に過ぎない。現在議論されている多くの対策は、競技時間の調整、休憩時間の確保など、暑熱環境への対症療法なものにとどまっている。しかし、本質的な課題は、それらの水面下に潜む、以下の根本的な構造問題にあるといえる。・発育発達段階におけるアスリートと現在の競技環境との不整合
日本では、海外に比べて育成年代の競技会数が非常に多く、結果として一部の選手に競技負担が集中する構造になっている。
・健康・安全確保に関する構造的な問題
思春期の選手は発汗機能が未発達であるために、酷暑環境の中で無理を重ねることにより重篤な熱中症を発症し、場合によっては心身に長く影響を残すリスクがある。
・「負けられない戦い」を生む構造
インターハイモデルをベースとした、勝ち上がり方式を前提とした大会構造は、育成段階の選手に対して「負けられない」という過度な競技負担を強いている。
つまり、暑熱は、単なる環境条件の問題だけではなく、“主催者として競技者の命と身体を預かり、守る責任を、どう果たすか”という観点から、大会構造そのものを見直す必要があることを示している。小手先の対症療法でなく、年間競技会スケジュールや大会の仕組みを含めた根本的な見直しを行わないと、アスリートの命や未来は守れないということを共有しておきたい。
「育成年代における競技会ガイドライン」の策定
前述の点を踏まえて、日本陸連では「育成年代における競技会ガイドライン」を制定し、2025年12月に公表した。このガイドラインは、暑熱対策だけを目的したものではない。発育発達段階にある競技者の健全な成長を支えて、安全で公正かつ持続可能な競技環境を整備していくことを目的として策定されている(https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/guidelines/youth_competition.pdf)。ガイドラインは、次に示す4点を大きな柱としている。
1)健康・安全への配慮(暑熱回避)
猛暑日となる可能性が高い7・8月の競技会開催は原則回避すること、WBGT31度以上となる環境ではいかなる理由があっても競技を中止・中断することなど、安全措置を厳格に講じることを基本とする。これらは思春期の競技者は発汗機能が未発達であること、高い競技への意欲が体温上昇のリスクとなること、さらには暑熱環境下での競技が、若い育成年代の身体に大きな負担を与える可能性があるという医学的な知見を踏まえたものになっている。
2)競技負担の適正化・均等化
試合数や出場種目数、試技数の制限、十分な休息時間の確保などを通じて、特定の競技者に過度な競技負担が集中することを防ぎ、年間を通じた競技機会の適正化を図ることを目指す。
3)指導者・環境の安全管理
セーフガーディングやインテグリティに関する研修の受講、医療体制の強化などを通じて、身体的な安全だけでなく、心理的な安全も配慮した競技環境の整備を求める。
4)競技会の評価と改善体制
競技運営の効率化や関係者からのフィードバック収集を通じて、競技会のあり方を継続的に見直し、より安全で持続可能な大会運営へと改善していくことを目指す。
競技会における暑熱対策と主催者‧関係者の法的責任
続いて、競技会における暑熱問題を、主催者および関係者の法的責任という観点から整理したい。まず、大前提として、大会の主催者には、その大会にかかわるすべての人に対して、生命や健康を危険から保護する安全配慮義務が課されている。これは、参加契約を結んでいる競技者、観客に対してはもちろんのこと、主催者の指揮管理下で労務を提供する審判員や補助員に対しても一般の労働者同様に負う、非常に重い義務である。したがって、暑熱環境下において大会を開催する場合は、厚生労働省やスポーツ庁が示す、熱中症の一般的知見、すなわちWBGTなどの客観的な指標に基づき、危険を未然に防ぐための具体的な措置を講じることが求められている。もし、客観的なガイドラインが十分に考慮されないまま大会運営が行われた場合、それは未然防止措置の怠慢、つまり過失と評価される。その結果、安全配慮義務違反として、民事上の損害賠償責任が生じるリスクもあるということになる。
注意しなければならないのは、この責任が主催者や主幹団体といった組織だけでなく、現場の運営に当たる競技役員個人にも及ぶ点である。審判員や補助員の労務環境を左右しうる権限を持つ役員は、現場の不法行為責任が問われることとなる。さらに競技役員は、競技規則に基づき、競技者の安全を第一に考え、危険があれば競技を中止・中断する義務を有している。これを適切に行使できなかった場合にも注意義務違反となる。これは、万が一、適切な対策を怠って重大な死傷事故が発生した場合には、民事責任にとどまらず、業務上過失致死罪として刑事責任を問われる重大なリスクもあることを意味する。
日本陸連が主催する、あるいは主催団体として関与する公認競技会においては、こうした安全基準が満たされているかどうかを十分に検討した上での判断が必要となる。しかし、最も重要な論点は、法的責任の有無ではなく、「安全確保は、主催者として当然果たすべき責任である」ということ。その結果として法的責任が伴うという前提に立つと、日本陸連としては安全が担保できない競技会は主催しないという判断につながる。
主催者の「法的責任」と「公認競技会」のルール
ここで、主催者の法的責任と公認競技会としてのルールが、どう連動しているかを説明する。まず、法的責任という点では、前述した通り、大会主催者は、審判・補助員、競技者に対し、生命・健康を守る安全配慮義務を負っている。このなかでWBGTなどの客観的基準を踏まえた運営が実施されていない場合、それは未然防止措置の怠慢、イコール過失と評価され、事故が発生すれば、賠償責任や業務上過失致死傷罪といった刑事責任も問われる可能性がある。また、公認競技会ルールについては、こうした安全義務が満たされていない場合、日本陸連としては主催できないという判断を行う可能性がある。これがまさに、現在、理事会において検討していることである。これは単に主催の可否にとどまらず、公認競技会規程からの逸脱となり、結果として、この大会で出された記録自体が非公認となることを意味する。つまり、安全配慮義務の不履行が法的責任の発生リスクにつながり、主催不可の判断となり、結果として、開催したとしてもその競技会自体が非公認になるという一連の構造でつながっている。
ここで重要になるのは、単なる公認・非公認の問題ではないという点。暑熱環境下において大会を実施するかどうかの判断は、「主催者として生命を守る責任を踏まえ、組織として適切な意思決定ができるかが問われている」ことを意識しなければならない。
中体連・高体連との主な協議の経緯と、2026年3月26日日本陸連理事会での決議事項
ここからは、本件に関して、中体連および高体連との主な協議経緯と、3月26日の理事会決議についてを報告していく。日本陸連としては、2024年から暑熱問題や、育成年代の競技会の在り方について、関係団体と継続的に協議してきた。◎高体連との主な協議経緯と、2026年大会に向けて
高体連とは、2024年7月に暑熱問題と主催者責任に関する議論を開始し、10月にインターハイを6月に開催する案(2シーズン制の移行)、予選大会を含めた大会構造の見直し(ターゲットナンバー制の導入や参加人数の適正化など)について提案を行い、2025年10月には育成年代の競技会ガイドラインを提示するなど、競技会向上そのものの改革に向けた方向性を示してきた。一方で、高体連側からは、「すでに開催地が決定している今後3年間(2026~2028年)については、開催時期の変更は不可。また2026年は参加人数規模の縮小はできない」という強い方針が示された。そのため時期や規模の変更が難しいなかでの対応として、2026年度の滋賀インターハイにおいては、会期を従来の5日間から7日間に延長し、実施を18時(一部17時)から22時までのナイター開催とする案が、滋賀県実行委員会および高体連陸上競技専門部(以下、陸上専門部)から提示された。また、ナイターで開催するにあたって、青少年の深夜外出制限条例については、警察等にも確認を行い、保護者の同意と顧問の引率があれば補導の対象外となること等の確認を、3月末の段階で済ませていた。
日本陸連としては、こうした取り組みについて、WBGT31度未満の環境で競技を実施するための一定の工夫として前進している部分はあると考えている。しかし、これらはあくまで暑熱環境を回避するための運用上の対応であり、以前から高体連に投げかけてきた「大会構造、過密日程の見直し」という本質的な面には至っていない。このため、日本陸連としては、3月末時点で主催を判断せず、4月末までに、
①将来に向けた具体的な見直し工程、すなわち、今後、数年間で大会構造をどう改善していくかの工程表、
②2026年大会を安全に運用できるWBGTの評価、運用確認とその仕組み、
以上2点を検討していただき、改めて審議を行うこととした。
◎中体連との主な協議経緯と、2026年大会に向けて
中体連との協議においても、日本陸連としては、中学生の安全確保を最優先として、酷暑期を避けた大会開催時期の見直しを要望してきた。しかし、「夏休み以外の開催は困難である」という立場が示され、さらに、「日本陸連の主催がなくても大会は開催する」という意向が示された。山口で予定されている2026年全中については、現状で中体連は、
①夏休み以外の開催は不可。15~19時の競技時間で計画を進行中、
②WBGT31度以上となる場合は、ウォーミングアップや競技を実施することはない、
③陸連の主催がない場合も大会を開催する、
意向を示している。
しかし、日本陸連では、8月の山口市における15時以降の気象データを過去5年間に遡って調べたところ、15時でもWBGT31度を上回るケースは多く、会期となる8月20日前後においても、15時以降にWBGT31度以上の状況が継続される可能性は極めて高いと分析した。仮に競技開始時間が遅延した場合、4日間の会期のなかで、競技日程が成立するのかという運営上の懸念も非常に大きく、現状の15時開始を前提とした大会運営には、安全と実務双方の面で極めて深刻な課題があると考えた。
このため、本連盟としては、3月末時点で主催を判断することは困難であると示し、4月末までに、
①WBGT31度未満となる時間帯を前提とした競技日程(15時開始から変更)の再検討、
②仮に競技開始が16時、17時となった場合に、大会が確実に成立する具体的な運営シミュレーション、
その2点を検討していただき、改めて審議を行うこととした。
◎全国定時制通信制陸上、2026年大会に向けて
定通制陸上においては、大会日程の短縮、ナイター開催、選手の負荷軽減も配慮し多種目出場を廃止するなどを3月末の段階で確認した。しかしながら、競技開始時間が15時30分であったことから、この大会についても主催判断を見送り、4月末までに、①WBGT31℃を下回る時間帯を前提に競技日程の再検討、
②16時・17時開始となった場合に競技会が成立する具体的なシミュレーション、
以上2点を検討していただくこととした。
社会への発信方針について
本件については、昨年3月の理事会終了後以降、メディアブリーフィングとして5回にわたって場を設け、本連盟の本質的な考え方を含めて、メディアの皆さまへご説明してきた。今回の発信は、単なる「陸連としての取り組みの説明」ではなく、競技会のあり方そのものを問い直し、社会とともに改革を進めるためのメッセージであるという位置づけで発信している。また、こうしたメッセージが、どうすれば正しく伝わっていくかについては、スペシャリストであるメディアの皆さまのお知恵をいただきながら進めていきたいと思っている。本連盟として、メディアを通じて、広く社会に伝わってほしいと考えている最重要のメッセージは、ここでお伝えしておきたい。今回、条件つきで主催の判断に至った場合も、これは、あくまでの過渡的な措置であり、我々が本来進めるべきは、「大会構造の抜本的な見直し」、つまり構造改革であるという点である。その背景には、育成年代における従来のモデルが、すでに破綻しているという強い危機感がある。したがって、単なる夏の大会の運営上の工夫ではなく、「育成期の子どもたちにとって、陸上競技やスポーツがどうあるべきか」の本質的な問いを、社会全体に共有して、子どもたちの成長と未来を守るための大会構造を、根本からつくり直していく必要があるというメッセージを打ち出すことが重要と考えている。
しかし、過渡期の措置を施すことによって、誤解を持って認知されるリスクも十分にあり得ると捉えている。今回の対応に際して、我々が防ぐべきと捉える重大な誤解は、以下の通りである。
・対症療法が「根本的な解決である」という誤解
2025年、2026年大会でのタイムテーブルの調整や、夕方・夜間の開催といった対応は、あくまでも対症療法であり、暑熱問題や過密日程の「根本的な解決ではない」ことを明確に伝えたい。
・「工夫すれば夏でも開催できる」という美談化を避ける
工夫すれば、真夏の酷暑環境下でも開催できるという誤った成功体験が、美談として社会に受け取られてしまうことは絶対に避けなければならない。
・過渡的な措置が「新たなスタンダード」になる錯覚、構造改革の手を緩めてもよいという誤解
今回の夜間開催など、過渡的としての措置が、今後の「新たなスタンダード」であると錯覚されないようにしたい。この措置が肯定され、真に必要である構造改革の議論が停滞したり、改革の手が緩められたりすることがないようにしたい。
スポーツ界全体で解決すべき構造的課題
最後に、この構造改革に向けて、日本陸連、文部科学省・スポーツ庁、中体連・高体連といった関係主体がそれぞれ何に取り組むべきか、日本陸連がどう働きかけていこうと考えているかを示しておきたい。ここで大切なのは、それぞれの団体が、役割を持って、連携しながら構造改革を進めていく必要があるということ。日本陸連だけが課題観を持って動いていても、絶対に解決しない問題だと受け止めている。国、高体連・中体連が、それぞれの役割を認識しながら動けるように、日本陸連として、しっかりアプローチしていきたい。◎日本陸連の役割認識
本連盟としては、これまでのインターハイ等の競技会モデルを前提としない、具体的な行動とアプローチに踏み込むことが必要だと認識している。特に、部活動の地域展開については、これまで陸上は学校部活動に多くを頼って進んできたスポーツの一つであるため、地域展開が進んでいくなかで、教員を中心とした従来の運営モデルを継続することはすでに限界を迎えている。「する人、支える人、見る人」すべてにとって持続可能な競技会運営への再設計が急務と捉えている。そのために、学校依存の構造からの脱却、地域クラブや多様な担い手を含めた新しい支援体制を構築していく。あわせて、育成期の子どもたちにとって、陸上競技、スポーツがどうあるべきかという本質的な問いを社会に投げかけ、共感を広げることで硬直化した仕組みそのものを変えていく必要があると考えている。
その意味でも、本連盟自身が、本当に役割を果たせる組織であるかどうかを問われていると認識している。
◎文部科学省・スポーツ庁(国への働きかけ)
大会日程の問題については、もはや競技団体単独で解決できる問題ではなくなっている。本年2月には、日本陸連からスポーツ庁に要望書を提出し、意見交換を行った。制度設計や支援を含めた国レベルの関与の必要性を提起していく。教育課程との整合性も踏まえ、大会スケジュールの柔軟化、全国大会全体のあり方について、文部科学省やスポーツ庁と連携しながら、議論を進めていく。◎中体連・高体連との関係
総体スケジュールの柔軟化、開催時期・参加規模の見直し、大会構造そのものの抜本的な見直しが必要ということは、すでにこれまでに投げかけてきた点と変わらない。特に、過密日程、酷暑下での「負けられない戦い」が続く構造が、育成年代の競技者にとって過度の負担を強いているという現状を踏まえて、持続可能な大会のあり方への転換を求めていこうとしている。※本稿は、4月30日に実施されたメディアブリーフィングにおいて説明があった内容をまとめました。明瞭化を目的として、一部に編集を加えています。
文・写真:児玉育美(日本陸連メディアチーム)
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