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2026.04.01(水)委員会

【2025年度全国強化責任者会議 】世界選手権報告や暑熱対策を共有、育成年代指針について説明と議論を実施/レポート



日本陸連は2025年12月16日、東京都内で2025年度の全国強化責任者会議を行いました。この会議は、本陸連の加盟団体および協力団体の各強化責任者が一堂に会して、情報共有や議論を行う場として、年に1回実施されています。今回は、全国から集まった都道府県陸協強化責任者のほか、各協力団体の強化責任者ら、全53名が参加して開催。9月に行われた東京2025世界選手権や国際大会における抗議事例の報告、育成年代の競技会ガイドラインに関する説明やこれを受けてのグループワーク、2025年度の暑熱対策報告など、強化に関連する情報の共有が行われました。


【開会に際して】

今回の会議では、用意されていた以下の8項目の議題に沿って進められました。

1)2025年度主要国際大会報告と今後の強化方針について
2)国際競技会における抗議事例と傾向について
3)育成年代の競技会ガイドライン策定について
4)育成年代の競技会開催時期と種目設定についてのグループディスカッション
5)グループディスカッションの発表
6)2026年度主要競技会日程および国民スポーツ大会の競技日程について
7)暑熱対策関連の報告
8)味の素ナショナルトレーニングセンターの利用について




開会に際して、日本陸連の田﨑博道専務理事が挨拶に立ちました。田﨑専務理事は、まず、陸連創設100周年を迎えた2025年に東京で世界選手権が開催され、国内外のトップアスリートが素晴らしいパフォーマンを見せたこと、また、会期中は連日満員の来場者を迎える盛況となったことを挙げ、「この大会で生まれた陸上競技への大きな盛り上がりを一過性のものにせず、今後のさらなる発展につなげていかなければいけないという責任を重く、強く感じている」と述べました。
そして、11月29日に開催した100周年記念イベントで自身が話した「陸上をする人、見る人、支える人。そのすべての人のつながりによって、現在の陸上界が成り立っている。陸上を楽しみ、愛し、支え続けてくださった方々の存在なくして、これまでの歩みも、これからの発展もない。人こそが最大の財産であり、競技者、指導者、審判をはじめ、陸上にかかわるすべての方々が、陸上を通じて社会で輝き続けられるよう、支援をしていくことが陸連事業の原点であり、使命である」という点を再度訴えたうえで、実際に取り組んでいる問題、懸念される問題について、以下のように進捗や現状を報告しつつ、陸連としての方向性を改めて示しました。


◎酷暑下のスポーツの在り方:真に考えるべきは「安心・安全な環境や仕組み」

育成年代における競技会ガイドラインの策定は、強化と普及という2つの観点から、望ましい競技会の在り方や具体的な開催のプログラムの方向性などを、指針として提案していく取り組み。この1年は、昨年度の本会議で挙がった貴重な意見等も踏まえながら、さらに議論を深めてきた。
特に、酷暑下におけるスポーツの在り方は、国を挙げての喫緊の課題となり、2025年6月に成立・改正されたスポーツ基本法にも明記されることとなった。熱中症は、発症時の危険性だけでなく、そのあとの陸上人生や日常生活にも重大な後遺症を残す恐れがあることが医学的なエビデンスでも示されている。暑熱の議論は「酷暑下における野外運動の在り方」を問うものであり、競技会を開催するかしないかというレベルの議論ではなくなってきている。
日本陸連では、酷暑下における競技会の代表的な大会であるインターハイを議論の入り口としたが、我々が真に目指しているのは、「これまでに経験したことのない酷暑の日本における野外活動の在り方について議論し、世代を問わずに安心・安全に運動ができる環境や仕組みを整えること」である。

インターハイの会期変更については、陸連は数年前から高体連陸上競技専門部、高体連本部と協議を重ねてきた。昨年のこの会議においても、高体連本部の回答が、夏休み中以外の開催は不可。また、開催地が決まっている3年後までは会期を変えられないとして、6月や9月の開催時期の検討は一切行わないというものであったことはご報告したが、この点は1年経っても全く動いていない。

こうした状況のなか、来年度の滋賀県の彦根インターハイについては、高体連陸上競技専門部ならびに滋賀県実行委員会と協議を重ねている。「夏休み中以外の開催は不可」という高体連本部の意向が変わらないなか、高体連陸上競技専門部では、参加人数を現行の規模で維持することを条件に、競技開始時刻を、ウォーミングアップの時間帯を含めてWBGTが31度以下になるであろう夕方からとし、日数の延長を検討している。しかし、この方法では、競技会場の照明や警備、宿泊や輸送にかかわるコストが従来の開催費用を大きく上回ること、夜遅くまでの競技日程が選手のみならず大会にかかわるすべての人のコンディショニングや体力的な限界につながる恐れがあることが懸念される。陸連としては、引き続き高体連陸上競技専門部ならびに滋賀県実行委員会との協議は続けるが、明日(12月17日)に実施する日本陸連理事会では、この現状を報告したうえで、「2026年3月の理事会でインターハイを主催できるかできないかを(最終的に)組織決定することの協議」を行う予定である。


◎大切な子どもたちの未来を預かる責任を「自分事」に

今日、参加していただいた強化責任者の皆さんは、大半が中学校・高校の教員の方々であると思う。各都道府県のアスリート育成・強化における責任者として、また、日々、自身の学校で生徒を育てていただいている指導者として、今、述べたことにおける責任は大変重いものであると思う。「高体連が」「陸連が」という主語ではなく、大切な子どもたちの未来を預かる指導者として、改めて、皆さま自身が、皆さま自身に問いかけ、本件の解決に向けてどうすればよいかを考え、ともに行動を起こしいただくことが、全く動かないものを動かしていく唯一の力になると私は信じている。

1年前に議題となった話が、1年かけても(動く様子がなく)このような状況であるが、諦めるわけにはいかない。それは、大切な子どもたちの未来をどうするかということでもあるし、国としても重大な問題となっている「暑熱下におけるスポーツはどうあるべきか」に対して、陸上界としてしっかりとしたメッセージを出していく責任があるからである。この点を、理解していただいたうえで、ぜひ、大きな議論を進め、先々に明るい道筋が見えるよう努力していきたい。


◎中学校部活動の地域展開に際して陸連ができること

陸上は、これまでの学校教育システムのうえに成り立っていたスポーツの代表格といえる存在だが、部活動の地域展開が進むことによって、陸上の地盤ともいえるこの部分に、大きな地殻変動が起きている。現実として小学生から高校生まで幅広く生徒を受け入れていく有力なクラブチームが出現している一方で、中学校でクラブ活動ができないことから陸上競技をあきらめる生徒も出ている。行政の対応の違い、地域の格差、経済格差などが、スポーツの格差にもつながるという懸念が現実になりつつあるのではないか。まさに、さまざまないろいろな要素が、問題となって一気に顕在化しているのが現状ではないかと思う。

スポーツ庁や日本スポーツ協会からは、陸連をはじめとした各ナショナルフェデレーション(NF:国内競技連盟)に対して、クラブ経営の企画や運営への主体的な積極参画を求める要請や、各地区における指導者の確保についての要請が出ている。前者は個々のクラブチームの体制の整備を委ねるような要請で、この問題も指摘されるようになってから何年も経っているが、全国に広く数多く分散する各クラブチームの経営や運営に、日本陸連のようなNFが具体的にどうかかわることができるのかの現実案は見えていない。一方で、「指導者の確保」という後者については、指導者・コーチの養成システムを構築し、支援して整備していく機能は、まさにNFの役割。まずは、この教育システム・育成システムに早急に取り組んでいくことを推進している。

今年、陸連は、スポーツインテグリティ行動指針(https://www.jaaf.or.jp/pdf/diversity-equality-inclusion/integrity.pdf)を策定して掲げた。これは社会からの要請に応えてのもの。全国の指導者・コーチをはじめ、陸上にかかわるすべての方々に、陸上を支えてリードしていくという立場での役割責任があり、その大前提にインテグリティがあることは言うまでもない。本連盟には暴力・ハラスメントの窓口があり、私もその担当なので、すべてに目を通しているが、目や耳を疑うような相談もあり、その数は、残念ながら増加の一途を辿っている。事の真偽は別として、指導する人、指導される人、その周辺にいる人々へのNFとしての働きかけも喫緊の課題と実感している。そのために、陸連では2026年度の事業の大きな柱として、指導者の育成・養成プログラムに加えて、良い指導者をつくり、それを認定していくような、さらにステップアップしたシステムをつくって稼働させたいと考えている。

今、置かれている少子化や地域の格差は、これからより顕著となり、中学校クラブ活動の地域展開も、どんどん進んでいく。学校教育システムが大転換する時期に直面しているなかで、私たちは、東京世界陸上で知ることとなった陸上のポテンシャルや可能性を、どう未来につなげていくのか。世界陸上では、アスリートと観客が一体となった素晴らしい大会を見ることができた。ああいうものを、どう再現していくか。大きな課題ではあるが、真摯に向かっていくこと、できることをやっていくことが大切だと、改めて意を決している。


◎個々の重い課題は、すべてつながっている

もう一つ、財政基盤の話をさせていただく。スポンサー様がいなければ、スポーツは成り立たない。ここはいろいろな競技団体が悩んでいるところである。もちろん、支えてくださる方が大切だということは言うまでもないところだが、ただ、「支援してください。お願いします」というばかりではなく、企業スポンサーのほうから「陸上と組めば、我々企業の事業目的が実現する」と、陸上を選んでもらえるような努力を我々はしなければいけないと思っている。つまり、「投資する価値がある」として陸上が認知されることである。
ここまでに、いくつかの観点の話をしたが、社会から認められるということは、まさに投資の対象になるということ。つまり、そういうことをやっていかなければ、選ばれる存在にはなれないのだという現実を、しっかり見ていかなければならない。
今日は、強化の責任を負っていただいている皆さんに集まっていただいている。まさに将来を担う子どもたち、若いアスリートを育成していただく最も重要な役目に就いていただいている方々である。課題となっている一つ一つのテーマは、一つ一つ重い状況であるが、実は、これらはすべてつながっていて、何か一つ突破口を見出すことができれば、どんどん良い方向に展開していくと信じている。進めていこうとしている手続きそのものに対して、ご理解いただき、自らのこととして、ぜひ積極的に発言をお願いしたい。それを今日の財産として、お知恵を拝借しながら前に進んでいきたい。




【2025年度主要国際大会報告と今後の強化方針について】

続いて、山崎一彦強化委員長が、2025年度主要国際大会である東京世界選手権の報告を行ったのちに、今後の強化方針について説明を行いました。まず、大きな盛り上がりを見せた世界選手権について、「メダルこそ競歩の2つにとどまったが、ファイナルにたくさんの選手が残るなど、日本代表選手たちが本当に活躍した」ことが、「陸上を初めて観戦に来た人たちも含めて多くの方が応援してくれた」要因でないかと述べ、「やはり日本選手が活躍することが、私たちの使命でもあるし、そこまで行く道をつくることが大事であると思った」と振り返りました。

そのうえで、「冒頭で田﨑専務理事も話したように、これから激動の時期が来ると感じている」として、暑熱環境下における活動の問題や中学校部活動の地域展開等に触れ、「私も教員なので、選手と同様に“陸上をする”立場が多いわけだが、例えば、今回の世界選手権であれば観客がいたりその他の人たち、すなわち“見る人、支える人”がいたことで陸上競技の価値は高まったと考える。各都道府県の陸協においても“する人”だけでは運営や強化はうまく進まないのではないか。それらは最終的に日本代表にも影響してくる。そういう意味で私たち強化責任者も協力し、何かできることはないかを考えていきたい」と呼びかけ、話を始めました。各項の要旨は、以下の通りです。


◎東京世界選手権について

東京世界選手権の編成方針は、目標を、参加することの意義よりも、入賞することにシフトして、入賞できない人もそこを目指していくスタンスで臨んだ。これにより開催国枠についても、エントリー派遣の基準記録を設定し、すべての選手あるいは日本一位になれば出られるというわけではなく、ある一定の水準に達した人たちでチームを編成することとした。最終的に日本選手団は総勢80名に。2007年大阪大会では、開催国枠の出場も含めて81名であることを考えると、我々が制限を設けたにもかかわらず大勢の選手たちが出場できたというところでは、参加するという面でもレベルが上がっていることがわかる。

結果としては、メダル2、入賞(4~8位)9、プレイシングポイントは32点で国別のプレイシングテーブルは16位の成績だった。我々は、「JAAF VISION 2017」において、ロサンゼルス五輪が行われる2028年に世界のトップ8になることをビジョンとして掲げている。この進捗をみると、近年は入賞数が増え、2024年パリ五輪は11(メダル1を含む)、そし今回も11(メダル2を含む)。であった。

パリ五輪では女子やり投の北口榛花(JAL)が念願の金メダルを獲得。近年、日本の顔として牽引してきたこの北口や、男子短距離のサニブラウンアブデルハキーム(東レ)は、残念ながら今回はケガの影響で思うような結果を残すことができず、それ以外の選手たちがメダルや入賞の結果を残した。しかし、今回、陸上にこれだけの注目が集まったのは、彼らのこれまでの活躍あってこそのことだと捉えている。

日本人も含めて、全種目における入賞者の傾向をみると、入賞者の大半が参加標準記録を突破しての出場者であった。トラック種目では大会本番における自己記録達成率は98~99%となっていて、世界の選手たちも万全の体制でなければ入賞ができない状況で、高精度化が進んでいることが示された。また、参加人数自体が絞られているフィールド種目においては、ダイヤモンドリーグなどを転戦し、高い安定感で年間を通して常時世界のトップにいる選手たちが入賞を果たしていた。男女ともにワールドランキング上位者が入賞を占めていることを考えると、たとえ日本で好記録を出していても本番では勝負できないのが現状である。こうした全体の結果は、パリ五輪とほぼ同様の傾向であり、この戦いに加わっていくためには、前年の段階から、そのステイタスを取っていくことが必要。そういう意味でも我々強化委員会が掲げてきた「複数年にわたって世界で活躍できる確固たる実力をつける」という方針は間違っていない。

東京世界選手権では、週末(金~日曜)に注目種目を配置するなどの方法がとられたことで、観戦する人々から好評の声が多く聞かれた。競技時間の短縮も含めて、「観てもらうためにどうするか」という工夫は、世界選手権だけでなく、今後、日本で開催される大会に必要になってくること。「世界選手権だから見に行く」ではなく「陸上の大会だから観に行く」となるようにしていくことが、今後、我々の共通目標になっていくと考える。


◎今後の強化方針

「世界のトップ8」という前述のビジョンをロス五輪で達成するためには、プレイシングポイントで50点が必要とみており、これをクリアするためには、もっとメダルを獲得するとともに入賞数ももう少し増やす必要がある。ロス五輪に向けた今後の強化方針としては、ここまで掲げてきた「複数年にわたり世界で活躍できる確固たる実力をつける」を継続する。その具体的な施策として、①世界トップ基準への視座向上、②U23年代の海外環境の提案、③指導者の質的向上を進めていく。

①は、世界トップレベルの国際競技会に積極的参戦することを推奨し、国際競技力を高めていこうとする考え方で、これは従来に引き続き取り組んでいくもの。②は、将来的に①でより高いレベルの海外競技会に参戦できるチャンスを逃さないために、国際競技会に出やすいU23年代のうちに海外へ出ていける競技環境・指導環境を提案しようとする取り組みである。

②について詳しく説明すると、まず、U23というところで育成を含めた強化をしていく。私たちは、決してトップだけということではなく、その根幹となるU20、U23を大事にしていきたいと考えている。特にU23年代については、現状で内(国内)に向いている傾向があると考えているので、積極的に海外に出ていけるよういしていきたい。現在、課題解決型という事業(課題解決型アスリート育成パスウェイ構築支援プログラム)で、JSC(日本スポーツ振興センター)の予算を、数千万円の規模でつけることができた。これと陸連の強化予算を合わせて、U23年代を積極的に海外派遣や競技会出場、さらには海外のコーチとの触れ合いも含めて進めていく。

②と並行して進めていきたいのが③である。すでに、選手たちの“武者修行”だけでは戦うことができず、そのコーチたちも「世界はどうであるのか」を見て、学んでいかなければならないところに来ていると考えている。選手が世界のレベルに上がっているのに、指導者がついていけないという状況をつくらないよう、指導者も選手と一緒に、さらに学び、コーチングの資を高めていけるような仕組みを目指す。

特に③の取り組みは、ロス五輪に直結するかはまだわからず、蒔いた種が芽を出すまでには時間がかかるかもしれないが、まずは、ロサンゼルスに向かって進めていく。U23ということでは大学や実業団の指導者が中心となってしまう印象を持つかもしれないが、都道府県や高校など指導にあたっているコーチも含めて、高い水準のスキルを積極的に学んでいこうとする意欲ある指導者が海外へ出ていけるようにしたい。このように、強化育成のほうも含めて、インターナショナルに、ワールドワイドに、グローバルに考えていければと思っている。最終的に目指すのは、世界で戦って、メダルを取ったり入賞したりする日本の選手たちを一人でも多くすること。私たち強化委員会には、この役目が求められている。皆さんの都道府県から預かった選手たちが、最終的に世界選手権やオリンピックで活躍できるところまでの道すじを、私たちが心を一つにして見つけていけるようにしたい。


【国際競技会における抗議事例と傾向について】

次に報告されたのが、「国際競技会における抗議事例と傾向について」です。WA(ワールドアスレティックス)シルバーレフェリー(国際審判)およびWA競技会ディレクターの資格を持ち、東京世界選手権では競技会ディレクター補佐として、WAの審判と日本の審判の調整役を務めた日本陸連事務局の淺田大吾より、情報共有を行いました。

まず、2021年に行われた東京オリンピックにおいて、救済で決勝に進出した事例が非常に多く出た(全体の15%近くに及んだ)が、その後、2022年オレゴン世界選手権からは、救済に対する考え方が厳しくなったことを示したうえで、近年の国際競技会における抗議・救済の傾向として、予選や中長距離など、次のラウンドに人を入れる余地がある場合は救済されることはあるものラウンドが進むにつれて(準決勝など)救済されにくくなり、決勝では、まず救済はされなくなることを挙げました。

さらに、

・特に選手権大会においては、再レースはまずしない。また、タイムレース決勝は、「公平な環境が担保できない」ため選手権では実施しないことを哲学としている。これらはルールブックに記載されていないが、国際審判の研修ではよく説明を受ける、

・接触関係の抗議を行うと、抗議する側の説明に対して審判長は「そういう考え方もできるが、審判長としてこう判断した」と判定を覆すことはなく、「上訴してください」と言われてしまう、

・特に自身のチームの選手に不利益がない場合に他チームの失格を要求すると、スポーツマンシップに欠けていると見做される、
という傾向があることも共有されました。

そして、東京世界選手権の男子400mハードル決勝、男子3000m障害物決勝、男子4×400mリレー予選など、実際に抗議が起きた事象を映像も交えながら示したうえで、判定結果と、その理由を解説。こうした事象や傾向を踏まえて、
・競技者の利益を護るべく、極力「失格」を避ける考え方が強くなっている、

・その一方で、救済に対しては厳格になっており、著しい影響がなければ救済になっていない、

・タフラックな状況を精神的に乗り越えていく経験も必要という考え方がある、

・決勝については、部分的・一部の人間で実施するもの。複数組に分けて実施することは、選手権大会では行わないという哲学がある、

などの観点が国際競技会においてはスタンダードになっていることを示すとともに、「今後、国内ではどうしていくべきなのか。こうした傾向を日本国内の競技運営関係者と共有し、議論していくことが必要」と締めくくりました。




【育成年代の競技会ガイドライン策定について】

育成年代の競技会ガイドラインは、育成年代にある子どもたちが、安心・安全に、長く競技を続けていけるような地盤をつくるために、現行でさまざまな形で重大な課題が生じている競技会システムについて抜本的に見直し、望ましい方向性を示していこうとするものです。
日本陸連では、2025年度中の策定を目指し、ワーキングループを立ち上げて検討・構築を進めてきました。完成したガイドラインは、全国強化責任者会議の翌日(12月17日)に行われた日本陸連理事会において承認され、文書として正式に本連盟公式サイトでも公開されています(https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/guidelines/youth_competition.pdf)。
この会議においては、本ガイドラインの内容が、育成・強化現場の最前線で陣頭指揮を執る全国の強化責任者に正しく伝えることを目的として、まず、強化委員会コーディネーターで、ワーキンググループのメンバーでもある遠藤俊典氏から、以下の形で説明が行われました。

◎育成年代の競技会開催ガイドラインの概要

私たちは、ワーキンググループを組織して、「育成年代の競技会開催ガイドライン」を策定に当たってきた。ここでは、そこで完成させたガイドライン案(注:理事会前の実施であったため、会議実施時点では、「案」として説明が行われた)の概要を配布資料(会議終了後に回収)に沿って説明していく。
資料の冒頭にある序文は、非常に大切な点であるので、読み上げさせていただく。
『陸上競技は、人間の根源的な身体能力を競い合うとともに、自己を磨き、他者と切磋琢磨することで、豊かな人間性と社会性を育む文化的な営みである。特に、競技会は、単に勝敗や記録を競う場にとどまらず、競技者一人ひとりが自らの可能性に挑むことを通して、競技を愛する心やフェアプレイ、相互尊重の精神を育み、スポーツの持つ普遍的価値を体現する重要な舞台である。
日本陸上競技連盟は、「国際競技力の向上」と「ウェルネス陸上の実現」という2大ミッションの達成に向けて、育成年代の競技者が心身ともに健やかに成長し、生涯を通じて陸上競技に親しみ、愛し続けることができる競技環境を提供するため、本ガイドラインを定める。』
今回策定したガイドラインは、この点を期して、出来上がったものである。本連盟では、2018年に「競技者育成指針」(https://www.jaaf.or.jp/development/model/)を設けている。これは、競技者を育成するために、「こういう方向性で考えていく」ということを謳ったものであるが、この指針が実務的な領域…皆さんが参加している現場や、我々が競技する環境のなか…で効力を発揮しているかというと、現実的にはそうではなかった。昨今のさまざまな問題に対応していくために、今後は、本ガイドラインに基づいて、競技会の制度、年間の競技会カレンダー、育成年代の競技者に対する種目設定、競技会の運営方法といった、まさに実務のところにどう結びつけていくかを意図して、ガイドラインを策定することになった。
本会議においては、特にガイドライン内の「2.競技会カレンダーの整備」「3.競技会の形式および運営」について説明を進めたい。


<競技会カレンダーの整備について>

2.競技会カレンダーの整備 ※ガイドラインより抜粋



ここでは1つ目に「健康・安全への配慮」が挙がっている。これは最初に田﨑専務理事からも説明のあった「酷暑下におけるスポーツの在り方」を示したものとなる。近年では、思春期年代に熱中症を起こすことの危険性に関するエビデンスが多く集積されてきていて、特に「思春期年代には、熱中症を呈する人たちが、ほかの年代に比べて多いことがわかってきている。これは、この年代ではヒトの発汗機能が未発達であることが前提としてあるが、同時に、競技力の高さやモチベーションの強さも、熱中症を呈するリスク要因となっていることが、数多くのエビデンスから報告されている。

さらに、近年では、熱中症が、オーバートレーニング症候群に似た症状を引き起こすことがわかってきた。オーバートレーニング症候群は、一度陥ってしまうと、長期的な健康障害に見舞われることで知られているが、これと同様の現象が熱中症においても起きていることが、医学的な研究誌等で報告されている。この点を勘案すると、私たちが大事にしている若い世代の競技者たちに、そういうリスクのある状況で競技をさせたり、トレーニングを強く追い込んだりすることは正しいのだろうかということが議論の的になっている。日本陸連においては、皆さんもご存じの通り、WBGTを基準としたスポーツの安全な行い方に基づいて、競技会開催についてさまざまに工夫されているところだが、このガイドラインにおいても、それを遵守する形で競技会運営を考えることが大前提となっている。

なお、この熱中症が育成年代の競技者にもたらすリスクの詳細については、熱中症に関する情報等を長年研究してこられた伊藤静夫先生(日本陸連評議員)に、「熱射病予防とジュニア競技者育成」という形で論稿を依頼し、本年度内に発行される競技者育成プログラムに掲載されることになっている。現在、執筆に当たっていただいている途中だが、ここでは、育成年代における熱射病・熱中症症状に関連するさまざまなエビデンスを掲載していく予定になっている。発行されたら必ず一読いただき、「こういう現象が、本当に起きているのだ」ということを、より多くの方に認識していただきたいと思っている。

このため、競技会カレンダーの整備に関しては、猛暑日が多いとされる特に7~8月は、競技会の開催を原則回避する(冷涼地域・室内施設・早朝・夜間開催等、安全対策を十分に講じた場合に限り、例外として実施可とする)ことを前提に、競技者、指導者、そして審判など、競技会にかかわるさまざまな人々の健康・安全に配慮した競技会カレンダーをつくり上げていくことが示された。

・競技機会の均等化
2つめに挙げているのが、「競技機会の均等化」。年間を通じて、あらゆる競技レベルの選手たちが、公平に競技機会を得られるようにするというものである。その前提として、過密日程や試合数の多さや少なさなどの適正化を、できるだけ図っていこうとしている。
ここでは、2つめに全国大会の意義や在り方、地域大会の意義や活性化、さらには両者の連携を図ることも明記されていて、先ほど山崎強化委員長が述べたように、「日本陸連として、より多くの人たちが日本代表選手となり、そして国際大会で活躍していくことを目標としたときに、今の育成年代の競技会における全国大会や地域大会が、どのようになっていけば実現するのか」を考えていく材料になるようガイドラインが設定されている。


<競技会の形式および運営について>

3.競技会の形式および運営 ※ガイドラインより抜粋



この章では、、「では、具体的に、競技会の形式および運営は、どのようにしたらよいのだろう」ということに考えを及ばせていったものとして理解していただきたい。ここでは、競技者育成指針にも書かれていることの具体化を目指そうということで、育成年代の特性を考慮して、オリンピック種目のみに限定せず、多様な種目を適切に、かつ柔軟に設定することによって、タレントトランスファーの価値や競技の適切な負荷設定などを意図した内容になっている。具体的には、種目数の制限やラウンド数、試技数などを適正化したり、1日あるいは試合期間の競技時間の短縮を図ったりすることを想定している。

また、ここでは、競技運営を簡素化することも盛り込まれている。先ほど田﨑専務理事からインターハイの会期について、全国高体連においては当面は夏の長期休業期間に実施する方針のままであることが報告されたが、仮にこのガイドライン通りに、日本陸連が主催する競技会は夏に開催しないとなった場合には、学業との両立等々も考えると、競技期間や競技時間を短縮し、負荷を小さくしていくべきだろうという考えに基づいて、ガイドラインに盛り込まれた。


<社会の情勢に応じて、柔軟に改善していくことが前提>

このほか、「育成に資する競技環境の整備」および、「競技会の安全管理」について、それぞれに詳しく示されている。さらに、最後の章の「競技会の評価と改善」においては、現時点で想定していることが必ずしもすべてであるといものではないことも示している。社会情勢の変化のほか、さらなる少子化や気候変動も見込まれるなか、そうした変化に対応しながら、柔軟に評価と改善を行っていくことを、ここでは盛り込んでいる。
本会議では、このあと育成年代の競技会開催時期と種目設定についてのグループディスカッションを行っていただく。まずは、ここで説明した「競技会カレンダーの整備」「競技会の形式および運営」についての理解を深めていただいたうえで、グループディスカッションに臨んでいただきたい。


【育成年代の競技会開催を見直すことの必要性】



この育成年代の競技会ガイドラインに関しては、すでに、12月4日~7日に実施したU20オリンピック育成競技者の指導者研修でも、テーマとして取り上げられるなど、日本陸連では、非常に重要な内容と位置づけています。ここでは、より多くの人に認識・理解を深めてもらうことを意図して、強化委員会で強化育成部を統括する杉井將彦シニアディレクターが登壇し、さらに踏み込む形で補足説明を行いました。各氏が述べた概要は、以下の通りです。

・熱中症の恐ろしさへの正しい認識を

熱中症は、今や酷暑化が進む日本において、社会的な問題となっており、学校現場でもいろいろな視点から制限が入るなど、対策がとられるようになっている。しかし、一方で、海水浴場で紫外線を避けてテントで涼をとっていた人に熱中症が多発するなど、思いがけない場所で数が増えていることをご存じだろうか。このように、私たちが大丈夫と思っているところや、当たり前に過ごしてきていたところに、実は落とし穴があるかもしれない。

自身の失敗談を述べたい。2023年2月にオーストラリアで世界クロスカントリー選手権が行われ、この大会に帯同した。このときは、当時指導していた選手も代表に選ばれていたのだが、少し早めに入ってカテゴリの低い大会で1レース経験しておくか、それとも世界クロカン後に高いカテゴリの大会を転戦するかの選択で後者を選び、真冬の日本から真夏のオーストラリアに移動して数日間の準備で世界クロカンに出場するミスを犯してしまった。

現地に入ってみて、他国の選手がアイスベストを着用してウォーミングアップを実施したり、フィニッシュ地点の先に数十台のアイスバスが並べられたりしているのを見て、自身が暑熱対策をほとんどとっていなかったことに気づき、「まずい」と思った。日本人は暑さに強いと言われたりもしているが、暑熱順化できていなければ対応することができないからである。結果として、自身の教え子も含めて、複数の代表選手が熱中症を起こし、救急搬送された者も出てしまった。競技力や意識レベルの高い選手ほど、自身を追い込めてしまえるゆえに重症化してしまうのである。症状に見舞われた選手たちは、その後、回復したように見えているが、それ以前のパフォーマンスには戻っていない。これが、もしかすると後遺症の影響かもしれないと考えることはできないだろうか?

私が勤務していた学校では、ある生徒が熱中症で命を落としている。このときは症状を起こして倒れた翌日に意識を取り戻し、いったんは回復に向かったと思われていたのに、その半年後に多臓器不全で亡くなっている。このときに医療機関とやりとりするなかで、ある医科大学の附属病院では、過去に引き受けた熱中症の重症患者10例のうち、生還できたのは生体肝移植を行った患者1名のみだったという話も聞いた。重症になったときに、ほぼ生還しないのが熱中症なのである。今までに私たちが考えていた以上に、命にかかわる深刻なものであることが理解できれば、暑熱下の競技会に対する向き合い方は変わってくるはずである。


・中学校部活動の地域展開は、数年後の陸上の形を変える

私は、昨年度で高校の教員を退職して、現在は、陸上クラブで指導を行っている。そのなかで、肌で感じている中学校部活動の地域展開について話をさせていただきたい。義務教育である中学校での地域展開は、非常にスピード感のあるなかで進んでいる。これは、「変える」ことが決まってしまっているからで、すべてが「変える」スタンスで話が動いている。これに比べて、高校の現場はどうか。文科省が「変える」範疇の限りではないとしていることで、現時点では高校には関係のないことのように受け止められているが、実際はそうではない。

中学校で地域展開したなか陸上に取り組んできた子どもたちが、高校に進んだときには、今までとは違う形、つまりは学校から離れた形で陸上競技にかかわっていくことになる。それがどういうことなのかを考えることは、すごく大事になってくる。

自身の経験を述べるなら、4月にクラブチームを立ち上げ、メディア等でも取り上げていただいたにもかかわらず、最初の1カ月間の加入者はゼロだった。学校部活動なら陸上部さえあれば、入学してきた生徒のなかから必ず一定数の希望者が入ってくるし、有望な生徒を体育の授業で見つけたら声をかけることもできる。しかし、それらは学校から離れてしまうと全く違ってしまうのである。現在、ゼロだった加入者は、ようやく42名まで増えたが、一番大きく動いたのは東京世界陸上の直後。つまりこの大会で陸上が注目されたことが要因となったわけだが、この現象は、今後、いろいろなところで起きることなのではないか。少子化が進み、これから陸上に取り組む子どもの競技人口は必ず減っていく。そのなかで、どう確保するのか。私たちは今度、今まで通りにはならないという覚悟を持って、違う形を確保していくことに取り組んでいかなければならないと思っている。


・日本一、世界一につながっていないインターハイの勝ち方

インターハイは、とても大事な大会。私自身も、インターハイで勝つために一所懸命に頑張ってきた。しかし、インターハイと世界を目指す大会とでは、勝つために求められるものが違っている。何が違うのかを考えると、世界選手権で求められているのは1本に対する出力。1つのレースに対して全力でどのくらい臨めるか。これを欧米やアフリカの選手たちは、幼いときから取り組んできている。「強度」「激しさ」を意味するインテンシティ(Intensity)と呼ばれる言葉は、サッカーなどでは普通に使われているが、日本の陸上競技ではあまり用いられておらず、逆に陸上でインターハイに勝つためには、90~95%でどれくらいやり続けることができるかとか、連続して何回かレースをやったあとに結果が出せるかとかいうようなことが求められる状況になっている。

高校の教員をやっているときには、インターハイで勝つ方法を考えて頑張ってきた。しかし、400mで日本選手権のタイトルを取ろうとやり方を変えて取り組み、2年連続で異なる選手が優勝を果たしたとき、その2選手は2人ともインターハイで負けている。敗因は、指導者である私の指導の仕方であると受け止めているが、もし、インターハイの先に日本選手権があり、日本選手権の先に世界選手権やオリンピックがあるのなら、同じ物差しで同じトレーニングに取り組んで成長していくことは可能なはずで、日本選手権で勝っているのならインターハイで勝つこともできるはずだったのではないかと考えている。


・80年ぶりに新しいものをつくるチャンス

インターハイは、2025年に第78回大会が行われた。戦後4年目がスタートしたという長い歴史を持ち、私たちはそのなかにどっぷり浸かってきたことで、「それが当然」と思い込んでしまっている。しかし、現在行われている地区予選大会の全11ブロックの根拠は、いったいどこにあるのか? 約80年近い前に誰かが決めたことだが、各地区の人口あたりで考えたときに、この出場枠は公平なのだろうか? もともと80年前に始まった段階のインターハイは、戦後の復興と青少年の健全育成をメインに据えていたのだろうが、国内競技会については、目指す目的に即して、戦略的に、しっかりとシステムを考えていくべきだと考える。先ほども述べたように世界選手権やオリンピックで選手が結果を出すことが、今後、競技人口を支える、非常に重要なポイントなるということであれば、今あるインターハイの在り方を変えていくことも一つの手ではないか。

北海道は、人口あたりのオリンピアンの輩出数は1番で、陸上でも非常にたくさんのオリンピアンが北海道から出ている。いったい、ほかの地域と何が違うのか? 競技環境をみると冬は寒く、雪で閉ざされるところもあるし、非常に広大であるゆえに移動にも苦労するなど、不利な部分が非常に多いのだが、唯一、ほかと違うのは、インターハイ路線で1試合少ないということ。

このあとに行っていただくディスカッションでは、例えば、この点をヒントとして、「もし、近畿6府県で1試合少なくしたら、もしかしたら、オリンピアンの数は変わるのではないか?」というように、いろいろな可能性をイメージしながら意見を出していただければと思う。「現状がこうだから、これしかない」というような捉え方では、これからはうまくいかなくなると思っている。考え方を変えるなら、私たちは「80年ぶりに新しいものをつくるチャンス」をいただけているということ。思いきったアイデア、斬新な意見を、どんどん出していただきたい。




【グループディスカッション:育成年代の競技会開催時期と種目設定を考える】

「育成年代の競技会ガイドライン」の説明および杉井シニアディレクターの補足説明を受けたのちに、会場ではグループディスカッションが行われました。司会者から、「この点に関しては、ワーキンググループでも検討を進めているが、より多くの意見をいただき、今後、展開していくことに反映していきたいと考えている」という意図が伝えられたのち、出席した加盟団体(都道府県陸協)の各強化責任者は、北海道・東北、南関東、北関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、北九州、南九州と、インターハイ地区大会の実施構成に準じる(1地区のみとなる北海道は、東北地区に合流)形で10のグループに配分。

①仮に6月にインターハイが開催されるとなった場合、各都道府県大会(実施されている場合は支部大会を含む)や地区大会の時期をいつするか、

②①の変更に合わせて、インターハイの参加資格をどうするか、

という2つの課題について、「自身の都道府県・地区の場合」を想定してディスカッションしていくことになりました(日本実業団連合、日本学連、高体連陸上競技専門部、中体連競技専門の協力団体からの参加者は、各グループに分かれてディスカッションに加わる形です)。

発表では、その地区ならではの気象条件の課題や、現行の地区大会の構成に対する負担なども含めて、数多くのリアルな声が提示され、さまざまな意見が共有されました。

これらの発表を受けて山崎強化委員長は、「議論をすることが大事。私たちが一番危惧しているのは、“繰り返しを行いながら長年続けることが、停滞につながる”という点。これは、コーチングやトレーニングの観点でもいえることである。どの段階でも、“攻略法”というのがありすぎるのは良くないので、何回か更新されることで、その攻略法が変わるようにしたほうが望ましいのではないかと考えている。昔からずっと続いているこの繰り返しが、“ガラパゴス”までいかないにせよ、もしかしたら、それに近いことが起こっているのではないかと疑っていただきたい」とコメント。さらに、競技運営面や大会に必要となる費用の問題、審判員の確保など、競技会を支える側面でも困難が増えていることを指摘したうえで、「どの点についても、なかなか答えが出せることではないわけだが、現実の社会情勢がどうなのか、この先どうなるのかを見据えて、いろいろなシミュレーションを考えていくようにしたい」と述べました。

そのうえで、「私は、インターハイは大事だと思っているし、絶対になくてはならないと思っている。しかし、中学校では、現状で、全中(全日本中学校選手権大会)をなくそうという意見も出てきたりしていて、“高校(インターハイ)は大丈夫”と思っていても、この先どうなるかは本当にわからない」ときっぱり。国民スポーツ大会(国スポ)を例に挙げて、「すでに是非が問われるようになっており、知事によっては不要とする声を上げているケースも出ている。このようにスポーツを取り巻く環境は、大きく変わろうとして、陸上としてきちんとやっておかないと、その流れに乗って全部潰されてしまう可能性も十分にある。独自でもいいので、“陸上は、こう考えて、こうやっていく”と先を見据えながら生き残っていけるようにしたいというのが、この件の根本にある考え方」と訴えました。

「インターハイの会期を変えるとなったら、発表でも指摘があったように、ほかのカレンダーも変えていく必要が出てくる。それも含めて、全体を変えていきたいということ。部活動が中学校でなくなるというところは、逆に言えば、“変えていかなければならない”チャンスかもしれない。そう捉えて、頑張って議論を進めていきたい。“陸上競技を良くしたい”と思っているのは皆同じ。せひ、ご理解いただきたい」と述べて、ディスカッションの時間を締めくくりました。


【暑熱対応について】

もう一つ、報告がなされたのは、暑熱問題に関する対応についてです。この会議の実施に際してとったアンケート内で、「各都道府県陸協で開催される大会はどうなるのか」「協力団体が開催する競技会はどうなるのか」といった意見が多く上がっていたことから、2025年度に行われた対策やそこでの実態、そして2026年度に向けての方針等について、日本陸連強化部の磯貝美奈子部長より改めて説明が行われました。


・暑熱環境下における対応の方針について

日本陸連では、暑熱環境下における競技会および活動について、2025年3月の理事会において、「WBGT31度以上で運動は原則中止とする」という日本スポーツ協会のガイドラインに沿って競技会を運営すること、特にこのガイドラインに触れる可能性の高い7~8月については、WBGT31度にならない環境、暑熱の回避が明確に認められる場合を除いて大会を主催しないこと、また、競技会中にWBGT31度以上になった場合は運動を原則中止・中断することを決定した。さらに、陸上という競技特性から、医事委員会、科学委員会などの専門的な知見も加味して、具体的な対策・対応を、各団体や競技会運営の関係各所と話し合ってきた。


・2025年度に講じた暑熱対策と現場での実情

そして、6月には2025年度の主催競技会における暑熱対策を、本連盟ホームページにおいて発表した(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202506/19_102652.pdf)。2025年度は、その段階ですでに競技会カレンダーが決定・公開されていたことから、開催時期の変更ができない競技会においては、可能な限りの暑熱対策を講じて実施することとして、本連盟主催大会としては日本選手権、日本選手権混成競技、インターハイ、全中などを行った。

実際には、そうした対策を講じても、各競技会において、選手だけでなく、審判やその他の人々など、多くの熱中症が発生している。また、猛暑下での競技会運営は、選手をはじめとする参加者、運営団体に大きな負担を強いることとなった。

競技場やサブトラックのWBGTについては、皆さんも十分にご存じとは思うが、31度どころか33度、ひどいときには35度を超えるようなことも少なくなく、実際に競技場に立ってみて、過去とは異なる暑さの状況にあることを改めて実感することとなった。また、熱中症を発症した選手、審判や補助員の様子を目の当たりにして、「これは、なんとか防いでいかなければならない」と強く感じたし、各地各所からも同様の声が陸連に寄せられた。


・2026年度における暑熱対策の方針について

2026年度以降の主催競技会における暑熱対策については、10月にウェブサイトに改めて掲載した(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202510/syonetsu-2026.pdf)。来年度の競技会日程を決めるにあたり、改めて検討に加えていただきたいという思いから用意した。
考え方としては、2025年3月の理事会で決議内容から相違や変更はない。さらに、各都道府県が自身の主催競技会を行う際に、どう規制したり実施したりすればよいのかという声も届いたため、11月末に都道府県陸協を含む加盟団体・協力団体に向けて、「暑熱対策に関する加盟団体・協力団体へのご案内」という文書を送付した。そこでは、陸連主催競技会における方針の再確認に加えて、スケジュール設定の工夫やWBGTを用いたリスク評価をしていただきたいこと、救護体制、給水・冷却設備の強化をすることや関係者の周知徹底など、具体的な対応のポイントもいくつか提示させていただいた。そのうえで、「都道府県および地域選手権等、各団体が主催する競技会においては、各主催団体の責任において、この方針および趣旨に沿った対策と対応を講じ、開催の可否や競技時間等の変更について、地域の実情を踏まえた自主的な判断を行ってほしい」とお伝えしている。

本連盟としては、各団体、各地の各競技会におけるすべての人々の安全と健康を最優先とした競技会の設定をお願いしたいと考えている。皆さまには、本日の会議の内容と併せて、この暑熱対策についても各団体、各所属に持ち帰っていただき、選手をはじめ陸上にかかわる人々の健康・命を預かる指導者の責任として、競技会においては主催者責任として、引き続き安全の徹底をお願いしたい。


◇ ◇ ◇


これらのほか、2026年度に予定されている主要な国際競技会の日程が報告されたほか、2026年に青森で開催される国民スポーツ大会の競技日程について、最終確定ではないことを前提として実施案が共有されました。また、各団体の強化関係者が合宿等で活用することの多い味の素ナショナルトレーニングセンターについても、例年同様に利用上の留意点が担当者より説明が行われ、会議が終了しました。

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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