2025.06.05(木)大会

【クミ2025アジア選手権】山崎一彦強化委員長 総括コメント



クミ2025アジア陸上競技選手権大会が、5月27~31日に韓国・亀尾(クミ)市の市民競技場で行われました。隔年で実施されるこの大会で、日本は、合計28(金5、銀11、銅12)のメダルを獲得する成績を残しています。大会の全日程が終了した5月31日、日本選手団のチームリーダーを務めた山崎一彦強化委員長がメディアの取材に応じ、大会を総括しました。要旨は、以下の通りです。

今大会は、金5、銀11、銅12と、全部で28のメダルを獲得した。前回大会(金16、銀11、銅10:計37)に比べると、金メダルがかなり減る結果となっているが、これは、前回大会で中国が一線級を出してこなかった点が大きな要因ともいえ、アジアにおける戦況としては、通常の状態に戻ったのかなと感じている。
中国は、今大会において、ほとんどの種目で、世界レベル(メダルあるいは入賞者レベル)の競技者を1人選出し、あともう一人は若手の競技者を連れてきていた。また、全く世界に届かない種目に関しては、若い競技者を出しており、かなり戦略的な派遣をしていることが印象に残った。
日本の場合は、基本的には、世界選手権(出場)を狙えるような人たち、あるいは世界選手権に出場したい人たちが出場している。選考基準や出場できる権利といったバックグラウンドが違うこともあり、中国のような戦力的な派遣は日本では難しいが、強豪といわれる国がそうした対策をとっていることを認識することができた。

日本選手のなかで高く評価できるのは、世界レベルの記録を残した男子200mの鵜澤飛羽(JAL)と男子110mハードルの村竹ラシッド(JAL)。この2人は、世界選手権参加標準記録(200m20秒16、110mハードル13秒27)を、勝負が重視されるこういう大会でも切ってきており、ある一定水準以上の記録を出し、そのうえで優勝できていることは高く評価できる。世界選手権でも、かなり期待ができるのではないかと感じた。

また、自己新記録は、鵜澤と男子やり投の﨑山雄太(愛媛競技力本部)の2人がマークした。男子やり投については、世界的なレベルの強豪が多く出場していたが、そのなかで自己ベストをマークして、銅メダルを獲得したことは、素晴らしい結果だったといえる。
女子では、400mの松本奈菜子(東邦銀行)が金メダルを獲得した。5月初旬にマークしている自己記録(52秒14)には、わずかに届かなかったが、彼女のこれまでの競技キャリアを振り返ったとき、高校生のときに一度、日本選手権優勝を果たしたものの、大学時代はかなり苦戦し、社会人になってから、「400mを究める」ということで、この種目で多くの選手を育ててきた故川本和久氏のもとで、力をつけてきた選手。川本先生が亡くなったあとは、吉田真希子氏がその志を引き継いで指導にあたってこられたわけだが、そうしたなかで松本が着実に実力を高め、アジアチャンピオンの座を手にしたことは、選手、コーチともに、非常に価値のあることだったと思う。

フィールド種目は、中国が世界大会入賞レベルを多く派遣していたこともあり、かなり苦戦する形となった。しかし、そのなかで、銀メダル、銅メダルをしっかり獲得していたところはよかったのではないかと思う。同様に苦戦した印象があるのは長距離。国内の戦術と国外の戦術が全く違う形になっている状況であるため、その一貫性について、一度改めて検討していく必要がある。日本国内のレースでは、ペースメーカーを使って記録を出していくことを戦略として採ってきたわけだが、ただ、国外でのこうした「負けられない戦い」において、「記録も出さなければならない」となると、自分で(レースを)つくる、あるいは引っ張っていかなければならないわけで、国内レースとの矛盾が生じてしまう。ここは強化のなかで、これから考えていかなければならないこと。例えば、駅伝などチームとしてトータルで戦うことを目指すのか、あるいは個人としてきちんと勝ち、オリンピックや世界選手権で活躍していくことを目指すのか、どこにゴールセッティングをするのかは、もう少し差別化をするなどしていかないと、世界の流れからはどんどん後れていってしまうと感じた。

また、今回は、私たちが国際競技会における活躍の指標としている「自己記録に対する達成率」は、全般にやや低い結果となった。ただ、今大会は5月の開催で、前回(7月中旬)に比べるとかなり早い日程であったことや、屋外シーズンがスタートして日本グランプリシリーズをはじめとする各大会が続いてきたなかでの最後の大会となっていることも、その理由として挙げることができよう。ピークとなる世界選手権が、今年は9月中~下旬と通常よりも会期が遅いことを考えると、今、ピークを迎えてしまうと、その後が難しくなってしまう。もちろん、今回の結果は、それぞれに内容的なところをきちんと精査していくことは必要となるが、自己記録達成率だけでは評価することは難しいと考えている。

チームジャパンとしては、これからは世界選手権に向かっていくことになる。この大会を戦った選手も、すぐに帰国して国内大会に臨んだり、海外の競技会に出場したりしていくスケジュールで動いている者は多い。ハンマー投の福田翔大(住友電工)や円盤投の湯上剛輝(トヨタ自動車)などは、海外遠征のため、すでに当地から旅立っている。これまでなかなか海外競技会に出ていくことが難しかった投てき種目においても、「世界で戦う」という目線を持って、挑戦していく選手が増えてきていることは良いこと。そういった戦略を採ることができるようになっているのは、今後の明るい材料になっていくと思う。

今大会では、残念ながら、競技中に大きなケガに見舞われた選手が2名出てしまった。男子十種競技の丸山優真(住友電工)は2日目の110mハードル直前に転倒して首を痛めたが、帰国後の検査でも首のほうには異状はなかったと報告を受けており、あとは脳しんとうの影響がないかの精密検査を行うことになっている。また、女子棒高跳の諸田実咲(アットホーム)は両手首を骨折して、今後、治療が必要で、少し時間がかかる可能性があると聞いている。2人ともワールドランキングによる出場が見えている状況であるだけに、1日も早い回復を祈りたい。(談)

※本内容は、現地時間の5月31日、日本選手団の競技終了後、囲み取材に対応した際の山崎強化委員長のコメントをまとめました。より明瞭に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:ⒸTakashi OKUI photography

【クミ2025アジア選手権】大会情報

>>https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1945/


■【アジア選手権】日本代表選手一覧
https://www.jaaf.or.jp/files/competition/document/1945-6.pdf
■【アジア選手権】日本代表選手選考要項
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202408/21_161210.pdf
■【東京2025世界陸上】日本代表への道:参加資格有資格者はこちら
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