8月1日から始まったパリオリンピックの陸上競技は、全体でも最終日となった8月11日の午前に行われた女子マラソンで、11日間にわたる戦いの幕を閉じました。日本陸連は、全競技終了後に囲み取材形式での総括会見を実施。トラック&フィールド種目に関しては、山崎一彦強化委員長(陸上日本選手団監督)が対応し、今大会の成績、評価、今後の課題等について述べました。山崎委員長のコメント要旨は、下記の通りです。
▼パリ2024オリンピックリザルトはこちら
メダルとしては、女子やり投の北口榛花(JAL)が昨年(のブダペスト世界選手権)に続いての金メダル。大会前半は、入賞を積み重ねていったものの一つもメダルがない状況が続いていて、少し寂しい感じがあったなか、トラック&フィールド種目の最終日での獲得だった。入賞10は戦前を含めると史上最多タイで、近年での最高成績だった東京大会(入賞7)を上回るもの。これに北口が2004年アテネ大会(金2)以来となる金メダルを獲得したことで、メダルは1つであったものの、前回の東京大会(メダル2、入賞7)に勝るとも劣らない素晴しい成績になったと言うことができる。近年の成績では、マラソン、リレー、競歩、さらには室伏広治のハンマー投など、ある程度限られた種目でのメダル獲得が続いていたが、今回は、北口が女子トラック&フィールド種目で初の金メダル獲得を果たしたほか、さまざまな種目から入賞者を出すことができている。日本として、「まさに陸上競技ができた」ということが言え、それが今回の最大の収穫だと思う。
個々の成績を見ていくと、史上初は、先にも挙げたようにまず北口の女子トラック&フィールド種目での金メダルと、男子110mハードルで5位となった村竹ラシッド(JAL)の、この種目における初入賞および男子トラック個人種目最上位という成績。また、三浦龍司(SUBARU)の男子3000m障害物の連続入賞、赤松諒一(SEIBU PRINCE)の男子走高跳における史上最高タイとなる5位入賞など、個々の成績も含めて質の高いものだったと思う。
自己新記録を出すということも、とても大事なところである。今回は、男女各マラソンで入賞した赤﨑暁(九電工)と鈴木優花(第一生命グループ)、男子100mのサニブラウンアブデルハキーム(東レ)、男子走高跳の赤松、そして男子4×400mリレーが達成、また女子1500mの後藤夢(ユニクロ)が自己タイ記録をマークした。(決勝進出に僅かに届かなかった)サニブラウンなどは惜しいところもあったが、「自己ベストを出してきちんと戦う」というのは、私たちがずっと目指してきたことだった。どうしても大きな大会になると記録を下げてしまうというところから、大舞台できちんと記録を出せる選手が出てきたことは、新たに出てきた良い傾向だと思う。
世界大会出場については、私たちも、ここまではワールドランキング(でターゲットナンバー内に入ること)も気にしていたのだが、今大会、世界の状況を見てはっきりしたのは、「参加標準記録を切らないと、(本番では)戦えない」ということだった。去年あたりから世界レベルの記録水準は上がってきていたが、今回は気候や競技場の条件が良かったことも相俟って記録が全体的に上がる形となっている。その傾向は、強化としては予測できていたが、もしかすると参加標準記録に届かない層の選手・関係者は、認知できていない可能性もある。この認識を共有し、トップリストを正確に認識し、自分がどのくらいの位置にいるのかを把握し、世界大会に出場して戦うための道すじを、もう少し考えてもらうようにすることも必要だと感じている。
来年、自国の東京で開催される世界選手権、そして次のオリンピックとなる2028年ロサンゼルス大会に向けてということになると、参加標準記録を出すくらいの実力を持っていないと、本番で戦うのは厳しくなってくるのかなと思う。今後は、すべての種目で参加標準記録を突破していくことを目指しながら、全体的にやっていけるようにできればと思っている。
※山崎強化委員長の総括に関する内容は、8月11日に、現地で実施した囲み取材において、山崎一彦強化委員長が発言した内容をまとめました。より明瞭に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト
▼パリ2024オリンピックリザルトはこちら
◎山崎一彦強化委員長(日本選手団監督)
今回は、金1、入賞10、プレイシングテーブル15位ということになった。メダルとしては、女子やり投の北口榛花(JAL)が昨年(のブダペスト世界選手権)に続いての金メダル。大会前半は、入賞を積み重ねていったものの一つもメダルがない状況が続いていて、少し寂しい感じがあったなか、トラック&フィールド種目の最終日での獲得だった。入賞10は戦前を含めると史上最多タイで、近年での最高成績だった東京大会(入賞7)を上回るもの。これに北口が2004年アテネ大会(金2)以来となる金メダルを獲得したことで、メダルは1つであったものの、前回の東京大会(メダル2、入賞7)に勝るとも劣らない素晴しい成績になったと言うことができる。近年の成績では、マラソン、リレー、競歩、さらには室伏広治のハンマー投など、ある程度限られた種目でのメダル獲得が続いていたが、今回は、北口が女子トラック&フィールド種目で初の金メダル獲得を果たしたほか、さまざまな種目から入賞者を出すことができている。日本として、「まさに陸上競技ができた」ということが言え、それが今回の最大の収穫だと思う。
個々の成績を見ていくと、史上初は、先にも挙げたようにまず北口の女子トラック&フィールド種目での金メダルと、男子110mハードルで5位となった村竹ラシッド(JAL)の、この種目における初入賞および男子トラック個人種目最上位という成績。また、三浦龍司(SUBARU)の男子3000m障害物の連続入賞、赤松諒一(SEIBU PRINCE)の男子走高跳における史上最高タイとなる5位入賞など、個々の成績も含めて質の高いものだったと思う。
自己新記録を出すということも、とても大事なところである。今回は、男女各マラソンで入賞した赤﨑暁(九電工)と鈴木優花(第一生命グループ)、男子100mのサニブラウンアブデルハキーム(東レ)、男子走高跳の赤松、そして男子4×400mリレーが達成、また女子1500mの後藤夢(ユニクロ)が自己タイ記録をマークした。(決勝進出に僅かに届かなかった)サニブラウンなどは惜しいところもあったが、「自己ベストを出してきちんと戦う」というのは、私たちがずっと目指してきたことだった。どうしても大きな大会になると記録を下げてしまうというところから、大舞台できちんと記録を出せる選手が出てきたことは、新たに出てきた良い傾向だと思う。
世界大会出場については、私たちも、ここまではワールドランキング(でターゲットナンバー内に入ること)も気にしていたのだが、今大会、世界の状況を見てはっきりしたのは、「参加標準記録を切らないと、(本番では)戦えない」ということだった。去年あたりから世界レベルの記録水準は上がってきていたが、今回は気候や競技場の条件が良かったことも相俟って記録が全体的に上がる形となっている。その傾向は、強化としては予測できていたが、もしかすると参加標準記録に届かない層の選手・関係者は、認知できていない可能性もある。この認識を共有し、トップリストを正確に認識し、自分がどのくらいの位置にいるのかを把握し、世界大会に出場して戦うための道すじを、もう少し考えてもらうようにすることも必要だと感じている。
来年、自国の東京で開催される世界選手権、そして次のオリンピックとなる2028年ロサンゼルス大会に向けてということになると、参加標準記録を出すくらいの実力を持っていないと、本番で戦うのは厳しくなってくるのかなと思う。今後は、すべての種目で参加標準記録を突破していくことを目指しながら、全体的にやっていけるようにできればと思っている。
※山崎強化委員長の総括に関する内容は、8月11日に、現地で実施した囲み取材において、山崎一彦強化委員長が発言した内容をまとめました。より明瞭に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト