８月１日（木）から11日（日）の11日間、フランスの首都パリを舞台に「第33回オリンピック」が開催される。
日本からは、24種目に55名（男子35名・女20名）の代表選手が出場し、世界のライバル達と競い合う。
現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する全24種目に関して、「記録と数字で楽しむ2024パリオリンピック」をお届けする。
なお、これまでにこの日本陸連ＨＰで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では世界選手権についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。
記録は原則として７月21日判明分。ただし、エントリー記録などは五輪参加標準記録の有効期限であった24年６月30日現在のものによった。
現役選手の敬称は略させていただいた。
200ｍから1500ｍにおいて、予選で落選した選手による「敗者復活戦」が導入され、これによって予選で敗退した何人かが復活して準決勝に進出できることになった。
ただ、各種目での敗者復活戦の組数や何人が準決勝に出場できるのかなどの条件がこの原稿執筆時点では明確にされていない。よって、トラック競技の予選・準決勝の競技開始時刻のところに示した通過条件（○組○着＋○）は、「敗者復活戦」がなかったこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、パリではこれとは異なる条件になるはずだ。
日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてほとんどふれていない。日本人の出場しない各種目の展望などは、陸上専門誌の８月号の「パリ五輪観戦ガイド」や今後ネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。
大会期間中は、日本陸連のＳＮＳ（Ｘ＝旧Twitter orFacebook）で、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。
現地と日本の時差は、７時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけての競技である。
猛暑の中での睡眠不足にどうぞご注意を！
女子100ｍハードル
（実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間）・予 選 ８月７日 17:15（７日 10:15） ５組４着＋４
・敗者復活戦８月８日 10:35（８日 17:35） ●●●●
・準決勝 ８月９日 19:05（９日 12:05） ３組２着＋２
・決 勝 ８月11日 02:25（10日 19:45）
福部・田中が揃って準決勝進出ならば五輪史上初
23年ブダペスト世界選手権の代表入りを０秒03差で逃し悔し涙を流した福部真子（日本建設工業）が嬉しい五輪初出場。五輪参加標準記録12秒77を日本選手権の準決勝でクリアする12秒75（＋0.8）をマーク。決勝でも２位に０秒03差で優勝してパリ行きを内定させたのだった。エントリー記録の12秒75は、40名中の32位。７月20日の実学対抗では自己の日本記録12秒73（+1.1／22年）を更新する12秒69（+1.2）をマークし気持ちよくパリに乗り込む。世界選手権には、22年オレゴンに出場し準決勝で12秒82（+0.9）の当時の日本新をマークした。もうひとり、日本選手権で２位だった田中佑美（富士通／エントリー記録＆自己ベスト12秒85＝24年）はワールドランキング39位でターゲットナンバー「40」に滑り込んで出場権を得た。23年ブダペスト世界選手権に続き２大会連続の世界大会だ。
タイトルの通り、２人が揃って準決勝に駒を進められれば、五輪では史上初。世界選手権では22年オレゴンで福部と青木益未（七十七銀行）が準決勝に進んだことがある。
◆五輪＆世界選手権での日本人最高成績と最高記録◆
＜五輪＞1968年までの80ｍＨでは、
「最高成績」
1964年 ５位 10.72（＋2.3）依田郁子（リッカー）＝正式記録は10分の１秒単位の「10秒７」
1972年からの100ｍＨでは、
「最高成績」
2021年 準決勝１組６着 13.06（－0.8）寺田明日香（ジャパンクリエイト）
「最高記録」
12.95（＋0.3）寺田明日香（ジャパンクリエイト）2021年 予選５組５着
＜世界選手権＞
「最高成績」
2022年 準決勝２組６着 13.04（－0.1）青木益未（七十七銀行）
「最高記録」
12.82（＋0.9）福部真子（日本建設工業）2022年 準決勝１組８着 ＝日本新
福部が当時の日本新をマークした22年オレゴンの準決勝１組１着のトビ・アムサン（ナイジェリア）の12秒12は６年ぶりの世界新で、現在も世界記録だ。
◆世界選手権＆五輪での決勝と準決勝に進めなかった最高記録◆
世界選手権が始まった1983年以降の五輪と世界選手権での「決勝に進めなかった（準決勝で落選）最高記録」と「準決勝に進めなかった（予選で落選）最高記録」は、以下の通り。一次予選・二次予選があった時は、二次予選の記録を記載した。また、五輪を含む12年からの至近９大会については、予選と準決勝を最も遅いタイムで通過した選手の記録をカッコ内に示した。| 年 | 準決落最高 | 予選落最高 |
|---|---|---|
| 1983 | 13.08 | 13.21＝二次予選 |
| 1984五輪 | 13.20 | 13.72 |
| 1987 | 13.04 | 13.40 |
| 1988五輪 | 12.93 | 13.32＝二次予選 |
| 1991 | 13.02 | 13.29 |
| 1992五輪 | 13.14 | 13.31＝二次予選 |
| 1993 | 12.96 | 13.41 |
| 1995 | 12.87 | 13.13 |
| 1996五輪 | 12.70 | 12.78＝二次予選 |
| 1997 | 12.91 | 13.07 |
| 1999 | 12.83 | 12.96＝二次予選 |
| 2000五輪 | 12.92 | 13.11＝二次予選 |
| 2001 | 12.78 | 13.13 |
| 2003 | 12.87 | 13.29 |
| 2004五輪 | 12.60 | 13.01 |
| 2005 | 12.85 | 13.17 |
| 2007 | 12.80 | 12.94 |
| 2008五輪 | 12.86 | 12.99 |
| 2009 | 12.76 | 13.23 |
| 2011 | 12.86 | 13.28 |
| 2012五輪 | 12.75(12.83） | 13.10(13.51) |
| 2013 | 12.82(12.78） | 13.24(13.33) |
| 2015 | 12.86(12.86） | 13.13(13.14) |
| 2016五輪 | 12.86(12.82） | 13.01(13.04) |
| 2017 | 12.87(12.86） | 13.14(13.15) |
| 2019 | 12.78(12.65） | 13.11(13.14) |
| 2021五輪 | 12.69(12.67） | 13.03(13.04) |
| 2022 | 12.52(12.50） | 13.12(13.12) |
| 2023 | 12.55(12.60） | 12.93(12.92) |
| 最高記録 | 12.52 | 12.78 |
| 五輪最高 | 12.60 | 12.78 |
| 世選最高 | 12.52 | 12.94 |
以上のカッコ内の「通過者最低記録」の通り、12年以降の至近９大会のデータからすると、22年まではその組の風速による運・不運もあるが、予選を12秒台で走れば準決勝進出はほぼ大丈夫だった。しかし、23年ブダペストでは、12秒92と12秒93がボーダーラインで一気にアップ。12秒93・93・95の３名が準決勝に進むことができなかった。
日本選手にとって勝負となる準決勝の壁は、やはり厚い。
「最も遅いタイムの準決勝通過者」は、17年までは12秒８台あたりだったが、19年ドーハは12秒65、21年東京五輪が12秒67と大幅にアップ。さらに22年オレゴンでは、なんと「12秒50でプラスの２番目」。「12秒52で落選」とういうものすごいレベルになった。また、23年ブダペストも12秒55でも落選というレベルだった。
今回のパリのエントリー記録（６月30日現在）は、
12秒２台 ２名
12秒３台 ５名（累計７名）
12秒４台 ６名（13名）
12秒５台 ３名（16名）
12秒６台 ８名（24名）
だ。ここまでで準決勝に進める人数に達する。
そして準決勝では、福部の日本記録12秒69を大幅に更新する12秒５台、あるいは12秒４台でなければ「ファイナリスト」への道を開くことができなさそうな状況だ。
◆1983年以降の世界選手権＆五輪での１・３・８位の記録◆
| 年 | 風速 | １位 | ３位 | ８位 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1983 | +2.4 | 12.35w | 12.62w | 12.99w | |
| 1984五輪 | +0.7 | 12.84 | 13.06 | 13.40 | |
| 1987 | -0.5 | 12.34 | 12.46 | 13.06 | |
| 1988五輪 | +0.2 | 12.38 | 12.75 | 13.73 | |
| 1991 | -1.7 | 12.59 | 12.69 | 13.07 | |
| 1992五輪 | +0.4 | 12.64 | 12.70 | 13.57 | |
| 1993 | +0.2 | 12.46 | 12.67 | 12.95 | |
| 1995 | +0.2 | 12.68 | 12.85 | 13.02 | |
| 1996五輪 | +0.2 | 12.58 | 12.65 | DQ | （７位12.80がドーピングで失格） |
| 1997 | -0.3 | 12.50 | 12.61 | DQ | |
| 1999 | +0.7 | 12.37 | 12.47 | 12.97 | |
| 2000五輪 | ±0 | 12.65 | 12.76 | 13.49 | |
| 2001 | +2.0 | 12.42 | 12.58 | 13.02 | |
| 2003 | -0.2 | 12.53 | 12.67 | 12.87 | |
| 2004五輪 | +1.5 | 12.37 | 12.56 | DNF | |
| 2005 | -2.0 | 12.66 | 12.76 | DQ | （８位13.57がハードル不通過で失格) |
| 2007 | -0.1 | 12.46 | 12.50 | 12.66 | |
| 2008五輪 | +0.1 | 12.54 | 12.64 | 12.94 | |
| 2009 | +0.2 | 12.51 | 12.55 | 15.53 | |
| 2011 | +1.1 | 12.28 | 12.47 | DNF | |
| 2012五輪 | -0.2 | 12.35 | 12.48 | DQ | （５位12.58がドーピングで失格） |
| 2013 | -0.6 | 12.44 | 12.55 | DQ | （８位12.88がドーピングで失格） |
| 2015 | -0.3 | 12.57 | 12.66 | 13.06 | |
| 2016五輪 | ±0 | 12.48 | 12.61 | 12.89 | |
| 2017 | +0.1 | 12.59 | 12.72 | 13.04 | |
| 2019 | +0.3 | 12.34 | 12.47 | DNF | |
| 2021五輪 | -0.3 | 12.37 | 12.55 | 13.24 | |
| 2022 | +2.5 | 12.06w | 12.23w | DQ | （ハードルを手で倒し失格） |
| 2023 | -0.2 | 12.43 | 12.46 | 12.78 | |
| 最高記録 | 12.28 | 12.46 | 12.66 | ||
| 〃（追参） | 12.06w | 12.23w | |||
| 五輪最高 | 12.35 | 12.48 | 12.89 | ||
| 世選最高 | 12.28 | 12.46 | 12.66 | ||
| 〃（追参） | 12.06w | 12.23w |
ハードル競技の特性で途中で引っかけるなどで大きく失速することが多いため、８位の記録には著しく遅いものがある。しかし、先に示した表の通り準決勝を12秒50から６台～８台で通過してきた選手である。
野口純正（国際陸上競技統計者協会［ATFS］会員）
【パリ2024オリンピック特設サイト】
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