2024.08.04(日)選手

【記録と数字で楽しむパリオリンピック】男子3000m障害物:三浦、東京7位、ブダペスト6位、そしてパリ五輪は……



8月1日(木)から11日(日)の11日間、フランスの首都パリを舞台に「第33回オリンピック」が開催される。

日本からは、24種目に55名(男子35名・女20名)の代表選手が出場し、世界のライバル達と競い合う。

現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する全24種目に関して、「記録と数字で楽しむ2024パリオリンピック」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では世界選手権についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。

記録は原則として7月21日判明分。ただし、エントリー記録などは五輪参加標準記録の有効期限であった24年6月30日現在のものによった。
現役選手の敬称は略させていただいた。

200mから1500mにおいて、予選で落選した選手による「敗者復活戦」が導入され、これによって予選で敗退した何人かが復活して準決勝に進出できることになった。
ただ、各種目での敗者復活戦の組数や何人が準決勝に出場できるのかなどの条件がこの原稿執筆時点では明確にされていない。よって、トラック競技の予選・準決勝の競技開始時刻のところに示した通過条件(○組○着+○)は、「敗者復活戦」がなかったこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、パリではこれとは異なる条件になるはずだ。

日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてほとんどふれていない。日本人の出場しない各種目の展望などは、陸上専門誌の8月号の「パリ五輪観戦ガイド」や今後ネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。

大会期間中は、日本陸連のSNS(=旧Twitter or Facebook)で、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。

現地と日本の時差は、7時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけての競技である。
猛暑の中での睡眠不足にどうぞご注意を!


男子3000m障害物

(実施日時は、日本時間。カッコ内は現地時間)
・予選 8月6日 02:04(5日 19:04) 3組5着
・決勝 8月8日 04:40(7日 21:40)


三浦、東京7位、ブダペスト6位、そしてパリ五輪は……

21年東京五輪、22年オレゴン、23年ブダペストに続き4大会連続世界大会出場の三浦龍司(SUBARU/エントリー記録8分13秒70=23年・自己ベスト8分09秒91=23年=日本記録)が、東京五輪7位、ブダペスト世界選手権6位からさらに上を狙う。
参加標準記録(8分15秒00)の有効期限であった6月30日の1週間後、7月7日のパリでのゴールデンリーグでは、自身の日本記録に0秒61と迫るサードベストの8分10秒52で7位となって調子を上げている。

三浦が出場しなかった日本選手権を制した青木涼真(Honda/エントリー記録8分20秒54・自己ベスト8分20秒09=22年)は、ターゲットナンバー「36」のところ、ワールドランキング27位(のちに他国の上位選手の辞退で24位にアップ)で21年東京に続いて五輪2度目の出場権を獲得。22・23年の世界選手権に続き、4大会連続の世界大会代表となった。23年ブダペストでは決勝の舞台も経験し14位だった。



◆五輪&世界選手権での日本人最高成績と最高記録◆

<五輪>
最高成績 7位 8.16.90 三浦龍司(順大/2年)2021年
最高記録 8.09.92 三浦龍司(順大/2年)2021年 予選1組2着 =日本新

<世界選手権>
最高成績 6位 8.13.70 三浦龍司(順大/4年)2023年
最高記録 8.13.70 三浦龍司(順大/4年)2023年 6位


◆2000年以降の五輪&世界選手権の1・3・8位とラスト1000mの記録◆

【表/2000年以降の五輪&世界選手権の1・3・8位とラスト1000mの記録】
・「ラスト1000m」は、2000mを先頭で通過した選手のタイムから計算したので優勝者の実際のタイムではない場合もある。
1位3位8位/先頭のラスト1000m
2000五輪8.21.438.22.158.26.70/2.37.48
20018.15.168.16.598.20.87/2.41.55
20038.04.398.09.098.17.16/2.44.81
2004五輪8.05.818.06.648.15.58/2.41.54
20058.13.318.15.308.19.96/2.32.92
20078.13.828.17.598.22.95/2.36.39
2008五輪8.10.438.11.018.16.59/2.36.50
20098.00.438.01.188.14.47/2.37.64
20118.14.858.16.098.19.69/2.41.43
2012五輪8.18.568.19.738.25.91/2.35.30
20138.06.018.07.868.17.41/2.34.06
20158.11.288.12.548.18.63/2.34.51
2016五輪8.03.288.11.528.25.81/2.37.54
20178.14.128.15.538.23.02/2.38.66
20198.01.358.03.768.09.33/2.38.40
2021五輪8.08.908.11.458.17.44/2.33.24
20228.25.138.27.928.29.77/2.32.69
20238.03.538.11.988.15.58/2.29.24
     
最高記録8.00.438.01.188.09.33/2.29.24
五輪最高8.03.288.06.648.15.58/2.33.24
世選最高8.00.438.01.188.09.33/2.29.24

この種目はケニア勢が圧倒的に強く、五輪は84年ロサンゼルスから16年リオまで9連勝。が、21年東京ではモロッコのソフィア・エル・バッカリがストップをかけた。
世界選手権も07年からケニア勢が7連勝していたが、22年オレゴンでは、これまたバッカリがストップをかけた。この時のバッカリのラスト200mは、水濠と1台の障害を越えながらも28秒02(14秒34+13秒68)。23年もバッカリが制して世界大会3連勝。ラスト1000mは2分28秒90、ラスト400m58秒25。前半1500m4分12秒99に対し後半は3分50秒54で22秒45も後半が速かった。

上記、18大会のデータをみてもわかる通り、「8位」のタイムが三浦の日本記録8分09秒91を上回っているのは、19年のドーハ世界選手権のみ。
「3位の記録」が三浦のベストを上回るのも、03年・04年・09年・13年・19年の5回しかない。
世界大会は、「記録」ではなく「勝負優先」のレースなのでタイムのみで比較することには問題があろうが、単純な計算では三浦の「メダル獲得可能性」は72.2%となる。

下記は、三浦が更新してきた4回の日本記録の時の1000m毎を比較したものだ。
 
2021.05.092021.06.262021.07.302023.06.09 
<8.17.46> <8.15.99> <8.09.92> <8.09.91> 
2.46.412.46.412.48.72.48.72.43.22.43.22.44.2.44.
5.36.772.50.365.34.72.46.05.30.92.47.75.27.2.43. 
8.17.462.40.698.15.992.41.38.09.922.39.18.09.912.43.

21年は、どのレースもラスト1000mを一気にペースアップしての「日本新」だった。
23年6月9日のパリ・ダイヤモンドリーグは、1000m毎はほぼイーブンで刻んだが、ラスト1周の390mは61秒5(400m換算63秒1)だった。

東京五輪では、優勝者のラスト1000mは2分33秒台。22年オレゴンもスローペースのため2分32秒台に上がったが、16年以降の3大会は2分37~38秒台。
17・19年のトップと3位の選手の差は1~2秒。つまり3位の選手のラスト1000mは上記に1~2秒をプラスしたあたりということで、トップ選手のラスト1000mが2分37~38秒程度のレースであれば、三浦が2000mまで集団につき、残り1000mを2分40秒前後でカバーできれば「3位争い」に加われるということになる。
ラスト1000mのみならず、三浦の武器は最後の200mやラストの直線での切り替えが素晴らしいところだ。

東京五輪・決勝でのラスト200mに限れば、三浦は30秒2でカバーした。これは優勝したバッカリの28秒8、5位のイェマネ・ハイレセラシェ(エリトリア)の30秒1についで3番目。銀・銅の2名は、31秒4と30秒9だった。
また、ラスト100mを三浦は14秒2で走った。2800m地点も2900m地点も9位にいたが、最後の直線で2人を抜いて「7位入賞」につなげた。優勝したバッカリのラスト100mは14秒4。5位のハイレセラシェと8位のトッピ・ライタネン(フィンランド)が14秒8。メダルを獲得した2名は、15秒3と15秒2。つまり、残り100mは、三浦が「区間賞」だったのである。8分09秒92をマークした東京五輪・予選の時はラスト200m29秒8、ラスト100m14秒6だった。
また、22年5月8日のゴールデングランプリ(国立)で2位に5秒の大差で圧勝した時のラスト100mも14秒5。23年のゴールデングランプリ(横浜)は14秒2と、常に14秒台前半から半ばくらいでカバーできている。

ブダペストの決勝では、前半1500m4分13秒88、後半1500m3分59秒82。ラスト1000mを2分38秒43にアップした。が、2000m過ぎからペースを上げたメダル争いのグループに少しずつ引き離された。残り400mでトップと6秒13差、3位と4秒21差の6位。残り300mで3位と3秒05差、同200mで2秒11差、同100mで1秒42差としたが、最終的にはメダルまで1秒72及ばない6位だった。残り400mでの4秒21差(27~28m差)を1秒72差まで縮めたが、距離にして11~12mくらい届かなかった。

23年ブダペストの上位10選手のラストは、以下の通りだ。

<23年ブダペスト世界選手権・上位選手のラスト>
順)Finish残1000m残400残300残200残100 
1)8.03.532.28.9058.2543.9629.8414.97 
2)8.05.442.31.1560.6246.3931.7715.93 
3)8.11.982.37.5665.2447.3331.4515.13 
4)8.12.262.37.9663.2247.4132.1615.29 
5)8.13.462.36.9760.6444.5728.8413.26 
6)8.13.702.38.4362.7547.0031.4915.43<--三浦
7)8.14.372.39.8764.0148.0031.7215.46 
8)8.15.582.40.1462.1046.0530.2614.38 
9)8.18.312.41.1563.3547.4831.7215.51 
10)8.20.022.43.9364.6048.7231.6514.58 
       
14)8.24.772.46.1966.2349.1533.4216.58<--青木

三浦は、1・2位の選手にはラスト1000mで大きく突き放されているが、3位以下との選手との残り1000mの差は2秒以内。
5位の選手のラスト100m13秒26は驚異で三浦も最後にかわされたが、3位と4位の選手との残り400mの比較では三浦が2秒49と1秒53勝っている。

パリ五輪のレースがどのような展開になるかはわからないが、残り1周で三浦がメダル圏内から5~6mから10m以内くらいの位置につけていれば、最後のキックで「メダルを獲得」という可能性もありそうだ。

優勝争いやメダル争いが7分台や8分そこそこのレベルになると、終盤までそれについていくのはさすがに厳しいかもしれないが、8分05~10秒前後や、22年オレゴンのように前半が超スローで最後の直線で決着がつくような展開になれば、三浦のラストの直線でのスピードが威力を発揮することになる。

青木も4大会連続の世界大会で、ブダペストに続く決勝進出で、入賞を果たしたいところだ。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

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