昨年を振り返る
昨夏のブダペスト世界陸上では、北口榛花さん(JAL)の6投目の大逆転優勝に多くの国民が歓喜しました。最も遠いと考えられていた女子・投てきでの金メダル獲得自体も大きな賞賛に値するのですが、彼女の競技に対する直向きさ、そして競技後の弾ける笑顔に観ている人は夢や希望を感じたことでしょう。まさしく、JAAF VISION 2017に掲げているミッションの一つである「トップアスリートの活躍によって国民に夢と希望を与える」ことを体現してくれました。あらためて陸上の魅力や価値、その可能性(潜在力)を実感した瞬間でした。ブダペスト世界陸上では11種目で入賞を果たしましたが、それらの入賞が歩・走・跳・投種目に跨っていたことを高く評価することができます。東京オリンピックに向けた強化が進む以前は、4×100mリレー、競歩等の一部の種目に頼っていたものが、東京オリンピックを機に活躍が多くの種目に拡がっていったことは強化活動の成果であると言えます。先述の北口さんの活躍、そして泉谷駿介さん(住友電工)の110mハードルでの入賞等は、一昔前では想像だにできなかったことです。「やってできないことはない」という希望を多くのアスリートに与えてくれました。
パリオリンピックに向けて
東京オリンピックから3年、パリ・オリンピックの年を迎えました。オリンピックは、強化活動の集大成と位置づけることができますが、それとともに2025年東京世界陸上のマイルストーンの意味も持ち合わせています。競技結果もさることながらアスリートの皆さんには、多くの人が憧れの気持ちを抱くような直向きな競技への取り組みを期待します。これこそが新たなスポーツの価値創出に繋がり、多くの国民のスポーツへの参画、特に子どもたちのスポーツの向き合いを積極的にしてくれることでしょう。本連盟としては、公平かつ透明な選手選考を経て最強のチームジャパンを編成するとともに、オリンピック本番で選手が持てる力を十分に発揮できるように、国内外での事前トレーニングキャンプ等で適切なコンディショニングができるようにサポート体制の充実を図っていきます。
東京世界陸上に向けて
2025年9月13日から21日までの9日間、東京・国立競技場で開催されます。世界中から集結したトップアスリートが2020東京では無かった大歓声の中で躍動する姿が観られます。私たちは、陸上を通じてスポーツの力や感動を世界に届け、「する・観る・支える」において人々がつながる機会としていきたいと思います。そのためには、大会を準備し運営する「世界陸上財団」そして「日本陸連」がガバナンスの利いた健全な組織でなくてはなりません。私たちは東京2020後の新しい国際競技大会のモデルを創り上げたいと考えています。皆様のご協力を得て大会成功に向けて全力を尽くしていきます。3つのプロジェクト
陸上界の差し迫った課題を解決するために、「東京2025世界陸上」「学校部活動の地域移行」「公認競技場・競走路・競歩路」の3つの新規プロジェクトを立ち上げました。各プロジェクトではメンバーを人選し、課題解決を図るべく方向性や具体的な方策について検討を進めていきます。いずれの課題も競技陸上の発展及びウエルネス陸上の実現にとって極めて優先度が高いと言えます。加盟及び協力団体の意見を拝聴しながら着実に進めていく所存です。これらの活動を展開する上で、加盟団体、協力団体、スポンサー各社、陸上ファンの支えは必須となります。陸上界の総力を結集して目標に向けて歩んで参りますので、本連盟の活動にご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
公益財団法人日本陸上競技連盟
会長 尾縣 貢
会長 尾縣 貢