2023.05.11(木)選手

【記録と数字で楽しむ第107回日本選手権】女子100mハードル:12秒台4人が集結!歴代10傑中7人が出場し史上最高のハイレベル対決!!



6月1日~4日に大阪(ヤンマースタジアム長居)で行われる「第107回日本選手権」の「見どころ」や「楽しみ方」を「記録と数字」という視点から紹介する。
各種目の「2023年日本一」を決める試合であるとともに、8月にハンガリー・ブダペストで行われる「ブダペスト2023世界選手権」、7月のタイ・バンコクでの「アジア選手権」、9月末からの中国・杭州での「アジア競技大会」の日本代表選手選考競技会でもある。また、「U20日本選手権」も同じ4日間で開催される。
本来であれば全種目についてふれたいところだが、時間的な制約のため10種目をピックアップしての紹介になったことをご容赦いただきたい。また、エントリー締め切りは5月15日であるが、この原稿はそれ以前の10日までに執筆したため、記事中に名前の挙がった選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれないことをお断りしておく。

過去に紹介したことがあるデータや文章もかなり含まれるが、可能な限り最新のものに更新した。
スタンドでの現地観戦やテレビ観戦の「お供」にして頂ければ幸いである。

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女子100mハードルは、予選・準決勝が大会2日目6月2日、決勝が大会3日目6月3日実施



【女子100mハードル】

・予選/6月2日 4組3着+4
・準決/6月2日 2組3着+2
・決勝/6月3日



12秒台4人が集結!歴代10傑中7人が出場し史上最高のハイレベル対決!!

「12秒台」でも表彰台に登れない可能性も

2019年8月17日に寺田明日香が13秒00で19年ぶりの日本タイをマーク。2週間後の9月1日には、念願の大台突破となる12秒97の日本新。20年は新型コロナ蔓延のため多くの競技会が中止となってその前進はなかったが、21年から再び動き出した。

<13秒00からの日本記録の変遷>
13.00金沢イボンヌ(佐田建設TC)2000.06.24サンディエゴ
寺田明日香(パソナグループ)2019.08.17福井
12.97〃(〃)2019.09.01富士北麓
12.96〃(ジャパンクリエイト)2021.04.29広島広域
12.87〃(〃)2021.06.06長居
青木益未(七十七銀行)2021.06.06布勢
12.86〃(〃)2022.04.10新潟市
12.82福部真子(日本建設工業)2022.07.24ユージン
12.73〃(〃)2022.09.25長良川

以上の通り、寺田明日香(ジャパンクリエイト)、青木益未(七十七銀行)、福部真子(日本建設工業)の3人の切磋琢磨によって、日本の女子100mハードルは、ここ数年で世界との差を大きく縮めた。
20世紀の金沢イボンヌさん以来、「世界大会の準決勝の舞台に立てるレベル」になった。しかも、「複数が揃って世界の準決勝の舞台に立つレベルに」までにだ。

この種目で複数の選手が世界の舞台にエントリーできたのは、80mハードルの時代を含めて17年ロンドン世界選手権が最初。木村文子(エディオン)、紫村仁美(東邦銀行)が出場し、木村が準決勝に駒を進めた。

19年ドーハ世界選手権は、寺田と木村が出場したが、予選突破はならなかった。
21年東京五輪には、木村・青木・寺田がフルエントリーし寺田がセミファイナリストに。
22年オレゴン世界選手権には、福部・青木が出場。ともにセミファイナリストとなり、福部は組の8着ながら日本新記録、青木は組の6着で世界選手権のこの種目での日本人歴代最高順位の結果を残した。
ただ、世界のレベルも急上昇していて、22年のオレゴンでは「ファイナル」に進むためには「12秒50」が求められた。

とはいえ、東京五輪での「フルエントリー」やオレゴン世界選手権での「複数でのセミファイナリスト」は、今後にとって非常に大きな進歩であることは確かだ。

彼女たちの背中を追うように、続く選手たちも頑張っている。
23年4月29日の織田幹雄記念では田中佑美(富士通)も上述の3人に続き、日本人4人目となる「12秒台」に突入。青木と福部に先着(寺田は決勝を欠場)しての12秒97(+0.6)で優勝し、22年までのベストを0秒15更新した。さらに5月7日の木南記念では、寺田が2年ぶりに自己ベストを更新する12秒86(+0.7)をマーク。それに食らいついた田中も1週間前の記録を0秒06縮める12秒91にタイムを伸ばした。

この4人に続く13秒0~1台のベストを持つ現役選手は以下の通りだ。
「12秒台」の4人の、あとに6人が名を連ねる。紫村の自己ベストは10年前のものだが、22年にも13秒09で走っている。

<13秒0台と1台の現役選手>
・記録は、23年5月7日現在。所属は記録を出した時ではなく現在のもの。
13.00鈴木美帆(長谷川体育施設)21年
13.02紫村仁美(リタジャパンAC)13年
13.02清山ちさと(いちご)22年
13.13中島ひとみ(長谷川体育施設)22年
13.14芝田愛花(エディオン)23年
13.17大松由季(愛教大クラブ)22年

自己ベストでは、福部(12秒73=22年)・青木(12秒86=22年)・寺田(12秒86=23年)・田中(12秒91=23年)の4人が抜け出ているが、ハードル1台の引っかけが大きな命取りになる種目だけに、日本選手権本番ではタイム通りの順番ですんなりとは決まらない可能性がある。


日本チャンピオン経験者4人が激突



寺田が初めてタイトルを獲得した2008年からの優勝者は、下記の通り。

<2008年以降13年間の日本選手権優勝者>
・所属は当時のもの。
200813.51-1.5寺田明日香(北海道ハイテクAC)
200913.05+1.9寺田明日香(北海道ハイテクAC)
201013.32-2.0寺田明日香(北海道ハイテクAC)
201113.32-1.3木村文子(エディオン)
201213.25-0.7木村文子(エディオン)
201313.02-0.6紫村仁美(佐賀陸協)
201413.34+1.6木村文子(エディオン)
201513.27-0.2紫村仁美(佐賀陸協)
201613.23w+2.1木村文子(エディオン)
201713.12-0.1木村文子(エディオン)
201813.17+1.1青木益未(七十七銀行)
201913.14+0.6木村文子(エディオン)
202013.02-0.1青木益未(七十七銀行)
202113.09+-0寺田明日香(ジャパンクリエイト)
202213.10+0.8福部真子(日本建設工業)/予選での青木の12.94(+0.3)が大会記録

この15年間で、寺田、木村(21年12月に現役を引退)、紫村、青木、福部の5人が「日本一」のタイトルを獲得してきているが、引退した木村以外の4人が今回も参戦する。
福部が勝てば2連覇。寺田なら2年ぶり5回目。青木なら3年ぶり3回目。
紫村ならば8年ぶり3回目で、実現すれば「久しぶり優勝」の歴代5位タイとなる。
参考までに、21年に寺田が11年ぶりの優勝を果たした日本選手権での「久しぶり優勝」の歴代記録は、以下の通りだ。

<日本選手権での「久しぶり優勝」の歴代トップ10>
1)11年ぶり寺田明日香(女100mハードル)第94回=2010第105回=2021(北海道ハイテクAC→ジャパンクリエイト)
2)10大会ぶり鈴木源三郎(男やり投)第23回=1936第33回=1949(日大→青森陸協)※第28回=1941は中止、1943~1945年は開催なし。年数なら「13年ぶり」となる。
2)10年ぶりディーン元気(男やり投)第96回=2012第106回=2022(早大→ミズノ)
4)9年ぶり渋井陽子(女マラソン)第84回=2000第93回=2009(三井海上→三井住友海上)
5)8年ぶり蟹江修(男20kmW)第55回=1971第63回=1979(三菱重工)
5)8年ぶり森長正樹(男走幅跳)第76回=1992第84回=2000(日大→ゴールドウィン)
5)8年ぶり篠藤淳(男3000mSC)第90回=2006第98回=2014(中央学大→山陽特殊製鋼)
5)8年ぶり松本奈菜子(女400m)第98回=2014第106回=2022(浜松市立高→東邦銀行)
9)7大会ぶり木南道孝(男110mH)第26回=1939第33回=1949(文理大→大阪茗友)※第28回=1941は中止、1943~1945年は開催なし。年数なら「10年ぶり」となる。
9)7年ぶり高橋尚子(女マラソン)第82回=1998第89回=2005(積水化学→ファイテン)
9)7年ぶり新谷仁美(女10000m)第97回=2013第104回=2020(ユニバーサル・エンターテインメント→積水化学)
9)7年ぶり竜田夏苗(女棒高跳)第99回=2015第106回=2022(モンテローザ→ニッパツ)

また、上記に名前の挙がったエントリー記録13秒1台までの10選手の08年以降の日本選手権での成績をまとめた。

<エントリー記録13秒1台までの10名の2008年以降の日本選手権での成績>
・掲載順は、08年以降の日本選手権への出場順と成績順。
「-」は不出場
「欠」は予選を直前に欠場
「予」は予選落選
「準」は準決勝落選
「決」は決勝を欠場
「失」は決勝で失格
 080910111213141516171819202122
寺田明日香
紫村仁美
福部真子
清山ちさと
青木益未
田中佑美
中島ひとみ
鈴木美帆
芝田愛花
大松由季

やはり、優勝経験のある寺田・紫村・青木・福部らがコンスタントな結果を残している。
紫村は2009年から2回の優勝を含め20年まで12年連続入賞した。
清山と青木も出場した時は、すべて入賞している。


寺田・青木・福部の対戦成績

19年以降に日本記録を更新してきた寺田・青木・福部の決勝レースでの直接対決の対戦成績を調べてみた。
万が一「見落とし」があったらご容赦いただきたい。

<寺田明日香と青木益未の決勝での対戦成績(室内60mハードルを除く)>
年月日競技会名寺田明日香vs青木益未
2019.06.29日本選手権3)13.16●-○2)13.150.01
2020.08.23GGP東京1)13.03○-●2)13.090.06
2020.08.29ナイトG福井2)12.93w●-○1)12.87w0.06
2020.10.03日本選手権2)13.14●-○1)13.020.12
2021.04.29織田記念1)12.96○-●4)13.340.38
2021.05.09五輪テスト大会1)12.99○-●2)13.060.07
2021.06.06布勢スプリント2)12.89●-○1)12.870.02
2022.05.08GGP東京4)13.07○-●9)13.910.84
2022.06.26布勢スプリント8)13.52●-○1)12.970.55
   4-5  

日本人初の「12秒台突入」や「日本新」の回数では寺田がリードを奪っているが、直接対決では青木がひとつの勝ち越し。とはいえ、9レースのうち5レースのタイム差は「0秒07以内」で、このところも勝ったり負けたりで実力は非常に拮抗している。


<寺田明日香と福部真子の決勝での対戦成績(室内60mハードルを除く)>
年月日競技会名寺田明日香vs福部真子
2013.04.29織田記念7)13.71●-○5)13.580.13
2019.05.19東日本実業団2)13.19●-○1)13.140.05
2019.06.29日本選手権3)13.16○-●6)13.300.14
2019.07.27実学対抗1)13.07○-●2)13.180.11
2019.08.17ナイトG福井1)13.00○-●2)13.160.16
2020.08.23GGP東京1)13.03○-●6)13.330.30
2020.08.29ナイトG福井2)12.93w○-●6)13.36w0.43
2022.05.28GGP東京4)13.07●-○2)13.050.02
2022.06.26布勢スプリント8)13.52●-○2)13.040.48
   5-4  

19・20年は寺田が5連勝、22年は福部が2連勝中。


<青木益未と福部真子の決勝での対戦成績(室内60mハードルを除く)>
年月日競技会名青木益未vs福部真子
2014.05.06水戸国際1)13.58○-●5)14.140.56
2014.09.06日本学生2)13.67○-●4)13.890.22
2018.04.29織田記念7)13.44●-○4)13.160.28
2018.06.24日本選手権1)13.17○-●7)13.560.39
2018.09.23全日本実業団1)13.31○-●2)13.430.12
2019.05.06木南記念3)13.27○-●4)13.310.04
2019.06.02布勢スプリント3)13.11○-●4)13.190.08
2019.06.29日本選手権2)13.15○-●6)13.300.15
2019.07.13コルトレイク2)13.52●-○1)13.470.05
2020.07.25東京選手権2)13.54●-○1)13.360.18
2020.08.23GGP東京2)13.09○-●6)13.330.24
2020.08.29ナイトG福井1)12.87w○-●6)13.36w0.49
2021.09.26全日本実業団1)13.34○-●2)13.350.01
2022.04.29織田記念3)13.25●-○2)13.210.04
2022.05.08GGP東京9)13.91●-○2)13.050.86
2022.06.11日本選手権2)13.28●-○1)13.100.18
2022.06.26布勢スプリント1)12.97○-●2)13.040.07
2022.08.20ナイトG福井1)12.92○-●2)12.920.00
2022.09.25全日本実業団2)13.03●-○1)12.730.30
2023.04.29織田記念2)12.98○-●3)13.020.04
   13-7  

トータルでは青木が大きく勝ち越しているが、21年以降では4勝4敗の五分だ。


ブダペスト世界選手権への道

ブダペスト世界選手権参加標準記録は「12秒78」で、ターゲットナンバー(出場枠)は「40名」。
22年9月に12秒73で走った福部は突破済み。

5月2日現在の1国3人以内でカウントした「WAランキング」では青木が24位、田中が25位の圏内。
22年のかなりの期間を「お休み」していた寺田は、世界選手権のために必要な22年7月31日以降の競技会が「2つ」しか有効ではないため。ランク外である。
が、5月7日の木南記念の結果で3つめ、そのあともゴールデングランプリ、日本選手権、布勢スプリントなどで「5つ」に達するはずである。が、ポイントよりも「12秒78」の参加標準記録をクリアするのが、寺田・青木・田中にとって「ブダペストへの一番の近道」である。

最終的に7月30日時点で、「標準記録突破者」と「WAランキング40位以内」の日本人選手が4名以上になった場合は、4人目以降は涙を呑むことになる。
そんな可能性もありそうなくらいこの4年あまりでレベルが上がってきたことは何とも素晴らしいことである。


日本選手権・決勝での「着順別最高記録」

1)13.022013・2020年
2)13.032013年
3)13.162019年
4)13.202019年
5)13.242019年
6)13.302019年
7)13.312019年
8)13.412019年

1・2着の最高記録には13年のものが残っているが、3着から8着はすべて19年の記録だ。
「12秒台」がマークされる前年の18年からの各年の日本リスト1位と10位の記録は、
1位10位
18年13.1313.42
19年12.9713.40
20年13.0213.36
21年12.8713.24
22年12.7313.20

である。

新型コロナが蔓延し始めた20年は多くの競技会が中止となり1位の記録は前年よりも後退したが、そんな中でも10位の記録は前進した。
日本選手権のファイナルを目指すレベルの選手の目安となりそうな「前年の日本10位の記録」は、この4~5年で0秒20前後あまりもアップしてきている。
そんなことからしても、今回はたくさんの「着順別最高記録」が更新される可能性が高そうである。

何しろ今回の日本選手権は、エントリー記録で「12秒台が4人」。すなわち日本歴代の上位4人が勢揃いするのだ。
さらに、13秒0台が3人に1台も3人。5月7日時点の日本歴代10位が13秒03、そのうち7人がエントリーしてくるはず。
冒頭のタイトルに書いたように「12秒台でも表彰台に登れない」などという可能性もあるレースで、何とも楽しみな限りである。



・記録は、5月5日判明分。
・記事中の「WAランキング」は5月2日時点のもの(毎週火曜日に発表されるので、できる限り最新のものを盛り込みたいところだが、原稿の締め切りの都合で5月2日時点のものとした)。
・記事は、5月7日時点での情報による。上述の通り、エントリー締め切り5月15日以前に書いた原稿のため、記事に登場する選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれない。また、競技の実施日は確定しているが具体的なタイムテーブルとエントリーリストは5月19日に公表される予定である。
・現役選手については敬称略をご容赦いただきたい。

なお、日本選手権の期間中、ここで取り上げることができなかった種目以外の情報(データ)も日本陸連のSNSで「記録や数字に関する情報」として、その都度発信する予定なので、どうぞご覧くださいませ。



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)



【第107回日本陸上競技選手権大会】




今年はスペシャルチケットとして、テーブル・コンセント付きの最上位グレード席となる「SS席」、1日50席限定の「B席アスリート交流チケット」、1日15席限定の「カメラ女子席」、そして日本選手権では初めてサブトラックの観戦ができる「サブトラック観戦チケット」を販売!既に一部の席は完売となっておりますので是非お早めにお買い求めください!
>>エントリーリスト(5月9日13時00分時点)
※エントリー締切期日は5月15日(月)17時00分となります。
※エントリー締切後に資格審査を行った後に、出場可否が決定します。

☆スポーツナビ☆チケットプレゼントキャンペーン
https://sports.yahoo.co.jp/contents/12894

■「世界選手権」「アジア選手権」「アジア競技大会」日本代表選手選考要項
 https://www.jaaf.or.jp/news/article/15943/
■ブダペスト世界選手権参加資格有資格者一覧
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17055/
■「WAランキング」ブダペスト世界陸上への道
https://www.jaaf.or.jp/news/article/17277/

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