2023.04.20(木)大会

【日本選手権35km競歩】野田・岡田が優勝&日本新でブダペスト世界選手権内定!川野も参加標準記録を突破し内定!



第107回日本陸上競技選手権大会・35km競歩が4月16日、8月にハンガリーで開催されるブダペスト世界選手権と、9月に中国で開催される杭州アジア大会の日本代表選考会を兼ねて、石川県輪島市で開催されました。

男女ともに日本記録が更新されたほか、全3選手がブダペスト世界選手権の代表に即時内定。また、女子35kmではオープンで出場した劉虹選手(中国)が、自身がマークしたばかりのアジア記録を更新。男女ともに、レベルの高いレースが繰り広げられました。

激戦を制したのは野田!世界歴代3位に浮上する日本新で世界選手権へ

この日の輪島市は、明け方まで続いた強めの雨こそあがったものの、大気の状態が不安定な1日となりました。14℃と、気温は例年よりもやや高めながら、時折強く吹く風の影響か、体感としては肌寒さが感じられるなか、35kmになって2回目となる日本選手権は、今年も男女同時にスタート。装置のエラーで号砲が鳴らず、予定時刻の午前8時00分を少しまわって出発しました。



スタートしてすぐに川野将虎(旭化成)、野田明宏(自衛隊体育学校)、丸尾知司(愛知製鋼)、松永大介(富士通)の4選手が抜けだして先頭集団を形成し、最初の1km(1周)を4分05秒で通過。これに、勝木隼人(自衛隊体育学校)、高橋和生(ADワークスグループ)、諏方元郁(愛知製鋼)、萬壽春輝(順天堂大学)ら9選手が第2グループをつくって7~8秒差で続き、以降も、この2グループが別のペースでレースを進めていく形となりました。

先頭集団は、各周を4分07秒、4分13秒、4分12秒で刻んだのちに、4~5kmを4分05秒にペースを上げて、最初の5kmを20分42秒で通過し、その後も4分10秒を切るハイペースでレースを進め、10kmを41分18~19秒で通過していきます。5~6kmでいったん後れ気味だった松永選手が、7kmで再び追いつくと、8kmからは先頭に出て集団をリードしましたが、13km過ぎで野田選手が前に出て、次の1周を4分02秒にペースアップ。松永選手はこれにつくことができず後退し、先頭は3人に絞られました。



4分01秒と、さらにペースを上げての通過となった15kmは1時間01分51秒。ここからは丸尾選手が先頭に立ち、並びかけるように野田選手がつき、すぐ後ろに川野選手が位置する隊列となって4分05秒を切るハイペースで周回を重ねていきます。3選手は、15kmからの5kmを20分21秒でカバーして20kmを1時間22分12秒で通過。続く2周も丸尾選手がリードして4分06秒で回っていきましたが、22kmを過ぎたところで野田選手が前に出て4分04秒にペースを上げると、23~24kmを4分02秒、24~25kmを4分01秒と、さらにハイペースを繰り出し、25kmを1時間42分32秒で通過。これに対して、丸尾選手は4分04秒、川野選手は4分03秒と、25周目でわずかにペースを落とします。

この25周目の1kmで、野田選手との間に3秒の差が生じたところが、結果的に明暗を分ける形となりました。
「ここが勝負所かなと思ったので、一気に行った」と、のちに自身も振り返ったように、野田選手は、その後の周回を、4分02~01秒で重ねていき、26kmの段階で7秒だったリードを、29kmまでの3kmで37秒へと広げます。29kmからの1周を4分05秒と少しペースを落としたものの、30km地点は、昨年のオレゴン世界選手権で川野選手がマークした日本記録(2時間03分24秒)を大きく上回る2時間02分43秒で通過。この間の5kmを20分11秒でカバーし、28kmの段階で単独2位となっていた丸尾選手との差を47秒とし、ほぼ勝利を手中にしました。

最後の5kmは、煽られるような強風が吹きつけ、雨もぱらつく状況となったなか、日本新記録誕生なるか否かのぎりぎりのラインでレースを進めることに。目安となる4分05秒よりペースを落とす周回もあったなか、ラスト1周を4分03秒でまわり、日本記録を2秒更新する2時間23分13秒でフィニッシュ。内定の条件を満たしたことで、ブダペスト世界選手権の代表に即時内定しました。このタイムは今季世界2位となる好記録。野田選手は、男子35km競歩の世界歴代記録においても3位へと浮上しました。

2位で続いたのは丸尾選手です。今季世界4位となる2時間25分49秒をマークして、昨年10月の高畠競歩で3秒及ばなかった派遣設定記録(2時間27分30秒)を突破。即時内定は得られなかったものの、ブダペスト世界選手権代表候補の筆頭に立つこととなりました。また、3位でフィニッシュした川野選手は、即時内定の条件であった参加標準記録(2時間29分40秒)を大きくクリアする2時間26分51秒をマークしたことで、ブダペスト世界選手権の代表に内定(上位3選手のコメントは、別記ご参照ください)。このほか4位の勝木選手も2時間28分53秒でフィニッシュして参加標準記録を突破する、ハイレベルなレースとなりました。


岡田・園田がマッチレースで日本新!オープンの劉虹はアジア新をマーク

女子35kmでは、日本勢による世界選手権代表権争いと、世界的なトップウォーカーとして長年活躍する劉虹選手(中国)の歩きという、2つの見どころを一度に楽しめる豪華なレースが実現しました。まず、ここでは日本選手権の勝負から報告していきましょう。

今回の女子は、昨年のオレゴン世界選手権で2時間45秒09秒の日本記録をマークして9位の成績を残した前回覇者の園田世玲奈選手(NTN)と、20km競歩の日本記録保持者(1時間27分41秒、2019年)で、初めて35kmに挑戦する岡田久美子選手(富士通)との対決に注目が集まりました。派遣設定記録(2時間46分00秒)を突破済みの園田選手は、最上位でフィニッシュすれば、この大会で世界選手権の代表に内定。一方の岡田選手は、この大会で派遣設定記録をクリアして優勝すれば即時内定が得られる状況です。前回は園田選手が単独で記録を狙っていかなければなりませんでしたが、今回、女子競歩界を牽引し続けてきた岡田選手が参戦したことで、マッチレースが実現。高いレベルの競り合いが繰り広げられました。

男子と同時スタートで行われた女子は、海外からのオープン参加3選手を含めて全12名が出場。オープン参加の劉選手は単独で歩を進め、日本選手権の先頭は、1周目から園田選手と岡田選手が抜けだして終盤まで“二人旅”を続ける展開になりました。最初の2kmは園田選手が前に出ていたものの、14分13秒で通過した3km以降は、岡田選手が先頭に立ち、園田選手がぴたりとつく並びが定位置に。この辺りから同じペースで歩いていた男子オープン参加の錢文傑選手(香港チャイナ)を含めた同じリズムの一団ができ、レースを進めていきました。

2人は、5kmを23分42秒、10kmを47分33秒(この間の5kmは23分51秒、以下同じ)、15kmを1時間11分09秒(23分36秒)、20kmを1時間34分45秒(23分36秒)と同タイムで通過。この間、1周ごとのラップは、派遣設定記録突破が見込める4分42~47秒のゾーン内で推移し、15km以降では、風が強まったにもかかわらず、4分42~43秒を刻む回数が増えていきます。



好記録誕生の要因となった動きは、終盤にさしかかった22km辺りから静かに始まりました。先頭を行く岡田選手の歩きに、やや翳りを感じた園田選手が並びかけるようにしてペースを上げたことで、2人のラップは、22~23kmは4分41秒に、そして23~24kmは4分38秒へと上がります。園田選手は、25周目に入ったところで先頭に立って、この周回も4分37秒で刻み、25kmを1時間58分10秒(23分25秒)で通過すると、「“離すなら、今だ”と考えた」と、ラストでのスピード勝負を避けるべく、動きを切り替えて次の周回を4分32秒にペースアップ。この1kmで男子の錢選手が完全に振りきられ、「きつさを感じていたので、流れに任せて園田選手につかせてもらった」という岡田選手が、今度は園田選手の後方につき、歩を進める形となりました。園田選手は、27・28周目も4分34秒・4分33秒と、4分35秒を切るペースで押していき、その後は4分37秒に落としたものの25kmからの5kmを22分52秒に引き上げて30kmを2時間21分02秒で通過。しかし、この段階で岡田選手を突き放す目論見は叶わず、勝負は最後の5kmに持ち込まれました。

園田選手の仕掛けに耐えた岡田選手が動きを見せたのは、強風が吹き、雨も時折ぱらつく状況となった33周目のことでした。岡田選手は折返し点に向かうところで園田選手の前に出ると、33kmを2時間34分56秒で通過し、この1kmで7秒のリードを奪います。その後もペースを緩めなかったことで、残り1周の鐘が鳴ったところで両者の差は14秒に。岡田選手は最後の1kmを4分35秒でカバー、満面の笑顔を見せながら2時間44分11秒の日本新記録でフィニッシュしました。

いったんは4分40秒台にペースを落とした園田選手も、最後の1周を4分37秒に引き上げて2時間44分25秒と、自身の日本記録を更新してレースを終了。この結果、即時内定の条件を満たした岡田選手が、35kmでの代表の座を獲得し、2015年北京、2017年ロンドン、2019年ドーハ、2022年オレゴンと20kmで果たしてきた世界選手権連続出場回数を「5」に増やし、5000m競歩と10000m競歩、20km競歩、そして35km競歩と、4種目で日本記録を保持することになりました。即時内定はならなかったものの、園田選手も再び派遣設定記録を大きく上回っての自己記録更新。前回に続いての代表入りは確実で、今後の発表を待つ形となります(両選手のコメントは、別記ご参照ください)。

さて、前述の通り、女子35kmでは、オープン参加の劉選手が、世界最高水準の歩きを披露しました。劉選手は、20km競歩で、オリンピックは金(2016年リオ)、銀(2012年ロンドン)、銅(2021年東京)のメダルを獲得。世界選手権においては、2011年テグ・2013年モスクワ・2015年北京・2019年ドーハと4大会で優勝を果たしている選手。50km競歩の世界記録保持者(3時間59分15秒、2019年)でもあります。

2回目の35kmレースとなったこの日は、スタート直後から、岡田選手・園田選手をも置き去りにして、単独でレースを展開していきました。最初の5kmを23分05秒で入ると、その後は22分44秒(5~10km)、22分20秒(10~15km)、22分12秒(15~20km)とギアチェンジするかのようにペースアップ。20kmを1時間30分26秒で通過し、25kmの通過は1時間52分54秒(22分28秒)と、世界記録(2時間37分44秒、2023年)の更新が期待される状況でレースを進めていきました。風が強まるなど気象条件が悪化したこともあり、その後は22分43秒、23分05秒とペースを落としましたが、世界歴代2位に浮上する2時間38分42秒でフィニッシュ。3週間前の3月25日に行われたWA競歩ツアーで自身がマークしたアジア記録(2時間40分06秒)を、さらに大きく塗り替えました。

レース後、「今日は、天気が良ければ、世界記録も狙えるかもと思っていた」と振り返った劉選手は、実は、1週間前の4月8日に、中国・太倉で行われたWA競歩ツアーの20km競歩に出場して1時間28分49秒で優勝したばかり。今大会では、「20kmレースと連戦するなかで、どこまで行けるかに挑戦した」と言います。ブダペスト世界選手権に向けては、20km競歩では、すでに代表に内定済み(3月5日:1時間27分35秒・3位)ですが、「35kmのチャレンジが入っていくかどうかは、今後決まることになる」とコメント。どうやら、2種目に出場してくる可能性もありそうです。


U20男女10kmは、下池と大山が2連覇を達成

例年、日本選手権と併催している全日本競歩輪島大会は、斉藤和夫杯として実施される男女10kmのほか、U20男女10kmなど全10種目が、4月15~16日の2日に分けて行われました。

大会1日目に行われた男女10kmは、ともに全日本の部とU20の部が同時に行われる形での実施です。男子は、中盤以降からは全日本の部でエントリーした前回覇者の村山裕太郎選手(富士通)と、オレゴン世界選手権20km競歩8位入賞の住所大翔選手(順天堂大学)のマッチレースに。周回のたびに先頭が入れ替わるバトルを繰り広げましたが、最後で前に出た住所選手が39分45秒で優勝。村山選手は1秒差で2位(39分46秒)となりました。3位も順天堂大学の立岩和大選手(40分45秒)がフィニッシュ。全体の4番手には、今回が大学生として迎えた最初のレースとなった下池将多郎選手(順天堂大学)が41分24秒で続き、U20の部で2連覇を果たしました。

女子は、スタート直後は、全日本の部にエントリーした梅野倖子選手(順天堂大学)が前に出て、これにU20の大山藍選手(鹿児島女子高校)と石田さつき選手(武庫川女子大学)がついて3人で先頭グループを形成してレースを進めていきました。3kmを過ぎたところで大山選手が前に出て、大幅にペースアップ。なんとか食らいついた梅野選手を5kmまでに突き放し、その後は独り旅で歩を進め、46分14秒でフィニッシュ。昨年、自身がマークした45分19秒の大会記録には届きませんでしたが、U20の部で2連覇を達成しました。大山選手に続いた梅野選手は、46分48秒で全日本の部を初優勝しています。

このほか、高校男女5kmは西秋克海選手(滋賀学園高校、20分58秒)と奥野紗選手(浪速高校、24分11秒)が、高校1・2年男女3kmは、楠岡史朗選手(慶誠高校、12分48秒)と内藤瑠菜選手(相模原中等教育学校、14分57秒)がそれぞれ優勝。男女中学3kmは、池端龍太郎選手(輪島中学校、16分52秒)と居村美怜選手(辰口中学校、15分10秒)で制しました。

※本文中の記録および5kmごとの通過タイムは公式発表の記録。ただし、1kmごとの通過およびラップタイムは、レース中の速報を採用している。


【日本選手権獲得者コメント(要旨)】

■日本選手権男子35km競歩

野田明宏(自衛隊体育学校)

優勝 2時間23分13秒 =日本新記録、大会新記録

※ブダペスト世界選手権日本代表に内定



勝ちにこだわり、優勝を絶対にするという気持ちでレースに挑んだ。レース展開としては、後半に余裕を持って自分が行けるというタイミングで仕掛けようということをイメージしていたが、24~25kmくらいで少し仕掛けてみて、集団がばらけたかなと思ったので、気持ちを切り替えて一気に行った。日本記録は、正直狙っていなかった。まず勝ちきれたこと、久しぶりに優勝できたことが、すごく今後に意義のあることになってくるんじゃないかと思う。

日本記録の更新は、50km(2018年)の日本記録(3時間39分47秒=当時)以来。私が記録を出すと、すぐにレベルが上がっていく感じがあるので、今回の記録もたぶんすぐに抜かれてしまうんじゃないかな(笑)という思いはあるのだが、ただ、川野(将虎)選手や松永(大介)選手など日本の競歩界で競い合うからこそ、こうしてどんどんレベルも上がっていっていると思っている。記録を出せたことに関しては、本当に素直に嬉しく思っているが、今後も35km(の種目)があるタイミングがあれば、しっかり自分の記録を塗り替えていけるよう精進していきたい。

昨年のオレゴン(35km競歩・9位)では、先頭と全く勝負をさせてもらえなかったことが本当に悔しかった。川野選手をはじめとして、メダル争いをしていた選手は、20kmのベストタイムが速かったので、自分にはそこが足りないと感じて、オレゴンが終わってからは、スピード強化と、それにプラスしてスピードに対しての余裕度をどれだけ高めていけるかということを意識し、2月の日本選手権20kmも、本気で代表枠を取りにいくつもりで準備に時間をかけて臨んでいた。今回のブダペスト世界選手権に向けては、しっかりと先頭でメダル争いできる準備をして夏に挑みたい。


■日本選手権女子35km競歩

岡田久美子(富士通)

優勝 2時間44分11秒 =日本新記録、大会新記録

※ブダペスト世界選手権日本代表に内定



今日は、初めての35kmということで、園田(世玲奈)さんや劉虹選手(中国、オープン参加)から勉強させてもらうという気持ちでスタートラインに立った。「もし、うまくレースを運ぶことができたら…」のイメージとしては、「20kmまではペース歩みたいな感覚で進め、次の10kmを少し頑張る。そしてラスト5kmは少しペースが落ちるかもしれないけれど粘る」というもの。そのイメージだけ持ってスタートした。

実際に歩いてみると、風が強かったり晴れたり雨が降ったりと難しい天候だったので、25kmまでの段階で、思っていたよりもきつさを感じていた。そのため、流れに任せて園田さんの後ろについて、最後に離す(逆転する)みたいな形でゴールした。タイムを出せたのは、園田さんが25km以降に思いきりペースを上げてくれたおかげ。(この結果が出せたのは)自分の力ではないと思っている。世界選手権では、もう少し力をつけて、自分でもコントロールしてペースを上げていけるように頑張っていきたい。

35kmの練習を、2月の日本選手権(20km競歩)後に初めて取り組んで、今日のレースも踏まえて、「底力がついたかな」という感想を持った。天候にあまり左右されなかったという点と、ペースが上がったときに粘れたとか、最後に少しペースを上げることができたとか、そういった部分をまとめると「底力がついた」という言葉になるのかなと思う。パリオリンピックは、残念ながらこの種目はなくなってしまったが、今年1年間、35kmの練習に取り組むことで、10kmや20kmの距離に対応できる力も確実に高まると感じている。

ケガの影響もあり、あまりいい結果を残すことのできなかったオレゴン世界選手権(20km競歩)以降は、取り組みを改めたというよりは継続していったという形。本当は、日本選手権20km競歩で、もう少しいいタイムを出したかったのだが、そこでもうまく行かなかった。しかし、この大会までの間に、いつもお世話になっているトレーナーさんやコーチ陣、スタッフと話し合って、姿勢の改善やフォームのチェックに、よりしっかりと取り組むことができた。35kmのレースペースが、20km競歩よりも少し余裕があることで、フォームのチェックや改善に取り組みやすかったのもプラスに働いた。今回のレースも、スタートから(20km競歩で必要な1km)4分30秒ではなく、4分45~50秒というペースでよかったので、落ち着いて、取り組んできた成果を出せるように歩くことができた。このことは、私にとって、今後、大きく前進するきっかけになっていくのではないかと思う。


【ブダペスト世界選手権代表内定者コメント】

■日本選手権男子35km競歩

川野将虎(旭化成)

3位 2時間26分51秒



今回、第一の目標としていたブダペスト世界陸上の代表権を獲得できたことが、まずよかったなと思っている。
展開としては、集団のなかでしっかりとリズムをつくり、25kmから30kmでスパートをかけられるようなレースを想定していた。ただ、まだスタミナ練習が十分でなかったこともあり、最後の勝負どころで脚が残っていなかった。今年は、この大会に向けて、(東洋)大学1年生のとき以来、6年ぶりに2月の日本選手権(20km)に出場していて、いつもとは違う流れで臨んでいた。スタミナ練習が不足していたという課題は、それゆえともいえる。ブダペスト世界陸上まで残り4カ月。しっかりと最善の準備をして、本番で、ベストのパフォーマンスが出せるような状態に仕上げて臨みたい。


【ブダペスト世界選手権派遣設定記録突破者コメント】

■日本選手権男子35km競歩

丸尾知司(愛知製鋼)

2位 2時間25分49秒 =大会新記録



昨年負けて(4位でオレゴン世界選手権出場権獲得を逃して)から、この1年間は非常に長かった。悔しい思いを持ち続けて、たくさんの方々の支えのおかげで、なんとか最低限の目標(世界選手権出場権獲得に必要な派遣設定記録の突破)を達成することができた。優勝して即内定を決めることができれば最高ではあったが、今回の結果で、かなりいいアピールができたと思う。

練習で準備してきたところが、(1kmのペースで)4分00秒から4分10秒のゾーンを、いかにエコノミーな動きで歩いていけるかということだった。そのため、前半は予定よりも、ちょっと速いかなというくらいのペース。でも、集団の流れに乗るしかなかったので、若干無理をしながら行っていた。中盤は、自分でペースもつくりながら進めることができたが、野田(明宏)がペースを上げたところはもう自分は限界だったので、残りの距離も考えるとついていくことができなかった。今の実力がそんなところだったかなと思う。

50kmから35kmに変わって、ターゲットとするスピードのゾーンが変わったので、そこに対応できていないところを真摯に受け止め、そこを1年間かけて向かい合ってきた。チームメイトの山西(利和)くんをはじめとして、いろいろな人に助けてもらいながら、自分の弱さに対して向かい合った結果が、まだまだではあるが今日の結果に辿り着いたと感じている。


■日本選手権女子35km競歩

園田世玲奈(NTN)

2位 2時間44分25秒 =日本新記録、大会新記録



目標としていた「優勝して、世界陸上(代表に)内定する」ということは実現できなかったが、世界選手権に向けて、自分のなかで「もう一度出場するんだ」と思って取り組んできたので、今日のレース展開的にも、世界で戦うための準備ができたのはないかと思う。

今回は、「優勝すれば、世界選手権代表に即時内定」という状況だったので、レースプランとしては内定狙いで考えていた。ただ、後半に入ったところで、岡田さんが少しきつそうな雰囲気だったので、「離すなら、もう今、離さなければ」と考えて、前に出てペースを上げた。ラストでの短い距離でのスパートは自信がなかったので、自分もしんどいところではあったけれど、積極的に前に出て、そこからじわじわと引き離していけたら…と思っていたのだが突き放すことができず、また、自分でも前に出るのが少し早すぎたと思ったので、ペースを落としたのだが、それによって勝負を決めるようなリードを奪うことができずに進んでしまった。そこは、いいレース展開がまだまだ見出せなかった自分の力不足だと思う。

今回、岡田(久美子)さんの後ろでずっと歩かせていただいて、余裕度だったり力強さだったり、まだまだ自分には足りない部分があることを実感した。自分のなかでも苦手とするスピードなど、課題はまだまだ多くある。もし、(世界選手権代表として)世界に挑戦できるチャンスをいただけるのなら、今とは違う取り組みを、もうひと段階も、もうふた段階も改善して、もっと世界に通用するようなレース展開や力をつけていきたい。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト


◎ダイジェスト映像




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◎第107回日本陸上競技選手権大会・35km競歩 大会ページ

https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1750/ 


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