オレゴン世界選手権2022の大会最終日は、午前6時15分に競技が開始された男子35km競歩の決勝からスタートしました。夜が明けて間もない時間帯となったスタート時点の気象状況は、気温が11℃と肌寒さを感じるほどでしたが、競技終了時点の気温は17℃に上昇。20℃は切ったものの、日が高くなるとともに、強い日差しが照りつけるなかでのレースとなりました。
日本からは3選手が出場。スタートの号砲とともに、松永大介選手(富士通)が、公言していた通り1人で飛び出し、後続との差をぐんぐん広げていき、川野将虎選手(旭化成)、野田明宏選手(自衛隊体育学校)を含む大きな集団が、松永選手を追う滑りだしとなりました。松永選手は、中盤にさしかかるあたりでペースダウンし、20kmを過ぎた地点で、川野選手を含む第2集団に吸収・逆転されました。トップ集団は、その後、徐々に人数を減らして、最終的に東京オリンピック20km競歩金メダリストのMassimo STANO選手(イタリア)と川野選手のマッチレースに。川野選手の逆転を許さなかったSTANO選手が2時間23分14秒で先着しました。川野選手は、わずか1秒後れてのフィニッシュで、自身が日本選手権でマークした2時間26分40秒の日本最高記録およびアジア記録を大幅に更新する 2時間23分15秒で、自身初の世界大会メダルとなる銀メダルを獲得しました。
日本勢2番手で続いたのは、一時は6位まで浮上していた野田選手。最終の周回に入った段階(34km)では7位をキープしていましたが、最後で逆転を喫し、9位でフィニッシュ。8秒差で入賞を逃したものの、従来の日本最高記録およびアジア記録を上回る2時間25分29秒をマークしました。終盤、大きくペースを落とした松永選手は、2時間33分56秒・26位でレースを終えました。
競技後の各選手のコメントは、以下の通りです。
◎川野将虎(旭化成)
男子35km競歩 決勝 2位 2時間23分15秒 =日本最高記録、アジア新記録
※コメントは別途掲載済みhttps://www.jaaf.or.jp/wch/oregon2022/news/article/16964/
◎野田明宏(自衛隊体育学校)
男子35km競歩 決勝 9位 2時間25分29秒 =日本最高記録、アジア新記録
日本選手権の段階で「もう一つ甘いな」と課題にしていた部分が、今回の世界選手権でも出てしまった。ずっと課題にしてきたのだが、そういうところが最後の甘さだったなと思う。
本当は集団のなかでレースを進めたかったのだが、思っていた以上に自分の身体が動かなかった。ただ、ペース的には悪くないなと思いつつ、後半で前の選手が落ちてくるだろうという思いで前を追ったが、世界はそうは甘くなかった。もっと前半からしっかり積極的に勝負していくように、今後、修正していかなければならないと思った。
コンディションは非常に良かった。今までレースを積み重ねてきたなかで、精神的にも肉体的にも一番いい状態でこの大会には挑めていた。「いい順位で行ける」と自分でも思っていたのだが、本当に世界は甘くなくて、全然勝負をさせてもらえなかった。
レース中は、沿道でたくさんの方々が、順位等を言ってくださったので、それを自分の頭のなかに入れながら、しっかり前は追えていたのだが、なかなか差が詰まってこなかったし、後半で本当に自分がきつくなったときに抜かれてしまった。たくさんの方々にサポートや応援をいただいたのに、この結果は、本当に情けない、申し訳ないと思う。
(50kmで途中棄権に終わった前回の)ドーハからすれば、完歩できたことは成長なのかなと思うのだが、もう一つ上のレベルで戦うにはまだまだなんだなと思う。
ここを1歩として、また着実に、今回の課題点を谷井さん(谷井孝行コーチ)と修正していって、また次にしっかりとつなげていきたい。
◎松永大介(富士通)
男子35km競歩 決勝 26位 2時間33分56秒
正直、準備不足だと思う。脚のケガもあったりして、順調じゃなかった部分が、完全に今回レースの途中で出てしまった。ケガは5月の下旬に右膝の膝蓋靱帯炎を発症して、そこから腸脛靱帯とかがずっと痛くて、そのなかで無理に練習もしていた。(それを考えると、この結果は)しょうがないといえばしょうがないし、逃げきれるほど甘くはなかった。
展開としては、4分05(秒)ペース(で進めていく)というのが一つの目安になると思っていたので、ある程度は計算通りだったと思う。やりたいレースはできた。後悔はない。
(久しぶりの世界大会、また、U20世界選手権で金メダルを獲得したユージーンでのレース。どんな思いで歩いたか、との問いに)やっぱりメダルは取りたかったし、本当は、ここでメダルを取って、引退しようと思っていた。取れなかったので、あと2年間だけ、最後の2年間を、メダルを懸けて頑張りたい。
(追う選手も4分05秒台で追ってくるようになると、今後、逃げるというのは難しくなってくるのでは、との問いに)難しいから挑戦するんです。難しいからこそ挑戦したいし、だからこその速さも強さも兼ね備えた選手だと思うので。自分がやることは変わらない。
多くの方に支えていただいて、ようやくここまで戻ってこられた。正直、今年の世界陸上に出られるとは思っていなかったし、この3年計画のうちに世界陸上は入っていなかった。この経験を踏まえて、残りの2年、最後の2年を有終の美で飾れるように、しっかり準備したい。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト
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