2022.07.05(火)大会

【オレゴン世界選手権】男子4×100mリレーは新チームでのメダル獲得へ!男子短距離日本代表公開練習レポート&コメント(100m・200m・4×100mR)



7月15日に開幕するオレゴン世界選手権の日本代表選手は、6 月 29 日にワールドアスレティックス(WA)から発表された個人種目およびリレー種目の出場資格の確定を受けて、新たに男子20名・女子17名の計37名が代表に決定し、すでに発表となっていた競技者と合わせて、64名の日本代表選手が出揃いました。
男子短距離は、7月1日~3日の3日間、東京都北区にある味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で合宿を実施して、海外を拠点にしているサニブラウンアブデルハキーム選手(Tumbleweed TC、100m、4×100mR代表)を除く、100m・200m・400m・4×100mR・4×400mR・混合4×400mRの代表選手11名を招集。大会に向けたチームミーティングを行ったほか、バトンパスワークを中心としたリレー種目のトレーニング(混合4×400mRは、7月2・3日の日程で合宿を組んだ女子代表3選手とともに実施)に取り組みました。
7月2日には、NTCの陸上トレーニング場において、メディアに向けて練習を公開。この日も、梅雨明け以降の猛暑が続き、練習会場に接地設置されている気温計が37℃を示すなかでのトレーニングとなりました。4×100mRについては、合宿1日目と3日目にリレー練習を組んでいたため、各選手は、個々に自身の計画に沿ったトレーニングを展開。厳しい暑さのなか、スプリントドリルを実施する者、ハードルやチューブを使ってのドリルに取り組む者、スタート練習や250m走に取り組む者など、それぞれが丁寧かつ集中した様子で、練習に向かっている様子が印象的でした。
4×400mRチームは、この日、いろいろな組み合わせでのバトンのパスワークを実施。受け手がスタートするタイミングや渡し手の声のかけ方などを確認していました。1回ごとに、選手間で感触を話し合ったり、映像を見て動きを確認したり、コーチングスタッフに助言を求めたりするなかで精度を高めていく様子が見られたほか、他の選手が立ち止まって走路をふさいでいる状態を設定したなかでのパス練習など、実際のレースで起こりうるシチュエーションを踏まえた、より実戦的な取り組みも行われていました。
トレーニングを終えた午後には、参加全選手が、1人ずつ合同記者会見を含めた報道各社の取材に臨み、自身の現在の状況や、世界選手権での目標などを離しました。以下、各選手のコメント(要旨)をご紹介します。


【100m、200m、4×100mR代表選手コメント】




坂井隆一郎(大阪ガス) 100m、4×100mR

日本選手権、布勢スプリントと、自分のなかではいい状態を保てている。世界陸上も、このまま行けたらと思っている。世界陸上の日本代表は初めてで、今回の代表合宿に臨むに当たっては、少し不安もあったが、顔を知っている方もいるし、すごくなごやかな雰囲気で練習できている。世界陸上にも、いい雰囲気で臨めるのではないかと思っている。

世界陸上は、世界の名だたる選手たちがたくさん出てくる、陸上のなかではすごい大きな大会だと認識している。100mでは、9秒台を世界陸上で出したい。また、準決勝、決勝と、1つでも多くのラウンドを走りたいと思っている。4×100mRは、日本のリレーはすごく注目されている種目でメダルも狙える範囲。メダル獲得に貢献したい。

リレーに関しては、昨年、世界リレー(※シレジア・ポーランド、4×100mRで1走を務めて3位)を経験していて、日本のリレーのノウハウは、そのときに学ぶことができた。今回も、それを活用しながら、日本のリレーをしっかりできればといいなと考えている。1走はすごく注目される部分でもあるが、自分の一番の武器はスタートから中盤なので、(本番では)世界でも通用するような1走ができればと思っている。

これではケガなどがあったが、今年に関しては冬場から今までケガがなかったので練習が積めている。また、冬期からウエイト(トレーニング)に力を入れていて、そのおかげで筋力をアップすることができ、自分の動きが、自分が思い描いている完璧なものに近づいてきていることが、今季の好調につながっているのではないかと思う。

(“ロケットスタート”ができる理由は? との問いに)もともとスタート自体は得意だったが、さらに磨きをかけることができたのは、ずっと腸腰筋を鍛えたきたことによるもの。毎日のように地道にそのためのドリルをやってきたことで、自然と脚が上がるようになってきて、スタートのときでも腸腰筋が自然と上がってくるので初めからピッチを回せるようになった。また、セット(ヨーイ)の位置から腰の位置を変えずに水平に出ていくことができるのが僕の強みだと思っているのだが、それもドリルで、スタート後の4歩を(地面と)平行に出ていくことを意識しながら練習してきた。それらがすべて結びついて、スタートに磨きがかかったのではないかなと思う。




上山紘輝(住友電工) 200m、4×100mR

日本選手権のあとは、レースに出たのは、布勢スプリントの1回だけだが、状態は悪くなく(優勝、20秒52、+1.2)、いいコンディションを保つことができている。このまま(状態を)上げていければいいなと思っている。

世界選手権は、ずっとテレビで見ていた世界。(ウサイン・)ボルト選手など、そういう選手が走っているのを見て「すごいな」と持っていた場所に、自分が今から行くというのは、想像したくてもできないこともあり、「夢のような舞台」という感じがある。今回は、個人種目(200m)と4×100mRにエントリーさせていただけることになった。個人種目では、しっかり「自己ベストを更新する、自分の走りをする」ところを目標に精いっぱい走りたい。

200mでは、しっかり前半から攻めていき、コーナーの出口のところで、(他選手よりも)一つ身体が前に出るレースをいつも目標にやっているので、そこが自分の一番の持ち味かなと思っている。また、そこをしっかり走れるように練習も続けているので、(世界選手権でも)それが出せたらいいなと思っている。リレーは、大学時代は1走と3走しかやってきていないのと、ここ最近は3走なので、一番走れるとしたら3走だと思うが、任されたところをどこでも行けるように、しっかり準備はしていきたい。

(ここまでの競技生活のなかで一番の転機となったことはあるか、との問いに)大学1年のときに出場したU20世界選手権(2018年、タンペレ・フィンランド)。このときに初めて日本代表というものを背負って海外でレースさせていただいた。そこで「次はシニアの舞台で…」と思うようになり、やっとここまでこられたなというのがある。U20世界選手権では、200mは自己ベストを出すことはできなったが、準決勝まで進んで「決勝の舞台で走りたいな」と思ったし、4×100mR(3走)も100分の1秒差で4位とメダルが取れなかったので、その悔しさもすごくあった。「もう一度、最高の舞台で(走りたい)」という思いが強くなった大会だった。

こういう代表の合宿に参加するのは、今回が初めてとなる。どういう雰囲気なのかなとか、(仲間に)入るのにどうやって入っていたらいいかなとかいうのがあったが、小池(祐貴)さんがリードしてくださって、坂井(隆一郎)さんだったり、同期の(鈴木)涼太であったり、経験の豊富な栁田(大輝)であったりとか、みんな優しく接してくれたので、楽しい合宿になっている。(同じ内容を)一緒に練習することはなかなかないと思うが、練習に向かう姿勢などは、それぞれにあって、みんな目標は世界陸上でいい活躍をすること。この合宿では、そこへの意識の向け方などを、しっかり学んでいきたい。




小池祐貴(住友電工) 200m、4×100mR

今季は、試合を重ねるにつれて、いいところと悪いところがはっきりしてきた。そのなかで、今は無駄をそぎ落としている段階だが、ここから(本番までの)2週間で、今シーズンで一番いい状態に持っていけるのではないかという手応えがある。

個人種目で出場する200mに関しては、どこのラウンドに進むかというよりは、「自分が納得できる走りができるか、感覚が得られるか」というところのほうが、今の自分にとっては一番大事かなと思っている。どこまで走れるかはわからないが、個人のレースが終わった段階で、「今の自分にできることは全部出しきったな」という走りができれば…。まずは、今の自分のポテンシャルを、どのラインまで引き出せるかということを考えてトレーニングを積んでいる。

リレーに関しては、1回ミーティングを開いて全体で意識共有をしたのだが、今回に関しては「メダルを狙うぞ」というのが一番大事なところ。コーチ陣から数値的な説明もあったが、十分に現実的な目標だと思っている。明日もバトン練習をするが、みんなは「行けるぞ」と思いながら練習に臨める状況ができている。

今回、4継(4×100mR)のメンバーは、がらりと変わった。(アメリカが拠点であるサニブラウンアブデル)ハキームくんが向こう(アメリカ)にいることもあって、この合宿も、今までに組んだことのあるメンバーは1人もいない状況。いろいろな場面で「いやあ、若いな」と一歩引いて見ていることが多く、なんか不思議な感覚がある。これまで、自分が下の年代だったことが多かったので、逆にいきなり(年齢が)一番上になって、まだ27(歳)だが「年くったなあ」といった感情を、随所で感じている。

メンバーのなかではキャリアはあるほうだし、アンダーハンドパスに関しても、僕はジュニア期からやっているので、どういうときにミスが出るかとか、どういうときにうまくバトンが流れるかとかはわかっている。そうしたことを(新しいメンバーに)伝えることができればと思っている。また、分析で出してもらえる細かい数字は、僕も最初は、「何がどの数字なのか」「どこ(の数値)が良くなればいいのか」がよくわからなかったので、僕が最初によくわからなかったところを、アドバイスすることで、できるだけなくしてあげればいいのかなと思っている。

(失格という東京オリンピックの結果を踏まえて、今回のリレーに向けての思いを、との問いに対して)メンバーががらっと変わったので、「踏まえて」というのは僕の気持ちにはないし、「去年の悔しさを晴らすぞ」というのを変に出す気もない。ただ、僕に関しては、世界大会でリレーのメダルは取っていないので、自分のパフォーマンスをしっかり出して、ぜひ、そこに貢献したい。どちらかというと、「このメンバーで、それぞれがしっかり自分の走りをして、ばっちりバトンをつないで、どこまで行けるのかな」ということを楽しみにしている。




栁田大輝(東洋大学、ダイヤモンドアスリート) 4×100mR

先週、布勢スプリントがあったが、日本選手権の疲労や暑さ慣れしていなかったこともあり、不甲斐ない結果に終わってしまった。そこは終わったことと切り替え、ここまでの1週間はしっかりと休み、リフレッシュして、この合宿からまた練習を再開している。昨日、今日と練習して状態がよかったので、ここからまた練習を積んで地力をつけて本番に臨みたいと考えている。

小学校のころに「日本代表になりたい」と思うようになり、今年、本当に自分が日の丸をつけて走れるようになった。代表になったからには、メダルを取ったりしてきた今までの日本代表の実績に恥じないような走りができればいいなと思う。去年の東京オリンピックは、日本のリレーチームに帯同したが、どういう雰囲気がよくわからずに参加していた。1年前は、「いろいろなことを経験する」という気持ちだったが、今年は「自分が走って、メダル争いに貢献する」という、「自分がやってやる」という気持ちで臨めている。

リレーの合宿には、昨年も参加させていただいているので、バトンの練習も初めてのことではない。今回はまだ、そんなに本格的にはやっていない状況だが、自分がすでに持っている技術として、すんなり練習に取り組めるので、バトン技術とかを去年勉強できていてよかったなと思っている。

メンバーも、坂井(隆一郎)さん、鈴木(涼太)さんとは、昨年の世界リレー(シレジア・ポーランド、4×100mRでアンカーを務めて3位)以来、1年ぶり。去年は、ともに(ポーランドへ)行って、帰国後の2週間の隔離も一緒に経験しているので、よく知っているというか(笑)、すごくやりやすい、いい雰囲気ができている。

自分の持ち味は、ストライドを生かした走り。リレーの走順は、どこがいいとかはなく、逆に、「ここやれ」と言われたら、そこで自分の持てる力を出すだけだと思っている。今回は、リレーだけのエントリーで、本番で走るかどうかもまだわからないので、(具体的な目標となると)今はちょっとなんとも言えないところではあるが、走ることになった場合は、自分の持っている力を最大限に発揮して、メダルを取れるように頑張りたい。




鈴木涼太(スズキ) 4×100mR

日本選手権は、100mと200mの両方を走ったことで、大会後はかなり疲れが出ていて、出場を予定していた布勢スプリントは欠場したが、その後、だいぶ体力も回復して、順調に練習を積めている状況である。

今回の合宿は、昨年の世界リレー(シレジア・ポーランド、4×100mRで2走を務めて3位)のときに一緒に組んでいた選手も多くいて、世代的にも自分と近い選手が多いので、すごくいい雰囲気。坂井(隆一郎)選手や栁田(大輝)選手あたりは、世界リレーの際に、(帰国後の隔離期間も含めて)長い時間、一緒に過ごしたこともあって、プライベートの話も多くする仲である。

世界選手権では、日本代表として、チーム一丸となって、メダル獲得を目標に頑張りたい。自分の走りの特徴は、前半の部分で、ハマるときはすごく良い走りができること。そこからしっかりと後半につながるいい走りをしたい。リレーは、これまでに2走と4走を多く経験しているので、そこを走れたらいいなと思っている。



※コメントは、代表共同取材における各選手の発言をまとめました。より明確に伝えることを目的として、一部、修正、編集、補足説明を施しています。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォート・キシモト



■オレゴン2022世界陸上競技選手権大会特設サイト
https://www.jaaf.or.jp/wch/oregon2022/

■オレゴン2022世界選手権日本代表選手
https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202207/01_133608.pdf

■オレゴン2022世界選手権競技日程
https://www.jaaf.or.jp/wch/oregon2022/timetable/

■【オレゴン世界選手権】男子マイルリレーは日本新記録&決勝進出を目指す!男子短距離日本代表公開練習レポート&コメント(400m・4×400mR・男女混合4×400mR)
https://www.jaaf.or.jp/news/article/16636/ 

>>男子短距離(100m・200m・4×100mリレー)予選スケジュール※日本時間

・男子100m:7月16日(土)10:50~
・男子200m:7月19日(火) 9:05~
・男子4×100mリレー:7月23日(土)10:05~

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