2022.06.01(水)大会

【第106回日本選手権展望】男女ハードル編~男子110mハードル泉谷が再び大阪で日本新を目指す!男子400mハードル・黒川は日本人3人目の47秒台に挑む!



第106回日本陸上競技選手権大会」が6月9~12日、大阪市のヤンマースタジアム長居で開催される。今回は、7月15~24日にアメリカで行われるオレゴン世界陸上競技選手権大会の日本代表選手選考競技会を兼ねており、5月7日に実施された男女10000mと、6月4~5日に実施される男女混成競技(十種競技、七種競技)を除くトラック&フィールド34種目(男女各17種目)の決勝が組まれるタイムテーブル。2022年度日本チャンピオンの座が競われるとともに、2024年パリオリンピックに向けた最初のビッグステージとなる世界選手権の出場権を懸けた戦いが繰り広げられる。

オレゴン世界選手権の出場資格は、昨年の東京オリンピックと同様に、ワールドアスレティックス(WA)が設定した参加標準記録を突破した者と、各種目におけるターゲットナンバーを満たすまでのWAワールドランキング上位者に与えられる。日本における選考は、日本陸連が定めた代表選考要項(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202112/16_191504.pdf )に則って進められるため、日本選手権で即時内定を決めるためには、3位以内の成績を上げたうえで、日本選手権での競技を終えた段階で参加標準記録を突破していることが条件。まず、これを満たした競技者が、第1次日本代表選手として大会翌日の6月13日に発表され、以降、条件を満たした段階で随時追加がなされ、参加標準記録有効期間が終了する6月26日以降に、全代表が出揃うことになる。

即時内定とならなかった場合でも、日本選手権における成績(順位)が大きな鍵となるだけに、どの種目でも大激戦となることは必至。ここでは、オレゴン世界選手権代表の座を巡る戦いに焦点を当てて、各種目の注目選手をご紹介していく。
※エントリー状況、記録・競技結果、ワールドランキング等の情報は5月31日判明分により構成。ワールドランキング情報は、同日以降に変動が生じている場合もある。

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト/アフロスポーツ

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【男子110mハードル】

泉谷、大阪で再び日本新&日本代表内定を目指す!

男子110mハードルは、この4年で、世界との差をぐんぐんと縮めてきた種目。昨年は、この大会で泉谷駿介(住友電工、当時順天堂大)が日本記録を13秒06まで引き上げるとともに、準決勝進出を果たした東京オリンピックでは、決勝進出に、あと0.03秒というところまで肉薄した。牽引役の1人であった金井大旺(当時ミズノ、前日本記録保持者、東京オリンピック代表)は第一線を退いたが、その不在を寂しく感じさせない充実ぶりが今年も続く。
万全であれば、優勝候補の筆頭となるのは泉谷だ。昨年のパフォーマンスをみても、日本記録以外に13秒2台後半を2回、13秒3台前半を4回と安定感でも群を抜く。ただ、今季は、日本選手権室内のレース中に左足首を痛めるアクシデントに見舞われ、織田記念は予選を走ったものの(14秒10、-1.3)、決勝は棄権。セイコーGGPを欠場して治療に専念している。回復の経過は順調で、日本選手権には間に合う見通し。オレゴン参加標準記録の13秒32はすでに突破しているが、2連覇での即時内定を狙ってくるだろう。



泉谷に土をつけるとしたら、順天堂大の後輩にあたる村竹ラシッドか。ポテンシャルの高さは知られていたが、大学2年目の昨シーズンに急成長を遂げた。昨年は日本選手権の予選で東京オリンピック参加標準記録を突破する13秒28の学生記録、U20日本最高記録を樹立したが、決勝を不正スタート(フライング)で失格。まさに「天国と地獄」を味わった。今季は、日本学生個人選手権、織田記念、セイコーGGPと3連勝。セイコーGGPでは参加標準記録に0.02秒と迫る13秒34(+0.1)をマークしている。関東インカレは欠場したが、これは腰に不安が出たため大事をとっての対応で、大きな支障はないとのこと。日本学生個人選手権では準決勝で追い風参考(+2.2)ながら13秒30で走っており、標準記録突破は射程圏内だ。WAワールドランキングは現在32位でターゲットナンバー(40)内に入っているが、日本選手権では、前年走ることが叶わなかった決勝で先着し、即時内定条件を満たしてのオレゴン行きに挑む。



3月の日本選手権室内で初優勝を果たした野本周成(愛媛陸協)は、直後に臨んだ世界室内で、準決勝に進んで8番目のタイムをマークしながら同記録2名での抽選で決勝進出を逃した選手。「9レーンある競技場だったら」と思わずにいられない悔しい結果ではあるが、この戦績でWAワールドランキングはターゲットナンバー内の39位に浮上した。昨年13秒38まで自己記録を更新していることを考えると、参加標準記録突破も視野に入れての戦いになるはずだ。



泉谷・金井とともに、“男子トッパー”をリードしてきた高山峻野(ゼンリン、元日本記録保持者13秒25、東京オリンピック代表)は、故障や体調不良の影響で今季は13秒74にとどまっている。WAワールドランキングは野本に続く日本人4番手ながら、ターゲットナンバー内となる39番目にとどまる。日本選手権の記録と順位が、2017年から続く世界大会連続出場なるかに直結する。
石川周平(富士通)は、前回大会の予選で13秒37の自己新をマークしながら、決勝で村竹とともに不正スタートで失格する無念を味わった。持ち味とする終盤の豪快な追い込みで、2019年の3位を上回る最高成績が欲しい。このほか、昨年13秒41・13秒45まで記録を伸ばしてきた藤井亮汰(三重県スポ協)・横地大雅(法政大)も力のある選手。上位争いはもちろんのこと、決勝進出を巡る戦いも、熾烈なものになりそうだ。




【男子400mハードル】

オレゴン行きに王手の黒川、狙うは日本人3人目の47秒台!

昨年の東京オリンピックに向けては、黒川和樹(法政大)山内大夢(東邦銀行、当時早稲田大)安部孝駿(ヤマダホールディングス)豊田将樹(富士通)の4選手が48秒90の参加標準記録を突破した状態で日本選手権を迎え、黒川、山内、安部が代表入りを果たした。この3選手、そして2019年ドーハ世界選手権に出場している豊田を含めて、今回も、男子400mハードルには、過去にオリンピックや世界選手権に出場した選手が多数顔を揃える豪華な陣容となっている。
“オレゴン行き切符争奪戦”でリードを奪っている感があるのは黒川。木南記念で世界選手権参加標準記録にぴたり並ぶ48秒90をマークして、この種目での最初の突破者となった。セイコーGGPでは、世界歴代2位の46秒17の自己記録を持つ東京オリンピック銀メダリスト、ライ・ベンジャミン(アメリカ)の胸を借りるレースを展開し、49秒08でベンジャミンに続いた。関東インカレも地力を見せて49秒22で快勝している。連覇で即時代表内定させる可能性は高く、世界選手権本番を見据えるのであれば、日本人3人目となる47秒台にいかに近づけるかが見どころとなる。



本来であれば、その黒川が実現できなかった東京オリンピック準決勝進出を果たした山内、そして、豊富な代表経験を持つ安部が、優勝候補に上がってくるところだが、ともにケガの影響で今季はレースに出ておらず、復調ぶりが気になるところ。WAワールドランキングでの出場は見込めない状況となっているため、世界選手権に出場するためには参加標準記録の突破が必要だ。



今季、安定した好走を続けているのが黒川と同じ法政大出身で、苅部俊二コーチに師事する岸本鷹幸と豊田の富士通コンビ。出場者のなかで最も良い自己記録(48秒41、2012年、日本歴代5位)を持つ岸本は、2012年ロンドンオリンピック代表で、世界選手権では2011年・2013年と2回準決勝に進出している実力者。昨年の日本選手権は3位でフィニッシュしたが、参加標準記録を突破できていなかったためにオリンピック出場はならなかった。ターゲットナンバーが40のこの種目で、WAワールドランキングは現在39位。最年長として臨む今大会で6回目のタイトル獲得が実現すれば、4大会ぶりの世界選手権出場に大きく近づくことができるはずだ。豊田は東京オリンピック代表に限りなく近い位置にいながら、わずか0.41秒差(日本選手権5位)で逃した悔しさを晴らしたい。ワールドランキングでは黒田(23位)に続いて36位。パリオリンピックに向けたスタートとなる今大会で、どんな走りを見せるか。



このほかでは、ワールドランキングで日本人4番手にいる山本竜大(SEKI A.C.)は、2020年に49秒12をマークしている選手。また、「次代のエース」として期待されながら、故障で苦しむ時期が長かった出口晴翔(順天堂大、ダイヤモンドアスリート修了生)も3年ぶりに49秒77の自己新を出し、勢いに乗る。関東インカレで49秒31をマークして出口を抑え、黒川に続いた陰山彩大(日本大)とともに、48秒台に向けての好走を期待したい。


【女子100mハードル】

日本記録保持者の青木に今季好調の福部が挑む!

2019年に12秒台に突入すると、昨シーズンには寺田明日香(ジャパンクリエイト)青木益未(七十七銀行)が揃って12秒87まで日本記録を更新した女子100mハードル。東京オリンピックにはWAワールドランキングで寺田、青木、木村文子(エディオン)が出場を果たした。この3選手のうち、木村が昨シーズンをもって引退。寺田は、今季は「苦手はところや、後回しにきてきたことに向き合う」として、日本選手権へのエントリーを見送った。パリオリンピックに向けてのスタートとなる今回、どんな選手が台頭してくるかも興味がもたれる。
今シーズン、上々のスタートを切ったのは青木。屋外初戦の北陸実業団選手権で12秒86 (-0.2)をマークし、寺田と2人で保持していた日本記録を単独のものにした。このときは100mでも2.3mの向かい風のなか11秒66の好走を見せている。しかし、その後、足に痛みが出て、織田記念は3位(日本人2位)、セイコーGGPは9位(日本人6位)と思うような走りができていない。万全であれば、世界選手権参加標準記録の12秒84を上回っての日本記録更新も期待できるが、回復次第といった状況だ。ターゲットナンバーが40のこの種目で、現段階のWAワールドランキングは31位。2年ぶり3回目となる日本選手権優勝とともに、オレゴン行きチケットを着実に手にできる記録を残したい。



今季、大きな飛躍を遂げそうな走りを見せているのが福部真子(日本建設工業)。織田記念では13秒21(-2.8)で日本人トップの2位に。セイコーGGPでは、3年ぶりに自己記録を更新する13秒05(-0.1)で、世界記録保持者のケンドラ・ハリソン(アメリカ)に続き2位でフィニッシュした。4月には100m(11m96)、200m(24秒52)でも自己新をマーク。スピードの向上が窺え、12秒台に突入してくる可能性も十分にある。高校時代から第一線で活躍してきた選手だが、日本選手権のタイトルはまだ獲得していない。現段階のワールドランキングは41位。初の世界選手権出場に繋がるような記録と結果を残したい。



結婚を機に環境を変えてのシーズンインとなった紫村仁美(静岡陸協)は、この冬はアメリカでトレーニングを積み、3月にテキサスリレーで3.9mの追い風参考記録ながら13秒05の走りを見せている。自己記録は初優勝した2013年日本選手権でマークした13秒02で、これは今も大会記録。2015年以来3回目となる優勝とともに大会記録の更新、さらには12秒台を狙っていきたい。



昨年、日本歴代3位タイの13秒00をマークした鈴木美帆(長谷川体育施設)は、今季は13秒33にとどまっている。終盤の走りが光る選手。13秒0~2台を連発した昨年6月のような状態に仕上げられるか。学生では、昨年、初めて14秒を切って一気に13秒26まで記録を伸ばしてきた玉置菜々子(国士舘大)が気になる。今季も4月に再び13秒26をマーク。本番でこのタイムが出せれば、上位争いは可能だろう。13秒18(2019年)の自己記録を持つ田中佑美(富士通)も力のある選手で、今季ベストの13秒38は、向かい風1.3mのなか出したもの。前回、2位となった清山ちさと(いちご)も含めて、各選手の力は拮抗している。ハードルへの接触やインターバルのバランスの崩れなど、些細なミスが明暗を分けるようなレースとなりそうだ。


【女子400mハードル】

日本GPシリーズ連勝中の宇都宮が王座奪還か、山本が連覇なるか!?

世界選手権参加標準記録は55秒40で、日本記録(55秒34、久保倉里美、2011年)に迫ることが必要となってくる。出場選手の自己記録を見ても、まだ少し差があると言わざるを得ない。まずは複数が56秒台で優勝争いするような活況を目指したいところだ。
春先の日本GPシリーズは、中2日という短いスパンで続いた木南記念、静岡国際ともに、宇都宮絵莉(長谷川体育施設)が日本人トップの座を占め、5月には東日本実業団も制した。57秒43のシーズンベストは静岡国際の決勝で出している。毎回、課題に取り組みながらのレースで、手応えは得られているとコメントしており、昨年マークした自己記録56秒50(日本歴代6位タイ)を更新しての4年ぶりの日本選手権獲得に意欲を燃やす。現状で、WAワールドランキングは39位で、ターゲットナンバー(40)内にはとどまっているが、今後、各国で競技会が増えていくことを考えると、日本選手権で、さらに順位が上がるような結果を狙う必要がある。



春のサーキットが一段落するまでは、この宇都宮の記録が今季日本リスト1位を占めていたが、5月28日の関西インカレで、前回、日本選手権初優勝を果たした山本亜美(立命館大)がセカンドベストとなる57秒29の今季日本最高で優勝。調子を徐々に上げてきている。自己記録の57秒04は、昨年の日本選手権の予選でマークしたもの。今季は56秒台突入を目指しているという。宇都宮らとうまく競り合うなかで更新していくことは十分に可能とみる。



コロナ禍の影響で延期となり2020年の秋に開催された日本選手権で、日本歴代6位の56秒50をマークして優勝しているイブラヒム愛紗(メイスンワーク)は、昨年は記録のばらつきが大きかったが、今季は58秒台で推移。5月29日の記録会では、シーズンベストを58秒11まで引き上げてきた。もう一段階上がった状態で当日を迎えられるようだと上位争いに加わってくるだろう。



静岡国際で山本を抑え、57秒61で宇都宮に続いた梅原紗月(住友電工)の自己記録は2016年にマークした56秒79。この記録にどこまで迫れるか。関東インカレを57秒83の自己新で優勝した松岡萌絵(中央大)は、大学1年の昨年からこの種目に取り組み、今季初めて60秒を切って4試合でここまで記録を伸ばしてきた。レース展開によっては、さらに記録を伸ばしてきそうだ。その松岡には敗れたものの、関東インカレで57秒96をマークしている青木穂花(青山学院大)は、日本学生個人選手権では山本を抑えて優勝を果たしている選手。この種目で1994年の日本選手権者でもある母・早穂子(城土早穂子)さんの自己記録(57秒86)まで、あと0.1秒。日本選手権でこれを達成したい。


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