2021.08.03(火)選手

【記録と数字で楽しむ東京オリンピック】男子50km競歩

7月30日(金)から8月8日(日)の10日間、国立競技場と札幌(マラソンと競歩)を舞台に「第32回オリンピック」の陸上競技が開催される(ている)。

日本からは、65人(男子43・女22)の代表選手が出場し世界のライバル達と競い合う。

無観客開催となったためテレビやネットでのライブ中継で観戦するしかなくなったが、その「お供」に日本人選手が出場する26種目に関して、「記録と数字で楽しむ東京オリンピック」をお届けする。

なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある拙稿と同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、五輪の間に隔年で行われる世界選手権もそのレベルは五輪とまったく変わらないので、記事の中では「世界大会」ということで同等に扱い、そのデータも紹介した。

記録は原則として7月28日判明分。
現役選手の敬称は略させていただいた。

日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてあまりふれていない。日本人の出場しない各種目や展望記事などは、陸上専門二誌の8月号別冊付録の「東京五輪観戦ガイド」やネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。

大会が始まったら、日本陸連のTwitterで、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。



・決勝 8月6日 5:30

川野将虎(旭化成)
丸尾知司(愛知製鋼)
勝木隼人(自衛隊体育学校)

「最後の50km競歩」で、20km競歩との完全制覇を!

五輪で「50km競歩」が行われるのは、今回が最後。22年のユージン世界選手権では「35km」となり、国内の試合も今後は「20kmと35km」になる。

ドーハ世界選手権優勝者で代表となっていた鈴木雄介(富士通)がコンディションの不良のため出場を辞退。川野将虎(旭化成)、丸尾知司(愛知製鋼)に補欠だった勝木隼人(自衛隊体育学校)のトリオが出場。前日の20km競歩と共に、ドーハに続く「世界一」を目指す。

参加標準記録適用期間内(19年1月1日~20年4月5日、20年12月1日~21年6月29日)の記録による順位は、川野(3時間36分45秒)が1位、丸尾(3時間37分39秒)が2位、勝木(3時間42分34秒)が9位だ。

◆五輪&世界選手権での入賞者と最高記録◆
「五輪」&「世界選手権」での入賞者は、下記の通り。

1991   7位 4.06.07. 今村 文男(富士通)

1997   6位 3.50.27. 今村 文男(富士通)=日本最高

2005   8位 3.51.15. 山崎 勇喜(順 大)

2008五輪 7位 3.45.47. 山崎 勇喜(長谷川体育施設)

2011   5位 3.46.21. 森岡紘一朗(富士通)

〃   8位 3.48.03. 谷井 孝行(自衛隊体育学校)

2012五輪 7位 3.43.14. 森岡紘一朗(富士通)

2015   3位 3.42.55. 谷井 孝行(自衛隊体育学校)

〃   4位 3.43.44. 荒井 広宙(自衛隊体育学校)

2016五輪 3位 3.41.24. 荒井 広宙(自衛隊体育学校)

2017   2位 3.41.17. 荒井 広宙(自衛隊体育学校)

〃   3位 3.41.19. 小林  快(ビックカメラ)

〃   5位 3.43.03. 丸尾 知司(愛知製鋼)

2019   1位 4.04.20. 鈴木 雄介(富士通)


15年以降、4大会連続でメダルを獲得。とりわけ17年ロンドン世界選手権は2・3・5位でトリオ入賞。そして、19年は優勝という素晴らしい成績を残している。

五輪での「日本人最高記録」は、3時間41分24秒 荒井広宙 2016年 3位。

世界選手権でのそれは、同じく荒井の3時間41分17秒 2017年 2位。

◆1991年以降の五輪・世界選手権での1・3・8位の記録◆
日本人が初入賞した1991年東京世界選手権以降の「1位・3位・8位の記録」は以下の通り。

 年   優勝記録 3位記録 8位記録

1991   3.53.09. 3.55.14. 4.06.30.

1992五輪 3.50.13. 3.53.45. 3.58.26.

1993   3.41.41. 3.42.50. 3.50.23.

1995   3.43.42. 3.45.57. 3.49.47.

1996五輪 3.43.30. 3.44.19. 3.48.42.

1997   3.44.46. 3.48.30. 3.51.33.

1999   3.47.54. 3.50.55. 3.55.23.

2000五輪 3.42.22. 3.44.36. 3.48.17.

2001   3.42.08. 3.46.12. 3.51.09.

2003   3.36.03. 3.37.46. 3.46.14.

2004五輪 3.38.46. 3.43.34. 3.49.48.

2005   3.38.08. 3.41.54. 3.51.15.

2007   3.43.53. 3.44.38. 3.57.22.

2008五輪 3.37.09. 3.40.14. 3.46.51.

2009   3.41.16. 3.42.34. 3.47.36.

2011   3.41.24. 3.43.36. 3.47.19.

2012五輪 3.36.53. 3.37.54. 3.44.26.

2013   3.37.56. 3.40.03. 3.43.38.

2015   3.40.32. 3.42.55. 3.46.00.

2016五輪 3.40.58. 3.41.24. 3.46.43.

2017   3.33.12. 3.41.19. 3.44.41.

2019   4.04.20. 4.05.02. 4.11.28.

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最高記録

五輪最高 3.36.53. 3.37.54. 3.44.26.

世選最高 3.33.12. 3.37.46. 3.43.38.

2011年以降の各大会のスタート時の「気温・湿度」「先頭の10㎞毎のスプリット」「前半と後半」のデータは下記の通りだ。

なお、スプリットは各地点を先頭で通過した選手のタイムから算出したもので、優勝者のスプリットとは限らない。「前後半差」の「△」は、後半の方が速かったことを示す。


年    スタート時 ~10km ~20㎞ ~30㎞ ~40㎞ ~50㎞(前 半 +後 半 /前後半差)

2011   23℃・73% 44.31. 43.32. 43.30. 44.21. 45.40.(1.49.35.+1.51.49./▼2.24.)

2012五輪 ?℃・?% 44.15. 43.29. 43.05. 43.04. 43.00.(1.49.21.+1.47.32./△1.51.)

2013   17℃・94% 44.26. 44.10. 43.41. 42.47. 42.42.(1.50.34.+1.47.22./△3.12.)

2015   22℃・78% 45.18. 44.02. 43.50. 43.47. 43.31.(1.51.13.+1.49.19./△1.54.)

2016五輪 22℃・?% 44.28. 43.23. 43.48. 45.25. 44.02.(1.49.41.+1.51.17./▼1.36.)

2017   14℃・72% 44.28. 42.50. 42.33. 41.40. 41.41.(1.48.24.+1.44.48./△3.36.)

2019   31℃・74% 49.11. 48.24. 48.20. 47.26. 50.59.(2.01.07.+2.03.13./▼2.06.)



7大会中4回が後半の方が速いネガティブスプリット。前半の方が速かった3大会は、2011年はレース後半に気温が27℃に、16年のリオ五輪も28℃まで上昇したのが影響したようだ。19年のドーハはスタート時が31℃で湿度も74%の高温多湿の劣悪の条件。スタートした46人のうち完歩したのが28人(完歩率60.9%)しかいなかった。

◆8月6日の札幌市の過去30年間の気象状況◆
今回の札幌も快適な条件にならない可能性もある。
20kmのところでもふれたが、今年7月19日の昼間には、「猛暑日」となる「35.0℃」を記録した。

レースがスタートするのは8月6日の早朝5時30分だが、7月19日の同じ時間は、気温23.4℃・湿度75%。
しかし、30分毎のそれは、

6時00分 24.4℃ 71%

6時30分 25.2℃ 66%

7時00分 26.2℃ 63%

7月30分 26.9℃ 60%

8時00分 27.9℃ 56%

8時30分 29.5℃ 53%

9時00分 29.9℃ 53%

9時30分 30.9℃ 52%

だった。

スタート後にどんどん上がって、レース後半での30℃近い気温は、選手にとって非常に厳しものとなる。8月6日がそうならないことを祈りたい。

レース当日の気象状況にもよるがトップや上位の選手がフィニッシュするのは9時10分頃から9時30分頃。1991年から2020年の過去30年間の札幌市の6時00分とレース終盤の9時00分の「気温・WBGT(湿球黒球温度=暑さ指数)・湿度」は下記の通りだ。

このデータは、20km競歩と同様にウェザーニューズの浅田佳津雄さんらが日本陸連発行の「陸上競技研究紀要・第16巻(2020年)」に発表したものである。


-- 気温  WBGT  湿度

<6時00分>

平均 21.1℃ 21.4℃ 82%

最高 26.7℃ 24.1℃ 96%

最低 16.4℃ 16.6℃ 62%

<9時00分>

平均 24.7℃ 24.5℃ 70%

最高 32.0℃ 29.2℃ 93%

最低 18.0℃ 21.1℃ 51%


なお、「WBGT=湿球黒球温度:Wet Bulb Globe Temperature」は「暑さ指数」と言われる。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で表示されるが、その値は気温とは異なり、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目したもので、人体の熱収支に与える影響の大きい「湿度」「日射・輻射など周辺の熱環境」「気温」の3つを取り入れた指標である。

日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)によると、高温化での運動に関する指針は、


気温(参考) WBGT  熱中症予防運動指針

35℃以上  31℃以上  運動は原則中止

31~35℃  28~31℃  厳重警戒(激しい運動は中止)

28~31℃  25~28℃  警戒(積極的に休憩)

24~28℃  21~25℃  注意(積極的に水分補給)

24℃未満  21℃未満  ほぼ安全(適宜水分補給)


とされている。

過去30年間のデータからして、8月6日の気温やWBGTが上述の運動指針の「注意」「警戒」「厳重警戒」という条件になる可能性もあり、特にレースの終盤には過酷な条件になることが予想される。本来の実力以外に「耐暑能力」が大きく左右するレースになりそうである。

いずれにしても、日本人選手には過酷な条件下での「サバイバルレース」に最終盤まで生き残り、ドーハに続き20kmとの「競歩2冠」に「複数メダル」「全員入賞」を達成してもらいたい。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:アフロスポーツ

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